咳で嘔吐する原因と病気と吐いたときの対処法

咳と吐き気、嘔吐がある場合、呼吸器疾患や消化器疾患などさまざまな原因が考えられます。

一度に複数の症状が出たり、何度も吐いたりすると、不安な気持ちが強くなるかもしれません。

この記事では、咳と吐き気、嘔吐があった場合の原因や対処法、病院を受診する目安について紹介します。

1.咳が出て吐いてしまうのはなぜ


咳が出て吐く原因は、主に3つあります。

1-1.激しい咳が原因

激しい咳により吐き気が誘発される嘔吐を「咳き込み嘔吐」といいます。

咳き込み嘔吐は、喘息や咳喘息、新型コロナウイルス感染症など、激しい咳が出る病気のときに現れやすくなります。

1-2.消化器疾患が原因

胃食道逆流症(逆流性食道炎)や感染性胃腸炎などの消化器疾患にかかると、咳で胃や食道が刺激され、吐くことがあります。

1-3.消化器官が未熟

乳幼児は消化器官が未熟であるため、咳などの刺激で胃の内容物が逆流して吐くことがあります。

発熱や下痢などの症状がなく、元気で食欲があるなら、問題ないことが多いでしょう。

【参考情報】Kids Health 『Coughing』
https://kidshealth.org/en/parents/childs-cough.html

2.咳と嘔吐、両方の症状が出る呼吸器疾患


咳と嘔吐、両方の症状が出る呼吸器疾患について解説します。

2-1.喘息

喘息は、空気の通り道である気道に慢性的な炎症が起こり、咳や息苦しさ、「ゼーゼー、ヒューヒュー」という呼吸音・喘鳴(ぜんめい)が現れる病気です。

主な原因は、何らかのアレルギーですが、ストレスなどアレルギー以外の原因で発症することもあります。

症状がひどくなると、激しい咳を連発するようになります。すると、咳が刺激となり嘔吐が誘発されることがあります。

治療には、吸入ステロイド薬などを用いて気道の炎症を抑えます。同時にアレルゲンを回避することも必要となります。

◆当院の喘息治療について>>

【参考情報】『喘息(ぜんそく)』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/tobacco/yt-022.html

2-2.咳喘息

咳喘息は、咳だけが長く続く病気です。喘息とよく似た病気ですが、一部の喘息患者さんのように、喘鳴や息苦しさが出ることはありません。また、呼吸機能検査などは正常です。

喘息と同様、咳喘息でも激しい咳が長く続き、刺激で嘔吐することがあります。

病気の原因ははっきりわかっていませんが、喘息と同じように、アレルギーが関与しているものと考えられます。治療には、喘息と同じように吸入ステロイド薬などを用います。

◆当院の咳喘息治療について>>

2-3.新型コロナウイルス感染症

新型コロナウイルスに感染して発症する病気です。発熱や咳、のどの痛みなどが主な症状です。

コロナでも咳の症状が強く出ると、刺激で嘔吐することがあります。また、咳とともに、嘔吐や下痢などの消化器症状が現れることもあります。

一部の患者さんは、治った後も後遺症として咳が続くことがあり、激しい咳が続くと嘔吐が誘発されることもあります。

【参考情報】Mayo Clinic『Unusual COVID-19 symptoms: What are they?』
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/coronavirus/expert-answers/coronavirus-unusual-symptoms/faq-20487367

2-4.RSウイルス感染症

風邪のウイルスの一種である、RSウイルスに感染して発症する病気です。主な症状は、咳や発熱、鼻水です。

特別な治療法はないため、咳などのつらい症状を和らげる対症療法を行いながら、症状が軽くなるのを待ちます。

◆咳を伴うウイルス感染症の種類と具体的な対処法>>

2-5.その他

上記以外にも、以下の呼吸器疾患でも、咳で嘔吐が誘発されることがあります。

・COPD(慢性閉塞性肺疾患)
・クループ症候群
・マイコプラズマ肺炎

感染症の場合は、病気が良くなれば咳や嘔吐は治まりますが、喘息やCOPDの咳は、未治療のままだと症状が悪化していきます。

3.咳と嘔吐、両方の症状が出る消化器疾患


咳と嘔吐、両方の症状が出る消化器疾患について解説します。

3-1.胃食道逆流症(逆流性食道炎)

