呼吸器内科受診の目安~咳が止まらない・長引く病気

咳はよくある症状なので、多少コンコンと出ていても、そのうちよくなると思っているかもしれません。

しかし、長引いている場合や、「眠れない」など日常生活に支障が出ているのなら、病院を受診して原因を調べた方が安心です。

この記事では、咳が出る病気のうち代表なものをわかりやすく説明します。呼吸器内科を受診する目安も紹介するので参考にしてください。

1.呼吸器内科とは、どんな診療科なのか

呼吸器内科とは、気管支や肺など、呼吸に関する器官を専門に診る診療科です。風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症などの呼吸器感染症も扱っています。

咳に悩んでいるときに呼吸器内科を受診する目安は、次のとおりです。

・咳が「長引く」「繰り返す」「激しい」とき

・咳とともに「痰」「微熱」「息苦しさ」が続いているとき

・季節の変わり目には、毎年のように咳が長引いているとき

・病院で「喘息ではない」「様子を見ましょう」と言われたが、咳が治まらず心配なとき

これらの症状があるなら、 早めに受診しましょう。

2.呼吸器内科で扱う、咳が出る病気


呼吸器内科で扱う代表的な病気のうち、咳が長引くもの、激しいものを紹介します。

2-1.喘息

喘息とは、空気の通り道である気道が何らかの原因で炎症を起こして狭くなり、呼吸がしにくくなる病気です。

咳や息苦しさ、「ヒューヒュー」 「ゼイゼイ」という特徴的な呼吸音 (喘鳴:ぜんめい) が現れます。

咳は、夜間や明け方にかけて出ることが多く、季節の変わり目や天気が悪い時にもひどくなりがちです。

2-2.咳喘息

咳喘息は、痰のからまない空咳(からぜき)が長引く病気です。軽い咳から始まり次第に悪化する人もいれば、突然激しい咳から始まる人もいます。

喘息と同じように、夜間や早朝によく咳が出ます。たばこなどの刺激や、気温・湿度の変化をきっかけに症状がひどくなることもあります。

咳喘息の患者さんの一部は、将来的に喘息へ進展してしまうことが知られています。

2-3.気管支炎

ウイルスや細菌により気管や気管支が炎症を起こし、咳が続く病気です。咳のほか、痰や鼻水、 発熱などの症状が出ます。

大人では空咳が多いのですが、 気管支が細い子どもの場合は、症状が進行すると「ヒューヒュー」 「ゼイゼイ」という、喘息のような呼吸音が混じった咳をすることもあります。

2-4.肺炎

肺炎とは、細菌やウイルスにより、肺や肺胞周囲の組織が炎症を起こす病気です。咳のほか、発熱や呼吸困難、胸の痛みなどの症状があります。

特に高齢者は重症化するリスクが高いので、「風邪かな?」と思っても、これらの症状が現れたら早期の受診をおすすめします。

2-5.COPD(慢性閉塞性肺疾患)

COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは、長期間にわたって有害物質を吸入したことで、肺に炎症が起こる病気です。原因のほとんどは喫煙(タバコ)です。

主な症状としては、しつこい咳や息切れ、痰などがあります。軽い運動や階段の昇降などでも、すぐに息切れを起こしてしまいます。

病気が進行すると、酸素ボンベによる在宅酸素療法が必要になることもあります。

【参考情報】『慢性閉塞性肺疾患(COPD)』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/b/b-01.html

2-6.肺結核

結核菌という細菌が肺に感染して発症する病気です。咳を通して菌が広がり、人から人へとうつります。

症状は、長引く咳や痰、発熱、全身の倦怠感などですが、特に自覚症状がなく、健康診断やレントゲン検査で見つかる人も多いです。

肺結核の咳は、ただの風邪の咳とは区別が難しいです。2週間以上咳が長引いているときは、念のため病院で検査を受けておくと安心です。

2-7.肺がん

肺に発生する悪性腫瘍です。主に、肺組織そのものから発生した悪性腫瘍である原発性肺がんのことを指します。原因の多くは喫煙です。

進行すると、がんが増殖して、リンパ節や骨、脳、肝臓などに転移することもあります。

咳や痰などの症状が現れますが、これらの症状だけだと風邪とあまり変わらないので、肺がんだと気づくのは難しいでしょう。他には、胸の痛みや倦怠感、体重減少などの症状があります。

咳が2週間以上続いていたり、痰に血が混じっていたら、念のため病院を受診しましょう。

【参考情報】『肺がん』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/e/e-01.html

2-8.その他呼吸器感染症

咳は、以下のような呼吸器感染症でもよくみられる症状です。

 ・風邪
 ・インフルエンザ
 ・新型コロナウイルス感染症
 ・RSウイルス感染症
 ・マイコプラズマ肺炎

【参考情報】『Learn About Cough』American Lung Association
https://www.lung.org/lung-health-diseases/warning-signs-of-lung-disease/cough/learn-about-cough

3.呼吸器内科で行う基本的な検査


呼吸器内科で行う基本的な検査を紹介します。

3-1.胸部画像検査

肺など胸部を撮影して、異常がないかどうかを調べる検査です。

一般的にはレントゲンによる検査を行い、さらに詳しく調べる必要があるときは、CT検査を行います。

『胸部画像検査』MSD マニュアルプロフェッショナル版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%8A%E3%83%AB/05-%E8%82%BA%E7%96%BE%E6%82%A3/%E8%82%BA%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E8%A8%BA%E6%96%AD%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E6%B2%BB%E7%99%82%E6%96%B9%E6%B3%95/%E8%83%B8%E9%83%A8%E7%94%BB%E5%83%8F%E6%A4%9C%E6%9F%BB

3-2.血液検査

採血して血液に含まれている細胞や酵素、抗体などの数を数値化し、病気やアレルギーを見つけます。

呼吸器内科では、肺炎などの感染兆候を見たり、アレルギーの有無や種類を調べたりするために行います。

【参考情報】『検査結果の見方』日本予防医学協会
https://www.jpm1960.org/exam/exam06.html

4.呼吸器内科で行う専門的な検査


基本的な検査に加え、呼吸器内科では以下のような専門的な検査を行うこともあります。

4-1.呼気NO検査

吐いた空気に含まれる一酸化窒素(NO)の濃度を測定する検査です。装置についたマウスピースをくわえ、息を大きく吸い込み、一定の速さで10秒ほど息を吐き出して行います。

喘息などで気道に炎症が起こると、吐いた息の中に一酸化窒素(NO)が増えるので、濃度を測定すれば、喘息の関与する炎症の程度がある程度把握できます。

4-2.モストグラフ

どのくらい息を吐き出しにくくなっているか(呼吸抵抗)を調べる検査です。マウスピースをくわえ、鼻にクリップを装着して、普通に呼吸するだけで検査ができます。

喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などの疑いがある場合に行います。

4-3.スパイロメトリー

肺を出入りする空気の量や速度を測定する検査です。鼻をクリップでつまみ、マウスピースをくわえて呼吸をしたり、息を大きく吸ったり吐いたり、勢いよく吐き出したりして検査をします。。

この検査では、肺機能障害の有無、その障害の進行度、手術をした時に耐えられるかどうかなどを調べることができます。

5.おわりに

ただの風邪だと思ったときや、咳が出ていても症状が軽いときは、一般の内科を受診しても構いません。

しかし、2週間以上咳が続いているときや、咳が激しくて夜も眠れないほどつらいときは、咳の専門家がいる呼吸器内科で原因を調べてみましょう。

症状は軽くても咳が気になるときも、お近くの呼吸器内科を受診してみましょう。風邪など身近な呼吸器感染症も診療しています。