好酸球性肺炎とは?

好酸球性肺炎とは、アレルギー反応に関与している白血球の一種である好酸球によって引き起こされる肺炎です。

病気の原因や経過により、「急性」と「慢性」に分類され、それぞれ状態が異なります。

発症原因は、特定の薬剤、タバコ、寄生虫、カビ(真菌)などのアレルゲンの吸入です。
その他にも、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症などの疾患や、原因不明の場合も少なくありません。

今回の記事では、好酸球性肺炎について、急性と慢性に分けて詳しく解説します。

1.急性好酸球性肺炎


急性好酸球肺炎は、喫煙開始後や禁煙に失敗し再度喫煙を始めた人がかかりやすいと言われています。

その他、急性好酸球性肺炎の特徴は以下のとおりです。

・男性
・20歳前後
・喘息の既往なし
・再発はまれ
・重篤なことが多い
・症状が出て数日から数週間で発症

急性好酸球性肺炎は、原因が特定できないことも多い疾患です。

1-1.症状

急性好酸球性肺炎は、主に以下のような症状があらわれます。

・乾いた咳
・38.5℃以下の発熱
・頻呼吸
・呼吸困難
・倦怠感
・筋肉痛
・寝汗
・胸膜性胸痛

喘息のような「ヒューヒュー」「ゼィゼィ」した音が聴かれることもあります。

また、急性好酸球性肺炎は、急性呼吸不全を起こし人工呼吸器の装着が必要になる場合があります。

1-2.検査

急性好酸球性肺炎を疑う場合におこなわれる検査には、以下のようなものがあります。

・胸部X線検査
・CT検査
・血液検査
・気管支鏡検査などによる組織生検

胸部X線検査とCT検査では、すりガラスのような陰影を認め、胸水が貯留する場合があります。

血液検査や気管支鏡検査などによる組織生検では、好酸球の数値や生検組織中の好酸球の状況を確認します。

末梢血好酸球は正常であっても、回復期に増加する傾向があります。

◆呼吸器内科で行う検査とは?>>

【参考情報】『好酸球性肺炎』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/c/c-03.html

【参考情報】『Eosinophilic Pneumonia』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/23955-eosinophilic-pneumonia

1-3.治療

急性好酸球性肺炎は、原因が感染症ではないため、抗菌薬は効果がありません。

原因物質が特定できる場合は、それらを除去したり回避したりすることで、軽快していく場合があります。

喫煙が原因と考えられる場合には、まず禁煙をしましょう。

好酸球性の炎症には、一般的にステロイドがよく効くため、ステロイド薬による治療が第一選択です。

急性好酸球性肺炎は、ステロイドに対する反応も良好で通常2~4週間程度で治ります。
再発も少なく予後は良好だとされています。

軽症の場合は、対症療法のみで経過観察することも可能であり、自然軽快例も報告があります。

呼吸不全を伴う重症の場合は、ステロイドのパルス療法をおこない治療をするケースもあります。

【参考情報】『急性好酸球性肺炎とは』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1b23.pdf

2.慢性好酸球性肺炎


慢性好酸球性肺炎は、原因不明の好酸球性肺炎のうち、2~6ヶ月の経過をたどるものを指します。

慢性好酸球性肺炎の特徴は以下のとおりです。

・女性に多い
・40歳代の発症
・アトピー素因(気管支喘息やアレルギー性鼻炎)あり
・症状が出てから数か月後に発症
・再発を繰り返す

慢性好酸球性肺炎は急性好酸球性肺炎とは異なり、喫煙との関連は報告されていません。

2-1.症状

慢性好酸球性肺炎の主な症状は以下のとおりです。

・咳
・発熱
・進行性の息切れ
・喘鳴(ヒューヒュー、ゼィゼィ)
・寝汗

50%の症例で気管支喘息やアレルギー性鼻炎が併発する場合があり、症状の再発を繰り返す患者は、体重減少がみられることもあります。

【参考情報】『慢性好酸球性肺炎』MSDマニュアル プロフェッショナル版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%8A%E3%83%AB/05-%E8%82%BA%E7%96%BE%E6%82%A3/%E9%96%93%E8%B3%AA%E6%80%A7%E8%82%BA%E7%96%BE%E6%82%A3/%E6%85%A2%E6%80%A7%E5%A5%BD%E9%85%B8%E7%90%83%E6%80%A7%E8%82%BA%E7%82%8E

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2-2.検査

慢性好酸球性肺炎が疑われる場合におこなわれる検査は以下のとおりです。

・胸部X線検査
・CT検査
・血液検査
・気管支鏡検査による気管支肺胞洗浄

急性好酸球性肺炎の場合とおこなわれる検査に、大きな違いはありません。

胸部X線検査やCT検査では、肺に炎症の影がみられます。

血液検査では、以下のような特徴がよくあらわれます。

・末梢血好酸球の増加
・赤血球沈降速度(赤沈)の顕著な亢進
・鉄欠乏性貧血
・血小板の増加

また、気管支肺胞洗浄では、洗浄液に混入した好酸球の量が多ければ、慢性好酸球性肺炎を疑います。

2-3.治療

慢性好酸球性肺炎の治療は、ステロイド薬の投与が効果的です。

多くの患者で、ステロイド治療終了後、またはステロイドの減量中に、症状や検査所見で再発が見られるケースがあります。

最初に発症してから数か月から数年後に再発するケースもあるため、1年程度は特に注意が必要です。

3.おわりに

好酸球性肺炎は、アレルギー反応に関与している白血球の一種である好酸球が、肺の中に多く認められる特殊な肺炎です。

原因や状態により、「急性」と「慢性」にわけられます。

どちらもステロイドを使って治療を進めていきます。

早めに治療をおこなうことで、つらい症状がある期間を少なくすることができ、重症化も防げます。

よくわからない咳や発熱などが続いている場合は、一度呼吸器内科を受診しましょう。