朝の咳と、夜の咳の違いとは
「朝方、咳で目が覚める」「夜、咳でなかなか寝付けない」
このように咳が出ているといっても、咳が出るタイミングが決まっていることがあります。
それは、病気によって咳が出るタイミングが異なり、病気を見分けるポイントにもなります。
今回の記事では、朝と夜で咳が出るタイミングが違う病気について詳しく解説します。
咳でお困りの方は、参考にしてみてください。
1.早朝の咳が気になる場合
早朝の咳は、気管支喘息の特徴です。
気管支喘息では、夜間や早朝に咳が悪化しやすく、喘鳴と呼ばれるゼーゼー・ヒューヒューと音がする呼吸を伴うこともあります。
喘息症状の特徴は以下のようなものがあります。
・ゼーゼー・ヒューヒューという喘鳴(ぜんめい)がきかれる
・激しい咳が続くと呼吸困難を起こすことがある
・症状が繰り返される
・夜間や早朝に症状が出やすい
・タバコの煙やハウスダスト、冷気などがきっかけで症状が誘発される
・台風や季節の変わり目、天気の不安定さなどで症状が出やすい
また、夜間は副交感神経(リラックスしている時に働く自律神経)が優位となり、日中より気道が狭くなります。
そのような状態で、早朝に冷えた空気を吸い込むと、刺激となり咳の症状が出やすくなります。
気管支喘息の特徴を伴い、夜間や早朝に咳がでる場合には、気管支喘息の可能性がありますので早めに呼吸器専門医に相談しましょう。
【参考情報】『もしかしてぜん息?と思っている方へ』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/case/check.html
2.日中の咳が気になる場合
日中の咳が気になる場合は、日中の活動に関連して咳が出るのが特徴です。
この場合、以下のような病気が考えられます。
・COPD(慢性閉塞性肺疾患)
・慢性気管支炎
・運動誘発性喘息
・アトピー性咳嗽
・副鼻腔炎
それぞれの病気の特徴を解説します。
<COPD(慢性閉塞性肺疾患)>
主に長期間の喫煙が原因で起こる肺の病気です。
運動などの動作によって咳・痰が増え、息苦しさを感じるという特徴があります。
たとえば、「階段や坂道をのぼったときに息が切れて咳が出る」というような状態です。
悪化すると、日常生活の動きでも息切れや息苦しさを感じるでしょう。
【参考情報】『COPD (慢性閉塞性肺疾患)』東京都保健医療局
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kensui/copd/
<慢性気管支炎>
咳や痰が長期間続く病気です。咳や痰、喘鳴が特徴的な症状としてあらわれます。
喫煙は大きく関係していますが、そのほかアレルギーや受動喫煙など、環境的な要因も影響し、気道に炎症が起こり症状が持続します。
【受動喫煙・・・本人は喫煙しなくても身の回りのたばこの煙を吸わされてしまうこと】
<運動誘発性喘息>
運動をきっかけに、喘息発作が起こることを運動誘発性喘息といいます。
症状は、咳や息苦しさ、喘鳴など、喘息発作と同じ症状があらわれます。
激しい運動や長時間の運動は、運動誘発性喘息を起こしやすく、そのほか普段の喘息のコントロール状況や空気の状態によっても発作を起こしやすいでしょう。
歩行や水泳では起こりにくく、ランニングは最も発作を起こしやすいとされています。
普段の喘息のコントロール状況を良くしておくと、運動による発作が起きにくくなるでしょう。
【参考情報】Mayo Clinic “Exercise-induced asthma
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/exercise-induced-asthma/symptoms-causes/syc-20372300
<アトピー性咳嗽>
アレルギーが原因で、気道に炎症が起こり激しい咳が出るのが特徴です。
喉の違和感やイガイガ感があり、乾いた咳が出ます。
日常の活動時、アレルゲン(ホコリ、花粉など)に接する機会が増えると、悪化するケースがあります。
<副鼻腔炎>
副鼻腔炎は鼻の病気という印象を持っている方も多いと思いますが、副鼻腔炎が原因で咳が止まらない場合があります。
副鼻腔炎は、主に鼻水や鼻詰まり、頭痛、においがわかりづらいなどの症状です。
鼻水がドロッとしているため、喉におちてくると咳や痰の原因となります。
副鼻腔炎は、中耳炎の原因にもなるため、副鼻腔炎を疑う場合、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
【参考情報】『耳鼻咽喉科・頭頸部外科が扱う代表的な病気』日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
https://www.jibika.or.jp/modules/disease/index.php?content_id=21
3.夜中の咳が気になる場合
夜中に咳が気になる場合は、気管支喘息の可能性があります。気管支喘息では、夜間から早朝にかけて咳が悪化する傾向があります。
しかし、夜間に咳が激しいからといって、必ずしも喘息が原因とは限りません。
夜間に咳が出るのには、さまざまな理由があります。
なぜ、夜間に咳が激しく出るのか、理由を解説します。
3-1.咳が夜に激しくなる理由とは?
夜間、咳が激しくなるのには以下のような理由があります。
・自律神経の関係
・鼻水が喉に流れる
・空気の乾燥
それぞれ解説します。
<自律神経の関係>
夜は、副交感神経が優位になり、身体はリラックス状態です。
身体の緊張がゆるみ、筋肉が弛緩するため、気管支や気道が狭くなっています。
そのため、風邪をひくと、狭い気管支や気道を痰や鼻水で刺激してしまうため、咳が激しく出ます。
<鼻水が喉に流れる>
風邪や鼻炎、副鼻腔炎の人は、仰向けに寝ることで鼻水が喉の奥に流れやすくなります。
そのため、流れてきた鼻水が刺激となり咳が誘発され、激しい咳が出て「なかなか眠れない!」という状態を引き起こします。
仰向けではなく横向きやうつ伏せで寝ると、喉に鼻水が流れることを予防できるため、咳がひどい場合には試してみましょう。
また、仰向けで寝た状態で肩の下に細長く丸めたバスタオルを入れると、気道が確保され呼吸が楽になります。
<空気の乾燥>
空気の乾燥は、喉に刺激を与え、痰も出しにくくなります。
そのため、寝る前に寝室を加湿しておく、水分を摂って喉を潤すなどの対策が有効です。
4.おわりに
咳はつらい症状で、体力を消耗します。ひどい咳が続くと、腹筋が痛くなったり肋骨が折れたりするケースもあります。
原因によって咳が出やすいタイミングがあり、病気を見分けるポイントにもなります。
「どの時間帯に咳が多く出ているか」を観察し、診察の際に医師に伝えると良いでしょう。
咳が止まらない方は、早めに呼吸器内科へ受診することをおすすめします。