呼吸器内科で扱う症状と受診をすすめる理由について

呼吸器内科は、鼻や喉、気管、気管支、肺など「呼吸」に関わる臓器の病気や症状を専門的に診る診療科です。
風邪のような軽い症状をはじめ、肺炎や喘息、肺がんなど命に関わる重篤な病気まで幅広く対応しています。
この記事では、呼吸器内科の特徴や扱う病気、受診をおすすめする理由についてご説明いたします。
1.呼吸器内科ってどんなところ?
呼吸器内科は、呼吸に関わる臓器や器官の病気・症状を専門に診る診療科です。具体的には、肺、気管支、気管、咽頭、喉頭、胸膜、胸腔などが診療の対象となります。
一般的によく耳にする「呼吸器」とは、「呼吸することに関わる内臓器官」の総称です。
イメージしやすいように例えると、肺はブドウの房のような構造をしています。
房の茎にあたる部分が「気管」、そこから枝分かれして細くなった部分が「気管支」、先端のブドウの実のような形をした部分が「肺胞(はいほう)」となります。
肺は約3〜6億個もの肺胞が集まって構成されています。
肺胞の表面には細い血管が網の目のように張り巡らされていて、ここで酸素と二酸化炭素のガス交換が行われます。
また、肺が納まっている「胸腔(きょうくう)」は、肋骨や横隔膜で囲まれた空間です。
肺の表面は「胸膜(きょうまく)」という薄い膜で覆われています。
呼吸器内科では、これらの臓器や器官に起こるさまざまな病気や症状を、専門的な知識と経験をもとに診断・治療します。
呼吸器内科で診察する主な症状には、咳や痰、息切れ、呼吸困難、胸痛、発熱、喘鳴(ゼイゼイ・ヒューヒューという音)、いびきや昼間の強い眠気などがあります。
これらの症状は、風邪や気管支炎、肺炎、喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺がん、肺結核、間質性肺炎、睡眠時無呼吸症候群など、幅広い疾患に関連しています。
痰に血が混じる、痰の色が黄色や緑色、茶色などに変化した場合は、感染症や腫瘍の可能性もあるため注意が必要です。
息切れや息苦しさは、運動時だけでなく、安静時にも起こることがあります。
これまで普通にできていた運動がつらくなった、階段や坂道で息切れがする、夜間や早朝に息苦しさを感じるといった場合も、呼吸器疾患のサインであることが多いです。
胸痛は、呼吸器疾患だけでなく、心臓や消化器の病気でもみられる症状です。
呼吸に合わせて痛みが強くなる場合や、深呼吸や咳で痛みが増す場合は、気胸や胸膜炎、肺炎など呼吸器の病気が疑われます。
強い胸痛や突然の息苦しさが出現した場合は、緊急性が高いこともあるため、早めの受診が必要です。
また、呼吸器内科では、慢性疾患の管理も重要な役割です。
たとえば、気管支喘息やCOPDなどは、症状が安定しているときでも定期的な通院や検査が必要です。これにより、発作や重症化を予防し、日常生活の質を維持することができます。
呼吸器内科は、検査や診断にも力を入れています。
胸部X線やCT検査、呼吸機能検査、喀痰検査、血液検査などを組み合わせて、症状の原因を詳しく調べます。必要に応じて、気管支鏡検査や睡眠時の検査(ポリソムノグラフィー)など、より専門的な検査も実施します。
さらに、呼吸器内科は他科との連携も大切にしています。たとえば、肺がんの診断や治療では、呼吸器外科や放射線科、腫瘍内科などと協力し、患者さん一人ひとりに最適な治療を提供します。
咳が長引いたり、痰がなかなか切れなかったり、息切れを感じたりする場合には、ここまでご説明した呼吸器に、何らかの疾患がある可能性があります。このような症状が続くときは、呼吸器内科への受診を早めに検討しましょう。
また、呼吸器の症状は高齢者や基礎疾患を持つ方、お子さまでは重症化しやすい傾向があります。
とくに高齢者の方は誤嚥性肺炎や慢性呼吸不全などにも注意が必要です。
お子さまの場合は、喘息や感染症による急な呼吸困難が起こることもありますので、早めの受診が大切です。
呼吸器内科は、患者さんの生活の質を守るために、日々の診療や予防指導も行います。禁煙指導やワクチン接種、生活習慣の改善なども含めて、総合的に健康をサポートしています。
このように、呼吸器内科は呼吸に関するあらゆる症状や疾患に対応し、患者さん一人ひとりの状態や背景に合わせたきめ細やかな診療を行う専門科です。
気になる症状があれば、早めに専門医へ相談しましょう。
2.呼吸器内科で扱う疾患や症状とは?
