知っておきたい「風邪」の基本知識と対処法

1年間に風邪を引く回数は平均3~6回と言われていて、とても身近な症状です。

軽い症状で自然に治ることが多い一方、高齢者など免疫力の低下している人がかかると重症化してしまうこともあります。
また、風邪だと思って様子を見ていたら違う病気だったという場合もあります。

この記事では風邪の基本的な知識や、風邪のひき始めに行うべき対処法、病院受診の目安などについて詳しく紹介します。

1.風邪とは?


風邪は、正式には「かぜ症候群」と言います。
鼻腔から喉頭(こうとう)までの気道を「上気道」と呼び、かぜ症候群はこの上気道に急性の炎症が起こっている状態のことです。

原因としてはウイルスが多く、ライノウイルス、コロナウイルス、RSウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルスなどさまざまです。一般細菌や肺炎マイコプラズマなどの細菌が原因になることもあります。

保育園や幼稚園など集団生活が始まったばかりのお子さんがいる方は、「次から次へ風邪をもらってきて困っている」というお悩みも多いのではないでしょうか。

風邪症状を引き起こすウイルスは何百種類もあるため、一度かかって終わりとはなりません。
しかし、成長とともに徐々に抗体を獲得して免疫力が高まれば、風邪を引く回数も少なくなります。

◆『咳を伴うウイルス感染症の種類と具体的な対処法』>>

風邪の症状には次のようなものがあります。

・鼻水、鼻づまり
・のどの痛み
・発熱
・頭痛、筋肉痛
・全身倦怠感
・咳
・くしゃみ
・痰

風邪を引いてしまったら、安静にして水分・栄養補給を心がけましょう。

風邪の特効薬はないため、対症療法が基本になります。

発熱や頭痛には解熱鎮痛薬、鼻づまりには抗ヒスタミン剤など、つらい症状を緩和するための薬を服用します。

基本的には抗ウイルス薬などは不要ですが、別の細菌に二次感染してしまった場合は抗菌薬を使用することもあります。

自然に治ることも多く、4日から1週間程度で治まることがほとんどです。

しかし、免疫力が低下している高齢者や小さなお子さんなどは重症化して肺炎や気管支炎などになることもあります。
特に体力が低下している高齢者の場合、風邪が長引くことでさらに体力低下や栄養失調などに陥ります。そのため、手洗いやマスクの着用、なるべく人混みを避けるなどの予防が大切です。

また、中耳炎や副鼻腔炎、脳症(感染症などが原因で脳機能に障害が出ること)などの合併症を起こしたり、喘息が悪化したりする場合もあります。

★対症療法・・・のどの痛みや発熱などの表面化している症状を軽減する治療

【参考情報】日本呼吸器学会『かぜ症候群』
https://www.jrs.or.jp/file/disease_a01.pdf

2.ひき始めの風邪に行うべき対処法


風邪の初期段階では体内にウイルスがまだ少なく、免疫系が働きやすい状態です。
重症化を防ぎ、より早く治すためには、ひき始めの対処が肝心です。

2-1.睡眠を十分にとる

ひき始めの段階で風邪を早く治すためには、十分な睡眠をとることが大切です。

十分な睡眠をとることで体力を回復・温存し、倦怠感などの風邪の初期症状を緩和することができます。

また、睡眠は疲れを取るだけでなく、免疫機能を活性化させるという役割もあります。

睡眠が不十分だと免疫力が低下し、風邪が治りにくくなってしまいます。
風邪かもしれないと思ったら、無理をせずにゆっくり休みましょう。

【参考情報】National Library of Medicine “Behaviorally Assessed Sleep and Susceptibility to the Common Cold”
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26118561/

2-2.消化によい食事をする

風邪を早く治すためには、水分・栄養補給も大切です。

発熱がある場合は特に、脱水症状を防ぐためになるべくこまめに水分を摂る必要があります。

スポーツドリンクや経口補水液、白湯、生姜湯、ハチミツをお湯に溶いたものなどがおすすめです。体を冷やさないように、なるべく常温かあたたかい状態で飲みましょう。

また、栄養をしっかり摂ることで、免疫力を高め、風邪の症状によって消耗したエネルギーを補うことができます。

しかし、ただ栄養価の高いものを食べればいいというわけではありません。
風邪をひいている時は、胃や腸などの消化器官も弱っていることがあります。胃腸に負担をかけず吸収されやすい、消化に良いものを食べるようにしましょう。

