睡眠時無呼吸症候群と糖尿病の関係・受診の目安を解説
糖尿病があり、いびきや日中の眠気、寝ても疲れが取れない状態が続くときは、睡眠時無呼吸症候群が関係している場合があります。
睡眠時無呼吸症候群と糖尿病には、肥満などの共通する背景に加え、睡眠中の呼吸の乱れを通じた関連も指摘されています。
この記事では、糖尿病がある方が確認したい症状や受診の目安、検査・治療、相談前に整理しておきたい情報を解説します。
1. 睡眠時無呼吸症候群と糖尿病の関係

ここでは、睡眠時無呼吸症候群と糖尿病がどのように関係するのかを、睡眠中の変化と生活習慣の両面から解説します。
1-1. 睡眠時無呼吸症候群と血糖への影響
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が繰り返し止まったり浅くなったりする病気です。
なかでも多いのが、眠っている間にのどの空気の通り道が狭くなる「閉塞性睡眠時無呼吸」です。
呼吸が止まると血液中の酸素が低下し、再び呼吸が始まる過程で体が何度も刺激を受けます。その結果、交感神経が活発になることや、炎症、インスリン抵抗性などが生じる可能性が指摘されています。
インスリン抵抗性とは、血糖値を下げるインスリンが効きにくくなった状態のことです。
そのため、すでに糖尿病の治療を受けている方で、いびきや無呼吸などがみられる場合には、「糖尿病とは別の問題」と切り離さず、睡眠の状態にも目を向けることが大切です。
1-2. 睡眠不足と生活習慣
睡眠時無呼吸症候群では、睡眠時間を確保していても、寝ている間に呼吸が何度も止まったり浅くなったりします。その結果、眠りが浅くなり、十分に寝たつもりでも「寝たのに疲れが取れない」と感じやすくなります。
日中の眠気や疲れが強いと、仕事や家事に加え、食事や運動といった毎日の習慣にも影響が出るかもしれません。
また、睡眠中の呼吸の乱れは、自律神経やホルモン分泌にも影響し、糖代謝と関係する可能性が指摘されています。糖尿病の治療を続けるうえでも、睡眠の状態は確認したい点の一つです。
【参考情報】『睡眠と生活習慣病との深い関係』健康日本21アクション支援システム
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-02-008.html
1-3. 糖尿病管理と睡眠の変化

糖尿病の治療中は、血糖値やHbA1cだけでなく、最近の睡眠状態に変化がないか確認してみましょう。
※HbA1cとは、過去1〜2か月程度の血糖値の平均的な状態を示す指標です。
たとえば、次のような変化がないか振り返ってみてください。
・いびきの増加
以前はいびきを指摘されなかったのに、最近になって増えている
・日中の眠気
睡眠時間は変わらないのに、昼間に眠くなることが増えている
・体重の変化
体重が増えてから、いびきが強くなった
さらに、肥満は2型糖尿病と閉塞性睡眠時無呼吸の双方と関係するため、体重や腹囲の変化も睡眠症状と合わせて振り返るとよいでしょう。
2. 睡眠時無呼吸症候群の主な症状

