喉がムズムズ、イガイガして咳がでるときはどうする?

喉のムズムズ、イガイガといった違和感が気になる場合は、アレルギー疾患が原因かもしれません。
アレルギー疾患には花粉症のような身近なものから、喘息のような早期に治療が必要なものまで、様々です。

この記事では、喉の違和感や咳がある場合に考えられる原因とその対処法について詳しく説明します。

1. 喉がムズムズ、イガイガ。考えられる病気


喉にムズムズやイガイガといった違和感を感じる場合、次のような原因が考えられます。
・花粉症や食物アレルギー・喘息などのアレルギー疾患
・風邪やインフルエンザ、COVID-19などの感染症
・乾燥した空気による喉粘膜の乾燥
・喫煙などによる、喉への物理的な負担
・胃食道逆流症(GERD)(胃酸の逆流による刺激)

その中でも特に多いのは、アレルギー疾患によるものです。

人間には、異物を見分けて排除する「免疫応答」という仕組みがあります。
細菌やウイルスなど害になるものだけを攻撃してくれればいいのですが、花粉やホコリなど無害なものまで過剰に攻撃してしまう反応がアレルギー反応です。

〈アレルギー反応が起こる仕組み〉
① アレルゲン(アレルギーの原因となる物質)が体内に入ると免疫システムが働き、アレルゲンに対応するIgE抗体が作られます。

② 作られたIgE抗体は、血液を通じて皮膚や粘膜に存在するマスト細胞(肥満細胞)と結合します。この状態により、マスト細胞はアレルゲンに反応しやすい状態になります。これを「感作」と呼び、アレルギー体質の人はこの感作が起こりやすい傾向にあります。

③ 感作が起こった後に再び同じアレルゲンが体内に侵入すると、マスト細胞に結合したIgE抗体がそれを認識します。この反応により、マスト細胞からヒスタミンなどの炎症を引き起こす物質が放出され、くしゃみや鼻水、喉のムズムズなどのアレルギー反応が起こります。
喉の粘膜にはアレルゲンを感知する免疫細胞が多く存在するため、吸い込んだ空気中のアレルゲンや食物を通して、炎症による喉の違和感が起こるのです。

また、喉の炎症や刺激が強くなると咳受容体が過敏になり、さらに激しい咳や痰が引き起こされて喉の違和感が強くなるといった悪循環に陥ることもあります。

【参考情報】日本アレルギー学会『アレルギーについて』
https://www.jsaweb.jp/modules/citizen_qa/index.php?content_id=1

2.咳、喉の違和感を引き起こすアレルギー疾患


咳や喉の違和感を引き起こすアレルギー疾患には次のようなものがあります。
・気管支喘息
・アレルギー性鼻炎、花粉症
・食物アレルギー
・アトピー咳嗽

2-1.気管支喘息

喘息は、気道に慢性的な炎症が起こり、咳や息苦しさ、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった特徴的な喘鳴(ぜんめい)が見られる病気です。

◆『喘息について』>>

喘息には「アレルギー性」と「非アレルギー性」があります。
両方を併発している場合もありますが、小児喘息ではアレルギー性が多く、成人喘息では非アレルギー性が多い傾向があります。

◆『小児喘息について』>>

◆『原因・子どもと大人別!喘息のタイプについて』>>

喘息患者さんの気道は慢性的な炎症によって過敏になっており、わずかな刺激にも反応しやすい状態です。
そんな過敏になった気道にアレルゲンなどの刺激が加わると、ヒスタミンやロイコトリエンなどの炎症物質が放出され、気道の平滑筋を収縮させるほか、気道粘膜の腫れや粘液(痰)の分泌が増加します。

これによって息苦しさや喉の違和感などの症状が現れます。

喘息は治療せずに放置すると、気道の線維化が進んで元に戻らない「リモデリング」や「ぜんそく死」に繋がることもある病気です。
長期にわたって通院・治療の継続が必要ですが、毎日の服薬や日常生活管理を続けることで発作が起きない状態を維持することもできます。

