喘息について

喘息とは、空気の通り道である気道が、長い期間炎症を繰り返すことで狭くなる病気です。症状として2か月前後にわたって咳が長引いたり、呼吸時にヒューヒュー、ゼーゼーといった音が聞こえる喘鳴(ぜんめい)が生じたり、呼吸困難の発作が生じたりします。

子どもの病気というイメージもありますが、大人になってから発症する方も多くいます。また、一旦治った状態が続いていても、再発することもあります。

この記事では、喘息の原因や症状、検査と診断、対処の方法について詳しくご説明します。いざという時に対処できるよう、参考にしてください。

1. 原因


子どもの喘息の場合はアレルギーが原因であることがほとんどとされています。小学校高学年ぐらいから発作がなくなることもありますが、20~30歳代に再発することもあります。

大人の場合、6~8割が大人になって初めて発症した人たちです。子どもに比べ、原因が明確に特定できない場合も多いとされています。
 
喘息の発作は、炎症によって気道が敏感になり、気道のけいれんを繰り返し起こして狭くなることで起こります。気道が炎症により敏感になっているため、わずかな刺激でも発作がおこりやすくなっているのです。

発作の原因である刺激となるものには、ダニやホコリ、花粉などの「アレルゲン」と、タバコの煙や気温、ウイルスや細菌による気道の感染などのアレルゲン以外のものがあります。そのほかにも風邪、運動、過労やストレス、気圧の変化など、さまざまな刺激が原因となって起こります。

実際にはどれかひとつではなく、さまざまな刺激が複合的に重なりあうことが喘息の発作を起こす原因です。

2. 症状


喘息の症状には、咳やたん、息苦しさなどがあります。また、呼吸すると「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音がする喘鳴(ぜんめい)を伴うこともあります。
胸の痛みやのどに感じる違和感なども喘息の症状のひとつといえます。

喘息の発作は夜間や早朝に起こりやすいと言われています。症状は一過性ですが、繰り返し起こることが多いです。

また、症状が咳だけで、喘息の前段階に位置付けられている「咳喘息」と呼ばれる種類の喘息もあります。

3. 検査と診断


喘息の検査と診断は、患者さんの症状に基づいて行われます。以下に、主な検査と診断方法をご説明します。

●問診
はじめに、患者さんの症状や健康状態について詳しく問診します。喘息の典型的な症状があるかや、いつ、どのような状況で現れるか、また、家族に喘息や他のアレルギー疾患があるかどうかなどの内容です。

●聴診
聴診器により患者さんの呼吸音を調べます。喘息の特徴的な呼吸音は、「息を吐くときに出るヒューやプーッと発する音」です。ただし、このような音が聞こえない場合もあります。

●肺機能検査(スパイロメトリー)
スパイロメトリーは、喘息の基本的な検査です。スパイロメーターという機械を使って呼吸機能を調べます。

患者さんは力いっぱい息を吸い込み、次に力いっぱい吐きます。この時、吸ったときの肺活量(努力性肺活量)、吐き始めてから吐き終わるまでの時間、吐くスピードを機械が測定します。

最初の1秒間で吐き出した空気の量を1秒量(FEV1)といい、喘息の発作を起こしているときには、低くなります。

●呼気NO検査
マウスピースをくわえて息を吐き、吐いた息の中に含まれる一酸化炭素(NO)を測定する検査です。
喘息などにより気道に炎症が起こると、息の中に一酸化炭素(NO)が増えます。そのため、この検査の数値が高いと、喘息や咳喘息を疑います。

●血液検査
血液検査により、アレルギーの状況をみる血清IgE抗体や好酸球数などを調べます。

4. 対処法


喘息の発作に対する対処法は、発作の程度によって異なります。以下に、発作の程度別の対処法をまとめます。

●早期対応
発作が起きた場合は、まず落ち着いて深呼吸をし、パニックにならないように心がけましょう。また、発作の前兆を認識できるよう心がけます。

●小発作(軽度)
苦しいが横になれる状態では、サルタノール®やメプチン®を20分おきに2~3回吸入します。

●中発作(中等度)
苦しくて横になれない状態では、サルタノール®やメプチン®を吸入しながら、症状が改善しない場合は救急対応できる医療機関を受診しましょう。

●大発作(高度)
苦しくて動けない、会話が困難の状態です。サルタノール®やメプチン®を吸入しながら、周囲の助けを借りて救急車を呼ぶか救急対応できる医療機関を受診します。

●呼吸不全(重篤)
明らかな呼吸困難、チアノーゼなどが起こっている状態では、 直ちに救急車を呼びましょう。

喘息の対処法として、発作を予防することが重要です。発作が起きないように、以下に気を付けましょう。

•持続的な治療
医師の指示に従い、処方された吸入薬や経口薬を定期的に使用しましょう。症状が無いからと言って勝手に服薬を中止してはいけません。

•トリガーの回避
喘息の発作を引き起こす可能性のある刺激(たばこの煙、花粉、ハウスダスト、ペットの毛など)を避けることが重要です。患者さん自身が発作が起こる状況を把握できるようにしましょう。治療日誌や発作が起きた状況の記録などをとることも発作の予防に役立ちます。

•ピークフローメトリーの使用
ピークフローメトリーは、気管支の狭まりを測定するための検査です。自宅での喘息の管理に役立つので、使用を検討しましょう。

また、以下のような生活習慣も大切です。
• 禁煙
• 節酒
• 定期的な掃除
• 風邪やインフルエンザの予防
• 内臓脂肪の減少
• ストレスの管理
• 適度な運動

【参考文献】一般社会法人 日本呼吸器学会『呼吸器の病気 気管支喘息』
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/tobacco/yt-022.html

【参考文献】”Athma” by Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/asthma/default.htm

5. おわりに

喘息は慢性的に気管に炎症が生じているため、日常の少しの刺激によって発作に繋がってしまう場合があります。そのため、発作が起きないように、できるだけ管理することが大切です。

また、発作が治っても気管では炎症が続いている状態です。改善したと思っても服薬を勝手に中止しないようにしましょう。発作が起こった場合には緊急性を見極め、正しく対処できるよう備えが大切です。

喘息は子どもだけでなく、大人になってからも発症する可能性があります。疑わしい症状がある場合、呼吸器専門医のいる病院の受診を早めに検討してください。