風邪をひいている時におすすめの消化に良い食べ物には、次のようなものがあります。

・おかゆ
・湯豆腐
・温野菜(食物繊維の少ない柔らかい野菜など)
・卵
・脂身の少ない肉、魚(ささみや白身魚など)
・リンゴ、バナナ

のどが痛くて食べるのがつらい場合は、ゼリーやすりおろしたリンゴなど、のどごしの良いものを選びましょう。

焼く・炒めるといった調理方法よりは、煮る・蒸すなどした料理の方が体への負担が少ないです。

風邪の症状がつらく、料理をする元気がないという場合は、コンビニで買えるレトルトのおかゆや豆腐、生姜が入ったカップスープなどもおすすめです。

ジャンクフードなど油の多い食事や辛いもの、根菜類など食物繊維の多い野菜は、胃腸に負担がかかるため避けたほうが良いでしょう。

2-3.身体を温める

風邪をひいたとき、温めたほうが良いのか、冷やしたほうが良いのか迷うという方もいるのではないでしょうか。

発熱は、ウイルスや細菌を弱らせて免疫が作用しやすくするために体温をあげている状態です。

風邪のひき始めは熱が上がりきっていないため、まずは体を温めることが大切です。

体を温めることで血行が良くなり、免疫機能を活性化させる効果があります。
特に太い血管が通っている「首」「手首」「足首」の3つを温めましょう。

体を温める方法としては次のようなものがあります。

・温かい飲み物を摂取する
・毛布や服、暖房などで温度を調整する
・湯たんぽやカイロなどを使う
・熱が38℃未満で体力に問題がない場合は入浴する

汗をかき始めたら、熱が上がりきったということなので、脇の下や足の付け根をタオルでくるんだ保冷材などで冷やしましょう。

3.病院受診の目安


風邪をひいても1週間程度で治ることがほとんどです。
しかし、通常の風邪よりも症状が重い場合や、症状が2週間以上続いている場合は、他の病気の可能性もあります。

また、子どもの場合は症状をうまく伝えられないため、「元気がない」「食欲がない」「顔色が悪い」などいつもと違うと感じたら病院を受診しましょう。

3-1.呼吸器や鼻、耳などに症状があるとき

激しい咳や息苦しさがある場合、「肺炎」や「気管支炎」になっている可能性があります。

風邪は上気道に炎症が起きているのに対して、肺炎や気管支炎は下気道(気管から肺まで)に炎症が起きている状態です。

「風邪だと思っていたけど肺炎/気管支炎だった」というケースと、「最初は風邪をひいて、二次感染を起こして肺炎/気管支炎になった」というケースの両方が考えられます。

特に肺炎は、風邪に比べて症状が重く高熱が出やすいという特徴があります。
いつもの風邪とは違うと感じたら、呼吸器内科を受診しましょう。

◆『肺炎について』>>

また、耳や鼻の奥の痛みや詰まるような感覚がある場合は、中耳炎や副鼻腔炎になっているかもしれません。

鼻やのどにいる病原体が耳管(鼻と耳を繋いでいる管)に侵入すると中耳炎になります。
子どもは耳管が短いため中耳炎になりやすいのですが、耳の違和感を上手く伝えられない場合もあります。風邪をひいた後に聞こえにくくなっていないか、注意して様子を見ましょう。

風邪をひいて鼻の粘膜で起こった炎症が副鼻腔(鼻の周りにある空洞)に広がると、副鼻腔炎を起こすことがあります。鼻が詰まってだるさや痛みを感じ、黄色の膿のような鼻水が出てくるのが特徴です。

このような耳や鼻の症状がある場合は、耳鼻咽喉科を受診しましょう。

3-2.風邪ではない感染症を疑う症状があるとき

風邪と症状が似ている病気には次のようなものがあります。

・インフルエンザ
・新型コロナウイルス感染症
・マイコプラズマ肺炎
・風疹、麻疹(はしか)
・流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
・伝染性紅斑(リンゴ病)
・百日咳
・クループ症候群

39度以上の熱が3日以上続く場合や、発熱だけでなく発疹も見られる場合、直近で家族や身近な人が風邪以外の感染症にかかった場合は、風邪以外の感染症の可能性があるため病院を受診しましょう。

3-3.咳が2週間以上続くとき

風邪をひいた後、熱などの症状が治っても咳だけが残るということはありますが、2週間以上続くことはほとんどありません。

咳が2週間以上続く場合は喘息やCOPDなどの慢性呼吸器疾患や、肺がんのような重篤な病気の可能性があります。

◆『喘息について』>>

◆『COPDについて』>>

◆『呼吸器内科受診の目安~咳が止まらない・長引く病気』>>

いずれも早期に治療を開始することが大切ですので、咳が2週間以上続く場合は病院を受診しましょう。呼吸機能の検査機器が揃った呼吸器内科で、専門医の診察を受けるとより安心です。

4.おわりに

風邪は、基本的には1週間程度で回復するため心配ありません。早く治すためにも、安静にして水分や栄養補給を心がけましょう。

しかし、風邪をこじらせると、肺炎や気管支炎など二次感染を起こしてしまったり、喘息などの持病を悪化させてしまったりする場合があります。

また、風邪に似ている病気も多いため、他の感染症や呼吸器慢性疾患の可能性もあります。
普段の風邪よりも症状が重いと感じる場合や、咳が2週間以上続いている場合は早めに病院を受診しましょう。