咳が出る時のうつ伏せの効果や影響とは

夜間の咳で眠れなくなった経験はあるでしょうか。

咳により睡眠を妨げられることで、体力も奪われ、日常生活にも影響を及ぼす可能性があります。

今回はうつ伏せなどの寝姿勢と咳の関係や、咳を落ち着かせる対処法などについてご紹介します。

風邪が治っても苦しい咳が続く人や、咳で眠れず困っている人はぜひ読んでください。

1.咳の原因


咳が出る原因となる病気には以下のようなものがあります。

1-1.呼吸器感染症

呼吸器感染症には子供から高齢の方まで幅広くかかる、風邪、インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症などがあります。

風邪はウイルス感染が原因で炎症を起こし症状が現れます。治療には症状を緩和する薬を使用し、十分な休息をとることも大切です。

おもな症状
・咳
・鼻水
・痰

インフルエンザは感染力が強く飛沫や接触感染で広がります。治療には抗ウイルス薬や症状を緩和する薬を使用します。

インフルエンザの重症化を防ぐためにはワクチン接種が有効です。可能な場合はワクチンを接種するようにしましょう。

おもな症状
・突然の発熱(通常38℃以上の高熱)
・関節痛
・咳

新型コロナウイルス感染症は飛沫、接触感染で広がります。治療には抗ウイルス薬や症状を緩和する薬を使用します。

インフルエンザと同じように重症化を防ぐため、可能な場合はワクチンを接種するようにしましょう。

おもな症状
・発熱
・咳
・頭痛

その他の咳が出る呼吸器感染症には肺炎、RSウイルス感染症、アデノウイルス感染症、結核などがあります。

◆「咳を伴うウイルス感染症の種類と具体的な対処法」>>

◆「新型コロナの咳の特徴や対処法、受診目安について解説」>>

◆「肺炎について」>>

1-2.アレルギー

ダニやほこり、カビなどのアレルギー物質が原因で咳が出る病気には、喘息や咳喘息があります。

喘息は気管支が炎症を起こした状態になり、アレルギー物質や運動などの刺激により発作が起こります。症状は激しい咳やヒューヒュー、ゼーゼーとした苦しい呼吸などです。

咳喘息は喘息と同じように気道に炎症があり、乾いた咳などが2週間以上続く病気です。喘息のようなヒューヒュー、ゼーゼーとした呼吸は現れず、呼吸機能検査も正常です。

喘息も咳喘息も夜間から明け方に咳が悪化しやすくなるため、なかなか眠れなくなることが多くあります。

◆「喘息について」>>

◆「咳喘息とはどんな病気?咳が止まらなくなる原因と治し方」>>

1-3.その他の原因

咳が出る原因は他にも様々あります。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)はタバコなどの有害物質を長期に吸入することで起こります。気管支などに炎症が起き、空気の流れが悪くなり息苦しさや咳が現れます。

◆「COPDについて」>>

副鼻腔炎は風邪などで炎症が起き、鼻の周囲にある空洞に膿が溜まる病気です。鼻水がのどに流れ込む後鼻漏により、のどが刺激され咳が出やすくなります。

心臓の病気では心機能が低下すると、心臓に溜まってしまった水分が肺にしみ出します。しみ出した水分を出すために痰が増え、咳が出るようになります。

ストレスが原因で咳が出る病気には心因性咳嗽があります。日中や緊張した時に咳が出やすいことが特徴です。

以上のように、咳が出る原因には呼吸器疾患以外にもたくさんあるため、正確な診断を受け適切な対処をすることが大切です。

2.寝姿勢と咳の関係


咳がつらいときは寝姿勢を見直してみましょう。

2-1.うつ伏せ

風邪などの時は鼻水や痰がのどを刺激することで咳が出やすくなります。

うつ伏せは鼻水がのどへ流れ込むことや痰がらみが抑えられるため、咳の軽減につながる寝姿勢になります。

2-2.仰向け

鼻水や痰以外でも気道を圧迫されることで苦しくなり、咳が出やすくなります。

仰向けになり、枕などで頭を高くし、気道の圧迫を防ぐことで咳を軽減できる場合があります。

2-3.横向き

横向きの姿勢は気道が圧迫されにくく、鼻水も流れ込みにくいため、咳が出ている時には、比較的ラクに眠れる姿勢です。

3.寝姿勢と体への影響


寝姿勢が体に与える影響には以下のようなものがあります。

3-1.うつ伏せ

うつ伏せでは舌の落ち込みによる、のどや気道の閉塞が起きにくいため、いびきや睡眠時無呼吸症候群のリスクを軽減することができます。

新型コロナウイルス感染症では、本来の肺の役割となる換気機能の回復が見込める、腹臥位(うつ伏せ)療法が取り入れられることがあります。

うつ伏せはリラックス効果も得られますが、首や腰に負担をかける姿勢です。タオルやクッションで適度に調整を行いながら眠るようにしましょう。

【参考情報】『新型コロナウイルス感染症の対応について』日本理学療法士協会
https://www.japanpt.or.jp/covid-19/

3-2.仰向け

仰向けは重力により舌が落ち込むため、気道が塞がれやすく、いびきや睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まることがあります。

体にかかる圧が均等に分散される姿勢のため、体への負担が少なく眠ることができます。

3-3.横向き

横向きはうつ伏せと同じように、舌の落ち込みによる気道の閉塞が起きにくいため、いびきや睡眠時無呼吸症候群のリスクを軽減することができます。

仰向けよりも体を支える面積が少ないため、安定しづらく、体の片側への負担が大きくなります。体の痛みが防げるよう、枕やクッションで体を支えるなど工夫しましょう。

4.咳がつらいときの対処法


寝姿勢を工夫しても咳がつらいときは以下のような方法をお試しください。

4-1.頭を高くして寝る

頭が低い状態で寝ることで、気道が圧迫され、咳が出やすくなることがあります。

枕やクッションで頭を高くし、気道を広げ、呼吸をラクにしましょう。

4-2.温かい飲み物を摂る

寒さや冷たい空気でのどが冷えることで、気管支の粘膜が刺激を受け、咳が出やすくなります。

温かい飲み物でのどを温めたり、マフラーなど首の周りを保護できるものを着けたりし、のどを冷やさないようにしましょう。

4-3.ハチミツの摂取

ハチミツには咳を緩和するという研究があります。

咳が出るときにはハチミツをお湯に溶かして飲むことで、水分補給もでき、のども温まるのでおすすめです。

ただし、1歳未満はハチミツ摂取により乳児ボツリヌス症の危険性があるため、絶対に口に入れないようにしてください。

【参考情報】National Library of Medicine『Effect of honey, dextromethorphan, and no treatment on nocturnal cough and sleep quality for coughing children and their parents.』
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18056558/

4-4.部屋の加湿

空気が乾燥することで、のどや気管支も乾燥し、刺激を受けやすい状態となり、咳が出る原因になります。

加湿器などを使用し、湿度40~60%ほどに保ち、のどの乾燥を防ぐようにしましょう。

5.おわりに

咳が出る原因は様々ですが、うつ伏せや横向きなど寝姿勢を見直すことで、少しラクになることがあります。

仰向けでは、いびきや睡眠時無呼吸症候群のリスクが高くなるなどのデメリットもあるため、症状に合わせた適切な寝姿勢を確保することが大切です。

寝姿勢の見直しや咳を緩和する対処法を試しても、2週間以上咳が続いている場合は、呼吸器内科を受診して原因を調べましょう。

◆「睡眠時無呼吸症候群とは?」>>

◆「呼吸器内科受診の目安~咳が止まらない・長引く病気」>>