喘息は、定期通院がかかせません。その理由を紹介します。

喘息は、長期的な管理が必要な慢性疾患です。

症状がない時期でも、気道の炎症は続いています。そのため、定期的な通院により、症状のコントロール状態を評価し、適切な治療を継続することが重要です。

通院の頻度は患者さんの状態によって異なりますが、安定期でも月1回程度の受診が一般的です。

この記事では、定期通院での呼吸機能検査や問診、治療効果の確認など、さまざまな管理についてご説明いたします。

1. 喘息はなぜ定期的な通院が必要?


喘息は、完治が難しく長期的な治療が必要な慢性疾患です。多くの方が「症状が落ち着いたら通院しなくてもいいのでは?」と考えがちですが、実はそうではありません。

ここからは、喘息の方が定期的に通院する必要がある理由をご説明しましょう。

そのためには、まず、喘息の特徴をよく理解することが大切です。喘息は、気道の慢性的な炎症によって引き起こされます。炎症は、症状が現れていない時期でも続いています。

つまり、「今は調子が良いから大丈夫」という状態でも、実は気道の中では炎症が進行している可能性があるのです。

◆『喘息について』>>

定期的な通院の最も重要な目的は、目に見えない気道の炎症の状態を医師が確認し、適切な治療を継続することです。

医師は、患者さんの症状や検査結果を総合的に判断し、その時々の状態に合わせて最適な治療方針を立てます。

また、喘息の症状は季節や環境の変化によって変動しやすいという特徴があります。

例えば、花粉の季節や寒い冬の時期には症状が悪化しやすいです。定期的な通院により、こうした変化に対して事前に対策を立てることができます。

◆『季節の変化と喘息発作の予防』>>

さらに、治療に使われる吸入薬の正しい使用方法を身につけることも非常に重要です。

定期通院の際に、医師や看護師が吸入方法を確認し、必要に応じて指導を行うことで、治療の効果を最大限に引き出すことができます。

加えて、喘息は長期にわたって付き合っていく病気であるため、患者さんの生活習慣や環境にも注意を払う必要があります。

定期的な通院を通じて、医師とコミュニケーションを取ることで、日常生活での注意点や自己管理の方法についてアドバイスを受けることができます。

最後に、定期的な通院は喘息の重症化を防ぐうえでも重要です。

早期に症状の変化を捉え、適切な対応を取ることで、重篤な発作を予防することができます。

このように、喘息の方にとって定期的な通院は、単に薬をもらうだけの機会ではありません。ご自身の病状を正確に把握し、最適な治療を継続的に受けるための大切な機会だといえます。

症状が落ち着いているからこそ、その状態を維持するために定期的な通院が必要だと考えることが大切です。

2. 喘息ではどれくらいの間隔で通院が必要?


喘息の定期通院について、「どのくらいの頻度で病院に行けばいいの?」という疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

通院の間隔は患者さんによって大きく異なります。患者さんそれぞれの症状の程度や治療の段階、生活環境などによって医師が判断し、適切な通院間隔が決められるためです。

治療の初期段階や喘息発作を起こした直後などは、比較的頻繁な通院が必要になります。

この時期は、症状の変化を細かく観察し、治療の効果を確認しながら、最適な治療方針を見つけていく必要があるため、2週間に1回程度の通院が一般的です。

例えば、はじめて喘息と診断された方の場合、まずは2週間ごとの通院で症状の変化や薬の効果を確認します。

医師は、患者さんの症状の推移や検査結果を見ながら、薬の種類や量を調整していきます。

また、喘息発作を起こした後も、同様に頻繁な通院が必要になります。発作後は気道の状態が不安定になっていることが多いため、慎重な経過観察が重要です。

◆『段階別!喘息発作が起きた時の対処法について』>>

一方で、薬による治療効果が現れ、症状や状態が安定してきた場合は、通院の間隔を徐々に広げていくことができます。

多くの場合、1ヶ月に1回程度の通院で経過を見ていきます。ただし、これはあくまで一般的な目安です。実際の通院間隔は、医師の方針や患者さんのそれぞれの状況によって決定されます。

とくに注意していただきたいのは、通院間隔が広がったからといって、喘息が完治したわけではないという点です。

繰り返しになりますが、喘息は慢性疾患であり、症状が安定していても継続的な管理が必要です。そのため、1ヶ月に1回の通院であっても、その間の自己管理や薬の服用を適切に行うことが大切です。

◆『喘息治療のゴールについて』>>

また、季節の変わり目や、花粉の多い時期など、喘息が悪化しやすい時期には、通常よりも頻繁に通院する必要が出てくる場合もあります。

このような時期には、ご自身の症状をよく観察し、必要に応じて通院の間隔を調整することが重要です。

さらに、喘息の症状は個人差が大きいため、ほかの方と比較して通院間隔を判断するのは適切ではありません。

あくまでも、ご自身の症状と主治医の判断に基づいて、最適な通院間隔を決めていくことが大切です。

最後に、どのような間隔で通院するにせよ、決められた通院日を守ることが非常に重要です。

症状が安定しているからといって、自己判断で通院をやめてしまうと、気づかないうちに症状が悪化してしまう可能性があります。悪化してからの治療再開は、治療効果が充分に得られず、治療に難渋することも多々あります。

