横になると咳が出るのはなぜ?原因や考えられる疾患、対処法について

「寝ようと思って横になると咳が出て眠れない」

咳は、体の大切な防御反応ですが、このような状態が続くと、体力も消耗し精神的にも疲弊してしまいます。

今回の記事では、横になると咳が出る理由や原因、考えられる疾患、対処法を解説します。

横になると咳が出て何とかしたいとお考えの方は、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。

1.横になると咳が出る理由は?


「横になると咳が出て困る」という症状に悩む方は少なくありません。

これは、気道や呼吸器の問題、消化器系の影響など、さまざまな要因が関係しています。

横になったときに咳が出やすくなる主な理由は4つです。

・気道の乾燥
・気道の圧迫
・アレルギー
・胃食道逆流症(逆流性食道炎)

それぞれ、詳しく解説します。

1-1.気道の乾燥

気道の乾燥は、咳が出やすくなる原因のひとつです。

特に、夜間は気温が下がり、空気も乾燥しやすくなるため、気道も乾燥します。

気道が乾燥すると、のどや気管支の粘膜のバリア機能が低下し過敏になります。そのため、ちょっとした刺激でも咳が出やすい状態になります。

粘膜のバリア機能が低下すると、ウイルスや細菌など異物からダメージを受けやすくなり、刺激に反応し咳が出やすくなります。

冬場にエアコンやストーブが効いた部屋は、空気の乾燥がしやすく、寝る場合には特に注意が必要です。

また、口呼吸は気道を乾燥させるため、鼻呼吸を意識すると良いでしょう。マスクの着用も気道の加湿に効果的です。

気道が乾燥しないよう対策をすることで、咳を軽減できるでしょう。

◆『夜に咳が止まらず眠れない時はどうすればいい?』>>

1-2.気道の圧迫

気道の圧迫も横になると咳が出る要因のひとつです。仰向けになると、気道が圧迫されやすくなります。

特に首まわりに脂肪がある人は、仰向けに寝たときに、舌やのどの組織が後ろに下がりやすく、圧迫されて気道が狭くなります。

気道が圧迫されると息をする際に空気が通りにくくなり、苦しくなって咳が出ます。

横向きで寝ると気道が圧迫されにくくなるため、咳が出にくい姿勢です。睡眠時無呼吸症候群(SAS)の改善にも効果的があります。

【睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、睡眠中に呼吸が止まる、または浅く・弱くなる病気です。医学的には、10秒以上呼吸が止まる「無呼吸」や、呼吸が弱くなる「低呼吸」が、1時間あたり5回以上繰り返される状態をいいます。】

また、肥満気味の方は気道が圧迫されやすいため、適切な体重を保つことも重要です。

◆『夜咳が出る時のうつ伏せの効果や影響とは』>>

1-3.アレルギー

アレルギー反応を起こして咳が出やすくなる場合があります。

寝具に含まれるハウスダストやダニ、ホコリなどがアレルゲンとなり、アレルギー反応を引き起こし咳が出るケースです。

これは、喘息やアレルギー性鼻炎など、アレルギー疾患がある方に考えられます。

アレルギーが原因の場合、寝室にいるときに咳が増え、寝室以外では症状が緩和されるのが特徴です。

寝室や寝具の環境を整えることで、咳を減らすことができます。

アレルギー症状が強い場合には、抗アレルギー薬を処方してもらうこともひとつの方法です。

◆『咳が止まらないのはなぜ?アレルギーが原因かもしれません』>>

1-4.胃食道逆流症(逆流性食道炎)

「胃食道逆流症:GERD」(非びらん性胃食道逆流症:NERD)も、横になると咳が出やすくなる原因のひとつです。

この病気は、胃液や胃の内容物が食道に逆流し、気管支やのどが刺激されて咳が出る状態を指します。

特に横になると、重力の影響で胃酸が食道に戻りやすくなるため、夜間に咳が出る原因になります。

胃食道逆流症では、むせるような咳が出やすく、長引くのが特徴です。

就寝前の食事は控え、就寝の2〜3時間前には食事を終えるようにしましょう。

胃が空っぽの状態で寝ることで、逆流を防ぐことができます。

脂っこい食べ物、酸味の強いもの、炭酸飲料、アルコール、カフェインなどは胃酸の分泌を促します。
胃酸が多く分泌されれば逆流する可能性も高まるため、できるだけ避けると良いでしょう。

寝るときには上半身を少し高くすることで、胃酸の逆流を防ぎやすくなります。

また、左向きで寝ると、消化器系の臓器への圧力が減り、食道への胃酸の逆流を防ぐといわれています。

万が一、胃食道逆流症が慢性的に続く場合には、医師に相談し、しっかり治療をおこなうことが大切です。

【参考情報】『胃食道逆流症(GERD)による咳嗽』日本内科学会雑誌第109巻第10号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/109/10/109_2124/_pdf

【参考情報】Mayo Clinic “Gastroesophageal reflux disease”
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/gerd/symptoms-causes/syc-20361940