喉の違和感に加えて、2週間以上咳が長引く場合は早めに呼吸器内科を受診しましょう。

◆『しつこい咳。喘息?ほかの病気?喘息と間違いやすい病気』>>

◆『当院のぜんそく治療について』>>

2-2.アレルギー性鼻炎、花粉症

アレルギー性鼻炎は、吸い込んだ空気中のアレルゲンが鼻粘膜に付着することでアレルギー反応が起こり、鼻水やくしゃみなどの症状が現れる病気です。

ハウスダストなどが原因で起こるものを「通年性アレルギー性鼻炎」、花粉が原因で起こるものを「季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)」と呼びます。

◆『花粉症とは』>>

鼻の粘膜が炎症を起こし、鼻水・鼻づまりの症状がひどくなると、鼻水が咽頭(喉の奥)に流れ込むことがあります。
これを「後鼻漏(こうびろう)」と呼び、鼻水が喉に流れていくことで喉の粘膜が刺激され、ムズムズ・イガイガといった違和感が生じます。

また、咳が誘発される原因としては、鼻が詰まって口呼吸が多くなるため喉の粘膜が乾燥することや、流れ込んだ鼻水で喉の粘膜が過敏になることなどが挙げられます。

◆『咳が止まらないのはなぜ?アレルギーが原因かもしれません』>>

アレルギー性鼻炎の場合は花粉やハウスダストなどのアレルゲンを取り除き、飲み薬や噴霧薬などを使用して鼻水を抑えることで、喉の違和感や咳を緩和することができます。

【参考情報】国立成育医療センター『アレルギー性鼻炎』
https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/allergy/allergic_rhinitis.html

【参考情報】Cleveland Clinic “Allergic Rhinitis”
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/8622-allergic-rhinitis-hay-fever

2-3.食物アレルギー

食物アレルギーは、特定の食べ物に含まれるアレルゲンに対して免疫機能が過剰に反応することで起こります。

【参考情報】国立成育医療センター『食物アレルギー』
https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/allergy/food_allergy.html

即時型食物アレルギーでは次のような症状が現れます。
・蕁麻疹、皮膚のかゆみ、赤み、浮腫み、湿疹
・鼻水、鼻づまり、くしゃみ、口周りの違和感
・咳、喘鳴、呼吸困難
・嘔気、嘔吐、下痢、腹痛
・頭痛、意識障害
・血圧低下、不整脈、頻脈
短時間で全身の臓器にアレルギー反応が生じることで血圧低下や意識障害などの重篤な症状が出る「アナフィラキシーショック」が起こる場合もあります。

特定の食べ物を口にした後に咳や喉の違和感などが出る場合は、食物アレルギーが原因かもしれません。
特に卵や牛乳、小麦、魚類、そば、エビ、果物、ナッツ類、大豆などはアレルギーを起こしやすい食品です。

【参考情報】厚生労働省『食物アレルギー』
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-08.pdf

食物アレルギーが疑われる場合は、重篤な症状が出る前に専門の病院を受診しましょう。
検査でアレルゲンを特定し、食べないように気をつけることで、喉の違和感や咳などの症状を予防することができます。

2-4.アトピー咳嗽

アトピー咳嗽とは、他に明確な原因がないのに咳症状だけが長引く状態のことです。

アレルギー体質の方に多く見られますが、喘息と違って気道狭窄や喘鳴などは見られません。
気道にある咳受容体が反応しやすい状態になり、痰を伴わない乾いた咳が長期間続くのが特徴です。
喘息ほどではありませんが、気道が過敏な状態になっているため、喉の違和感を生じることもあります。

