呼吸器内科でわかることとは? 受診の目安と一般内科との違い
呼吸器内科という診療科を、どのように利用したらいいのか、ピンとこない人もいるのではないでしょうか。
・どのような症状で受診したらいいのか
・どんな検査や治療をするのか
・普通の内科との違いとは
この記事では、呼吸器内科の上手な利用法をくわしく説明します。長引く咳などの症状で受診を考えている人は、ぜひ参考にしてください。
1.呼吸器内科と一般内科の違い
呼吸器内科とは、気管・気管支・肺など、呼吸に関する部位や臓器を専門に診る診療科です。
一般の内科でも、風邪やインフルエンザのような呼吸器の病気を診ることはできるので、風邪かな?と思った場合は、一般の内科を受診しても構いません。
しかし、ただの風邪だと思っていたのに咳が長引いて心配な時や、咳が激しくて夜も眠れないほど苦しい時は、呼吸器内科で咳の原因を調べましょう。
呼吸器内科では、呼吸機能や気道の状態などを調べる専門的な検査を受けることができます。検査で咳の原因がわかれば、原因に合った治療を受けることができます。
その他、息切れや息苦しさ、しつこい痰や血痰が気になる時も、呼吸器内科を受診しましょう。
2.呼吸器内科で扱う主な病気
呼吸器内科で扱う病気の中で、代表的なものを紹介します。
2-1.喘息
気道に慢性的な炎症が起こって狭くなり、呼吸がしにくくなる病気です。
原因は、ダニやカビなどのアレルギーによるものと、ストレスなどアレルギー以外のものがあります。
主な症状は、激しい咳、息苦しさ、「ヒューヒュー」「ゼイゼイ」という特有の呼吸音・喘鳴(ぜんめい)です。
これらの症状は、人によりすべてが生じることもあれば、一部の症状しか呈さないこともあります。
【参考情報】『喘息(ぜんそく)』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/tobacco/yt-022.html
2-2.咳喘息
喘息とよく似た病気ですが、喘鳴や息苦しさはなく、咳だけが続く病気です。
厳密には、8週間以上咳が続いている場合に咳喘息と診断されます。しかし、長い間咳を放置すると症状が悪化する恐れがあるため、2~3週間くらい咳が続いていれば、咳喘息の治療を開始することがあります。
咳喘息を治療せずに放っておくと、一部の人は喘息へ移行してしまうこともあります。
2-3.COPD(慢性閉塞性肺疾患)
かつて慢性気管支炎や肺気腫と言われてきた病気の総称です。主に喫煙が原因で肺に炎症が起こり、慢性的な咳や痰、息切れなどの呼吸困難感が生じます。
治療では、主に気管支拡張薬を用いて症状を改善し、病気の進行を遅らせます。
【参考情報】『慢性閉塞性肺疾患(COPD)|呼吸器の病気』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/b/b-01.html
2-4.肺がん
気管支や肺の細胞が、がん化する病気です。咳や痰、息切れなどの症状がありますが、早期にはほとんど自覚できず、健康診断の際に、画像検査で発見されることも少なくありません。
治療法には、手術、抗がん剤などによる薬物治療、放射線治療があります。がんの種類や進行度、患者さんの体力などを考慮して、適した方法を選びます。
【参考情報】『肺がん』国立がん研究センター がん情報サービス
https://ganjoho.jp/public/cancer/lung/index.html
2-5.間質性肺炎
肺にある「間質」と呼ばれる肺胞の壁に、炎症や損傷が起こる病気です。
歩行、階段昇降時、入浴、食事、排泄時に息切れを感じる「労作時息切れ」という症状が現れます。また、痰を伴わない咳である「乾性咳嗽」に悩まされることもあります。
【参考情報】『Interstitial lung disease – Symptoms and causes』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/interstitial-lung-disease/symptoms-causes/syc-20353108
2-6.睡眠時無呼吸症候群
寝ている間に呼吸が数秒〜数十秒止まったり、呼吸が浅くなったりすることが原因で、体内の酸素濃度が低くなる病気です。
この病気になると、毎晩のように激しいいびきが出るので、家族など周囲の人から指摘されることも多いです。
また、自分では気づかなくても、寝ている間に呼吸が止まるたびに一瞬目が覚めてしまうので、日中眠くなることが増えます。
病気が進行すると、高血圧や脳卒中、心筋梗塞などの合併症が引き起こされるリスクが上がります。
【参考情報】『睡眠時無呼吸症候群/ SAS』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-026.html
3.呼吸器内科を受診してほしい症状
呼吸器内科の受診は、「咳」「痰」「息苦しさ」を目安に検討してください。
一般の内科でも咳や痰、息苦しさがある時に診察はできますが、症状が2週間以上続いている場合や、日常生活に支障が出ているときは、呼吸器内科で原因を調べましょう。
また、以下のような症状があれば、喘息や咳喘息の疑いがあるので、呼吸器内科で専門的な検査を受けてください。
・夜間や早朝に咳がひどくなる
・季節や天候の変化によって咳がひどくなる
・冷たい空気やタバコなどの煙、強い香りを吸うと激しく咳き込む
・何かのきっかけで咳が出ると、止まらなくなる
さらに、血が混じったような痰(血痰)が続く時や、連日のように激しいいびきをかいている時、階段の上り下りなど少しの運動でも息切れがひどい場合も受診の目安となります。
4.呼吸器内科で行われる検査
呼吸器内科で行う検査のうち、基本的な検査と専門的な検査を紹介します。
4-1.画像検査
X線(レントゲン)やCTなどで、胸部の画像を撮影する検査です。
撮影した画像を見て、異常の有無や状況、病気の段階などを確認します。
【参考情報】『画像診断』国立がん研究センター 希少がんセンター
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/rcc/treatment/diagnostic_imaging/index.html
4-2.血液検査
血液成分や免疫学的な指標などを数値化し、病気の診断や早期発見を行います。
また、アレルギーの有無や、どのような物質に対してアレルギー反応が起こるのかを調べることもできます。
4-3.呼気NO検査
マウスピースをくわえて息を吐き、吐いた息の中に含まれる一酸化炭素(NO)を測定する検査です。
喘息などにより気道に炎症が起こると、息の中に一酸化炭素(NO)が増えます。そのため、この検査の数値が高いと、喘息や咳喘息を疑います。
4-4.スパイロメトリー
マウスピースをくわえて呼吸をし、息を吸い込む力や吐き出す力、肺の容積や気道の狭さなどを調べる検査です。
喘息やCOPDの患者さんは、この検査での数値が低くなる傾向があります。
4-5.モストグラフ
気道の状態を確認する検査です。喘息やCOPDの疑いがある時に行います。
スパイロメトリーは、指示通りに呼吸を行う必要があるため、小さなお子さんには難しい検査なのですが、モストグラフは普通に呼吸をするだけで数値が測定できるので、3歳くらいから検査が可能です。
5.おわりに
呼吸器の病気は、咳など風邪のような症状から始まることが多いので、最初はただの風邪だと思ってしまうかもしれません。
そのため、市販の風邪薬や咳止め薬を使いながら、様子を見ている人もいるのではないでしょうか。
しかし、喘息や咳喘息、COPDの咳は、市販薬ではよくなりません。それどころか、かえって悪化することもあります。
長引く咳や激しい咳、しつこい痰、息苦しさなどの症状が続いていたら、慢性的な病気や重い病気が隠れている場合があるので、呼吸器内科を受診して相談してください。
肺がんや間質性肺炎などを認めた場合には、より高度な対応のできる医療機関へ紹介いたします。
専門家の診断を受け、病気に合った治療で症状を改善していきましょう。