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喘息で倦怠感が続く理由、発作がなくても疲れる仕組みと受診の目安

「疲れが抜けない」「体が重くて集中できない」。風邪でもストレスでもないのに続くその倦怠感、実は喘息(ぜんそく)が関係しているかもしれません。

喘息といえば「激しい咳」や「ゼーゼーする呼吸(喘鳴:ぜんめい)」が主役だと思われがちですが、実は多くの患者さんが「だるさ」や「疲労感」に悩まされています。

本記事では、呼吸器内科医の視点から、発作がなくても体が疲れてしまうメカニズムと、受診を検討すべき具体的な目安を詳しく解説します。

1.喘息と倦怠感の関係について


喘息は「咳が出る病気」というイメージが強いですが、症状はそれだけではありません。咳、息切れ、胸の苦しさ、ゼーゼーという音などが、日によって強くなったり弱くなったりします。

特に夜間や早朝に症状が出る場合は、本人が気づきにくいまま睡眠が乱れ、結果として日中の倦怠感や集中力低下につながることがあります。

喘息のコントロールを考えるときは、日中だけでなく夜間の症状も大切です。夜に咳や息苦しさで目が覚める状態が続く場合は、生活の質が落ちるだけでなく、喘息の状態を見直すサインになることがあります。

◆「喘息とは?」>>

【参考情報】『Asthma』National Heart, Lung, and Blood Institute (NHLBI), NIH
https://www.nhlbi.nih.gov/health/asthma

1-1.咳や発作がなくても「炎症」は消えていない

喘息の正体は、気道の慢性的な炎症です。たとえ激しい咳が出ていなくても、気道の粘膜が腫れ、敏感な状態が続いていることがあります。この「目に見えない火種」が、体力をじわじわと消耗させるのです。

【参考情報】『気管支ぜんそく』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/c/c-01.html

1-2.喘息患者に倦怠感が多いことは研究でも示されている

ある研究では、呼吸器科外来を受診した喘息患者において、強い疲労感(severe fatigue)がおよそ3人に2人でみられたと報告されています。

ただし、この結果はかかりつけ医から専門の呼吸器科を紹介された患者さんを対象に、過去の診療データを分析した調査によるものです。そのため、すべての喘息患者さんにそのまま当てはまるわけではありません。

【参考情報】『Fatigue is Highly Prevalent in Patients with Asthma and Contributes to the Burden of Disease』MDPI
https://www.mdpi.com/2077-0383/7/12/471

1-3.小さな症状の積み重ねが、倦怠感につながる

喘息は、はっきりした発作だけが問題ではありません。夜間に少し咳き込む、話していると息継ぎが増える、階段で息が上がりやすいなど、小さな変化が続くと体が休まりにくくなります。「風邪でもないのにずっとだるい」という訴えの裏に、気道の炎症や夜間症状が隠れていることもあります。

2. 喘息で倦怠感が生じる3つの医学的メカニズム


「ただの疲れ」と片付けられがちな倦怠感ですが、喘息が関与している場合には明確な理由があります。

① 呼吸筋のオーバーワーク
気道が炎症で狭くなると、空気を通すために通常よりも強い力で呼吸をする必要があります。

・自覚しにくい負荷: 本人は「苦しくない」と思っていても、体は常に通常より多くのエネルギーを呼吸に使っている状態です。

・筋肉の疲労: 呼吸を助ける首や胸の筋肉(呼吸補助筋)が常に緊張し、肩こりや全身の疲労感として現れます。

② 夜間症状による「睡眠の質」の劇的な低下
喘息は、夜間から明け方にかけて悪化しやすい性質を持っています。

・中途覚醒: 咳や胸の圧迫感で目が覚める。

・微小覚醒: 自覚症状がなくても、呼吸が浅くなることで脳が短時間だけ覚醒し、深い睡眠(ノンレム睡眠)が妨げられます。

これらにより、睡眠時間は十分でも、脳と体の修復が追いつかず、翌日の倦怠感に直結します。

◆「夜間の咳や睡眠の乱れが続くときに見直したいポイント」>>

③ 呼吸効率の変化による全身への影響
喘息では、気道の炎症や狭窄によって呼吸のたびに余分なエネルギーが必要です。コントロールが不十分な状態が続くと、体全体のエネルギー消費が増え、「何をするにも億劫」「体が重い」という感覚につながることがあります。

