アトピー咳嗽の症状や検査、治療について紹介

この記事では、アトピー咳嗽の特徴や症状、検査方法、治療法についてご説明いたします。

アトピー咳嗽は、アレルギー体質の人に多くみられる慢性的な咳が出る病気です。

アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎などアレルギーがある方に多く発症します。とくに夜間や早朝に咳がひどくなることが特徴です。

喘息や咳喘息と似たような症状を示すため、症状がある場合には早めに呼吸器内科をはじめとした病院を受診し、正しい診断と治療を受けましょう。

1.アトピー咳嗽について


アトピー咳嗽は、アレルギー反応が原因で引き起こされる慢性的な咳のことです。

免疫系が特定の刺激に対して過剰に反応することで発症し、咳が主な症状となります。

アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎、花粉症などのアレルギー疾患を持つ方に多く見られます。

アトピー咳嗽は一般的に子供や年齢が若い成人に多く発症し、とくに夜間や早朝に咳がひどくなる傾向があります。

原因は明確には解明されていませんが、アレルギー性疾患が背景にあることが多いです。

アレルゲン(花粉、ダニ、カビ、ペットの毛など)に接触することがきっかけとなり、気道が過敏になることで咳が誘発されます。

冷たい空気や運動、ストレスなども咳を引き起こす要因となることがあります。

【アトピー性皮膚炎・・・外からの刺激やアレルギーの原因物質が炎症を引き起こし、かゆみを伴う湿疹がみられる皮膚疾患】

【参照文献】日本内科学会雑誌 109 巻 10 号『アトピー咳嗽/喉頭アレルギー』
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/109/10/109_2137/_pdf

◆『咳が止まらないのはなぜ?アレルギーが原因かもしれません』>>

2.アトピー咳嗽の症状


アトピー咳嗽の主な症状は、持続的な乾いた咳です。

また、患者さんによっては喉の奥がかゆくなる、むずむずするなどの違和感を感じることがあります。

喘鳴(ヒューヒューいうような呼吸音)や呼吸困難発作がないことが特徴で、乾いた咳が唯一の症状です。

エアコンの使用やタバコの煙、会話や電話などの際に喉を使うこと、運動、精神的緊張などが咳を誘発しやすくなります。

咳は通常2週間以上続き、就寝時、深夜から早朝、起床時、早朝の順に咳が多く認められ、とくに夜間や早朝に悪化することが多いです。

これらの症状はアレルギー反応による気道の過敏状態が原因と考えられます。

咳が長引くことで生活の質が低下し、日常生活に支障をきたすことがありますが、適切な診断と治療を受けることで症状の管理が可能です。

3.アトピー咳嗽の検査


それでは、アトピー咳嗽の診断に使われる検査についてご説明しましょう。

3-1.画像検査

アトピー咳嗽が疑われる場合、まずおこなわれるのが画像検査です。

画像検査ではX線検査やCTスキャンが一般的に使用されます。これにより、肺や気道の異常を確認し、ほかの病気(例えば、肺炎や肺がんなど)の可能性を排除します。

ただし、アトピー咳嗽自体では通常、画像検査で明確な異常は見られません。とくに気道の炎症や構造的な異常がないことが確認されることが多いです。

画像検査の結果が正常であっても、症状が続く場合は他の検査を組み合わせて総合的に診断を行います。

これは、ほかの潜在的な原因を見逃さないようにするためです。

3-2.血液検査

血液検査では、アレルギーの指標となるIgE値を測定します。IgE値が高い場合、アレルギー反応が関与している可能性が高いと考えられます。

また、特定のアレルゲンに対する反応を確認するためのアレルギー検査も行われることがあります。これにより、アトピー咳嗽の原因となるアレルゲンを特定することが可能です。

全身の炎症状態を示すCRP(C反応性タンパク)や白血球数の増加も確認されることがありますが、アトピー咳嗽に特異的な所見はありません。

3-3.呼吸機能検査

呼吸機能検査は、アトピー咳嗽の診断において重要な役割を果たします。一般的におこなわれるのは次のような検査です。

スパイロメトリー
呼吸量と呼吸速度を測定する検査で、気道の狭窄や肺機能の低下を確認します。アトピー咳嗽では通常、スパイロメトリーの結果に異常はみられません。

モストグラフ
気道の抵抗を測定する検査で、気道の過敏性を評価します。これにより、気道がどれほど敏感になっているかを確認しますが、喘息でも過敏性は亢進しているため、他の疾患との判別はできません。

呼気NO検査
呼気中の一酸化窒素(NO)濃度を測定する検査で、気道の炎症状態を評価します。高いNO濃度は気道の炎症を示唆し、アトピー咳嗽の診断に役立ちますが、喘息などでも上昇するため、病名の特定はできません。

