新型コロナウイルス感染症の基本情報

2024年4月現在、新型コロナウイルス感染症の感染者数はピーク時に比べると減少傾向で、以前の日常生活を取り戻しつつあります。

しかし新規感染者数は毎週一定数が報告されており、病院や高齢者施設、人の多い場所では感染対策が必要な状況です。

また、公費支援などの特例措置が終了したことにより、治療費などの自己負担が必要になったため不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

1.新型コロナウイルス感染症について


2019年の終わりから世界的に大流行し、日常生活を一変させた「新型コロナウイルス感染症(CVOID-19)」ですが、「コロナウイルス」という病原体自体はもともと風邪の原因として存在していたものです。

従来のコロナウイルスは、感染しても鼻水やくしゃみ微熱など風邪の症状が出るだけで命に関わるようなことはありません。

しかし、動物に感染したウイルスが変異してヒトに対する感染力を持つようになると、重い肺炎などの命に関わる症状を引き起こす病原体になります。

これまでも動物から感染したコロナウイルスとして、SARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)などがありましたが、この2つと比べてもCVOID-19は感染者数が莫大なものとなっています。

【参考情報】国立感染症研究所『コロナウイルスとは』
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/9303-coronavirus.html

【参考情報】厚生労働省『新型コロナウイルスに関するQ&A』
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html

感染症法では、感染力や重篤性などを総合的に判断し、感染対策の基準として1~5類などに分けられています。

新型コロナウイルス感染症は当初「新型インフルエンザ等感染症(いわゆる2類相当)」に位置づけられていました。

しかし、感染者数が減少したことや、大きく異なる変異株の発生がないことから、2023年5月8日に「5類感染症」へと移行しました。

その後、医療提供体制の見直しなどが行われ、2024年4月からは季節性インフルエンザなどの感染症と同様の位置づけとなりました。

5類移行やその後の変更に伴い、以下の点が変わっています。

①発生動向の報告
感染者数や死亡者数の総数は毎日公表されていましたが、定点医療機関からの報告に基づく週ごとの発表に変わりました。

②医療体制
これまでは行政が指定した限られた医療機関のみで入院治療が行われてきましたが、5類移行後は原則、各医療機関で受け入れの可否を決められるようになりました。

これにより、受け入れ可能な医療機関が増加しました。

また、これまでは新型コロナウイルスの専用病床を確保する形を取っていましたが、2024年3月末には通常の医療体制に移行しました。

③患者対応
これまでのような外出自粛要請は無くなり、基本的には個人の判断に委ねられることになりました。

また、治療薬は高額なため公費でまかなわれていましたが、5類移行後は上限額(3000円~9000円)以内の自己負担が必要になりました。

その後2024年4月1日からは特例的な上限額がなくなり、通常の受診と同じように1~3割の自己負担が必要になります。

しかし、入院や治療薬などで医療費が一定額を超える場合は、所得に応じて他の病気と同じように高額療養費制度を利用することができます。

検査費用についても公費支援がありましたが、5類移行後は自己負担となります。

ただし、医療機関や高齢者施設等のクラスターを防止するために一部の検査は公費支援が継続されています。

④感染対策
マスクの着用などの感染対策は、個人や事業所の判断に委ねられることになりました。

マスクの着用義務は無くなっても、人が多い場所や医療機関などでは重症化リスクが高い人へ配慮し、自主的に感染対策を行う必要があります。

⑤ワクチン
予防接種法に基づき、特例臨時接種として自己負担なく接種できていましたが、無料接種は2024年3月31日で終了となりました。

【参考情報】厚生労働省『新型コロナウイルス感染症に関する令和6年4月以降の対応について』
https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/00003.html

【参考情報】厚生労働省『新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について』
https://www.mhlw.go.jp/stf/corona5rui.html

2.症状


新型コロナウイルス感染症の症状は、咳などの呼吸器症状が中心で、軽症・無症状の場合も多いです。

しかし、高齢者や基礎疾患があるかたは重症化しやすいため注意が必要です。

2-1.主な症状と、悪化した時の症状

CVOID-19では感染者の咳やくしゃみ、会話の際に排出される飛沫やエアロゾル(飛沫よりも小さな水分を含んだ粒子)が眼や鼻、口などの粘膜に触れることで感染します。

このエアロゾルは1m以上飛散し、長い時間空中に留まり続けるため、換気が不十分な室内で感染しやすくなります。

軽症の場合は咳、発熱、鼻水、のどの痛み、全身の倦怠感や味覚障害など、風邪と似た症状が見られます。

【参考情報】Mayo Clinic『 COVID-19』
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/coronavirus/symptoms-causes/syc-20479963