睡眠時無呼吸症候群は、本人が眠っている間に症状が起こるため、自分では気づきにくい病気です。夜間と日中の両方から変化を確認しましょう。
2-1. いびきと呼吸停止
次のような様子がみられる場合は、睡眠中の呼吸状態を確認するきっかけになります。
・ほぼ毎晩のように大きないびきをかく
・いびきの途中で呼吸が止まる
・呼吸が止まった後に大きく息をする
・苦しそうに呼吸をしている
本人には自覚がない場合もあるため、家族やパートナーからの情報は重要となるでしょう。
また、いびきは必ずしも大きな音で現れるとは限りません。
特に女性では、いびきが目立ちにくかったり、日中の強い眠気がみられなかったりして、睡眠時無呼吸症候群に気づきにくい場合があります。
「いびきはそれほど大きくないから大丈夫」と判断せず、睡眠中の呼吸や日中の体調もあわせて確認しましょう。
しかし、いびきがあるだけで睡眠時無呼吸症候群と決まるわけではありません。
鼻づまりや飲酒などによって、一時的にいびきをかく場合もあります。
2-2. 夜間の睡眠の乱れ
睡眠時無呼吸症候群では、本人が「呼吸が止まった」と自覚していなくても、夜中に何度も目が覚めることがあります。
ほかにも、次のような変化がみられる場合があります。
・夜中に何度も目が覚める
・朝に口やのどが乾いている
・十分に眠った感じがしない
・起床時に頭痛がある
これらの変化が続いている場合は、睡眠時無呼吸症候群を疑う際の手がかりになります。
2-3. 日中の眠気と集中力低下
睡眠時無呼吸症候群では、夜間に睡眠が繰り返し分断されるため、十分な時間眠っていても日中に眠気が残る場合があります。
「会議中に眠くなる」「電車で座るとすぐ寝てしまう」「仕事や家事に集中しにくくなった」「休日に長く寝ても疲労感が残る」といった状態が続いていないか振り返ってみましょう。
特に、運転中に眠気を感じる場合は注意が必要です。
強い眠気がある状態での運転は避け、安全を優先してください。
睡眠時無呼吸症候群による日中の眠気は交通事故にも関係するため、軽く考えないことが大切です。
【参考情報】『昼間の眠気 – 睡眠不足だけではなく睡眠・覚醒障害にも注意が必要』 健康日本21アクション支援システム
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-02-002
3. 糖尿病がある方の受診の目安

いびきだけで睡眠時無呼吸症候群と判断することはできません。
ただし、睡眠中の無呼吸を指摘された場合や、日中の強い眠気など生活への影響がみられる場合は、医療機関への相談を検討しましょう。
3-1. いびき・無呼吸の指摘
睡眠中の無呼吸は、本人が眠っているため、自覚だけでは気づきにくい症状です。家族やパートナーが、いびきが続いた後に急に静かになり、しばらくして大きく息を吸う、苦しそうに呼吸を再開するといった様子を繰り返し見ている場合は、睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりしている可能性があります。
こうした呼吸の乱れが続くと、本人に記憶がなくても眠りが細かく途切れ、十分な休息をとりにくくなります。日中の眠気が目立たなくても、無呼吸を繰り返し指摘される場合は、睡眠中の呼吸状態を調べる検査について相談しましょう。
受診時には、無呼吸に気づいた時期や頻度に加え、呼吸が止まった後の様子、朝の頭痛や日中の眠気の有無を伝えると、診察や検査の判断に役立ちます。
【参考情報】『Q15. 夜、呼吸、いびきが止まると言われました。』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q15.html
3-2. 睡眠の質の低下
夜間の目覚めや熟睡感の低下が続き、日中の眠気や集中のしにくさによって、仕事や家事に支障が出ている場合は、医療機関への相談を検討しましょう。
睡眠時間の長さだけでは判断できないため、日常生活への影響が受診の目安になります。
特に「7時間程度寝ているのに休んだ感じがしない」など、睡眠時間と翌日の体調が合わない場合には、睡眠の「長さ」だけでなく「質」に注目してみましょう。
寝る前の飲酒や鼻づまり、睡眠時間の不規則さなども、いびきや睡眠の状態に影響することがあります。
どのような日に症状が強いのかも記録しておくといいでしょう。
3-3. 強い眠気・疲労感
日中の眠気だけでなく、「体が重い」「集中できない」「仕事の能率が落ちた」といった疲労感が続く場合も確認が必要です。
ただし、疲労感やだるさは睡眠時無呼吸症候群だけでみられる症状ではありません。糖尿病でも、血糖値が高い状態が続いたときに、疲れやすさやだるさがみられることがあります。
いびきや無呼吸の指摘、日中の眠気、血糖値の変化などをあわせて医師に伝えましょう。
4. 呼吸器内科での診察・検査・治療