◆『呼吸器内科で行う検査の種類と目的を紹介します』>>

4.アトピー咳嗽の治療


アトピー咳嗽の治療では、薬物療法と生活環境の改善を組み合わせることが必要です。症状を効果的に管理し、生活の質を向上させましょう。

薬物療法では、抗ヒスタミン薬やステロイド薬などの、主にアレルギー反応を抑える薬が用いられます。

抗ヒスタミン薬
抗ヒスタミン薬はアレルギー反応を抑制し、咳の症状を軽減します。市販薬としても販売しており、眠気を伴うものと伴わないものがあります。

ステロイド薬
内服薬や吸入薬として使用され、炎症を抑える効果があります。

吸入ステロイドは局所的に作用し、副作用が少ないため長期使用が可能です。これにより、気道の炎症を効果的に抑制し、咳の頻度や重症度を軽減することができます。

気管支拡張薬
アトピー咳嗽では、通常、気管支拡張薬は無効とされています。

このような薬物療法に加えて、生活環境の改善やアレルゲンの除去も重要な治療となります。
たとえば、家庭内のダニ対策を徹底したり、アレルゲンとなる場合ペットとの接触を制限したりすることが必要です。

花粉シーズンには外出時にマスクを着用することが有効です。アレルゲンにさらされる機会を最小限に抑えるように努めましょう。

【参照文献】アレルギー70(1).46-47.『アトピー咳嗽』
https://www.jstage.jst.go.jp/pub/pdfpreview/arerugi/70/1_70_46.jpg

5.アトピー咳嗽と似た症状の出る病気


アトピー咳嗽の症状は、喘息や咳喘息とよく似ています。ここでは、症状が似ている喘息や咳喘息についてご紹介します。

5-1.喘息

喘息は、気道が慢性的に炎症を起こし、咳や息苦しさや喘鳴を引き起こす病気です。

アトピー咳嗽とは異なり、喘鳴音(ヒューヒュー・ゼーゼーした呼吸音)が聞こえることがあります。

喘息もアレルギー体質の方に多く見られ、とくに夜間や早朝に症状が悪化する傾向があります。

喘息の治療には、吸入ステロイド薬や気管支拡張薬が一般的に使用されます。

アトピー咳嗽と喘息は症状が似ており、呼吸機能検査やアレルギー検査を通じても、区別は困難です。

喘息は長期的な管理が必要な病気なため、定期的な医師の診察と薬物治療で管理しましょう。

◆『喘息について』>>

【参考情報】Mayo Clinic “Asthma”
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/asthma/symptoms-causes/syc-20369653

5-2.咳喘息

咳喘息は、喘鳴を伴わない咳が主な症状であり、アトピー咳嗽と非常に似ています。通常、喘鳴や呼吸困難を伴わず、持続的な乾いた咳が唯一の症状です。

咳喘息の患者さんは、とくに夜間や早朝に咳がひどくなる傾向があります。

アトピー咳嗽とよく混同されることがありますが、咳喘息は気道の過敏性が主な原因となっています。

運動や冷たい空気の吸入、ストレス、喫煙、アレルゲンなどによって咳が誘発されやすくなります。症状がひどくなると、生活の質が低下し、日常生活に支障をきたすことがあります。

咳喘息は放置すると典型的な喘息へ進行する可能性があるため、早期の診断と適切な治療が重要です。

治療には、吸入ステロイド薬が主に使用されます。吸入ステロイド薬は気道の炎症を抑え、咳の症状を軽減します。

よく併用されるのは、気管支拡張薬です。気管支拡張薬により、気道を広げて呼吸を楽にし、咳を抑える効果が期待できます。

抗ヒスタミン薬やロイコトリエン受容体拮抗薬が使用されることもあり、これらの薬剤はアレルギー反応を抑えることで症状を改善します。

アトピー咳嗽と同じく、生活環境の改善も重要です。アレルゲンにさらされる機会を避けるため、家庭内の清掃を徹底し、ダニやペットの毛、花粉などのアレルゲンを取り除きましょう。禁煙やストレス管理も重要な要素です。

◆『咳喘息とはどんな病気?咳が止まらなくなる原因と治し方』>>

6.おわりに

アトピー咳嗽は、アレルギー体質の方に多く見られる慢性的な咳の症状であり、日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。

持続的な乾いた咳は夜間や早朝に悪化することが多く、睡眠不足や疲労感を引き起こすことも少なくありません。

アレルギー反応や気道の過敏性が原因で発症するため、適切な治療と生活環境の改善が重要です。

また、喘息や咳喘息は、アトピー咳嗽と非常に似た症状を持つため、正確な診断が重要です。

咳が2週間以上続いている場合は、呼吸器内科をはじめとした病院を受診しましょう。専門医による診断と治療を受けることで、症状の進行を防ぎ、より健康な生活を送ることが可能になります。

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