びまん性汎細気管支炎ってどんな病気?

厚生労働省特定疾病にも指定されているびまん性汎細気管支炎は、細気管支の慢性的な炎症により発症する呼吸器疾患の一種です。

この記事では、びまん性汎細気管支炎の原因、症状、検査と診断、治療、予後について詳しく解説します。

1. びまん性汎細気管支炎について

びまん性汎細気管支炎の原因から治療・予後について見ていきましょう。

1−1. 原因


多くのケースで慢性副鼻腔炎を合併しており、上気道から下気道(鼻から肺まで)までの広い範囲で感染しやすい体質の人が発症リスクが高いことがわかっています。

日本を中心とした東アジアで発症率が高く、欧米などでの発症はほとんどありません。

そのため、びまん性汎細気管支炎の原因に人種特異性や遺伝的要因も指摘されていますが、
未だに詳細な原因は不明で、環境因子と遺伝因子の両方が関係して発症すると考えられています。

近年、国内での罹患者の数は減ってきており、男女差もありません。

発症する可能性が高い年齢は「40〜50歳代」であるため、中年の方はとくに注意が必要でしょう。

『びまん性汎細気管支炎』一般社団法人 日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/file/disease_b02.pdf

1−2. 症状


びまん性汎細気管支炎の代表的な症状は、以下のとおりです。

● 鼻づまり
● 膿性の鼻汁・痰
● 後鼻漏(鼻水がのどを流れる感じ)
● 咳
● 息苦しさ
● チアノーゼ
● 喘鳴(呼吸した際にヒューという音が出る)
● 嗅覚の低下

気道や気管支に炎症が生じると空気の通り道が狭くなったり、分泌物が増えたりして、これらの症状が出現します。

とくに膿性の鼻汁・痰(黄〜クリーム色)は多い時で「1日200〜300ml」もあります。

また、感染を繰り返して気管支の壁が破壊されると、気管支に元来備わっている侵入した細菌を除去するための線毛も無くなってしまうため、細菌が付着しやすくなり、感染リスクが高まります。

重症化すると安静時でも息切れや息苦しさを感じ、在宅酸素療法が必要になることもあるため要注意です。

慢性副鼻腔炎(蓄膿症)を合併すると鼻づまりや後鼻漏、嗅覚の低下など鼻症状も出現します。

1−3. 検査と診断


びまん性汎細気管支炎の検査と診断は、症状や臨床的な評価が中心になります。

まず、慢性的な咳、息切れ、喘鳴、および発熱などの症状について医師から詳しく問診を受けます。

次に画像検査が行われます。
「びまん性」という名前のとおり肺全体の細気管支に炎症が生じるため、胸部X線や胸部CTスキャンなどの画像検査も確定診断をする上で重要な情報になるのです。

その他にも肺機能検査(肺活量や一秒量を測る検査)や気管支鏡検査(気管支の中をカメラで直接確認する検査)が行われ、気道の狭窄や閉塞などの異常がないか確認します。

呼吸器感染症を合併している可能性があれば、喀痰培養(感染症の原因菌を特定する検査)も行い、起因菌に最も有効な抗菌薬が選択されます。

◆『呼吸器内科で行う検査の種類と目的を紹介します』>>

1−4. 治療


びまん性汎細気管支炎の治療では、気管支の炎症や感染症の起因菌の排除を目的に、マクロライド系抗菌薬の少量長期投与が行われます。

代表的なマクロライド系抗菌薬として、エリスロマイシンやクラリスロマイシンがあります。

マクロライド系抗菌薬が少量長期投与される理由は、抗菌作用以外にも以下の効果があるからです。

● 気道分泌物の過剰抑制作用
● 炎症を抑制する保護的作用
● 免疫の調整作用

上記の効果が期待できることから長期的に抗菌薬を投与しつつ、徐々に炎症を抑えていきます。

治療中に喀痰培養で原因菌が特定されれば、その菌に最も効果的な抗菌薬の投与もでき、治療効果の向上が期待できるでしょう。

対症療法としては、痰切れを良くする薬や気管支を広げて呼吸をしやすくするための吸入療法も行われます。

また、生活習慣の見直しも治療の一環です。
とくに喫煙は気管支の炎症を助長させるため、禁煙が強く勧められます。

免疫力を維持・向上させる観点から、適度な運動や栄養バランスの取れた食事も治療を進めていく上で重要です。

『マクロライド系抗菌薬の新たな免疫調整・抗炎症作用のメカニズムを解明-薬剤耐性(AMR)対策へも寄与する成果-』慶應義塾大学医学部
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2018/4/6/180406-1.pdf

1−5. 予後


びまん性汎細気管支炎の予後は個人差があり、早期の治療と継続的なケアが鍵を握ります。

予後については、マクロライド療法の採用以前は初診時からの5年生存率が「42%」でした。
しかし、1985年以降のマクロライド療法導入により5年生存率が「91%」まで向上しました。

この他にも予後の改善には、患者自身の積極的な生活習慣の見直しも不可欠です。

禁煙や適度な運動習慣は呼吸器の残存機能を維持・向上させたり、バランスの良い食事は長期的に病原菌と闘うための体力や免疫力を高めます。

また、定期的にフォローアップしてもらいつつ、患者自らの健康状態を理解して医師と連携することが良い予後につながる第一歩と言えます。

『抗菌薬の隠された作用のメカニズムの解明~薬剤耐性対策につながる成果~』KOMPAS 慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト
https://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/medical_info/science/201812.html

2. おわりに

マクロライド系抗菌薬の長期少量投与治療が確立されて以降、びまん性汎細気管支炎の治療成績は格段に向上しました。

予後についても5年生存率が「91%」と高い水準であり、早期発見・早期治療ができれば治療効果も十分期待できます。

この記事を読んでいる方の中で、「咳が続く」「痰の切れが悪い」など呼吸系の症状に不安があれば、一度医療機関に相談してみると良いでしょう。

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