重症例や発作時には、血液中の酸素濃度が低下したり二酸化炭素の排出が滞ったりすることもありますが、日常的に感じる倦怠感の多くは、こうした慢性的な呼吸負荷の蓄積によるものと考えられています。

【参考情報】『Asthma Symptoms』National Heart, Lung, and Blood Institute (NHLBI), NIH
https://www.nhlbi.nih.gov/health/asthma/symptoms

3. 喘息による倦怠感を疑うチェックポイント


「なんとなくだるい」「疲れが抜けない」という状態が続くとき、その背景に喘息が関わっているかどうかは、呼吸や睡眠のパターンを振り返ることで手がかりが見えてきます。ここでは、受診前に自分で整理しやすいポイントをまとめます。

3-1. 倦怠感の「出方」に注目する

倦怠感にはさまざまな現れ方があります。「朝から体が重い」「午後になると集中力が落ちる」「十分寝たはずなのに回復感がない」「体よりも頭が働かない感じがする」など、人によって異なります。

喘息が関係している場合は、夜間に咳や息苦しさがあった翌日ほど倦怠感が強いというパターンが見られやすく、睡眠の質と翌日の体調がセットで変動することが多いのが特徴です。

3-2. 喘息が関係する倦怠感のサイン


以下のような症状や変化が続いている場合、たとえ典型的な喘息発作がなくても、気道の炎症や夜間症状が倦怠感に関与している可能性を考えます。

【夜間症状とは、夜中から明け方にかけて現れる咳や息苦しさなどの症状のこと】

・夜間や早朝に咳が増える、または咳で目が覚める
・運動や階段の上り下りで息が上がりやすい
・冷たい空気、タバコの煙、強い香りなどに触れると咳が出やすい
・笑ったとき、または会話が続いたときに咳が出る
・胸が重い感じや、息を吸いきれない感覚が時々ある

これらは喘息でよくみられる症状の例です。特に夜間や早朝に繰り返す咳は、日中はほとんど気にならなくても、睡眠の質を大きく損なうサインになりえます。

◆「夜や早朝の咳・息苦しさが続くときに確認したい喘息のサイン」>>

3-3. 直近1週間の「夜の症状」を振り返る

喘息は夜間から明け方にかけて悪化しやすい性質があります。直近1週間を振り返り、以下の点を確認してみてください。

・夜中に咳や息苦しさで目が覚めた夜があったか
・早朝に咳が続き、なかなか止まらなかった日があったか
・明け方に胸の重さや息苦しさを感じて、再び眠れなかったことがあったか

日中は我慢できていても、夜間に繰り返し症状が出ている場合は、喘息のコントロールを見直すきっかけになります。

3-4. 症状が悪化しやすい状況を整理する

喘息は、いくつかの要因をきっかけに悪化しやすいことが知られています。「いつ」「どこで」「何をしたときに」症状や倦怠感が強くなるかを振り返ることが、原因の切り分けに役立ちます。代表的な悪化因子には以下のものがあります。

・風邪などの感染症
・室内のダニ・ほこり・カビ
・受動喫煙を含むタバコの煙、飲酒
・肥満
・気温・天候の急激な変化(特に冬場の冷気)
・強いストレスや疲労

こうした状況と症状の出方を照らし合わせることで、受診時に医師へ伝えやすくなります。

【参考情報】『Q3. 夜間や早朝にせきが出ます。』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q03.html

3-5. 受診前にメモしておくと役立つ情報

医療機関を受診する際、次の情報を事前にまとめておくと、症状の評価がスムーズになります。

・いつ頃から倦怠感が続いているか
・咳や息苦しさが出やすい時間帯(夜間・早朝・運動後など)
・季節・天候・寝室環境との関係
・喫煙状況(本人・同居家族の受動喫煙を含む)
・現在使用している薬(処方薬・市販薬・サプリメントを含む)

なお、喘息の方が解熱鎮痛目的で市販のイブプロフェンやアスピリンなどを使用すると、喘息発作が誘発されることがあります(アスピリン喘息)。倦怠感への対症療法として市販薬を使用する際は、事前に薬剤師または医師にご相談ください。

◆「解熱鎮痛薬で発作が誘発されるアスピリン喘息とは」>>

【参考情報】『Controlling Asthma』Centers for Disease Control and Prevention (CDC)
https://www.cdc.gov/asthma/control/index.html