2-2.重症化しやすい人

重症化リスクが高いのは次のような方です。
・高齢者
・喫煙習慣のある方(過去の喫煙歴も含む)
・糖尿病、高血圧、心臓病、がん、COPDなどの基礎疾患のある方

重症化すると高熱や肺炎、呼吸困難などの症状が出る場合があります。

◆『肺炎について』>>

【参考情報】国立がん研究センター『新型コロナウイルス感染症の基礎知識』
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/division/infectious_control/040/01/index.html

3.感染が疑われる時は…


まずはキットを使って自分で検査し、必要に応じて病院を受診しましょう。

発熱などの体調不良時に備えて、検査キットや解熱鎮痛薬などを事前に用意しておくと安心です。

3-1.相談・受診の目安

感染が疑われる場合は、国が承認した抗原検査キットを用いて検査をしてみましょう。

国が承認した抗原定性検査キットは「体外診断用医薬品」または「第1類医薬品」と表示されています。

「研究用」と書かれているものは国が性能を確認したものではありません。

結果が陽性だった場合、症状が軽ければ自宅で療養しながら様子を見ます。

症状が重い場合や、重症化リスクの高い方(高齢者、基礎疾患のある方、妊婦など)は医療機関を受診してください。

病院によっては受け入れを行っていない場合や、発熱外来が別になっている場合がありますので、医療機関に事前に連絡し受診の相談をしましょう。

【参考情報】厚生労働省『新型コロナウイルス感染症の一般抗原検査キット(OTC)の承認情報』
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_27779.html

3-2.相談窓口へ連絡

受診した方が良いかなど判断に迷う時や、受診可能な病院について知りたい時は、お住まいの市区町村のホームページにアクセスして新型コロナウイルス感染症について書かれている箇所を確認しましょう。

厚生労働省の電話相談窓口もありますが、令和6年9月30日で終了となるため注意が必要です。

4.検査・治療


検査キットを用いて自分でチェックすることが基本となりますが、病院で検査を受けたい場合は事前に電話で相談しましょう。

4-1.検査

新型コロナウイルスの検査には、PCR検査、抗原定量検査、抗原定性検査などがあります。

名前が似たもので抗体検査というのもありますが、過去に感染したことがあるかを調べるものであり、現時点での感染状況を調べるものではありません。

検査のタイミングなどによっては、十分な数のウイルスを採取することができず、本当は感染していても陰性という結果が出る場合があります。

医師の判断によってはPCR検査のほか、CT検査などの画像検査が行われることがあります。

検査の結果新型コロナウイルスに感染していると判断された場合、軽症なら自宅で療養する形になります。

しかし重症化リスクが高い人など医師が必要と判断した場合は、入院が必要なこともあります。

4-2.治療

治療としては対症療法が主ですが、医師の判断により、新たに承認された経口薬(ゾコーバ錠、パキロビッドパック、ラゲブリオカプセルなど)が使用される場合もあります。

重症の場合は人工呼吸器やECMO(エクモ:体外式の人工心肺装置)を使用して肺に酸素を送り込む治療を行います。

4-3.後遺症について

新型コロナウイルスに罹患した後、他の病気としては説明がつかない症状が少なくとも2か月以上持続する「CVOID-19の罹患後症状(いわゆる後遺症)」が報告されています。

治療方法や発生頻度などは詳しく分かっていない部分も多く、国内外で研究が進められています。

【参考情報】厚生労働省『新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に関するQ&A』
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kouisyou_qa.html

症状としては、疲労感、倦怠感、関節痛、筋肉痛、咳、痰、息切れ、胸痛、記憶障害、集中力低下、味覚障害などさまざまです。

時間の経過とともに症状は改善されると言われていますが、なかなか改善せず治療に難渋するケースもあります。

画期的な治療法は確立されておらず、対症療法が中心になります。

予防としては、感染しないことはもちろんですが、感染前のワクチン接種が後遺症リスクを減少させると言われています。

【参考情報】厚生労働省『新型コロナウイルス感染症 診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント』
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001159305.pdf

5.おわりに

新型コロナウイルス感染症が5類に移行し、新しい情報も次々と入ってくる為、医師や研究者、行政が、事実やデータに基づいて発信している情報を参考にするようにしてください。

基本的な感染対策を継続し、発熱などの体調不良時に備えて検査キット、解熱鎮痛剤などを準備しておくと安心です。

軽症の場合は自宅療養で良い場合もありますが、重症や基礎疾患などで病院の受診が必要な場合は、受診可能かどうか事前に電話で相談しましょう。