胃食道逆流症とは、胃の内容物が食道に逆流する病気です。胃酸により食道の粘膜が刺激され、咳や吐き気、胸やけなどの症状が現れます。

治療には、プロトンポンプ阻害薬など、胃酸の分泌を抑える薬を用います。また、脂肪分の多い食材や刺激の強い食材を避けるなど、食事にも気をつける必要があります。

3-2.感染性胃腸炎

感染性胃腸炎は、ウイルスや細菌に感染して起こる病気です。発熱や下痢、嘔吐などの症状が現れます。

俗に「おなかの風邪」とも言われる病気ですが、風邪ではありません。しかし、咳や鼻水など、風邪のような症状が出ることもあります。

特別な治療法はないので、安静にして水分を補給したり、整腸剤でお腹の調子を整えながら回復を待ちます。

4.咳込んで吐いてしまった場合の対処法


咳込んで吐いてしまった場合の対処法を紹介します。

4-1.顔を横に向けて寝る

「顔を横に向けて寝る」もしくは「体ごと右向きに寝る」と、吐いたもので窒息するリスクを避けることができます。

4-2.吐いた物を処理する

吐いたものはすぐに処理しましょう。特に感染性胃腸炎の場合、吐瀉物の中には大量のウイルスや細菌が含まれているので、放っておくと周囲の人に感染する恐れがあります。

処理する際は、マスク・手袋・エプロンを着用して接触感染を予防するとともに、人体以外の汚染部位を、塩素系漂白剤などで消毒しておくと良いでしょう。

4-3.飲み物を摂る

吐き気が治まったタイミングで、水分を摂取して脱水症状を予防しましょう。

水分摂取の際は、牛乳、乳飲料、炭酸飲料、柑橘類など刺激になる飲み物は避け、水・お茶を飲みましょう。水分を摂取すると、気道が保湿されるので、咳の対策としてもいいでしょう。

5.病院を受診する目安


咳と嘔吐に悩まされている方が病院を受診するなら、以下の目安を参考にしてください。

5-1.激しい咳が止まらない

「息もできない」「夜も眠れない」くらい激しい咳が出るなら、呼吸器内科を受診するのが良いでしょう。

咳の原因を調べ、自分に合った薬を処方してもらいましょう。

◆激しい咳で息が吸えない、息苦しい!原因と対処法を解説>>

5-2.下痢や吐き気、嘔吐が強い

咳に加えて、下痢や吐き気・嘔吐などの消化器症状が強ければ、消化器内科か内科、子どもなら小児科を受診しましょう。

特に、子どもや高齢者は脱水症状を起こしやすいため、早めに受診しましょう。

5-3.胸やけ、胃もたれ、ゲップがある

胸やけ、胃もたれ、ゲップなどの症状が伴うなら胃食道逆流症の疑いがあるので、消化器内科や内科、あるいは内科を受診しましょう。

5-4.咳が2週間以上続いている

咳が2週間以上続くなら、喘息や咳喘息をはじめとした呼吸器疾患が疑われるため、呼吸器内科を受診しましょう。

喘息は、治療をせずに放っておくと重症化する恐れがあります。また、咳喘息は未治療だと喘息に移行することがあります。

6.おわりに

咳と嘔吐が伴う場合、呼吸器疾患もしくは消化器疾患が原因である可能性があります。

風邪などで症状が軽ければ、自宅で様子を見ているうちに快方に向かいますが、咳が「長引く」「繰り返す」「激しくてつらい」ときは病院を受診して適切な治療を受けましょう。

受診先に悩むなら、記事で解説した症状と照らし合わせながら、呼吸器内科・内科・消化器内科・小児科のいずれかを受診しましょう。