無気肺ってどんな病気?
無気肺とは、どのような病気か知っていますか?
無気肺とは、なんらかの原因によって気管支や肺が閉塞・狭窄を起こし、空気が入らなくなるために、肺がつぶれたような状態になる病気です。
無気肺はさまざまな原因により引き起こされます。
今回の記事では、無気肺の種類や症状、検査、治療について詳しく解説していきます。
1.無気肺の種類
無気肺は、状態や原因によって9つの種類に分かれています。
・閉塞性無気肺
・圧排性無気肺
・癒着性無気肺
・瘢痕性無気肺
・荷重部無気肺
・円形無気肺
・板状無気肺
・中葉舌区症候群
・斑状無気肺
ここでは、無気肺の種類と原因について詳しく解説します。
1-1.閉塞性無気肺
なんらかの要因によって気管支がふさがり、または狭窄したために、肺に空気が入らなくなった状態です。
癌などの腫瘍によって気道が閉塞するケースが多いですが、喀痰がうまく出せなかったり入れ歯などを誤飲した場合にも起こります。
1-2.圧排性無気肺
肺腫瘍や肺膿瘍、膿胸などの疾患により、末梢肺が圧迫されてつぶされてしまうことが原因で起こる無気肺です。
肺疾患以外にも、胸水や気胸、心拡大なども影響します。
これらが原因となり、肺が圧迫されるために、肺の容量が減少し、無気肺が生じるのです。
1-3.癒着性無気肺
癒着性無気肺とは、「肺サーファクタント」と呼ばれる肺胞の表面活性物質が減ることで、肺が膨らみにくくなるため生じる無気肺です。
急性呼吸促迫症候群(ARDS)や肺水腫などが原因とされています。
1-4.瘢痕性無気肺(はんこんせいむきはい)
瘢痕性無気肺とは、疾患により肺が硬くなり、膨らむことができなくなるために起こる無気肺です。
間質性肺炎、過敏性肺炎、サルコイドーシス、じん肺などが原因となります。
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1-5.荷重部無気肺
荷重部無気肺とは、長期間の寝たきりの方が起こしやすい無気肺です。
肺の一部に圧力や負荷がかかると、肺の組織が圧迫され空気が入りにくくなり、無気肺を生じます。
おなじ体位で長時間の手術を受けた後にも生じる場合があり、その場合は「術後無気肺」と呼ばれることもあります。
術後無気肺の場合、原因は同一体位だけではありません。
これまでの喫煙歴や麻酔による呼吸抑制の影響も関係しています。
1-6.円形無気肺
肺の周囲は、胸膜と呼ばれる膜でおおわれています。
その胸膜に炎症が起きたり、腫瘍ができることによって肺の伸展が悪くなった場合に起こる無気肺が円形無気肺です。
胸部CTなどで円形に映るのが特徴で、腫瘍との鑑別が重要です。
1-7.板状無気肺
板状無気肺とは肺の末梢の細い気管支の閉塞によって、小さな領域の無気肺が生じた状態です。
胸部CT上で、約2~3㎝の長さ,1~3㎜の厚さで線状にみられるのが特徴です。
【参考情報】『無気肺』日本救急医学会
https://www.jaam.jp/dictionary/dictionary/word/1109.html
1-8.中葉舌区症候群
肺の気管支は、右は中葉枝、左は舌区枝と呼ばれています。
その部分に無気肺や慢性炎症をきたして生じた一連の症状が中葉舌区症候群です。
頑固で多量の痰と血痰が主症状です。
原因は、気管支拡張症や結核、非結核性リンパ節腫脹、気道内異物などがあります。
1-9.斑状無気肺
班状無気肺とは肺の一部に生じる無気肺で、さまざまな状況で生じることがあります。
2.症状
無気肺そのものに症状はありません。
しかし、無気肺を生じることで低酸素血症や肺炎を起こすきっかけになる可能性があります。
低酸素血症が起これば、呼吸困難や呼吸不全をきたし、肺炎が起これば咳や発熱、呼吸困難が症状としてあらわれます。
急激に広がった無気肺では、呼吸困難や呼吸不全といった、深刻な症状を起こす場合があり、注意が必要です。
無気肺が広範囲の場合、呼吸音の減少や打診での異常音、胸の動きの制限などを診察で確認することができます。
3.検査
無気肺を疑う場合におこなわれる検査は以下の3つです。
・胸部X線検査
・胸部CT検査
・気管支鏡検査
無気肺を起こした肺は、X線やCTで白い影として認識されます。
X線やCTは、無気肺の位置や形を調べるためにも有用です。
気管支鏡検査は、肺に気管支ファイバーとよばれるカメラを挿入して中の状態を確認する検査です。
気管支ファイバーは細くて柔らかい管で、口から挿入して気管支や肺の中の映像を見ることができます。
気管支鏡検査では、無気肺を起こしている原因を調べることができます。
【参考情報】『無気肺』メディカルノート
https://medicalnote.jp/diseases/%E7%84%A1%E6%B0%97%E8%82%BA
【参考資料】ClevelandClinic 『Atelectasis』
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/17699-atelectasis
4.治療
無気肺の治療は、無気肺を起こしている原因を取り除くことが大切です。
無気肺の原因を取り除くための方法として以下のようなものがあります。
・肺内の異物除去
・肺の拡張を促す呼吸理学療法
・深呼吸の訓練
・気管支拡張薬の吸入
・腫瘍や慢性肺疾患の治療
原因を取り除くことができた場合は、徐々に無気肺も改善してくるでしょう。
【参考情報】『無気肺』クリーブランド クリニック
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/17699-atelectasis
5.おわりに
無気肺とは、なんらかの原因によって、気管支や肺が閉塞または狭窄することで、空気が肺に入らず潰れたような状態です。
無気肺そのものに症状はありませんが、無気肺を起こすことにより、肺炎や低酸素血症を生じ、呼吸困難や呼吸不全を起こす可能性があります。
原因の除去をすることによって、無気肺は徐々に改善していくでしょう。
息切れや胸痛など、気になる症状がある場合、早めの呼吸器内科を受診しましょう。