アレルギー性の咳。市販薬の使用と注意すること

アレルギーの咳は長引く傾向にあり、ひどくなると心身ともに疲弊してしまいます。

なかなか受診する時間がない場合、どうにか対処しようと市販薬を購入する方もいるでしょう。

今回の記事では、アレルギーの咳について詳しく解説します。

市販薬を使用するときの注意点やポイントも紹介しますので、長引く咳で市販薬の購入を考えている方は、ぜひ参考にしてください。

1. アレルギーについて


アレルギーとは、体の免疫システムが本来無害な物質(アレルゲン)に過剰に反応することを指します。

以下は、身近に存在している代表的なアレルゲンです。

・花粉
・ダニ
・ハウスダスト
・動物の毛
・食物
・薬剤

アレルゲンとなる物質が体内に入ると、免疫システムがそれを異物と認識し、ヒスタミンが放出されます。

このヒスタミンが、ヒスタミンH1受容体に作用するためにアレルギー症状があらわれます。

以下はアレルギーが原因であらわれる代表的な症状です。

・くしゃみ
・鼻水
・目のかゆみや充血
・皮膚の炎症や肌荒れ
・咳

アレルギー反応を示す物質や反応の程度は、体質や体調が大きく影響するため、個人差が大きいのが特徴です。

【参考情報】『アレルギー 総論』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-17.pdf

2.アレルギーが原因で咳がでる病気


アレルギー性の咳は、ウイルスや細菌によって出る咳とは異なるメカニズムで発生します。

気道が敏感な人は、アレルギー反応を起こすことによって気道の粘膜に炎症が起きます。

通常、発熱を伴わず、夜間や早朝に咳症状が悪化する傾向で、長引くのが特徴です。

アレルギーが原因で出る咳は、以下のようなものがあります。

・喘息
・花粉症
・アトピー咳嗽

それぞれの特徴を踏まえ、解説します。

2-1.喘息

喘息は、気道が慢性的に炎症を起こし、刺激に対して発作的に咳や呼吸困難を引き起こす病気です。

喘息の主な症状は以下の通りです。

・息苦しさや呼吸困難
・喘鳴(ヒューヒュー・ゼイゼイ)
・咳
・痰

喘息の呼吸器症状は発作性であり、一日のうちで夜間や早朝に症状が悪化しやすいのが特徴です。また、気温の変化や運動、ストレスなども発作の誘因となります。

喘息は乳幼児期に発症することが多く、成長とともに症状が改善するケースもありますが、大人になっても持続することがあります。

適切な治療を受けずに放置すると重症化し、日常生活に支障をきたす可能性が高いでしょう。

最悪の場合、喘息死につながる可能性もあるため、適切な治療を継続し、喘息症状をうまくコントロールすることが大切です。

◆『喘息について』>>

◆『朝の咳と、夜の咳の違いとは』>>

◆『注意が必要!喘息と運動のおはなし』>>

◆『喘息治療のゴールについて』>>

【参考情報】『気管支喘息』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-06.pdf

2-2.花粉症

花粉症は、特定の植物の花粉が原因でアレルギー反応を引き起こす病気です。

花粉が鼻や目、のどなどの粘膜に付着することでアレルギー反応が起こり、様々な症状を引き起こします。

以下は、花粉が原因で起こる代表的なアレルギー症状です。

・くしゃみ
・鼻水や鼻づまり
・目のかゆみや充血
・咳

そのほか、だるさや眠気、頭痛、肌荒れ、肌のかゆみなどがあらわれる人もいます。

鼻水がのどに流れ込む「後鼻漏(こうびろう)」も咳の一因です。

花粉は年中飛散していますが、春はスギやヒノキ、秋はヨモギやブタクサなどに反応を示す人が多くみられます。

◆『花粉症とは』>>

◆『花粉症で咳が出るのはなぜ?理由や予防・緩和方法など』>>

【参考情報】『的確な花粉症の治療のために』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/kafun/dl/ippan_zentai.pdf

2-3.アトピー咳嗽(がいそう)

アトピー咳嗽は、アレルギー体質の人にみられる慢性的な咳の一種で、風邪や感染症とは異なり、長期間にわたって咳が続きます。

気道がアレルゲンや刺激物に対して過敏に反応することが原因です。

アトピー咳嗽の特徴は、痰を伴わない乾いた咳が続くことです。また、運動時や会話中、冷たい空気を吸い込んだときに咳が悪化する傾向があります。

アトピー咳嗽は、アレルギーに関する白血球である「好酸球」が中枢気道の粘膜で増えることがわかっています。

アトピー性咳嗽の症状は以下の通りです。

・長引く咳(深夜から早朝に症状が出やすい)
・のどのイガイガ感

中年女性に多くみられるのも特徴のひとつです。

アレルギーが関連しているため、喘息と非常によく似ています。

ただし、喘息は気管支拡張薬が有効なのに対し、アトピー咳嗽は気管支拡張薬の効果がありません。

そのため、抗ヒスタミン薬やステロイドでの治療を行います。

◆『アトピー咳嗽の症状や検査、治療について紹介』>>

3.アレルギー以外の原因で咳がでる病気もある


咳が長引く原因は、アレルギーだけではありません。咳は、感染症や呼吸器疾患、その他の病気によってもあらわれる症状です。

これらの原因による咳がどのようなものなのか特徴を詳しく解説します。

3-1.呼吸器感染症による咳

風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症などの呼吸器感染症は、咳の原因として一般的な症状です。

