主治医との協力が大切!二人三脚の喘息治療とは

喘息の治療は症状が出ない状態を目指すため、長期にわたります。

症状や現状を主治医に伝え、患者さん一人ひとりに合わせた治療方針や薬の処方があるため、二人三脚で治療をおこなっていく必要があります。

1. 喘息がどのような病気なのかを知る


喘息はアレルギーなどが原因でおこる病気です。

気管支が炎症して敏感になり、そこに刺激が加えられることで気道が狭くなって症状が現れます。喘息の主な症状は咳、痰、息苦しさ、呼吸時にゼーゼー、ヒューヒューという音が出る喘鳴(ぜんめい)などがあります。

喘息の重症度は4つの段階に分けられます。「喘息予防・管理ガイドライン」に沿って、主治医が重症度を診断します。

治療ステップは4つあり、こちらも主治医が症状や発作の頻度、呼吸器機能検査などの結果を元に、薬の処方や組み合わせを判断します。

喘息治療の大きな目的は、症状や発作が起こらない状態を目指し、その状態を保つことです。症状が出ない状態が6か月程度持続することで、治療をステップダウンすることも可能になります。

このように、喘息治療は長期の治療になります。自己判断で治療をやめてしまわず、主治医の指示通りの治療を続ける必要があります。

【参考情報】『ぜん息を知る 治療』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/knowledge/medicine.html

◆『喘息について』>>

2.呼吸器内科を受診する


喘息は咳や痰など、普通の風邪と似たような症状もありますが、咳が長く続くという特徴があります。

2週間以上咳が続くようであれば、喘息の可能性があります。普通の風邪だと、2週間以上咳が続くことはありませんので、気になった方は病院を受診してください。

では、喘息の可能性がある場合、何科を受診すればよいのでしょうか。

咳の症状があると内科を受診する方が多いと思います。

内科でも診てもらえますが、呼吸器の疾患に特化した、より専門性の高い呼吸器内科を紹介される場合もあります。

喘息の疑いがあるようでしたら、呼吸器内科に受診することをおすすめします。

呼吸器内科は、鼻、喉、気管支、肺などを専門的に扱う内科ですので、喘息治療に適しているといえます。

【参考情報】『Pulmonologist』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/articles/22210-pulmonologist

喘息は長期の治療になるため、主治医と良好な関係でないと、信頼できませんし、患者さんも安心して治療に挑めません。

良好なパートナーシップを組むためにも、ぜひ皆さんも不安なことや疑問に感じたことは遠慮せずに質問し、解決したうえで治療を続けてください。

◆『呼吸器内科でわかることとは? 受診の目安と一般内科との違い』>>

◆『呼吸器内科で行う検査の種類と目的を紹介します』>>

3.医師と共有し治療に取り組もう!


長期の治療に挑むためにも、主治医との良好なパートナーシップは重要です。では、どのようにすれば、良好なパートナーシップを組むことができるのでしょうか。

3-1.普段の状態を伝える

喘息の症状について説明しましたが、これらの症状は常に出ているというよりは、アレルゲン(アレルギーの原因となる物質)などに触れることで発作的に症状が出ます。

出やすい時間帯にも特徴があり、夜間から早朝にかけて出やすくなります。季節の変わり目や台風の時など、天候にも左右されることもあります。

これらは個人差があるので、どのような時に症状が出やすいかを主治医に伝えることで、薬の量や種類を決める手だてにもなります。

◆『季節の変化と喘息発作の予防』>>

喘息以外に疾患がある場合や、他の疾患の疑いがあるのであれば、主治医に伝えましょう。

喘息による合併症にはCOPD*がありますが、喘息を悪化させる恐れもあるので、気になることがあれば伝えてください。

*COPD(慢性閉塞性肺疾患)・・・主にタバコが原因となる生活習慣病の1つ

◆『COPDについて』>>

アレルギーも同様に伝えてください。喘息の発作が起きる原因として、アレルギー反応で起こる場合があります。

主なアレルゲンとして、ダニ、ハウスダスト、動物の毛やフケ、花粉、カビなどがあります。これらが原因で喘息の発作に繋がる可能性もあるので、これら以外にもアレルギーがある場合は伝えておくとよいでしょう。

◆『喘息でもペットは飼える?』>>

あとは細かくなりますが、どんな体質か、これまでにどんな病気をしたか、使用して合わなかった薬やどう合わなかったかなどを伝えると主治医も素早く、正しい判断ができます。