定期的な通院を継続して喘息を良好にコントロールし、快適な日常生活を過ごせるようにしましょう。

3. 定期的な通院時に行うことについて


前述のとおり、定期的な通院は、喘息の管理において非常に重要な役割を果たします。では、実際の通院ではどのようなことが行われるのでしょうか。

ここからは、定期通院時に行われる主な内容についてご説明いたしましょう。

まず、定期通院では必ず問診が行われます。

医師は患者さんから、前回の受診以降の症状の変化や、薬の効果、日常生活での気になる点などを聞き取ります。問診は、患者さんの状態を把握する上で非常に重要です。

例えば、「夜中に咳で目が覚めることが増えた」「運動時に息切れを感じるようになった」といった情報は、喘息のコントロール状態を判断する重要な手がかりとなります。

◆『夜に咳が止まらず眠れない時はどうすればいい?』>>

◆『注意が必要!喘息と運動のおはなし』>>

次に、さまざまな検査が行われます。

これらの検査は、目に見えないからだの変化を客観的に評価するために欠かせません。検査の内容については、事項でご説明いたします。

検査に加えて、現在の治療効果の確認も重要です。処方されている薬が適切に効果を発揮しているか、副作用は出ていないかなどを確認します。

場合によっては、薬の種類や量の調整が行われることもあります。

さらに、患者さんの生活習慣のチェックや指導も行われます。

喘息は日常生活との関わりが深い病気です。例えば、家庭や職場での環境、運動習慣、食生活なども喘息の症状に影響を与える可能性があります。

医師は患者さんの生活状況を確認し、必要に応じてアドバイスを行います。

これらの問診、検査、治療効果の確認、生活指導などを通じて、医師は患者さんの喘息の状態を総合的に評価し、最適な治療方針を決定します。

以上のように、定期通院は単に薬をもらうだけの機会ではなく、喘息と上手く付き合っていくための重要な要素です。

それでは、定期通院で行われる具体的な検査や治療について見ていきましょう。

3-1. 呼吸機能検査など

定期通院で行われる検査のなかで、最も重要なもののひとつが呼吸機能検査です。当院では、半年から1年に1回程度の頻度で呼吸機能検査を実施します。

呼吸機能検査は、喘息の症状がどの程度改善されているか、あるいは悪化していないかを客観的に評価するために行われます。

呼吸機能検査の中心となるのが、スパイロメーターという機器を使用した検査です。

スパイロメーターは、息を吸ったり吐いたりする際の空気の量や速さを測定する装置です。

スパイロメーターでは、患者さんに大きく息を吸い込んでもらい、その後できるだけ早く強く息を吐き出してもらいます。

スパイロメーターでの検査によって、以下のような重要な情報が得られます。

・1秒量(FEV1):1秒間に吐き出せる空気の量
・肺活量(FVC):最大限に吸い込んだ後、吐き出せる空気の総量
・1秒率(FEV1%):1秒量を肺活量で割った値

これらの値を定期的に測定し、経過を追うことで、喘息の状態やコントロールの程度を客観的に評価することができます。

例えば、1秒量が低下している場合は、気道の狭窄が進行している可能性があります。

スパイロメーターによる検査は痛みを伴わず、短時間で終わる簡単な検査です。

ただし、正確な結果を得るためには、患者さんの協力が必要です。検査の際には、医師や検査技師の指示に従って、できるだけ大きな声で「ハー」と息を吐き出すようにしましょう。

呼吸機能検査以外にも、喘息の状態を評価するためのさまざまな検査が行われることがあります。

例えば、アレルギー検査は重要です。喘息の多くはアレルギー性のものであるため、どのようなアレルゲン(アレルギーの原因物質)に反応するかを知ることは、治療や生活の改善に役立ちます。

血液検査では、ハウスダストや花粉、動物の毛などに対するアレルギー反応を調べます。

もし分からないことがあれば、遠慮なく医師に質問しましょう。ご自分のからだの状態を理解することは、喘息の自己管理を行ううえで非常に重要です。

このように定期的に検査を受けることで、喘息の状態の変化を早期に発見し、適切な対応を取ることができます。

たとえ症状が落ち着いていても、定期的な検査を受けることが、長期的な喘息のコントロールには重要です。

◆『呼吸器内科で行う検査の種類と目的を紹介します』>>

【参照文献】環境再生保全機構『検査と診断』
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/knowledge/test.html

【参考情報】ClevelandClinic 『Respiratory function test』
https://my.clevelandclinic.org/health/diagnostics/17966-pulmonary-function-testing

