喘息と天気・気候の関係について知っておこう

喘息の方のなかには、「天気が悪い日は体調がすぐれない」「気温や気圧の変化で咳が出やすくなる」など、天気や気候の変化を敏感に感じる方もいるでしょう。
実際、喘息の症状は天気や気候の影響を受けやすいことが知られています。
特に、気圧の変化や湿度、気温の急激な変動は気道に負担をかけ、喘息の悪化を引き起こす要因になります。
今回の記事では、天気や天候が喘息に与える影響や、天気と体調の関係、注意すべき季節や天候について詳しく解説します。
天気の変化による喘息の悪化を防ぐための対策についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
1.喘息に影響を与える原因とは
喘息は気道の慢性的な炎症が原因で発症する病気です。
炎症が続くことで気道が敏感になり、さまざまな刺激に反応して咳や息苦しさ、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューという音)が生じます。
喘息を悪化させる主な要因として、以下のようなものがあります。
・アレルゲン(アレルギーの原因物質)
・たばこの煙
・ストレスや疲労
・ウイルス感染
・気温や湿度の変化
これらの原因について詳しく解説します。
【アレルゲン(アレルギーの原因物質)】
喘息の多くはアレルギーが関係しています。
そもそもアレルギーとは、本来は体に害のないものに対して、免疫システムが過剰に反応することです。代表的なアレルゲンは、以下のようなものがあります。
・ダニやホコリ(ハウスダスト)
・カビ
・花粉(スギ、ヒノキ、ブタクサなど)
・ペットの毛やフケ
これらのアレルゲンを吸い込むことで、アレルギー反応が起こり気道が炎症を起こして、喘息発作の原因となります。
そのため、アレルゲンをできるだけ避けることが大切です。
【たばこの煙】
たばこには、たくさんの有害物質が含まれています。
そのため、喫煙は、気道に刺激を与え、喘息を悪化させる大きな要因になります。他人が吸っているたばこの煙を吸い込む受動喫煙も同様です。
たばこの煙は慢性的に起こっている気道の炎症をさらに悪化させます。
炎症が悪化すると気道が狭くなるため、咳や息苦しさなどの喘息症状を引き起こします。
また、通常、気道には 異物を排除する機能(線毛運動)がありますが、たばこの煙によってこの働きが弱くなり、ホコリや細菌の排出に影響を及ぼします。
その結果、喘息発作を引き起こしやすくなり、感染症にもかかりやすくなるのです。
特に子どもや高齢者は影響を受けやすいため、本人だけでなく周囲の人も禁煙をしましょう。
【ストレスや疲労】
精神的なストレスや疲労も、喘息の悪化を引き起こす要因です。
過度なストレスがかかると自律神経のバランスが乱れ、気道の炎症が悪化し、収縮しやすくなります。
また、十分な睡眠や休息が取れていないと、体の免疫機能が低下し、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなります。
疲労の蓄積は、間接的に喘息を悪化させるリスクです。
規則正しい生活と十分な睡眠、適度な運動を心がけ、ストレスや疲労を蓄積しないようにしましょう。
【ウイルス感染】
風邪やインフルエンザなどのウイルス感染は、喘息の発作を誘発する大きな原因です。
感染によって気道の炎症が悪化し、咳や息苦しさが長引くことがあります。
特に冬場は、手洗いやうがい、マスクの着用、ワクチン接種などの予防策を徹底することが大切です。
【気温や湿度の変化】
気温が急に下がると気道が収縮し、喘息の症状が出やすくなります。
また、湿度が高すぎるとカビやダニが繁殖しやすくなり、低すぎると気道が乾燥して炎症が悪化し、少しの刺激に反応を示しやすくなります。
【参考情報】『日常生活におけるぜん息悪化の要因』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/knowledge/causes.html
2.天気が体調不良に影響する?