◆『アトピー咳嗽の症状や検査、治療について紹介』>>

3.咳、喉の違和感を引き起こすアレルギー以外の原因


アレルギー疾患以外で咳や喉の違和感を引き起こす原因には次のようなものがあります。

3-1.感染症による喉頭炎、扁桃炎

風邪やインフルエンザ、COVID-19、溶連菌などの感染症によって、喉が炎症を起こす場合もあります。
【COVID-19・・・新型コロナウイルス感染症】

喉頭炎は、ウイルス感染などが原因で声帯やその周辺が炎症を起こしている状態です。
喫煙による喉の負担が原因で、慢性的な炎症を起こす場合もあります。
喉頭炎では咳や喉の痛み、異物感などの症状が現れます。

扁桃炎は、溶連菌などの細菌が原因で扁桃腺(下の付け根)が炎症を起こしている状態です。
咳よりも、喉の強い痛みや腫れが強いのが特徴です。

◆『知っておきたい「風邪」の基本知識と対処法』>>

◆『インフルエンザとはどんな病気?』>>

◆『新型コロナの咳の特徴や対処法、受診目安について解説』>>

3-2.胃食道逆流症(GERD)(胃酸の逆流による刺激)

胃食道逆流症(GERD)は、胃酸が食道に逆流することにより、食道や喉の粘膜が刺激される病気です。
胃酸が喉を刺激し、ヒリヒリ、ムズムズといった喉の違和感や咳、胸やけ、声枯れなどの症状が現れます。

暴飲暴食や脂肪分の多い食事など生活習慣が原因で、下部食道括約筋(胃酸が食道に逆流するのを防ぐ筋肉)の力が弱くなって起こるため、まずは食生活を見直すことが大切です。

喘息の患者さんが胃食道逆流症を合併すると、食道に近い気道の粘膜が刺激されて喘息が悪化する場合があるため、特に注意が必要です。

3-3.その他

その他にも、次のようなことが原因で喉の違和感や咳などの症状が出ることがあります。

・乾いた空気
:乾燥した空気は気道に刺激を与え、咳や喉の違和感が起こります。
空気が乾燥している冬はもちろん、エアコンを頻繁に使用する夏も、注意が必要です。
また、加齢に伴い唾液の分泌量が低下することでも、喉が乾燥しやすくなります。
加湿器の使用やこまめな水分補給、マスクの着用などを行い、喉が乾燥するのを防ぎましょう。

・喫煙などによる、喉への物理的な負担
:タバコの煙にはたくさんの有害物質が含まれているため、気道の粘膜が刺激されて炎症を起こします。
他にも、カラオケなどで大声を出しすぎてしまうと喉に物理的な負担がかかり、咳や喉の違和感が起きる場合があります。

・心理的要因
:検査で異常が見つからない場合は、心理的要因も考えられます。
ストレスや不安感から、喉の詰まりや異物感を感じることもあります。

また、ストレスが原因の咳「心因性咳嗽」が見られる場合もあります。
心因性咳嗽は日中、緊張した状態の時に出ることが多く、乾いた咳が長く続くのが特徴です。

ストレス因子を取り除くことはもちろん、まずは病院を受診し、他に何も問題がないことを確認するのがおすすめです。

◆『咳が止まらない場合に考えられる病気と検査・治療・予防について』>>

4.喉の違和感は何科を受診する?


喉の違和感は様々な原因が考えられるため、それだけでは疾患を特定することが困難です。

次のようなことが診断の手がかりになりますので、受診する際はスムーズに伝えられるよう事前にメモしておくのがおすすめです。

・発熱や咳の有無
・症状の持続期間
・症状が悪化しやすい時間帯、状況、季節

喉の違和感に加えて、息苦しさや咳が長引くなどの症状がある場合は、呼吸器内科を受診しましょう。

◆『咳が止まらない場合、何科の病院に行くべき?』>>

5.おわりに

喉にムズムズ、イガイガといった違和感がある場合、アレルギー疾患が原因になることが多いです。
アレルギー疾患が原因になっている場合は、一刻も早く原因になっているアレルゲンを特定し、取り除くことが大切です。

アレルギー検査や呼吸機能の検査を受けることができる、専門の病院を受診することをおすすめします。