4. 受診の目安と医療機関での流れ


「ただのだるさで病院に行っていいのだろうか」と思う方もいるかもしれませんが、倦怠感が長引いている場合は受診を検討する価値があります。特に喘息のある方では、症状が目立たなくても気道の状態が変化していることがあります。

4-1. 緊急受診・救急受診が必要なサイン

以下の症状がある場合は、ためらわず救急外来を受診するか、救急車を呼んでください。

・ 強い息苦しさで横になれない、または会話が続かない
・ 唇や指先が青白くなっている(チアノーゼ)
・ 普段使っている薬を使っても症状がまったく改善しない

これらは喘息が重篤な状態に陥っているサインである可能性があり、一刻も早い対応が必要です。

【参考情報】『成人ぜん息の基礎知識 発作が起こったら…』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/control/attack.html

4-2. 早めの受診を検討すべきサイン

緊急ではないものの、以下の状態が続く場合は、翌日以降を待たず早めに医療機関にご相談ください。

・ 苦しさや咳で夜間に眠れない状態が続いている
・ 日中の倦怠感が強く、普段の生活に支障が出ている

◆「長引く咳があるときに呼吸器内科受診を考える目安」>>

【参考情報】『Asthma Attack』National Heart, Lung, and Blood Institute (NHLBI), NIH
https://www.nhlbi.nih.gov/health/asthma/attacks

5. 喘息以外の疾患が倦怠感の原因になるケース


喘息のある方でも、倦怠感の原因が別の病気にあることは少なくありません。以下の疾患は、喘息と症状が似ている部分があり、鑑別が重要です。

5-1. 睡眠時無呼吸症候群(SAS)

喘息の患者さんは鼻炎を合併しやすく、口呼吸になりやすいため、睡眠時無呼吸症候群を併発しやすいことが知られています。「いびきがひどいと言われる」「日中に強い眠気がある」「十分寝ても疲れがとれない」などに心当たりがある場合は、睡眠専門の検査(睡眠ポリグラフ検査など)が選択肢になります。

【睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が何度も止まったり浅くなったりする病気のこと】

◆「日中の眠気や集中力低下を伴う睡眠時無呼吸症候群について」>>

5-2. 鉄欠乏性貧血

特に月経のある女性では、鉄不足による貧血が倦怠感の主な原因となっていることがあります。動悸、息切れ、顔色の悪さなどを伴う場合は、血液検査でヘモグロビンや血清フェリチン値を確認します。

5-3. 甲状腺機能低下症

甲状腺ホルモンが不足すると、全身の代謝が低下し、強い倦怠感・無気力・むくみ・寒がり・体重増加・便秘などが現れます。喘息とはまったく異なるメカニズムですが、症状が似ている部分もあるため、血液検査(TSH:甲状腺刺激ホルモン)で確認します。

【参考情報】『甲状腺機能低下症』日本内分泌学会
https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=38

5-4. 心不全

「横になると咳や息苦しさが強くなる」「足がむくむ」「体重が短期間で増えた」といった症状がある場合は、心臓のポンプ機能が低下している可能性があります。

心不全の症状は喘息と類似することがあり(心臓喘息と呼ばれることもあります)、見分けるためには胸部X線・心電図・心臓超音波検査などが必要です。倦怠感に加えてこれらの症状がある場合は、早めに受診することをお勧めします。

◆「横になると咳が出るときに喘息以外も含めて考えたい原因」>>

6. まとめ

喘息による倦怠感は、咳や発作が目立たない時期にも起こりえます。夜間症状による睡眠の質低下や呼吸筋への慢性的な負担が背景にあることも多く、「疲れやすい体質だから」と放置するのは禁物です。

倦怠感が続く場合は症状の経過を整理したうえで、早めに呼吸器内科にご相談ください。

以下の症状がある方は、早めの受診をおすすめします

  • 息苦しさやゼーゼー・ヒューヒューという音がある
  • 季節の変わり目や天候の変化で症状が悪化する
  • 運動時に息切れや咳が出やすい
  • 夜間や早朝に咳や息苦しさで目が覚める
  • 以前「喘息かも」と言われたが、治療を中断している

当てはまる項目がある方は、呼吸器専門医に相談してみませんか?

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