お酒を飲むと咳が止まらない。アルコール誘発喘息とは

アルコール誘発喘息とは、お酒を飲んだあとに喘息の症状を引き起こす状態のことです。

咳、呼吸困難、胸の圧迫感などの喘息特有の症状が現れます。アルコールに含有する成分や、それに伴う体内の化学反応が原因で、気道が敏感になり炎症や狭窄を引き起こします。

アルコール誘発喘息の症状は個人差が大きく、軽度から重度までさまざまな方がいます。

この記事では、アルコール誘発喘息について症状や原因、対処方法やお酒との付き合い方についてご説明いたします。

1.アルコール誘発喘息


アルコール誘発喘息について、ここからは症状と原因をご説明いたします。

1-1.症状

アルコール誘発喘息の症状は一般的な喘息発作と同じですが、アルコール摂取後に起こることが特徴です。アルコールを摂取した直後から数時間以内に現れることが多く、症状の重さは人によってさまざまです。

主な症状には以下のものがあります。

・咳
・痰
・喘鳴(息を吸う時や吐くときに聞こえるヒューヒューという音)
・呼吸の回数が増える速い呼吸
・横になると息苦しさを感じる(起坐呼吸)
・顔の色が青白い、肌の色が青ざめる(チアノーゼ)

◆『喘息について』>>

1-2.原因


アルコール誘発喘息は、アルコールが体内で代謝される過程が原因となるので、とくにアルコールに敏感な方に顕著にみられます。

アルコールを飲んだあとに起こる喘息症状は、アルコールが体内で分解される際につくられる特定の物質によるもので、呼吸器系にさまざまな影響を及ぼします。

まず、アルコールは肝臓で代謝されるときに、アセトアルデヒドという有害な中間生成物に変換されます。

アセトアルデヒドは多くの方にとって不快な反応を引き起こす原因となります。体質によりアセトアルデヒドを効率的に無害な物質に分解する酵素が少ない方は、顔の紅潮や気分の悪さといった症状が現れやすいです。

さらに、アセトアルデヒドはヒスタミンの放出を促進します。ヒスタミンは通常、アレルギー反応や炎症反応に関与する物質であり、さまざまな役割があります。

呼吸器系において、ヒスタミンは気道の炎症を引き起こし、気道の平滑筋を収縮させることで狭窄(縮小)を促します。これが喘息の症状の咳、息苦しさ、胸の圧迫感などを引き起こす原因となります。

アセトアルデヒドの分解能力が低い方は、アセトアルデヒドが体内に長時間留まり、結果としてヒスタミンが増加していきます。それによりアルコール誘発喘息を発症しやすくなります。

この反応は個人差が大きく、とくにアセトアルデヒドを効率良く分解できない方は、少量のアルコールでさえも喘息様症状を引き起こす可能性があるので注意が必要です。

さらに、アルコール誘発喘息に限らず喘息のリスク要因として、喘息と肥満の関係も指摘されています。

過度のアルコール摂取はカロリー過多につながり、肥満を引き起こす可能性があります。

肥満は、体内の炎症を増加させ、気道の反応性を高めることで、喘息のリスクを高めることが知られています。お酒が強い人も、喘息発作のリスクがあるといえるでしょう。

【参考情報】アレルギー57『アルコール誘発喘息』
https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/57/1/57_KJ00004840309/_pdf

【参考情報】National Library of Medicine『Investigation of the mechanism of alcohol-induced bronchial asthma』
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8568140/

2.飲酒で咳症状が気になる場合


お酒を飲むと咳が止まらなくなったり、咳が出るのが気になったりする場合の対処方法をご説明いたします。

2-1.呼吸器内科へ受診

アルコールを飲んで咳がでたり、長引いたりしている場合は、早めに呼吸器内科の受診を検討しましょう。

呼吸器内科では、胸部のX線撮影、肺機能検査、血液検査など、さまざまな検査を通じて咳の原因を特定します。

アルコールが原因である可能性もありますが、それ以外にも多くの可能性が考えられます。単に風邪の症状である場合や、慢性的な疾患や他の深刻な健康問題の兆候である可能性もあります。

そのほか咳の原因としては、喫煙、アレルギー、喘息、GERD(胃食道逆流症)、肺炎、結核など、さまざまです。詳しい検査をすることで、これらを除外することができます。

咳が止まらない場合は、自己判断せずに専門医の診断を受けることが最も大切です。

◆『呼吸器内科で行う検査の種類と目的を紹介します』>>

◆『肺炎について』>>

2-2.お酒の習慣を見直す

アルコールによる喘息発作が疑われる方は飲酒を控えることが大切です。アルコールを飲むことで喘息発作を引き起こすリスクを高める可能性があります。

喘息のコントロールが良好であっても、飲酒は慎重に行うべきです。

少量の飲酒であっても、喘息発作を引き起こす可能性はゼロでないため、リスクを避けるためにも可能な限り飲酒を控えることが賢明といえるでしょう。

アルコールはお酒に限らず、ケーキやゼリーといった食品、調味料や健康飲料など、さまざまな製品に含まれています。

アルコールの摂取を避けるために、製品のラベルを確認しアルコールが含まれているかどうかをチェックしましょう。

一方でお酒を飲む習慣は、ストレス発散やリラックス効果など良い点があります。

さまざまな場面でお酒はコミュニケーションを円滑にし、楽しい時間を過ごす手助けになるでしょう。

しかし、アルコールの過剰摂取はアルコール誘発喘息の原因となるのはもちろん、持病や健康状態の悪化を引き起こすことがあります。

例えば、血圧を上昇させたり、心臓病や肝臓病のリスクを高めたりすることが知られています。また、不眠の原因になったり、うつ症状を悪化させたりすることもあります。

そこで、健康を守りながら飲み会など社交の場を楽しむ方法として、ノンアルコール飲料への切り替えがおすすめです。

最近ではノンアルコールビールやノンアルコールカクテルなど種類豊富に販売されています。ノンアルコール飲料はお酒を飲む楽しさがありつつ、アルコール誘発喘息のリスクを減らす良い方法となるでしょう。

3.おわりに

お酒を飲んだあとに咳が長引いたり悪化したりする場合は、アルコール誘発喘息の可能性があります。

咳が長引く場合は、自己判断をせずに呼吸器内科などの受診を検討しましょう。呼吸器内科では咳の原因を特定する検査を行い、適切な治療をすることができます。

お酒との適切な付き合い方を見つけることも大切です。必要に応じてノンアルコール飲料への切り替えを考えましょう。

◆『呼吸器内科でわかることとは? 受診の目安と一般内科との違い』>>