注意が必要!喘息と運動のおはなし
喘息患者は、運動で一時的に発作が起こる場合があります。
「喘息があるから運動してはいけない?」
「発作が怖いから運動できない」
そのように考える人もいるでしょう。
しかし、喘息の人が運動を制限する必要はありません。
注意点を理解して、自分ができる運動を把握していれば、発作をコントロールして運動をすることができます。
今回の記事では、運動で喘息発作が誘発されるメカニズムや、喘息を持っている人が運動をするときの注意点、しやすい運動を紹介します。
1.喘息患者が運動をすると?
喘息を持っている人が運動をすると、咳が出たり息苦しくなったりする場合があります。
喘息患者の気道は、発作がない状態でも炎症がくすぶっている状態です。
ダニやホコリ、花粉などのアレルゲンや、気候に対して敏感に反応します。
このような刺激がある中で運動をすると、一時的に気管支が収縮して、咳が出たり息苦しくなったりします。
ゼーゼーやヒューヒューといった喘鳴が聴かれる場合もあり、運動時には注意が必要です。
これは、「運動誘発性喘息」と呼ばれる状態で、早めに呼吸を整えれば長く続くことはほとんどありません。
運動誘発喘息が引き起こされる条件は以下のようなものがあります。
・長く続けるような強い運動
・気温や湿度が低い
・喘息のコントロールが不良
また、風邪を引いた後や気道の過敏性が亢進しているときは、発作を起こしやすい状態といえます。
運動をおこなう際に、これらのことに注意すれば、運動誘発性喘息を予防できます。
また、自分ができる運動の強さを把握しておくのも大切です。
どの程度の運動なら発作が出ないのか目安を知っておくと、発作を起こす前に休憩し、呼吸を整えることができます。
適度な運動は、心肺機能を高め、肥満や生活習慣病を予防します。
喘息の症状改善や発作の予防にも役立つため、無理のない程度でおこなう運動はおすすめです。
喘息だからといって運動することを避けるのではなく、できる範囲の適度な運動をするよう心がけましょう。
【参考情報】『運動誘発喘息とは何ですか?』山梨大学アレルギーセンター
https://yallergy.yamanashi.ac.jp/ynavi/a_id-288
【参考情報】Mayo Clinic『Exercise-induced-asthma』
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/exercise-induced-asthma/symptoms-causes/syc-20372300
2.運動をするときの注意点
まずは、運動をするためには喘息のコントロール状況が良好であることが大切です。
運動の前に、体調の確認やピークフロー値の確認をおこなっておきましょう。
運動をする15分ほど前に、短期間作用型の気管支拡張薬を吸入しておくと運動誘発性喘息の予防に効果的です。
喘息の人が運動をするときの注意点は以下の通りです。
・空気が乾燥し冷たくなる冬場は屋外での運動は注意が必要
・鼻呼吸を心がけ、冬場はマスクを着用するのも効果的
・運動の前に十分な準備運動(ウォーミングアップ)をおこなう
・一回の運動は2~3分程度にする
・運動の合間に休憩をしっかりとる
空気が乾燥し冷たい時期の屋外での運動は、気道に刺激を与える可能性が高いです。
マスクを着用することで、直接外気を吸い込むことはなく、加湿加温された状態になります。
無理に屋外での運動にこだわらず、屋内での運動に切り替えるのもおすすめです。
また、急に激しい運動をおこなうと、運動誘発性喘息を起こすだけでなく、思わぬケガにもつながります。
十分なウォーミングアップをおこない、長時間の運動は避けましょう。
2~3分程度運動をしたら休憩をとり、呼吸を整えます。
万が一、喘息発作が起きたときのために、運動時には発作止めの薬を持っていると安心です。
また、なにか運動を始める際には、主治医に相談してからおこないましょう。
【参考情報】『喘息をもつメタボリックシンドロームの方への運動療法』労働者健康福祉機構
https://www.johas.go.jp/Portals/0/data0/oshirase/pdf/reef6zensokumetabo.pdf
【参考情報】American Lung Association『Asthma and Exercise』
https://www.lung.org/lung-health-diseases/lung-disease-lookup/asthma/managing-asthma/asthma-and-exercise
3.運動で起こるかもしれない喘息発作
運動が引き金となり起こる喘息発作を「運動誘発性喘息」と呼びます。
運動をおこなうことで呼吸数が増え、気道や気管支に負担がかかります。
また、吸い込んだ空気が乾燥していたり冷たかったり、アレルゲンを含んでいたりすることで刺激となり、喘息発作が誘発されるのです。
運動誘発性喘息は軽症であれば安静にして数十分で回復しますが、中には治療薬が必要となるケースもあります。
運動誘発性喘息が起こるほど、負荷の高い運動は避けるようにしましょう。
喘息発作が起こる可能性を理解し、自分ができる範囲の運動レベルを把握しておきましょう。
4.喘息患者でもおこないやすい運動
運動誘発性喘息は、どの運動でも起こるわけではありません。
ランニングでもっとも起こりやすいとされており、歩行や水泳は起きにくい傾向といわれています。
<水泳が運動誘発喘息を起こしにくい主な理由>
・温度が高く湿度が保たれている環境
・身体を水平にしておこなう運動
・呼吸がリズミカルでゆっくり息を吐く
・適度に頸部が冷やされている
・室内では花粉や煙、ほこりが少ない
気道や気管支に刺激が少ない環境でおこなうスポーツであり、呼吸が負担になりにくいため、喘息患者に水泳はおすすめのスポーツといえるでしょう。
中には、「泳げない」「泳ぐのが苦手」というような人もいます。
そのような場合は、以下のポイントを押さえ、自分にできる運動があるか探してみましょう。
・継続して行える運動
・発作が起きにくい運動
体力がない人は、運動誘発性喘息が起こりやすくなります。
発作が起きにくい強さの運動から始め、徐々に体力に合わせ、運動の強さを強くしていきましょう。
屋外よりも屋内でおこなう運動の方が、ほこりや花粉など気道や気管支の刺激になる物質が少ないためおすすめです。
また、継続しておこなうことで運動療法としての効果があらわれやすいでしょう。
喘息患者にとって、運動は避けるものではなく、ぜひ取り入れてほしい習慣です。
あらたな運動に取り組む場合、すぐに始めるのではなく、まずは主治医に相談しましょう。
【参考情報】『気管支喘息児と運動、学校体育について』日本小児アレルギー学会
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspaci1987/15/3/15_3_263/_pdf
5.おわりに
喘息患者が運動をすると、運動誘発性喘息を起こす可能性があります。
だからといって、運動を避けるのではなく、水泳や水中ウォーキングなど発作が起きにくい運動を取り入れましょう。
運動は、心肺機能や体力の向上、肥満の予防など、さまざまなメリットがあります。
喘息患者であっても、発作を起こさない適度な運動は必要です。
運動の前には、必ず準備運動をおこない、予防的に気管支拡張薬の吸入をしておくのも、運動誘発性喘息の予防になります。
また、あらたに運動をスタートさせる人は、始める前に主治医へ相談しましょう。
喘息があるけど、どのような運動から取り組んでいいかわからないという人も、ぜひご相談ください。