咳がでる理由はPM2.5?症状と対策
春先や秋の季節になると、咳や鼻水、目のかゆみなどの症状に悩まされる方が増えます。
これらの症状の原因として注目されているのが「PM2.5」や「黄砂」です。
近年、大気汚染が深刻化するなかで、健康を守るためには正しい知識と適切な対策が欠かせません。
この記事では、PM2.5と黄砂の違い、健康への影響、それらの対策についてご説明いたします。
1. PM2.5と黄砂の違いとは?

まずは、PM2.5と黄砂について、それぞれの特徴をご説明いたしましょう。両者は似ているようで異なる性質を持っています。
1-1. PM2.5とは
PM2.5とは、大気中に漂う直径2.5μm(マイクロメートル)以下の微細な粒子のことを指します。
「PM」は「Particulate Matter」の略称です。
PM2.5は、髪の毛の太さの三十分の1ほどしかなく、人が吸い込むと肺の奥深くまで入り込みやすく、注意が必要です。
粒子がこれほど小さいため、体内への侵入を防ぐのは難しく、呼吸器や循環器に悪影響を及ぼす恐れがあります。
花粉やホコリとは違い、マスクをしていても防ぎきれないことも理由のひとつです。目に見えないサイズだからこそ、健康への影響が懸念されています。
PM2.5の発生源は、大きく二つに分けられます。
ひとつは人間の活動によるものです。工場や建設現場から発生する粉塵、自動車の排気ガス、石炭や木材の燃焼による煙、農業活動による土ぼこりなどが挙げられます。
これらはとくに都市部や工業地帯で多く発生しています。
もうひとつは自然由来のものです。
黄砂や森林火災、火山の噴火などが該当します。これらは地理的な条件や気象状況によって発生量が左右されます。
また、PM2.5は一年中発生していますが、とくに冬から春にかけて濃度が高くなる傾向があります。
冬の時期には暖房による燃焼が増えることや、大気の状態が安定して汚染物質が滞留しやすくなるためです。
都市部や工業地帯で濃度が高くなることが多いですが、風に乗って広範囲に拡散するため、発生源から離れた地域でも高濃度になることがあります。
なお、日本では西日本や関東地方でとくに濃度が高くなる傾向があります。
また、中国大陸からの黄砂や大気汚染物質が飛来することで、春先には数値が急上昇することもあり注意が必要です。
1-2. 黄砂とは
黄砂は、中国やモンゴルなどの乾燥した砂漠地帯から飛来する鉱物粒子です。
粒子の大きさは0.5〜5μm程度なので、PM2.5よりも大きな粒子が多く含まれているのが特徴です。
黄砂の主な発生源は黄土高原や内モンゴル、ゴビ砂漠などになります。
これらの地域で強い風が吹き、乾燥した土壌が巻き上げられることで発生します。
風に乗った黄砂は、時には数千キロメートルも移動し日本を含む東アジア一帯に広がります。
黄砂を構成する成分は、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)などの自然由来の鉱物です。
しかし、長距離を移動する間に大気中の人為的な汚染物質が付着することもあり、その結果、単なる砂塵にとどまらず、健康や環境への影響が懸念されています。
黄砂の飛来の特徴は、とくに春先(2月〜5月)に多く発生しますが、秋に観測されることもあります。
この時期に発生しやすいのは、発生源となる地域が乾燥しやすく、強い風が吹きやすいこと、そして日本付近で西風が卓越するためです。
ただし、近年は気候変動の影響もあり秋にも飛来が観測されています。
影響を受けやすいのは中国東部、朝鮮半島、日本などです。日本ではとくに西日本で多く観測され、九州、中国、四国、近畿地方での影響が顕著になっています。
ただし、気象条件によっては東日本や北日本にも広がることがあります。
黄砂は視界を悪化させるだけでなく、呼吸器系への負担やアレルギー症状を引き起こす可能性もあります。
また、地面や建物に積もると清掃の手間が増えるなど、生活への影響も小さくありません。自然現象とはいえ、その影響は決して軽視できない、と言えます。
2. PM2.5はどんな症状を引き起こす?

PM2.5は人体にさまざまな症状を引き起こします。
微細な粒子が体内に侵入することで、さまざまな器官に影響を与える可能性があります。ここからは、呼吸器系、鼻、目、皮膚に起こる主な症状についてご説明いたしましょう。
呼吸器系の症状
・咳
PM2.5が気道を刺激することで持続的な咳が出ることがあります。とくに乾いた咳が特徴的です。
・喉の痛み
のどの粘膜がPM2.5によって刺激され炎症を起こすことで痛みを感じます。
・痰
体内に入ったPM2.5を排出しようと、粘液(痰)の分泌が増えることがあります。
・喘鳴(ゼーゼー音)
気管支が収縮することで呼吸時にゼーゼーやヒューヒューという音が聞こえることがあります。
鼻の症状
・鼻水
鼻腔内の粘膜がPM2.5によって刺激され鼻水が増えることがあります。
・鼻づまり
PM2.5による炎症で鼻腔内の血管が拡張し鼻づまりを感じることがあります。
・くしゃみ
体内に入ったPM2.5を排出しようとして、くしゃみが頻繁に出ることがあります。
