気管支拡張症とはどんな病気?

気管支拡張症とは、気管支がなんらかの原因で広がってしまい、元に戻らなくなってしまう病気です。

患者は、男性より女性の方が多いといわれています。

今回の記事では、この気管支拡張症の原因や症状、治療、検査について詳しく解説します。

自覚症状がない場合もありますので、気管支拡張症の特徴を理解し、早期発見につなげましょう。

1.原因


気管支拡張症の原因は、遺伝性や先天性のものもあり、さまざまな原因によって引き起こされる病気です。

幼少期の重い肺炎や百日咳などにより肺に負担がかかったことも原因となります。

◆当院の肺炎治療について>>

結核にかかったことのある人やリウマチの人、呼吸器が弱っている人、免疫が低下している人もリスクが高い人といえるでしょう。

気道の感染や炎症を繰り返すことで、気管支の壁が壊され、その部分が弱くなります。

気管支の壁が壊された場所は、細菌やウイルスなどの感染の場となり、さらに気管支の壁にダメージを与える悪循環が生じます。

この悪循環を繰り返すことで、さらに気管支が拡張してしまうのです。

【参考文献】Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/21144-bronchiectasis

2.症状


気管支拡張症の症状は、咳や痰がメインの症状といえます。

その他の症状は、呼吸困難や喘鳴、胸痛などです。

病気が進行すると、低酸素血症や肺高血圧症による右心不全を起こし、呼吸困難を悪化させます。

拡張した気管支は、浄化作用が低下し、痰が溜まりやすい状態です。

また、気管支の壁が傷つくことで、細菌が繁殖しやすく、肺炎や気管支炎にかかりやすくなります。

拡張した気管支は、炎症に伴って血管が増えるため、血痰や喀血を起こし、場合によっては大量の喀血を起こすこともあるでしょう。

気管支拡張症が進行すると、呼吸機能が低下し、体は慢性的な酸素不足の状態になります。

その状態が続けば、肺性心(肺からの負担が原因の心不全)を起こしかねません。

【参考情報】『気管支拡張症』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/i/i-01.html

3.検査


気管支拡張症が疑われるときに行う検査では、以下のようなものがあります。

・胸部X線
・CT
・痰培養検査
・呼吸機能検査
・気管支鏡検査
・血管造影検査

気管支の拡張があるかどうか、胸部X線やCTで確認します。

感染があるか確認するため痰培養検査を行い、感染が確認できた場合は、原因菌に対する治療が必要です。

また、拡張した気管支は、血管が増えていることが考えられます。

喀血や血痰が続く場合、気管支鏡検査や血管造影検査を行い、増えた血管の状態を確認します。

血管造影検査は、大量の喀血が見られている場合に、出血部位の特定のためにも行う検査です。

すべての検査を行う必要はありませんが、医師が診察を行ったうえで、必要な検査を判断し、実施します。

◆呼吸器内科で行う検査について>>

4.治療


気管支拡張症の治療方法は、主に以下の4つの方法があります。

・薬物療法
・リハビリテーション
・酸素療法
・外科的療法

病気の状態により、治療方法を選択します。

生活の中では、定期的な診察と適切な治療の継続、呼吸器感染症の予防をすることが大切です。

4-1.薬物療法

薬物療法では、去痰薬の内服をします。

気管支の中をきれいな状態にしておくことが大切です。

また、症状や炎症を抑えるために、マクロライド系抗菌薬を長期内服する場合や、ステロイドの吸入をする場合もあります。

血痰や喀血がある場合には、止血剤の内服や点滴を行います。

止血できなければ外科的な処置が必要となる可能性もあるでしょう。

4-2.リハビリテーション

気管支拡張症の治療と並行して、呼吸リハビリテーションも行います。

呼吸リハビリテーションは、痰を出しやすくするだけでなく、呼吸筋をトレーニングして呼吸機能が低下していくことを防ぎます。

・体位排痰法(体位ドレナージ)
・呼吸筋の訓練
・リラクゼーション
・腹式呼吸や口すぼめ呼吸の訓練

このような訓練を行うことで、息苦しさが改善され、楽な呼吸ができるでしょう。

また、日常的に水分を多くとることで、痰の粘ちょう度が下がります。

日常生活の中で、こまめな水分補給は、痰を出しやすくするポイントです。

【参考情報】『呼吸器疾患のリハビリテーション治療』日本リハビリテーション医学会
https://www.jarm.or.jp/civic/rehabilitation/rehabilitation_09.html

4-3.酸素療法

呼吸の状態が悪く、呼吸困難になったり、低酸素血症になったりする場合、酸素療法を行う場合があります。

酸素療法とは、室内の空気よりも高濃度の酸素を吸入する治療法です。

一時的な酸素吸入で状態が改善する場合もありますが、慢性的に呼吸困難が生じている場合は、在宅酸素療法(HOT)を導入するケースもあります。

在宅酸素療法を行うことで、自宅での療養が可能になり、社会復帰ができる場合もあります。

【参考情報】『在宅酸素療法とは』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/copd/oxygen/01.html

4-4.外科的療法

気管支拡張症が限局していて、内科的な治療でもコントロールが難しい場合、拡張した気管支や肺の切除を検討する場合もあります。

また、血痰が続いたり大量の喀血があったりする場合、まずは内科的な治療を行いますが、止血できなければ外科的な治療の対象です。

出血している部位を特定するために血管造影を行い、気管支動脈塞栓術を行います。

5.おわりに

気管支拡張症は、感染症を繰り返すことで気管支や肺に負担がかかり、気管支が拡張してしまう病気です。

放っておくと、病状は進行し、肺の機能が低下していきます。

持続する咳や痰があり、血痰や喀血がみられる場合には、早めに医療機関を受診しましょう。

気管支拡張症がある方は、呼吸器感染症を繰り返すことで症状が悪化し、病気自体が進行してしまいます。

マスクの着用や手洗いを十分に行い、呼吸器感染症にかからないよう注意しましょう。