「雨の日や台風が近づくと喘息の症状が悪化する」「気温の変化が激しいと咳が出やすい」といった経験をした方は多いでしょう。
喘息では、以下のような変化が影響を与えるといわれています。
・気圧の変化
・湿度の変化
・気温の変化
どのような天気のときに喘息の症状が出やすいのか、把握しておくことも大切です。
【気圧の変化】
低気圧が近づくと、喘息の症状が悪化しやすくなります。
これは、気圧の低下が自律神経に影響を与え、気道の炎症を悪化させるためです。
気圧の変化に内耳が敏感に反応し、自律神経がストレス反応を起こします。
気圧の変化は、喘息悪化や発作の誘発だけでなく、頭痛や血圧上昇などにも影響を及ぼします。
【湿度の変化】
湿度が高すぎるとカビやダニが繁殖しやすくなり、喘息を持つ人にとっては大きなリスクとなります。
逆に、湿度が低くなり空気が乾燥すると気道の乾燥につながります。気道が乾燥すると、炎症が悪化し刺激に反応しやすくなります。
また、空気の乾燥はウイルスが活発に活動するため感染症にもかかりやすい環境です。
適切な湿度は、40%~60%といわれています。適切な湿度を維持するよう、加湿や除湿などの対策を行いましょう。
特に冬場の乾燥した空気や、夏場の高湿度には注意が必要です。
【気温の変化】
急激な気温の変化も、気道を刺激し、喘息の症状を悪化させる原因となります。
特に、寒暖差が大きい季節の変わり目には、冷たい空気を吸い込んだときに発作が起こりやすくなります。
そのため、外出時はマスクを着用し、冷たい空気が直接気道に入らないようにすることが重要です。
【参考情報】『ぜん息と気象』アレルギー支援ネットワーク
https://alle-net.com/family/allergy/allergy04/
3.喘息の人が気をつけるべき季節について
喘息の症状は一年を通して変化しますが、症状が変化しやすい時期として、春や秋などの季節が挙げられます。
特に季節の変わり目は、症状も変化しやすい時期です。
春や秋は特に注意が必要な季節といえますが、季節ごとにそれぞれ注意すべきポイントが異なります。
安定した体調で過ごすため、生活の中で気をつけるポイントを解説します。
【春(2月~5月)】
春は、花粉が飛散する時期であり、花粉症と喘息の両方を持っている人にとってはつらい季節です。
また、春は風も強いため、花粉以外にも黄砂やPM2.5の影響もあり、気道への負担が増加します。
外出時はマスクを着用し、帰宅後はうがいや洗顔を徹底しましょう。
家の中に花粉や黄砂を持ち込まないため、服装にも注意が必要です。花粉などが付きにくい、ツルツルした素材の服を選ぶといいでしょう。
【梅雨(6月~7月)】
梅雨の時期は湿度が高くなり、カビやダニが繁殖しやすくなります。
ダニの死骸やカビの胞子を吸い込むことで、喘息症状の悪化原因となります。室内の湿度を50%前後に保ち、除湿機やエアコンを活用することが大切です。
除湿器やエアコンはカビの発生源となります。定期的に掃除を行いましょう。
【夏(7月~9月)】
夏は気温が高く、冷房の使用が増える季節です。
エアコンの風が直接体に当たると、気道が乾燥して喘息の症状が悪化することがあります。
また、エアコン内部にカビが発生しやすいため注意しましょう。
【秋(9月~11月)】
秋は、ブタクサやヨモギなどの花粉が飛散する季節です。ブタクサやヨモギにアレルギーがある方は注意が必要な時期です。
また、朝晩の冷え込みが強くなり、気温の変化が大きくなるため、喘息の症状が出やすくなります。
外出時は防寒対策と花粉対策を十分に行いましょう。
【冬(12月~2月)】
冬は、空気が乾燥し、ウイルスが活発になり、感染が増える季節です。
気道が乾燥すると炎症が悪化し、喘息の発作が起こりやすくなります。
室内の湿度を適切に保つことが大切です。また、インフルエンザや風邪の予防のため、手洗いやうがい、マスクの着用など感染対策を徹底しましょう。
【参考情報】National Heart, Lung, and Blood Institute (NHLBI)『What Is Asthma?』
https://www.nhlbi.nih.gov/health/asthma
4.梅雨時期はカビ・ダニに注意しよう
梅雨の時期は湿度が高くなり、カビやダニが増殖しやすくなります。
これらは喘息の発作を引き起こす大きな要因となるため、以下の対策を行いましょう。
・こまめに掃除をする
・布団や枕を天日干しする
・布団乾燥機を使う
・除湿機やエアコンを活用する
・エアコンのフィルターを定期的に掃除する
特に布団やカーペット、ソファなどのダニの温床となる場所はこまめに掃除をしましょう。
寝具はダニの繁殖を防ぐため、天気がいい日には適宜天日干しをするといいですが、梅雨時期には難しい状況です。
そのような場合には、布団クリーナーや布団乾燥機をかけると、ダニの繁殖を防ぐだけでなく死骸の除去もできます。
除湿には除湿機やエアコンの使用も効果的ですが、フィルターや内部の掃除を怠ると逆効果です。
5.花粉症の季節も注意しよう
春や秋の花粉シーズンは、喘息を悪化させる原因となります。特に花粉症がある方は、以下の対策を徹底しましょう。
・花粉の飛散情報をチェックし、飛散が多い日は外出を控える
・外出時はマスクやメガネを着用する
・花粉の付きにくいツルツルした素材の服を着る
・帰宅後は衣類を払ってから家に入る
・洗濯物は室内干しにする
例年の花粉症シーズンの体調を記録しておくなどし、早めにかかりつけ医に相談しておきましょう。
花粉症シーズン前に、喘息のコントロールができるよう準備しておくことが大切です。
【参考情報】『花粉症と気管支喘息との関連についての調査』日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jiaio/3/1/3_7/_pdf/-char/ja
6.おわりに
喘息は、天気や気候の変化によって悪化しやすい病気です。特に季節の変わり目や花粉シーズンは注意しましょう。
また、季節や天気の変化など、自分の喘息症状が悪化しやすいときを把握することは大切です。
天気を変えることはできませんが、喘息日記や喘息天気予報などを活用し、適切な対策を行うことで症状をコントロールすることが可能です。
天気の変化による症状悪化が気になる方は、早めに医師に相談し、自分に合った治療や予防対策を実践しましょう。