呼吸器内科では、睡眠中の症状だけでなく、日中の体調や持病、服薬状況などを確認したうえで、必要な検査が検討されます。
4-1. 症状・生活習慣の確認
診察では、睡眠中の症状だけでなく、普段の生活や持病についても確認します。
・いびきや無呼吸
・日中の眠気や疲労感
・睡眠時間
・体重の変化
・生活習慣
・持病
糖尿病がある場合は、現在治療を受けていることも医師に伝えることが大切です。
4-2. 睡眠時無呼吸症候群の検査
睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、睡眠中の呼吸状態を調べる検査を行います。自宅で機器を装着して呼吸や血液中の酸素の状態などを調べる簡易検査(アプノモニター)や、より詳しく睡眠の状態を確認する睡眠ポリグラフ検査(PSG)があります。
検査では、睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりする回数などを確認し、睡眠時無呼吸症候群の有無や重症度を評価します。どの検査を行うかは、症状や持病などを踏まえて検討されます。
4-3. 睡眠時無呼吸症候群の治療
睡眠時無呼吸症候群の治療は、重症度や症状、合併している病気などに応じて検討されます。
代表的な治療がCPAP(シーパップ・持続陽圧呼吸療法)です。
睡眠中にマスクから空気を送り、気道がふさがるのを防ぎます。
ほかにも、下あごを前方に固定する口腔内装置(マウスピース)や、肥満がある場合の減量、睡眠時の体位の工夫などが選択肢になることがあります。
気道が狭くなる原因や重症度などによっては、手術が検討される場合もあります。
糖尿病があるからといって、必ずCPAPが必要になるわけではありません。睡眠時無呼吸症候群の重症度や症状、糖尿病を含む合併症などを確認し、一人ひとりの状態に合わせて治療方法を検討します。
5. 受診前に確認したい情報

睡眠時無呼吸症候群について相談するときは、自分で分かる範囲の情報を整理しておくと、睡眠の状態をより具体的に伝えやすくなります。
5-1. いびき・睡眠中の様子
まず確認したいのが、本人には分かりにくい睡眠中の様子です。
家族やパートナーに、
・いびきをかいているか\
・毎晩なのか、ときどきなのか\
・途中で呼吸が止まっていないか\
・息苦しそうに呼吸していないか\
・寝返りが多くないか
などを聞いてみましょう。
「いつごろから変わったか」も重要です。数か月前からいびきが強くなった、体重が増えてから指摘されるようになったなど、変化の時期が分かれば伝えてください。
5-2. 日中の症状・生活への影響
次に、睡眠の問題が日中にどの程度影響しているか整理します。
起床時の頭痛やだるさ、日中の眠気、集中力低下、居眠りの頻度などを振り返ってみましょう。
特に、「仕事中に眠ってしまう」「運転中にも眠気を感じる」など安全に関わる症状は重要な情報です。
また、就寝時間と起床時間、夜中に目が覚める回数などを数日から1週間ほど記録しておくと、自分では気づいていなかった睡眠パターンが見えやすくなります。
5-3. 糖尿病の治療・服薬状況
糖尿病がある方は、受診時に現在の治療内容が分かるよう、次の情報を整理しておきましょう。
・使用している薬
飲み薬やインスリンなどの名前の確認
・血糖値
最近測定した血糖値が分かれば記録しておく
・HbA1c(血糖値の平均的な状態を示す指標)
最近の値が分かれば確認しておく
・お薬手帳
使用している薬をまとめて確認できるため、持参するとよい
・夜間の症状
冷や汗、動悸、手の震えなどがある場合は、症状が出た時間帯や、そのときの血糖値が分かれば記録しておく
夜間に冷や汗、動悸、手の震えなどがある場合は、低血糖が関係していることもあります。低血糖の起こりやすさは、使用している糖尿病の薬の種類や、食事・運動の状況によって異なります。
そのため、自己判断で薬を減量・中止せず、症状が出た時間帯や血糖値が分かる場合は記録し、受診時に医師へ伝えましょう。
【参考情報】『低血糖』糖尿病情報センター
https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/040/050/05.html
6. おわりに
睡眠時無呼吸症候群と糖尿病には関連があり、糖尿病がある方で大きないびき、睡眠中の呼吸停止、熟睡感の低下、日中の強い眠気などがみられる場合は、睡眠の状態にも目を向けることが大切です。
ただし、眠気や夜間の目覚めには低血糖など別の原因が隠れている場合もあります。睡眠中の様子、日中の症状、糖尿病の治療状況を整理し、気になる変化が続く場合には医療機関で相談しましょう。
以下の症状がある方は、早めの受診をおすすめします
- 家族にいびきや呼吸の止まりを指摘されたことがある
- 日中に強い眠気を感じる
- 朝起きたときに頭痛や口の渇きがある
- 十分寝ているのに疲れがとれない
- 夜中に何度も目が覚める
当てはまる項目がある方は、睡眠時無呼吸症候群の検査を受けてみませんか?
