喘息の治療法とは
喘息は風邪と症状が似ている部分があるため、そのうち治るだろうと思って放置してしまい、重症になってしまうことがあります。喘息の重症度を診断してもらうことで、適切な治療や自己管理ができるようになります。
1. 喘息とは
発作が起きていない状態でも、気管支は炎症を起こしている状態です。
炎症をおこしている気管支に刺激を受けると、気管支の粘膜がむくんでしまい、咳や痰が出ます。すると、空気が通りにくくなり、「ゼーゼー、ヒューヒュー」といった喘鳴(ぜんめい)や息苦しさなどの症状が出ます。
気管支の刺激となる原因は人それぞれで、ダニ、ハウスダスト、ペットの毛、花粉、食物、気道感染(風邪など)などが考えられます。これら以外にも、運動、タバコ、ストレスなどが原因になることもあります。タバコに関しては受動喫煙でも発作が出ることがありますので、非喫煙者でも注意が必要です。
症状は夜から早朝にかけて出ることが多く、季節の変わり目にも出やすいことが特徴です。
【参考情報】Mayo Clinic”Asthma”
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/asthma/symptoms-causes/syc-20369653
2.喘息の重症度とは
喘息重症度は発作の程度、頻度、検査の数値を参考に、日本アレルギー学会のガイドラインにより4つのステップに分けられています。治療は重症度によって検討され、薬の量や組み合わせを決めます。
重症度を決めるために、検査の数値を参考にします。ここで用いる検査とは、「ピークフロー(PEF)」です。ピークフローメーターを用いて、力いっぱい息を吐き出した時の息の速さの最大値を測定し、ピークフロー値を調べます。
そして、この数値を「喘息日記」に記しておくことで、なんとなく調子が悪いというのをなくし、数値として見ることで喘息の状態を客観的に知ることができます。朝昼晩など時間を決めて、1日2~3回測定しておくと、発作の兆候をつかむことができます。値が低くなった時が発作のサインと考えられます。
1日に数回測定すると、1日のうちの変動をみることができ、気管支の状態を把握する手がかりになります。変動が大きいと気管支の状態が不安定であるといえます。成人は日内変動率20%以内が管理目標に設定されています。
重症度を決める数値の値はもう一つあり、ピークフロー値の基準値に対する測定値の割合(%PEF)です。基準値は性別、身長、年齢からピークフロー値の標準値(PEF予測値)または、今まで測定した最も高いピークフロー値(自己最良値)を用います。80%以上であれば呼吸機能が良好だといえます。
これらの2つの数値は重症度を判断するのに、必要な数値になってきます。
当院では、この約3千円程度するピークフローメーターを、初回は無償で患者さんへ提供しております。患者さんが10回近く通院されれば、診療報酬によって無償で提供した3千円をまかなうことができる一方で、途中で患者さんが通院を中断されると、当院の負担額をまかなうことがはきません。しかしながら、当院が赤字になったとしても、喘息治療では、ピークフローメーターを用いた管理が重要であると考えており、実践しております。
【参考情報】『成人ぜん息の基礎知識 自分のぜん息の状態を把握する』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/control/condition/peakflow.html
2-1.軽症間欠型
4つのステップの中でも症状が軽くて短く、週に1回未満です。夜間に症状が出ることは、月に2回未満で、日常生活に支障はありません。ピークフロー値の変動が20%未満、%PEFが80%以上です。
2-2.軽症持続型
症状が毎日ではないものの週に1回以上で、月に1回以上日常生活や睡眠が妨げられる場合もあります。夜間の症状が月に2回以上出ます。%PEFが80%以上で軽症間欠型と同じですが、ピークフロー値の変動は20~30%です。
軽症持続型の人は、症状を自覚しておらず、いつものことと見過ごしてしまう場合があります。朝になると苦しい、風邪を引いて咳だけが長引いているなどの症状を喘息と結びつけていないからだと考えられます。また、過呼吸症候群やアレルギー性鼻炎による咳など、別の病気と混同している場合もあるので注意が必要です。