目の症状
・目のかゆみ
PM2.5が目に入ることで目の表面が刺激されかゆみを感じます。
・充血
目の粘膜が刺激されることで血管が拡張し、目が赤くなることがあります。
・涙目
PM2.5を洗い流そうとして、涙の分泌が増えることがあります。
皮膚の症状
・肌荒れ
PM2.5が皮膚に付着することで、肌のバリア機能が低下し、乾燥や荒れが生じることがあります。
・発疹
敏感肌の方では、PM2.5による刺激で発疹が出ることもあります。
3. PM2.5は様々な病気のリスクをあげる

ここからは、PM2.5によって引き起こされる可能性のある病気やリスクについてご説明いたしましょう。
呼吸器系疾患
1. 喘息
PM2.5は気道を刺激し、喘息の症状を悪化させたり、新たに喘息を発症させたりする可能性があります。
2. 気管支炎
PM2.5の長期的な吸入により、気管支の炎症が慢性化し、気管支炎を引き起こす可能性があります。
3. 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
COPDは肺の機能が徐々に低下していく疾患です。長年にわたるPM2.5への曝露(ばくろ)は、COPDのリスクを高める可能性があります。
4. 肺がん
PM2.5に含まれる有害物質の中には発がん性のあるものも含まれており、長期的な曝露(ばくろ)は肺がんのリスクを上昇させる可能性があります。
循環器系疾患
1. 不整脈
PM2.5は心臓の電気的活動に影響を与え、不整脈のリスクを高める可能性があります。
2. 心筋梗塞
PM2.5は血液を凝固しやすくする作用があり、心筋梗塞のリスクを上昇させる可能性があります。
3. 心不全
長期的なPM2.5への曝露は、心臓に負担をかけ、心不全のリスクを高める可能性があります。
【参考情報】『Heart failure』Mayo Clinic
[https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/heart-failure/symptoms-causes/syc-20373142](https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/heart-failure/symptoms-causes/syc-20373142)
4. 高血圧
PM2.5は血管を収縮させる作用があり、血圧を上昇させる可能性があります。
その他の疾患
1. アトピー性皮膚炎
PM2.5が皮膚に付着することで、アトピー性皮膚炎の症状を悪化させる可能性があります。
2. アレルギー性鼻炎
PM2.5は鼻腔内の粘膜を刺激し、アレルギー性鼻炎の症状を悪化させる可能性があります。
3. 認知機能の低下
最近の研究では、長期的なPM2.5への曝露(ばくろ)が認知機能の低下や認知症のリスク上昇と関連している可能性が指摘されています。
4. 糖尿病
PM2.5への長期的な曝露(ばくろ)が、インスリン抵抗性を高め、2型糖尿病のリスクを上昇させる可能性があるという研究結果もあります。
さらに、以下のようなPM2.5の影響を受けやすい方はとくに注意しましょう。
呼吸器系に疾患を持つ方は、小さな粒子が気道に入り込み、症状を悪化させる可能性があります。
循環器系の疾患(心臓病や高血圧など)を抱える方も、PM2.5によって血圧が上昇したり、心臓に負担がかかったりする恐れがあります。
お子さまや高齢者の方もリスクが高まります。
からだが発達途上である乳幼児や、免疫力が低下している高齢者の方は、PM2.5を吸い込むことで体調を崩しやすくなります。
妊婦の方も注意が必要です。PM2.5の影響は胎児にまで及ぶ可能性があるため、濃度が高い日にはできるだけ外出を避けた方がよいでしょう。
次の章では、具体的なPM2.5対策についてご紹介しましょう。
【参考情報】『PM2.5の健康影響』日医大医会誌 2018
[https://www.jstage.jst.go.jp/article/manms/14/4/14_152/_pdf](https://www.jstage.jst.go.jp/article/manms/14/4/14_152/_pdf)
4. PM2.5の対策

PM2.5による健康被害を防ぐためには、適切な対策を講じることが重要です。以下に、具体的かつ効果的な方法をご紹介します。
4-1. マスクを着用する
PM2.5対策として最も手軽で効果的な方法のひとつが、適切なマスクの着用です。
推奨されるマスクの種類には、以下のようなものがあります。
・N95規格マスク
空気中の粒子の95%以上を捕集できる高性能マスクです。医療用や産業用として開発されましたが、一般の方も使用できます。
・DS2規格マスク
日本の国家検定規格で、N95と同等の性能を持ちます。粒子捕集効率95%以上が保証されています。
・KN95規格マスク
中国の規格で、N95とほぼ同等の性能を持ちます。
・不織布マスク
N95ほどの性能はありませんが、一般的な用途では十分な効果があります。複数枚重ねることで、より高い効果が期待できます。
