睡眠時無呼吸症候群とは?

睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が一時的に止まるか、極端に浅くなる状態を繰り返す病気です。

これにより、睡眠の質が低下し、日中の眠気や集中力の低下がおこります。さらに、心臓病や高血圧などのリスクが高まる可能性もあるといえます。

この記事では、睡眠時無呼吸症候群の症状や原因、検査と治療についてご紹介します。

1.睡眠時無呼吸症候群とは


睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に一時的に呼吸が止まることで、酸素欠乏や睡眠の質の低下を引き起こす病気です。

このため、日中の眠気や集中力の低下がおこり、交通事故のリスクなどが高まるといえます。

また、睡眠中の無呼吸状態・低酸素状態を繰り返すことで、心臓や脳、血管に大きな負担がかかります。その結果、心臓病や高血圧などの合併症になる可能性があり、突然死のリスクも高まります。

【参照文献】一般社団法人 日本呼吸器学会『呼吸器の病気 睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)』
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/i/i-05.html

2.症状


睡眠時無呼吸症候群は、日常生活にさまざまな影響を及ぼす症状がでます。以下は主な症状です。

2-1. 毎日のようにいびきをかく

睡眠時無呼吸症候群の最も一般的な症状の一つで、とくに大きないびきが特徴です。呼吸する道が部分的に閉じてしまうことで大きないびきがでます。

患者さん本人が気付かず、家族の方などに指摘される場合も多くあります。

2-2. 起きたときに口やのどの渇きがある

睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、寝ている間に口呼吸になりやすく、その結果、起きたときに、口や喉が乾燥することがあります。

2-3. 熟睡感がない・居眠り・日中の眠気

睡眠中の無呼吸により、深い睡眠が妨げられ、日中に過度の眠気や居眠りを引き起こすことがあります。

日中の過度な眠気は、とくに運転時の危険性を高め、交通事故のリスクを増加させるため、重大な症状であると言えます。

2-4. 慢性的な疲労感・集中力の低下・倦怠感がある

質の高い睡眠が得られないため、日中の疲労感、集中力の低下、倦怠感が生じることがあります。

2-5. 起きたときに頭が痛い、ズキズキする

睡眠中の酸素不足が原因で、朝に頭痛を感じることがあります。

3.原因


睡眠時無呼吸症候群の原因は、主に閉塞性と中枢性の二つのタイプに大別されます。大部分が閉塞性無呼吸症候群で、中枢性は数%であり比較的稀なケースです。

3-1. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群

喉や気道が物理的に塞がってしまうことが原因です。上気道(鼻や口の奥、喉)が狭くなり、呼吸が止まる現象が起こります。

体重の増加によるのど周辺の脂肪蓄積、首や喉周りの脂肪沈着、扁桃肥大、舌根(舌の付け根)、口蓋垂(のどちんこ)、軟口蓋(口腔上壁後方の軟らかい部分)などが原因です。

上気道の狭窄は、骨格の大きさにも関係しています。骨格が小さい場合、脂肪が増えると上気道がさらに狭まり、閉塞しやすくなります。

睡眠時の姿勢も重要です。仰向けに寝ると、舌根が上気道に落ち込みやすくなり、無呼吸やいびきが起こりやすくなります。

横向きに寝るとこの影響が減少し、いびきが止まることがあります。

過度なアルコール摂取や喫煙など、生活習慣も睡眠時無呼吸症候群の発症に影響を及ぼす可能性があります。

とくに過度なアルコール摂取は、筋肉の弛緩を引き起こし、気道の閉塞を促進します。

これらの要因は単独で原因となることもありますが、多くの場合、複数の要因が組み合わさって睡眠時無呼吸症候群を引き起こします。

3-2. 中枢性睡眠時無呼吸症候群

脳からの呼吸指令が適切に出ないことが原因で、無呼吸が生じます。

肺や胸郭、呼吸筋、末梢神経に異常がなくても、呼吸指令が出ないため無呼吸が起こります。気道は開いたままですが、呼吸しようとする努力が見られません。

心臓機能の低下などが原因の場合があります。

【参考文献】Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/sleep-apnea/symptoms-causes/syc-20377631

4.検査


睡眠時無呼吸症候群の検査には、以下のような方法があります。

<パルスオキシメーター検査>

自宅で行うことができる検査で、睡眠中の酸素飽和度と脈拍を測定して無呼吸や低呼吸を推測します。

<終夜睡眠ポリグラフ検査>

体中にセンサーを取り付けて、脳波や眼球運動、筋電図などから眠りの種類や深さを調べます。従来、入院して行うことが多かったのですが、最近はご自宅で実施可能な検査機器もあります。

口と鼻の気流、胸・おなかの動き、いびきの音などから呼吸の状態を調べることが可能です。

5.治療


治療方針は、症状の重さや原因に応じて決定されます。以下は、主な治療法です。

5-1. CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)

CPAP療法とは、一定の圧力をかけた空気を鼻からに送り込み、気道を広げて、睡眠中に呼吸が止まらないようにする治療法です。

CPAP装置には、機器本体に空気を送るチューブと鼻に当てるマスクがついており、睡眠中はこれを装着します。圧力の大きさは、呼吸にあわせて自動的に調整される仕組みです。

日本では、一定の基準に合致する睡眠時無呼吸症候群の患者さんが、保険診療でCPAP療法を受けることができます。

5-2. マウスピース(口腔内装具)

口腔内装具は、下あごを前方に保持し気道を拡張することで、気道の塞がりを防ぎます。軽度から中等度の閉塞性睡眠時無呼吸や、CPAP療法がむかない患者さんに適しています。

5-3. 外科的手術

気道を塞いでいる組織(例えば肥大した扁桃腺や軟口蓋など)を取り除く手術です。他の治療に効果がない場合や特定の原因がある場合に行われます。

5-4. 生活習慣の改善

体重の減少、禁煙、アルコール摂取の制限など、生活習慣の改善は睡眠時無呼吸症候群の治療において重要です。とくに肥満が原因の場合、減量は非常に効果的です。

また、鼻の通りを良くするための治療も閉塞性睡眠時無呼吸の改善に役立ちます。

6.おわりに

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中の無呼吸や低酸素状態を繰り返すことで、日常生活に多大な影響を及ぼす可能性がある病気です。

肥満や生活習慣、骨格の特徴などによって引き起こされます。

とくに生活習慣が原因である場合、その改善が治療において非常に重要です。適切な体重管理、禁煙、アルコール摂取の制限、睡眠姿勢の改善などを行いましょう。

睡眠時無呼吸症候群は、放置すると心臓病や高血圧などのリスクを高める可能性があります。そのため、早期の対応が非常に大切です。

大きないびき、日中の過度な眠気、朝の頭痛、口や喉の乾燥など、気になる症状がある場合は、早めに呼吸器内科など医療機関の受診を検討しましょう。