2.横になると咳が出る場合に考えられる呼吸器疾患


咳の症状にはさまざまな原因が考えられますが、呼吸器系の病気が原因となっていることも多いです。

横になると咳が出る場合に考えられる呼吸器疾患は、主に以下のようなものがあります。

・呼吸器感染症
・喘息
・咳喘息

それぞれ詳しく解説します。

2-1.呼吸器感染症

呼吸器感染症は、ウイルスや細菌がのどや気管支、肺に感染することで発症する病気です。

代表的なものに、風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルスなどがあります。

これらの感染症では、のどや気道が炎症を起こすため、咳が出やすくなります。

特に、横になると気道に痰(たん)が溜まりやすく、咳が出やすくなるのが特徴です。

◆『知っておきたい「風邪」の基本知識と対処法』>>

◆『インフルエンザとはどんな病気?』>>

◆『新型コロナウイルス感染症の基本情報』>>

【主な症状と原因】
呼吸器感染症では、以下のような症状があらわれます。

・咳
・痰
・発熱
・喉の痛み
・鼻水
・だるさ

原因としては、ウイルスや細菌が関係しており、感染経路は主に飛沫感染や接触感染です。

症状が強く出ているときや、重症化していると横になっても咳が出るため、睡眠に影響を及ぼします。

【呼吸器感染症の対策】
呼吸器感染症が疑われる場合には、まずは症状を悪化させないための対策をしましょう。

十分な水分補給と休養をし、消化が良く栄養バランスの良い食事を心がけましょう。

また、マスクを着用し、こまめに手を洗うなど、周囲への感染拡大を防ぐことも大切です。

◆『マスクの選び方と使い方』>>

症状が強い場合は、医療機関を受診し、医師の診断を受けましょう。

2-2.喘息

喘息は、気道に慢性的な炎症があるため、過敏な状態になっており、少しの刺激で咳が出やすい病気です。

特に、夜間や早朝、季節の変わり目などに発作が起きやすいのが特徴です。

夜間は、副交感神経が働くことで気道が狭くなり、横になると咳が出やすくなります。

喘息の咳は長期化しやすく、発作が治まるまでに時間がかかることがあります。適切な治療と症状のコントロールが大切です。

【主な症状と原因】
喘息は、以下のような症状があらわれます。

・咳
・痰
・息苦しさ
・喘鳴(ぜんめい)