ただし、推奨されているマスクを使用しても、正しく装着しなければ十分に効果を発揮することはできません。以下は、正しいマスクの着用方法についてです。
正しいマスクの着用方法
1. マスクのサイズを確認
顔の大きさに合ったマスクを選びましょう。鼻から顎までしっかりカバーできるサイズが適切です。
2. 清潔な手で取り扱う
マスクを着用する前に、手をよく洗いましょう。
3. マスクの向きを確認
プリーツ型のマスクは、プリーツを下向きにして着用します。
4. 鼻と口を覆う
マスクの上端を鼻の形に合わせて密着させます。顎までしっかりと覆います。
5. 隙間をなくす
マスクの周囲に隙間ができないよう、顔にフィットさせます。とくに鼻の周りの隙間に注意しましょう。
6. ノーズピースを調整
鼻の形に合わせてノーズピースを押し付け、隙間をなくします。
7. フィット感をチェック
マスクを着けた状態で息を吐き、空気が漏れていないか確認します。
4-2. 天気予報を確認する
PM2.5の濃度は日によって大きく変動するため、日々の情報確認が欠かせません。
まずチェックしたいのが気象庁のウェブサイトです。全国のPM2.5予測情報が掲載されており、最新の状況を素早く把握できます。
地域ごとの詳細な情報は、各自治体のウェブサイトでも確認可能です。
リアルタイムの大気汚染状況を知りたいときは、環境省が運営する「そらまめくん」が便利です。スマートフォンからもアクセスできるため、外出先でも手軽にチェックできます。
また、PM2.5情報を提供する専用アプリをスマートフォンに入れておけば、プッシュ通知で最新情報を受け取ることも可能です。
注意すべき濃度の目安も知っておきましょう。日平均値が35μg/m³を超えると健康への影響が懸念され、70μg/m³を超えるとできるだけ外出を控えるのが賢明です。
もし外出が避けられない場合は、必ずマスクを着用し、できるだけ短時間で済ませましょう。
帰宅後は、手洗い、うがい、洗顔を忘れずにすることが大切です。
からだに付着したPM2.5を洗い流すことで、体内への影響を減らすことができます。
毎日の情報チェックと適切な対策を習慣にすることで、PM2.5のリスクを最小限に抑えましょう。
4-3. 洗濯物は室内干しまたは乾燥機
PM2.5が多い日には、洗濯物を外に干すのは避けたほうがいいでしょう。
大気中の微粒子が衣類に付着し、肌に触れたり、吸い込んだりするリスクがあるからです。そんな日は、室内干しや乾燥機を活用するのが賢明です。
室内干しをするときは、いくつかのポイントを押さえると仕上がりがよくなります。
まず、換気を忘れないことです。窓を少し開けたり、換気扇を回したりして空気の流れを作ることで、乾きが早くなります。
湿気が気になる場合は、除湿器を使うとカビや臭いの防止に効果的です。干す場所は、日当たりや風通しのよい部屋を選ぶと乾きがスムーズになります。
乾燥機を使うのも有効な方法です。天候や時間に左右されず、PM2.5が衣類に付着する心配もありません。
とくに省エネタイプの乾燥機なら、電気代を抑えつつ効率的に乾燥できるため、家計にも優しい選択になります。
このようにPM2.5の多い日は「外干ししない」を徹底するだけで、衣類への付着を防ぎ、肌や呼吸器へのリスクを大幅に減らすことができます。
毎日の洗濯が、健康管理にもつながることを意識しておきましょう。
4-4. その他の対策
PM2.5から身を守るには、日常生活での工夫も重要です。
空気清浄機を使用する場合は、HEPAフィルター搭載のものを選びましょう。部屋の広さに合った機種を選び、フィルターの清掃や交換を忘れずに行うことが大切です。
換気はPM2.5濃度が低い時間帯に短時間で済ませるのが大切です。二方向の窓を開けると効率的に空気が入れ替わります。
掃除もこまめに行いましょう。掃除機をかけた後に湿った布で拭くと、微細な粒子までしっかり取り除けます。
食事ではビタミンCやEを多く含む食品や、緑茶、ブルーベリーなどの抗酸化作用のある食材を積極的に摂るとからだを守る助けになります。
運動はPM2.5濃度が高い日には屋外を避け、室内で行いましょう。
車に乗るときはエアコンをリサイクルモードにして外気を遮断し、必要に応じて車内用空気清浄機を使うと安心です。
観葉植物も効果的です。ゴムの木やアレカヤシ、アイビーなどは空気清浄効果があるため、室内の空気を自然に整えてくれます。
小さな工夫を積み重ねることで、PM2.5からからだを守ることが可能です。
【参考情報】『そらまめくん』環境省
[https://soramame.env.go.jp/](https://soramame.env.go.jp/)
5. おわりに
PM2.5や黄砂による健康被害は無視できない問題ですが、正しい知識と対策で影響を最小限に抑えられます。
とくに注意が必要なのは、春先や秋など、PM2.5や黄砂の濃度が高くなりやすい時期です。
この時期に咳やアレルギー症状が続く場合は、単なる季節の変わり目による体調不良と軽視せず、早めに専門医への受診を検討しましょう。