ぜひ受診する前にこれらのことを書き起こしてみてください。

【参考文献】『その咳、大丈夫?―ぜんそく最新治療と医師の本音―』灰田 美和子

3-2.喘息日記

喘息をコントロールするには、患者さん自身が喘息を知る必要もあります。

発作が起きた状況や症状、1日の体調などを記します。

時間を決めて数値化することで、目に見えない気管支の様子を確認することもできます。この数値は「ピークフロー値」と言い、ピークフローメーターを用いて計測します。

毎日、朝、(昼)、夜の1日2~3回測定し、喘息日記に記録します。数値が低くなった時が、発作のサインと考えられます。1日のうちの変動が大きい場合は、気管支の状態が不安定で過敏な状態だと言えます。

これらの状況を、記録しておくと重要な情報源として主治医に伝えることができます。

【参考情報】『自分のぜん息の状態を把握する』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/control/condition/peakflow.html

【参考情報】Cleveland Clinic “Peak Flow Meter”
https://my.clevelandclinic.org/health/treatments/peak-flow-meter

3-3.疑問や不安を共有

喘息日記には発作が起きた時のことや、ピークフロー値を記録しておくことの大切さを紹介しました。

ですが、いつ発作が起きてしまうかなどの不安を抱えながら生活をするため、心配なこと、相談したいことも出てくるかと思います。

これらのことも記録しておくことで、次回の診察の時に主治医に忘れずに伝えることもできますので、感じたことは記しておくようにしてください。

3-4.定期的な受診

治療の初期や発作が出た前後は2週間に1回程度のこまめな受診が必要です。

通院する医療機関の方針や、主治医の判断にもよりますが、薬が効いてきたり、喘息のコントロールができるようになると月に1度の受診で問題ないと判断される場合もあります。

喘息のコントロールがうまくいっていれば、薬の量や種類も減らすことができます。これらの判断は、患者さんに書いてもらっている喘息日記や、診察をもとにおこなっていきます。

調子がいいから薬を減らそうなどの自己判断は決してせずに、主治医と相談したうえで判断をしてもらってください。これらの判断のためにも、定期的な受診をおこなうようにしてください。

4.職場や家族に伝える


喘息の発作はコントロールすることで、予測が立てられることもありますが、予想もしていないときに起こることがあります。

激しい発作の場合、意識がなくなることもあり、自分で対処できないこともあります。このような場合は、周りの助けが重要です。

喘息の薬は2種類あり、定期的に吸入し続ける「長期管理薬」と、発作が起きたときに使う「発作治療薬」があります。発作が起きたとき、どの薬を用意してほしいかなどを周囲に伝えておくことで、発作に対処できます。

◆『段階別!喘息発作が起きた時の対処法について』>>

喘息患者は発作が起こらなければ、普通の人と変わらない生活をおくれる場合がほとんどです。ですので、周りの人に喘息であることを知らせていない場合もあるかと思います。ですが、説明したように発作はいつ起きるかわかりません。機会を見つけて、周りの人に話してみてください。

喘息の発作は自分でアレルゲンに触れないように気をつけていても、周りの人の行動をきっかけに発作が起こることがあります。

その代表例がタバコです。タバコで発作が起きる患者さんは、非喫煙者でも副流煙で発作が起きる可能性があります。喫煙者には、症状を伝え禁煙に協力してもらうか、喫煙所で吸うように伝え離れて吸ってもらい、喫煙所には近づかないようにしましょう。

5.救急外来の活用


夜間から早朝にかけて症状が出やすいことが喘息の特徴だと説明しました。

この時間帯だと、休診時間のため救急外来に頼らなくてはいけません。そうすると、朝になって診察時間まで待とうと思う方もいると思います。ですが、万が一、発作治療薬を服用しても症状が落ち着かないとますます悪化し、危険な状態になってしまうこともあります。

喘息症状で歩行や会話が困難な場合、長期管理薬の気管支拡張薬を使っても3時間以内に症状が改善しない、発作治療薬が1~2時間ごとに必要などがあれば救急外来の受診が必要と考えられます。

このようなことが起きて、救急外来を受診するときが、いきなり訪れるかもしれません。前もってどの救急外来を受診する可能性があるか調べておきましょう。

救急外来が定期検診を受けている病院以外の場合、緊急時のために、定期的に使用している薬、発作時の処置、使ってはいけない薬などは、お薬手帳などを用いて控えておきましょう。そして、救急外来を受診する場合は、喘息日記を持っていきましょう。

6.おわりに

喘息治療は長期で、発作や症状のコントロールが大きな目的です。

もう発作が出てないし、治療をやめようと思ってしまうこともあると思います。しかし、発作はいつ起きるかわかりません。

定期的な受診や、服薬をすること、喘息日記をつけることは大変かと思います。ですが、発作をコントロールすることができれば、健康な人と変わらない生活が送れます。

主治医と良いパートナーシップを築き、健康な人と変わらない生活を目指しましょう。