これらの感染症は、ウイルスや細菌が気道に感染し、炎症を引き起こし咳が発生します。

咳以外には以下のような症状があらわれます。

・のどの痛み
・鼻水
・発熱
・倦怠感

風邪の場合、通常1~2週間で症状は改善します。インフルエンザでは、強い咳が続くだけでなく、高熱や倦怠感、関節痛なども症状の特徴です。

新型コロナウイルス感染症の場合、これらの症状以外に嗅覚・味覚障害を伴うことがあり、症状が長引くことが特徴です。

◆『知っておきたい「風邪」の基本知識と対処法』>>

◆『インフルエンザとはどんな病気?』>>

3-2.感染症以外の呼吸器疾患による咳

慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺がんなどの病気も、咳症状を引き起こします。

COPDは、慢性気管支炎や肺気腫など、気流の遮断や呼吸関連の問題を引き起こす一連の疾患の総称です。

慢性的な咳や息切れ、痰、喘鳴などが特徴的な症状で、進行すると呼吸困難を引き起こし、生命を脅かす可能性がある肺の病気です。

つぎに、肺がんは、気管支や肺胞の細胞にできた悪性腫瘍を指します。

慢性的な咳や血痰、胸の痛み、息苦しさ、体重減少などの症状がみられます。

COPDも肺がんも病気を引き起こす大きな原因は喫煙です。喫煙者本人だけでなく、受動喫煙もこれらの疾患のリスクを高くします。

理由として、有害物質を長期にわたって吸入することで、肺に刺激を与え、細い気管支に炎症を起こすからです。

症状が進行すると呼吸困難を引き起こし命に関わります。

早期発見と治療が大切ですが、まずは禁煙を行うようにしましょう。

◆『COPDについて』>>

◆『肺がんとはどんな病気?』>>

3-3.呼吸器疾患以外の病気による咳

咳が出ていると、のどや呼吸器の病気を考えがちですが、それ以外の病気が原因で咳が続く場合があります。

たとえば、心不全や胃食道逆流症(GERD)、心因性咳嗽、血管運動性鼻炎などの疾患です。

心不全では、心臓の機能が低下するために、肺や気道に液体が溜まり、咳や痰が出やすくなります。夜間に悪化する傾向で、臥位(体を寝かせた状態)にすると咳が改善するのが特徴です。

また、GERDでは、胃酸や胃の内容物が食道へ逆流することで、気管支やのどが刺激されて咳が出ます。むせるような空咳が出やすく、長引くのが特徴です。胸やけや胸の痛みがあらわれるケースもあります。

心因性咳嗽はストレスや精神的要因によって生じ、特定の場面でのみ咳が出ることが特徴です。呼吸機能に異常がなく、発熱や痰などの感染症状がない場合に考えられます。

一時的に咳止めが効くケースもありますが、根本的な解決にはなりません。心因性咳嗽では、ストレスの解消や周囲の精神的なサポート、環境の調整などが大切です。

血管運動性鼻炎は、寒暖差アレルギーとも呼ばれ、気温や湿度の変化に敏感な人に多くみられます。自律神経が乱れることで、過敏に反応し症状があらわれます。

症状はアレルギー性鼻炎と似ており、鼻水や鼻詰まり、くしゃみなどの鼻炎症状が中心です。

鼻炎症状が続くことで後鼻漏を起こし、咳がでるようになります。

【後鼻漏(こうびろう)・・・慢性副鼻腔炎や好酸球性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎患者に見られる咽頭腔への膿汁流下のこと。】

【参考情報】Mayo Clinic『Gastroesophageal reflux disease』
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/gerd/symptoms-causes/syc-20361940

4.アレルギーの咳は市販薬で治るのか


疾患によっては市販薬でアレルギーの咳を和らげることは可能です。しかし、どのような薬を選んでよいか悩むでしょう。

困ったときには薬剤師や登録販売士に相談してみるのも、市販薬購入の手助けになります。

ここでは、喘息と花粉症、アトピー咳嗽の咳では市販薬で効果が得られるのか、どのようなものを選べばよいのか、ポイントを紹介します。

ただし、市販薬で症状の改善がない場合には早めに医療機関を受診しましょう。

4-1.喘息のときは?

喘息の場合、市販薬では十分な効果が得られず、一時的な症状緩和にとどまり、根本的な治療にはなりません。

気道の炎症を抑えるためには、医師が処方する吸入ステロイド薬や気管支拡張薬が必要です。

むしろ、適切な治療を受けずに市販薬で対処し続けると、喘息の悪化につながる可能性があります。

喘息で咳が続いている場合には、市販薬ではなく医療機関の受診をおすすめします。

◆『呼吸器内科受診の目安~咳が止まらない・長引く病気』>>

4-2.花粉症のときは?

花粉症による咳には、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を含む市販薬が有効です。

ただし、症状が重い場合や市販薬で改善が乏しい場合は、医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。

また、花粉症の症状は新型コロナウイルス感染症と似ています。咳以外に発熱や倦怠感などがある場合は、感染症の可能性も考慮しましょう。

4-3.アトピー咳嗽のときは?

アトピー咳嗽では、症状や原因に対応した薬の使用が必要です。

症状が軽い場合は、抗ヒスタミン薬などの市販薬でも効果が期待できますが、症状が重い場合には吸入ステロイド薬が必要です。

市販薬で改善が見られない場合は、早めに病院を受診し、適切な治療を受けましょう。

5.おわりに

アレルギー性の咳は、長引く傾向であり、心身ともに疲れてしまいます。そのため、すぐに受診できない場合には、市販薬で対処するのもひとつの方法です。

しかし、市販薬で一時的に症状が和らぐこともありますが、病気によっては十分な効果が得られない場合があります。

処方薬でしか改善しない病気もあるので、咳が長引く場合や症状が悪化する場合は、早めに呼吸器内科を受診しましょう。