【参考文献】『その咳、大丈夫?―ぜんそく最新治療と医師の本音―』灰田 美和子
2-3.中等症持続型
中等症持続型になると、症状は毎日出て、週に1回以上日常生活や睡眠が妨げられます。夜間の症状は週に1回以上出ます。ピークフロー値の変動は30%を超え、%PEFは60%以上80%未満です。
2-4.重症持続型
症状は毎日出て、日常生活にも制限があります。夜間の症状はしばしば現れ、ピークフロー値の変動は30%を超え、%PEFは60%未満になってしまいます。
【参考情報】『患者さんに接する施設の方々のためのアレルギー疾患の手引き』日本アレルギー学会
https://www.jsaweb.jp/huge/allergic_manual2022.pdf
3.重症度によってかわる喘息の治療法
喘息治療は長期間になることが多いです。喘息の治療の目標を見失わないように、長い目で治療を続けていく必要があります。
3-1.喘息治療ステップ
治療のステップは4つあります。喘息の治療開始時に症状や、検査の数値で4つの喘息治療ステップのいずれかに分かれます。
治療ステップ1は薬の量や種類が少なく、吸入ステロイド薬も低用量です。治療ステップ4になると薬の量や種類は増え、吸入ステロイド薬も高容量になります。
3-2.喘息治療の薬
喘息患者は気管支が常に炎症している状態のため、どのステップでも治療の中心は抗炎症作用の吸入ステロイド薬です。
吸入ステロイド薬は長期管理薬です。そして、気管支を広げる気管支拡張薬も長期管理薬として喘息治療に使われています。
長期管理薬は長期間使うことで、初めて効果が現れる薬ということを忘れないでください。使い始めてすぐは症状が治まるため、治ったと思い、使用をやめてしまう人がいます。ですが、気管支の炎症は続いているので、医師の指示通りに続けてください。
発作が出てしまったときに使う薬で、発作治療薬(リリーバー)があります。長期管理薬と同様に気管支を広げるのですが、効き目がすぐに現れることが特徴です。一時的な発作を抑えるものなので、治療目的の薬ではありません。発作治療薬だけに頼らず、長期管理薬も使って治療していく必要があります。
【参考情報】『成人ぜん息の基礎知識 治療』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/knowledge/medicine.html
3-3.喘息治療の目標
喘息の治療は長期になります。発作を起こさず、健康な人と変わらない生活を送ることが目標になります。
喘息は薬を使ってコントロールし、「コントロール良好」と診断されれば、薬を減らしていくこともできます。逆に「コントロール不十分」となれば、治療や薬を見直していく必要があります。
喘息日記をつけることで、客観的に体調を知ることができるため、医師に体調や状況を詳しく伝えることができます。医師はこれらの情報から患者さん一人ひとりにあった治療方針を決めていきます。喘息治療は患者さんと医師の二人三脚でおこなっていく必要があるため、信頼関係が必要です。困ったことや疑問点があれば、すぐに医師に相談してコントロール良好を目指しましょう。
4.長引く咳は早めの受診を!
咳が長引く喘息の治療について紹介しましたが、咳が続く病気は他にもあります。肺がん、肺炎、COPD、肺結核、肺炎球菌感染症などさまざまあります。
咳が出ると「ただの風邪」と思うことがほとんどだと思いますが、風邪の症状で発熱や鼻水が出て、咳だけ残ると、これらの病気の場合があります。
風邪での咳は、多くの場合が2週間もあれば落ち着きます。2週間過ぎても咳が治まらない場合は、呼吸器内科を受診し、問診や検査をすることで病気の早期発見に繋がります。
5.おわりに
喘息は長期にわたる治療になりますが、正しい薬の使い方でコントロールできる疾患です。喘息日記を活用し、自分の喘息を客観的にみることを心がけてください。
咳が2週間続くようであれば、喘息や他の病気が考えられます。早期発見のためにも、呼吸器内科を受診するようにしましょう。