気胸ってどんな病気?

気胸とは肺に穴が開き、肺から胸腔内に空気が漏れることで胸痛や呼吸困難が生じる状態のことです。

胸腔に空気が入り込むと肺に圧がかかり、つぶれて激しい息切れを起こすこともあります。

軽度の気胸では自然に軽快することもありますが、命に関わる緊張性気胸の場合は緊急に治療が必要です。

1.症状


気胸の代表的な症状として、以下のものがあります。

・息切れ
・胸痛、背中や脇腹の痛み
・呼吸困難
・空咳(からぜき)

肺から漏れた空気の量、つぶれた肺の範囲によって、症状は大きく異なります。

軽度の場合では自覚症状がほとんどなく、発症したことに気づかず自然に治っている場合や健康診断などで偶然発見される場合もあります。

しかし、胸腔内に漏れだす空気の量が多いと、もう一方の肺や心臓を圧迫してしまいます。

この状態を緊張性気胸といいます。

緊張性気胸では心臓が圧迫されることで心臓に戻る血液の量が減少し、大変危険な状態です。

胸痛、呼吸困難感に加えて急激な血圧低下、チアノーゼ、意識低下、頚静脈怒張(首の静脈が浮き出ること)、ショック、心停止など、命に関わる症状が現れる場合もあります。

緊張性気胸の状態を改善することができれば、一般に症状は軽快していきます。

時間の経過とともに漏れ出た空気が胸腔から吸収されるにつれて、肺はまたゆっくりと膨らみ始めます。

【参考情報】日本呼吸器学会『気胸』
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/g/g-04.html

【参考情報】Mayo Clinic 『Pneumothorax』
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/pneumothorax/symptoms-causes/syc-20350367

2.原因


気胸の原因は大きく分けて、嚢胞の破裂による自然気胸、外傷性気胸、医原性気胸などがあります。

また、自然気胸は明らかな原因がない「原発性気胸」と肺疾患が原因となる「続発性気胸」に分けられます。

2-1.原発性気胸

肺に基礎疾患を持たない、10代後半〜20代のやせ形の男性に多くみられます。

肺尖部にできたブレブ(胸膜下嚢胞)という小さな嚢胞の破裂が主な原因です。

2-2.続発性気胸

肺気腫、COPDなど、呼吸器疾患の持病がある高齢者男性に多くみられます。

呼吸器疾患により、ブラ(気腫性嚢胞)という1㎝以上の大きな嚢胞が形成され、これが破裂することで気胸が起こります。

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2-3.外傷性気胸

交通事故、転落、転倒などの外傷により起こる気胸です。

胸腔内に空気だけでなく血液も貯留する血胸を伴うこともあります。

2-4.医原性気胸

肺生検や開胸手術、中心静脈カテーテルの挿入などの医療行為の合併症として生じる気胸です。

【参考情報】『系統看護学講座/病理学』医学書院

3.特殊な気胸


特殊な気胸として、異所性子宮内膜症(月経随伴性気胸)、リンパ脈管筋腫症(LAM)に伴う気胸があります。

3-1.異所性子宮内膜症

異所性子宮内膜症(月経随伴性気胸)では、月経の時期に一致して気胸を繰り返すのが特徴です。

原因はブラの破裂ではなく、子宮の組織が肺に紛れ込むことで肺にできる子宮内膜症だと言われています。

そのため月経時の出血と関連して肺に穴が開き、気胸が起こります。

3-2.リンパ脈管筋腫症

リンパ脈管筋腫症は指定難病とされている稀な病気です。

妊娠可能な30~40代の女性で多く見られます。

過剰な増殖能力を持つLAM細胞が肺などで増殖し、コラーゲンを分解する酵素を出して肺に穴を空けると考えられています。

【参考情報】『難病情報センター リンパ脈管筋腫症(LAM)』
https://www.nanbyou.or.jp/entry/173

4.検査


胸痛や呼吸困難感、咳などの症状があり気胸が疑われたら、まずはX線検査を行います。

胸部X線検査(レントゲン)で肺の虚脱(しぼんでいる状態)が見られると、気胸と診断されます。

胸部CT検査では、レントゲンで見逃してしまうような軽度の気胸や、肺の詳細な状態も確認できます。

5.治療


気胸の程度によって、安静、胸腔ドレナージ、外科手術などの治療を行います。

5-1.安静

肺がしぼんでいる期間が短く症状が軽度の場合は、安静にして自然に穴が塞がるのを待つこともあります。

5-2.胸腔ドレナージ

気胸の程度が強い場合、「胸腔ドレナージ」という方法で胸腔に管を入れ、胸腔内の空気を体外に抜く処置が必要になります。

中程度の場合は外来通院用携帯ドレナージキットを利用することもありますが、長期間続く場合や肺のしぼみが大きい場合は入院ドレナージ治療を行います。

持続的な胸腔ドレナージでは局所麻酔を行い、小さく皮膚を切開して細い管(ドレーン)を挿入します。

ドレーン挿入後はX線検査を行い、正しい位置に留置されているかを確認します。

ドレーンの体外側は水封されており、外からの空気は逆流しないようになっています。

数日におよぶドレナージ治療で、肺が膨らんでいることが確認できたら、ドレーンを抜去します。

5-3.外科手術

胸腔ドレナージで改善しない場合や左右両側の気胸の場合は、胸腔鏡手術が行われることもあります。

【参考資料】『系統看護学講座/臨床外科看護総論』医学書院

6.予防


気胸は30-50%が再発すると言われています。

再発を完全に予防することはできませんが、喫煙習慣がある場合は禁煙することが重要です。
また、スキューバダイビングは、気胸の再発リスクになり、大変危険ですので、治療完了後も実施はできません。。

長年の喫煙歴があり胸痛などの自覚症状がある場合は気胸の可能性もあるため、早めに受診し禁煙治療も行いましょう。

7.おわりに

気胸は突然発症する場合があり、重症化すると肺や心臓を圧迫し、命に関わる病気です。

X線やCTで診断が可能で、気胸の程度によって経過観察や胸腔ドレナージ、手術などの治療を選択します。

また、一度穴が塞がっても再発する可能性が高い病気でもあります。

喫煙によるCOPDなどが原因として考えられる場合は、禁煙治療も行い再発を予防します。

胸痛や呼吸困難感などの症状があれば早めに呼吸器内科を受診しましょう。