3-2. 治療、吸入確認

定期通院では、検査に加えて、現在行っている治療効果の確認や新たな治療も行われます。

喘息の治療方法は患者さんの状態によってさまざまですが、ここでは主な治療法と、特に重要な吸入薬の使用確認についてご説明しましょう。

まず、薬物療法は喘息治療の中心となります。

特に、吸入ステロイド薬は多くの患者さんに処方される基本的な治療薬です。

吸入ステロイド薬は気道の炎症を抑える効果があり、喘息の症状を長期的にコントロールするのに役立ちます。

吸入ステロイド薬以外にも、気管支を広げる効果のある薬(長時間作用性β2刺激薬など)や、アレルギー反応を抑える薬(ロイコトリエン受容体拮抗薬など)が使用されることがあります。

これらの薬は、患者さんの症状や重症度によって、単独または組み合わせて処方されます。

定期通院では、これらの薬の効果や副作用の有無を確認し、必要に応じて薬の種類や量を調整します。

また、重症の喘息や、通常の治療では十分な効果が得られない場合には、生物学的製剤と呼ばれる注射薬が用いられることがあります。注射治療は通常、医療機関で定期的に行われます。
当院の場合、生物学的製剤が必要な重症喘息の患者さんに関しましては、大学病院などの大きな病院へご紹介いたします。

【生物学的製剤・・・バイオテクノロジー(遺伝子組換え技術や細胞培養技術)を用いて製造された薬剤で、特定の分子を標的とした治療のために使われる。】

これらの薬は、喘息の原因となる特定の物質(サイトカインなど)の働きを抑えることで、症状の改善が可能です。

次に、吸入薬の使用確認についてご説明いたします。

吸入薬は喘息治療の要となる重要な薬ですが、正しく使用しないと十分な効果が得られません。そのため、定期通院では必ず吸入薬の使用方法を確認します。

医師や看護師は、患者さんに実際に吸入器を使ってもらい、以下のような点をチェックします。

・吸入器の準備:吸入器を正しく準備できているか
・呼吸のタイミング:薬を吸い込むタイミングが適切か
・吸入の強さ:十分な力で吸入できているか
・吸入後の息止め:薬が肺の奥まで届くよう、適切に息を止められているか

これらを通じて、正しい吸入方法が身についているかを確認します。もし使用方法に問題がある場合は、その場で指導を行います。

また、吸入薬の種類によっては、使用後に口腔内にカビが生えるなどの副作用が起こる可能性があります。そのため、吸入後のうがいの重要性についても説明があります。

さらに、吸入器の洗浄や保管方法についても確認します。吸入器を清潔に保つことは、効果的な治療を続けるうえで非常に重要です。

定期通院では、これらの治療や吸入確認に加えて、患者さんの生活環境や習慣についても詳しく聞き取りを行います。

例えば、家庭や職場でのアレルゲンの存在、運動習慣、ストレス状況なども喘息の症状に影響を与える可能性があるためです。

医師は、これらの情報を総合的に判断し、必要に応じて生活指導を行います。

例えば、ご家庭でのアレルゲン対策の方法や、適切な運動の仕方、ストレス管理の方法などについてのアドバイスです。

このように、定期通院では単に薬を処方するだけでなく、患者さんの体調をいろいろな面からチェックして、喘息の総合的な管理をしていきます。

そのため、定期通院は喘息と上手く付き合っていくための重要な機会です。

【参照文献】 環境再生保全機構『はじめてぜん息と診断された方へ』
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/case/first.html

4. おわりに

喘息治療の最終的な目標は、「喘息発作のない日常生活の確保」です。

つまり、喘息によって日常生活が制限されることなく、健康な方と変わらない生活を送れるようになることを目指します。

喘息治療のためには、継続的な治療とご自身での管理が欠かせません。そして、治療において重要となるのが定期的な通院です。

たとえ症状が落ち着いていても、定期的に通院し、医師のチェックを受けましょう。

定期通院を通じて、以下のようなメリットが得られます。

・喘息の状態を客観的に評価できる
・症状の変化を早期に発見し、対応できる
・最適な治療を継続的に受けられる
・正しい薬の使用方法を身につけられる
・生活習慣の改善につながるアドバイスが得られる

これらのメリットは、すべて喘息の良好なコントロールにつながります。

良好なコントロールが維持できれば、喘息発作のリスクは低下し、より快適な日常生活を送ることが可能です。

また、定期通院は医師とのコミュニケーションの機会にもなります。分からないことがあれば遠慮なく医師に相談しましょう。

喘息は長期的な管理が必要な慢性疾患です。

症状が落ち着いているからといって、自己判断で通院や治療を中断してしまうと、気づかないうちに症状が悪化してしまう可能性があります。

定期的な通院を忘れずに続けることで、喘息とうまく付き合い、充実した日常生活を送りましょう。