喘鳴は、ゼーゼーやヒューヒューした呼吸音です。細くなった気道を空気が通るため、このような呼吸音が聴かれます。

喘息は、アレルギーやストレス、温度や湿度の急激な変化、タバコの煙などが原因で発症し、これらの要因が刺激となって症状が悪化します。

【喘息の対策】
喘息が疑われる場合は、医師の診断を受け、適切な治療を受けることが大切です。

治療には、吸入薬を処方されることが一般的です。

また、家では喘息の症状を悪化させる可能性のあるアレルゲン(ホコリやダニなど)や気温差、喫煙、香水などの刺激を避けることも重要です。

万が一、布団やベッドに横になった時に咳がひどく出る場合、寝具にダニの発生やダニの死骸、糞がひそんでいる可能性があります。

寝室環境を整えるため、寝具を清潔に保つ、空気清浄機を使用する、寝室の湿度を適度に保つなどの工夫をしてみましょう。

咳がひどく横になれない場合は、枕の高さを調整して、呼吸しやすい姿勢で寝ることも効果的です。

◆『喘息について』>>

2-3.咳喘息

咳喘息は、喘鳴や息苦しさはありませんが、乾いた咳だけが長期間続くのが特徴の病気です。

特に夜間や朝方、横になったときに咳が出やすくなり、慢性的な咳に悩まされるケースが多いです。

咳喘息は、一般的な風邪の咳と似ていますが、風邪が治った後も長期間(8週間以上)続きます。

【主な症状と原因】
咳喘息の主な症状は、咳です。痰や呼吸困難は通常ありません。

気道が過敏に反応しやすい状態のため、発作的に咳が出ることが多く、特に夜間や早朝に咳がひどくなる傾向です。

アレルギーや気温差、ストレス、煙などが咳喘息の誘因となります。

また、季節の変わり目や、空気が乾燥しやすい冬場に症状が悪化することもあります。

【咳喘息の対策】
2週間以上咳が続いている場合には、医師の診察を受けましょう。治療は吸入ステロイドや気管支拡張薬を使うのが一般的です。

家でできる対策としては以下のようなものがあります。

・寝具の掃除
・加湿器の使用
・空気清浄機の使用
・寝る前に温かい飲み物を飲む

咳喘息は、放っておくと気管支喘息に移行する可能性があります。

早いうちにしっかりと治療しておくことが大切です。

3.呼吸器内科で行う検査


咳の原因を調べるために、呼吸器内科でよくおこなわれる検査について紹介します。

3-1.画像検査

呼吸器内科で咳の疾患を調べる画像検査には、胸部X線(レントゲン)検査と胸部CT検査があります。

胸部X線検査は、肺や気道の状態を把握するためにおこなわれる検査です。

撮影時間も短く体の負担が少ないため、比較的簡単な検査といえるでしょう。

胸部X線検査でもう少し詳しく検査が必要な場合、胸部CT検査がおこなわれます。

検査は、横になった状態で筒状の機械に入り、早ければ5分ほどで検査終了です。

3-2.血液検査

咳の原因がアレルギーの可能性がある場合、血液検査をおこないます。

血液に含まれる非特異的IgE抗体の量を測り、高値の場合はアレルギー体質です。

どのアレルゲンに対し反応があるかも血液検査で特定することができます。

3-3.呼吸機能検査

呼吸器内科で行う呼吸機能検査を2つ紹介します。

【スパイロメトリー】
スパイロメーターと呼ばれる機械を使って検査します。

鼻をクリップで止めて、機械に繋がるホースのマウスピースをくわえます。勢いよく息を吸ったり吐いたりし、計測します。

肺活量や1秒間にどの程度息を吐き出せるかなどを計測することができ、肺の容積や気道の状態が把握できます。

【モストグラフ】
モストグラフは、呼吸抵抗検査とも呼ばれます。

機械に繋がるホースのマウスピースをくわえ、普段と同じように呼吸をします。

スパイロメトリーより検査の負担が少ないため、お年寄りにも無理なくできる検査です。

気管支や肺胞の状態を詳しく把握でき、どの部分が狭くなっているのかまで把握できます。

スパイロメトリーとモストグラフは、喘息や咳喘息の疑いがある場合によく行われる検査です。

◆『呼吸器内科で行う検査の種類と目的を紹介します』>>

【参考情報】『Q29肺機能検査とはどのような検査法ですか?』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q29.html

4.横になると咳がでる!家でできる対処法


横になると咳が出るとき、早く何とかしたいと考える方が多いでしょう。

ここでは、家でできる対処法を紹介します。

4-1.水分摂取

のどが乾燥していると咳が出やすくなるため、こまめな水分摂取をすると効果的です。

寝る前や夜中に目が覚めたときに飲み物を飲んで、のどを潤すことで乾燥を防ぎます。

また、冷たい飲み物よりも温かい飲み物の方がのどへの刺激が少ないのでおすすめです。

生姜やハチミツが入った温かい飲み物は、体を温め抗炎症作用もあるため、風邪のひき始めに良いでしょう。

ただし、ハチミツは乳児ボツリヌス症予防のため、満1歳までは与えないでください。

4-2.部屋の加湿

部屋の湿度を適度に保つことで、のどの乾燥を防ぎ、咳予防に効果的です。

方法としては以下のようなものがあります。

・加湿器を使う
・部屋に洗濯物を干す
・カーテンに霧吹きをする

50%の湿度を目安にしましょう。

湿度が40%を下回ると、乾燥がすすみウイルスが活発に活動します。部屋の加湿は、感染対策にも効果があります。

【参考情報】『健康・快適居住環境の指針』東京都保健医療局
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kankyo/kankyo_eisei/jukankyo/indoor/kenko/sisin_bunsatuban.files/web_fuyu_sumaikata_kenkai_sisin.pdf

4-3.寝るとき頭を高くする

寝るときに頭を高くするように上半身に少し傾斜をつけると、気道が確保されやすくなり、咳を抑えることができます。

枕をいくつか重ねたり、傾斜をつけたりするのも効果的です。

ただし、頭だけを高くすると、不自然な姿勢になり、気道を圧迫する可能性があります。

肩甲骨の下あたりに細長く丸めたバスタオルを入れ、肩を高くして顎を上げる姿勢も咳予防に良い姿勢です。

4-4.アレルギー物質の除去

咳の原因がアレルギーである場合、アレルギー物質の除去は咳予防に効果的です。

アレルゲンを吸い込むと、アレルギー反応が起こり、咳がでます。

そのため、寝室の環境を整えることは大切です。

以下のような対策をおこないましょう。

・寝室の掃除
・寝具の洗濯
・空気清浄機の使用

枕カバーやシーツはこまめに洗い、ダニの繁殖を防ぐことが大切です。

アレルギー対策用の枕カバーやシーツを使用してみるのも良いでしょう。

空気清浄機でハウスダストや花粉、ペットの毛などを除去することで、室内のアレルゲンを減らすことができます。

ペットがいる場合には、ペットを寝室に入れないことも対策のひとつです。

これらの対策を行うことで、アレルギーが原因の咳を軽減できる可能性が高まります。

5. おわりに

横になると咳が出るのは、さまざまな原因が関与しています。

横になると咳が出る症状が続く場合、原因に合わせた適切な対策を取ることで、ある程度症状の改善が期待できるでしょう。

しかし、長引く咳は放置しても良いことはありません。咳が2週間以上続く場合、呼吸器内科を受診しましょう。