呼吸器内科が診察できる病気や症状は非常に幅広く、日常的にみられる軽い症状から命に関わる重篤な疾患まで多岐にわたります。
咳や痰、息切れ、胸の痛み、発熱、喘鳴(ゼイゼイという呼吸音)、嗄声(声がかれる)など、さまざまな呼吸器症状を専門的に診断・治療します。
これらの症状は、単なる風邪のような軽い感染症から、肺炎や肺がん、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、喘息、肺結核、睡眠時無呼吸症候群など、重篤な疾患まで幅広い病気に関連しています。
また、呼吸器疾患の症状は、咳や痰が長引く、息切れが強くなる、胸の痛みがある、夜間や早朝に咳き込む、痰に血が混じる、階段や坂道で息切れがする、いびきや睡眠中の無呼吸がみられるなど、日常生活に大きな影響を及ぼすものが多いのが特徴です。
ここからは代表的な疾患や症状についてご紹介しましょう。
【感染症】
呼吸器内科で扱う感染症は多岐にわたり、代表的には以下のようなものが挙げられます。
・風邪
風邪はウイルスや細菌による感染症で、咳、鼻水、発熱、のどの痛みなどが主な症状です。
多くは自然に治りますが、症状が強い場合や長引く場合は治療が必要です。
風邪が長引いている、咳や痰がなかなか治らない場合は、単なる風邪ではなく、ほかの呼吸器疾患が隠れていることもあります。
・インフルエンザ
インフルエンザウイルスによる感染症で、38℃以上の高熱や関節痛、筋肉痛、全身の倦怠感などが急激に現れます。
インフルエンザは重症化しやすく、特に高齢者の方や基礎疾患のある方では肺炎や脳症などの合併症を起こすこともあります。
早期に抗インフルエンザ薬を服用することで重症化を防ぐことが可能です。
・気管支炎
気管支炎は、気管支に炎症が起こる病気で、咳や痰が強く出るのが特徴です。
急性気管支炎は風邪の重症化した病態として発症することが多く、ウイルス感染や細菌感染が主な原因です。
健康な大人の方では自然に治ることも多いですが、乳幼児や高齢者の方、慢性化している方の場合には注意が必要です。
慢性気管支炎は、長期間にわたって咳や痰が続く状態で、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の一部として扱われることもあります。
・肺炎
肺炎は、ウイルスや細菌が肺に入り炎症を起こす病気です。咳、発熱、倦怠感、胸痛、息切れなどが現れます。
特に高齢者の方や持病のある方は重症化しやすく、早期診断と治療が重要です。
肺炎は、軽症から重症まで幅広く、重症化すると呼吸不全や敗血症など命に関わる合併症を引き起こすこともあります。
・新型コロナウイルス感染症
新型コロナウイルス感染症は、咳、発熱、倦怠感、味覚や嗅覚の異常などが主な症状です。
軽症の場合は自然に治癒することもありますが、肺炎や呼吸不全、血栓症など重症化するケースもあるため注意が必要です。
特に高齢者の方や基礎疾患を持つ方は重症化リスクが高く、早めの受診と適切な対応が求められます。
・肺結核
肺結核は、結核菌による感染症で、長引く咳や発熱、体重減少、寝汗などが特徴です。
治療には長期間の抗結核薬の服用が必要であり、治療を中断すると再発や薬剤耐性結核のリスクが高まります。
結核はかつての「国民病」ですが、近年でも高齢者や免疫力の低下した方を中心に発症例がみられます。
【参考情報】Mayo Clinic『Tuberculosis』
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/tuberculosis/symptoms-causes/syc-20351250
【感染症以外の病気】
呼吸器内科では、感染症以外にもさまざまな慢性疾患や重篤な病気を診療します。
・気管支喘息
気管支喘息は、気道に慢性的な炎症が起こり、咳や呼吸困難、喘鳴(ヒューヒュー・ゼーゼーという音)が現れる病気です。
アレルギーが原因となることが多く、ダニやハウスダスト、花粉、ペットの毛などが発作の引き金になることがあります。
お子さまから大人の方まで発症する可能性があり、夜間や早朝に症状が悪化しやすいのが特徴です。
治療には吸入薬や内服薬が使われ、発作の予防と症状のコントロールが重要です。
・咳喘息
咳喘息は、喘息に似ていますが、呼吸困難や喘鳴はなく、呼吸機能検査は正常で、咳だけが長く続くのが特徴です。
特に夜間や早朝に咳き込むことが多く、放置すると気管支喘息に移行することがあります。
咳が2週間以上続く場合は、咳喘息の可能性も考えられるため、早期治療が大切です。
・COPD(慢性閉塞性肺疾患)
COPDは主にタバコが原因で発症し、気管支や肺胞に慢性的な炎症が起こる病気です。
咳や痰、息切れが続き、進行すると日常生活に大きな支障をきたします。
重症化すると在宅酸素療法が必要になることもあります。COPDは進行性の疾患であり、早期発見と禁煙が予後を大きく左右します。
・肺がん
肺がんは、肺に発生する悪性腫瘍で、初期症状がわかりにくく、進行してから発見されることが多い病気です。
咳や痰、血痰、息切れ、胸の痛みなどが現れますが、無症状のまま進行することも少なくありません。
治療は手術や抗がん剤、放射線治療などが行われ、早期発見が治療成績に大きく影響します。
・睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりする病気です。
主な症状は、大きないびき、日中の眠気、集中力の低下、起床時の頭痛などです。
肥満や気道の形状が原因となることが多く、放置すると高血圧や心疾患、脳卒中のリスクが高まります。
治療にはCPAP(持続陽圧呼吸療法)や生活習慣の改善が有効です。
【呼吸器疾患の代表的な症状】
呼吸器内科でよくみられる症状は以下の通りです。
・咳が2週間以上続く
・痰が切れない、痰が絡む
・息苦しさ、息切れがある
・いびきや睡眠中の無呼吸
・痰に血が混じる(血痰)
・階段や坂道で息切れがする
・夜間や早朝に咳き込む
・市販薬で改善しない咳や痰
・声がかれる(嗄声)
・胸の痛みや圧迫感
これらの症状は、日常生活に支障をきたすだけでなく、重篤な疾患が隠れているサインである場合もあります。
特に、咳や痰が長引く、息切れが悪化している、血痰が出る、夜間や早朝に症状が強くなる場合は、早めに呼吸器内科を受診することが大切です。
呼吸器内科では、症状や疾患に応じて胸部X線検査やCT、呼吸機能検査、血液検査、痰の検査などを行い、総合的な診断と治療を進めます。
このように、呼吸器内科は幅広い呼吸器疾患や症状に対応しており、患者さん一人ひとりの状態に合わせたきめ細やかな診療を行っています。
【参照文献】厚生労働省『急性呼吸器感染症(ARI)』
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/ari.html
3.呼吸器内科の受診をすすめる理由について
呼吸器内科で扱う疾患や症状は、風邪や軽い咳のように思われがちですが、実はその背景に重篤な病気が隠れていることも少なくありません。
とくに、咳や痰、息切れなどは、日常生活でよく見られる症状であるため、「そのうち治るだろう」と軽視してしまう方も多いのが現状です。
しかし、呼吸器の病気には、初期症状が風邪とよく似ているものが多く、自己判断で様子を見ているうちに病状が進行してしまうケースも少なくありません。
たとえば、肺炎や肺がん、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などは、早期発見・早期治療がとても重要です。
これらの病気は、初期には軽い咳や痰、微熱程度の症状しか現れないことが多いものの、進行すると命に関わる重篤な状態に陥ることもあります。
また、気管支喘息や咳喘息などの慢性的な呼吸器疾患は、適切な治療を受けることで症状をコントロールし、日常生活の質を大きく向上させることができます。
逆に、治療が遅れると発作が重症化したり、慢性的な気道の炎症が進行してしまうこともあります。
呼吸器内科の専門医は、呼吸器疾患に関する豊富な知識と経験を持っています。
咳や痰、息切れなどの症状が現れた場合、専門医による診察を受けることで、病気の早期発見や適切な治療方針の決定が可能となります。
さらに、呼吸器内科では、胸部X線検査やCT検査、呼吸機能検査、喀痰検査など、専門的な検査を行うことができます。
これらの検査によって、症状の原因を詳しく調べることが可能です。
たとえば、長引く咳の場合、単なる風邪やアレルギー性の咳なのか、気管支炎や肺炎、あるいは肺がんなどの重い病気が原因となっているかを見極めるためには、専門的な知識と検査が必要不可欠です。
また、COPDや喘息などの慢性疾患では、呼吸機能検査によって病状の進行度を把握し、最適な治療薬や生活指導を行うことが重要です。
さらに呼吸器内科では、患者さんの生活背景や既往歴、喫煙歴なども詳しくお聞きし、総合的に診断・治療を進めていきます。
とくに喫煙歴のある方や、家族に呼吸器疾患の方がいる場合は、定期的な検診も含めて早めの受診を検討する方がいいでしょう。
最近では、新型コロナウイルス感染症の流行により、咳や発熱といった症状に対する不安が高まっています。
呼吸器内科では、感染症対策を徹底しつつ、必要に応じてPCR検査や抗原検査なども行い、安心して受診できる体制を整えています。
また、「風邪は治ったはずなのに咳が止まらない」「呼吸をすると胸のあたりが痛い」「階段を上るのが苦しくてつらい」「タバコをやめたいけどやめられない」といった日常の違和感や体調の変化を感じた時も、呼吸器内科を受診することが大切です。
さらに、呼吸器疾患は症状が軽いうちに受診することで、長い目でみても症状を良い状態に保ちやすくなります。大きな検査や入院が必要になる前に対処できる点も、早期受診の大きなメリットです。
「咳が長引いているけれど、どこを受診したらいいかわからない」「息切れがするけれど年齢のせいだと思っていた」という方も、ぜひ一度、呼吸器内科を受診してみてください。
専門医による的確な診断と治療を受けることで、健康な毎日を取り戻せる可能性が高まります。
また、不安や症状の改善につながり、安心して日常生活を送るための大きな支えとなるでしょう。
4.おわりに
呼吸器の病気は、初期症状が風邪とよく似ていることが多いため、つい軽く考えてしまいがちです。
呼吸器の症状は風邪と似て軽視しがちですが、咳や痰、息切れが続く場合は重大な病気の可能性もあります。
気になる症状がある際は、早めに呼吸器内科への受診を検討しましょう。