肺炎について

肺炎と聞くと「怖い病気」「命に関わるのでは?」と不安に感じる方も多いでしょう。

肺炎は風邪と症状がよく似ていますが、文字通り肺に炎症が起こる病気です。

放っておくと呼吸困難を起こし危険な状態になる場合もあり、注意が必要です。

今回の記事では、肺炎の症状や検査、治療についてわかりやすく解説します。

気になる症状がある方は、ぜひ、最後までお読みください。

1. 肺炎とはどのような病気なのか


「肺炎」とは、肺にウイルスや細菌などの病原微生物が感染し、急性の炎症を起こす病気です。

肺は、肺胞が多く集まってできている臓器で、酸素を取り込み二酸化炭素を吐き出す「呼吸」を行っています。

この肺胞に炎症が起きると、肺炎を引き起こし、呼吸状態を悪化させ、入院治療が必要なほど重症化する場合があります。

肺炎は日本人の死因第5位に入るほどであり、注意が必要な病気といえるでしょう。

【参考情報】『令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai22/dl/gaikyouR4.pdf

2. 肺炎の原因と種類


肺炎の原因は主にウイルスや細菌の感染で引き起こされますが、それ以外にも原因があります。

ここでは、肺炎の原因や肺炎の種類について解説します。

2−1.細菌性肺炎

細菌性肺炎は、細菌の感染が原因で発症する肺炎です。

症状は、咳、発熱、膿性の痰などがあらわれます。

原因となる主な細菌は以下の通りです。

・ 肺炎球菌
・ ブドウ球菌
・ グラム陰性桿菌

肺炎球菌による肺炎は、肺炎球菌ワクチンで予防でき重症化のリスクを下げる効果があります。

細菌性肺炎の治療には、抗菌薬が効果的ですが、耐性菌の問題もありますので医師の指示に従いましょう。

2−2.ウイルス性肺炎

ウイルス性肺炎は、ウイルスの感染が原因で発症する肺炎です。

発熱や咳などの症状があらわれますが、細菌性肺炎に比べが膿性痰が出にくいとされています。

原因となる主なウイルスは以下の通りです。

・ インフルエンザウイルス
・ RSウイルス
・ アデノウイルス
・ ヒトメタニューモウイルス
・ サイトメガロウイルス
・ 新型コロナウイルス

治療は、抗ウイルス薬がある場合には使用することもありますが、対症療法がメインで治療を行うことがほとんどです。

2−3.非定型肺炎

肺炎症状はあるがそれ以外の症状もある場合、この非定型肺炎である場合があります。

症状は呼吸器症状や発熱、咳がありますが、その他にも皮疹や下痢、吐き気や筋肉痛など多岐にわたる症状があらわれます。

非定型肺炎とは、以下の起因菌によって発症する肺炎の総称です。

・ マイコプラズマ
・ レジオネラ
・ クラミドフィラ

非定型肺炎は、若年者の肺炎の約半数にのぼり、特にマイコプラズマの感染による肺炎が多いです。

2−4.肺真菌症

肺真菌症とは、真菌感染によって発症する肺炎です。

カビの仲間を総称して、真菌と呼びます。

症状は、発熱や咳、痰、血痰、倦怠感、呼吸困難などがあらわれます。

肺真菌症を起こすのは、主に以下のような種類の真菌が原因です。

・ カンジダ
・ アスペルギルス
・ クリプトコッカス
・ ムコール

肺真菌症は、抗真菌薬を使用した治療が主な治療法となり、入院治療になることも多いです。

2−5.過敏性肺炎

過敏性肺炎とは、肺胞や細気管支に発生する炎症です。

抗原となる粉塵や抗原となる物質を、繰り返し吸い込むことにより起こるアレルギー反応が原因です。

症状は、息切れや咳、発熱といった症状があらわれますが、原因となる抗原を遠ざけることで改善する場合もあります。

長期間、原因となる抗原を吸い込むことで慢性化し、肺が固くなると肺の機能が低下します。

治療は、抗原を遠ざけ環境調整を行いますが、重症化すると酸素投与やステロイド薬の投与が必要です。

2−6.誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎とは、食事や唾液などを飲み込む際、飲み込む機能(嚥下機能)の低下から誤って気管に入ってしまうことで起こる肺炎です。

誤嚥性肺炎の症状は、発熱や咳、膿のような痰が症状としてあらわれます。

それ以外にも、なんとなく活気がない、食欲がない、喉がゴロゴロ鳴る、などの様子の変化がみられる場合があります。

以下の状態に当てはまる方は、誤嚥性肺炎を起こすリスクがある方です。

・ 嚥下機能の低下した高齢者
・ 脳梗塞後遺症やパーキンソン病などの神経疾患
・ 寝たきりの人

食事中にむせたり、食後に咳が続く場合は、誤嚥性肺炎につながり得る誤嚥を起こしている可能性が考えられます。

また、高齢者は嚥下の機能が低下しているために、誤嚥していても咳が出ない場合があり、注意が必要です。

3. 肺炎の検査と治療


肺炎の診断や肺炎の状態を評価するためにも、検査が行われます。

検査の種類と肺炎の治療について、解説します。

3−1.肺炎の検査

肺炎が疑われる場合、以下のような検査が行われます。

・ 胸部X線検査
・ CT検査
・ 血液検査
・ 呼吸機能検査

肺炎と診断された場合には、原因の特定のため以下のような検査が行われます。

・ 喀痰検査
・ 迅速検査

これらすべての検査を行う必要はなく、医師が診察を行い必要と判断した検査のみ行います。

【参考資料】National Heart, Lung, and Blood Institute「PNEUMONIA」
https://www.nhlbi.nih.gov/health/pneumonia/diagnosis

3−2.肺炎の治療

推定される起因菌やウイルスを想定した、薬物治療が選択されます。

処方された薬は、必ずきちんと服用してください。

消化に良い物を食べ、水分摂取をこまめに行い、安静に過ごしましょう。

4. 「歯磨き」で肺炎予防


しっかり歯磨きを行うことで、誤嚥性肺炎の予防に効果があります。

歯科医師や歯科衛生士による専門的な口腔ケアを行った場合、肺炎の発症率や死亡率が軽減できたという研究結果が報告されています。

また、口腔ケアを行うことで、飲み込む機能が良くなったり、むせ込む機能が良くなったりすることも確認されています。

しかし、毎日専門的な口腔ケアを受けることは難しいです。

そのため、日常の中で歯磨きをしっかり行うことでも効果はあります。

口の中を清潔に保つことが重要です。

寝たきりの人の歯磨きは、誤嚥しにくい体位をとり、歯磨きによる誤嚥を防ぐように行いましょう。

【参考情報】『要介護者への口腔ケア』日本歯科医師会
https://www.jda.or.jp/park/dentistwork/carerecipients.html#3

5. おわりに

肺炎は、さまざまな原因で引き起こされる病気です。

日本人の死因第5位に入るほどの怖い病気であり、注意しなければならない病気といえます。

しかし、ワクチンや歯磨きで予防できる肺炎もあります。

肺炎のリスクが高い方や重症化リスクがある方は、積極的に肺炎予防を行っていきましょう。