肺サルコイドーシスってどんな病気?

サルコイドーシスは肺を始めとする眼、皮膚、心臓、神経などに、イボやしこりのような肉芽腫(にくげしゅ)と呼ばれるものができる病気です。

この記事では、肺サルコイドーシスの原因や症状、検査方法、治療に加え、妊娠中の注意点について解説します。

肺サルコイドーシスの疑いがある場合は、早めに呼吸器内科などの専門医を受診を検討しましょう。

1.原因


サルコイドーシスの原因は明確には特定されていません。複数の要因がサルコイドーシスの発症に影響を与えている可能性があります。

感染症が原因である可能性や、環境中の特定の物質(例えばカビや白カビ)に対する免疫系の異常反応が原因である可能性も指摘されています。

また、家族内での発病がごく少数ながら報告されています。一般的には遺伝しませんが遺伝的な要因も考えられるといえるでしょう。

通常、20歳から40歳の間に発症することが多いですが、年齢に関わらず発症する可能性があります。発症率は地域や人種によって異なり、とくに欧州系の方やアフリカ系アメリカ人に多く見られる傾向があります。

感染することはなく、また悪性の病気でもありません。

【参照文献】一般社団法人 呼吸器学会『呼吸器の病気 間質性肺疾患 サルコイドーシス』
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/d/d-03.html

2.症状

肺サルコイドーシスの症状には、肉芽腫ができた部位によって異なる「臓器特異的症状」と、どの部位にできても共通の「非特異的症状(全身症状)」があります。以下で、それぞれについてご説明しましょう。

2-1.臓器特異的症状

臓器特異的症状とは、侵された部位によって異なる症状が現れることです。

例えば、肺に侵された場合には咳や痰が現れ、また、眼に侵された場合にはぶどう膜炎の発症です。

そのほか、皮疹、不整脈・息切れ、神経麻痺、筋肉腫瘤、骨痛などのさまざまな臓器別の症状があります。症状には急性発症型のものと慢性発症型のものがあります。

2-2.非特異的症状

非特異的症状とは、サルコイドーシスがどの部位にできても現れる共通の全身症状のことを言います。

最初の症状としては、発熱、疲労、わずかな胸痛、けん怠感、食欲の低下、体重減少、関節痛などです。リンパ節の腫れがよくみられますが、ほとんど症状は伴いません。

病気の経過中、発熱や寝汗が繰り返し現れることもあります。

【参照文献】難病情報センター『サルコイドーシス』
https://www.nanbyou.or.jp/entry/110

【参照文献】”Pulmonary Sarcoidosis” by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/24653-pulmonary-sarcoidosis

3.検査


ほとんどの場合、胸部X線検査、CT検査を行います。両側肺門部リンパ節腫大や異常所見などの特徴的な変化を見つけることで、サルコイドーシスを疑います。

また、病変の組織を採取して、サルコイドーシスに特徴的な肉芽腫を証明することが最も重要です。

心サルコイドーシスを調べる検査の一貫として、ガリウムシンチグラムと呼ばれる検査で全身の画像検査をします。最近ではさらに感度の高い、がんの検査法の一つであるペット検査(PET検査)も同じ目的で行われています。

そのほか、血液検査、心電図検査、気管支鏡検査など、さまざまな検査を行います。また病変の部位に合わせ、眼科や皮膚科、循環器科などでの診察も行い総合的に診断します。

4.治療

治療は患者さんの病状に応じて異なります。例えば、肺にのみ病変が見られる場合や、肺門リンパ節が腫れているだけの場合は、通常は経過観察となります。

呼吸機能に障害がある場合の治療には、主にステロイド薬が用いられます。

ステロイド薬と併用して、免疫抑制剤が使用されることもあります。これには、過剰な免疫反応を抑える効果があります。

治療により完治する場合もありますが、一部の患者さんでは生涯にわたり薬の服用が必要です。重症度によっては、治療費の一部を公的資金で補助する制度の対象となることもあります。

【参照文献】日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌(日サ会誌)『治療適応:どのような症例に治療を選択導入すべきか? どのように治療を選択すべきか?』
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsogd/42/1_2/42_33/_pdf

5.妊娠・出産について

一般的にはサルコイドーシスを持つ女性の妊娠、出産は問題がないとされています。実際、妊娠するとサルコイドーシスの一部の症状、とくに肺門リンパ節の腫れは改善されることがよくあります。

一方で、妊娠しても改善が見られない患者さんや、分娩後に症状が悪化する患者さんも、おられます。

分娩後、とくに最初の3ヶ月間は症状の悪化に注意が必要です。可能であれば、分娩後1ヶ月以内、遅くとも3ヶ月以内に一度胸部の画像診断を受けましょう。

これにより、分娩後の病状の変化を適切に把握することができます。

妊娠を計画している、または妊娠中の患者さんは、必ず専門医と十分に相談し、適切な管理とフォローアップを受けることが重要です。

6.おわりに

サルコイドーシスは、肉芽腫と呼ばれる小さな炎症性の塊がからだのさまざまな部位にできる病気です。肉芽腫が最も多く形成される場所は肺ですが、無症状のことも多いです。

症状が出る場合には、持続する咳や痰、「少し動いただけでも息切れがする」などの症状が現れることがあります。

非特異的症状からサルコイドーシスを疑っている方は、まずは呼吸器内科の受診を検討しましょう。早期発見と適切な治療により悪化を防ぎ、健康的な生活を保つことが可能です。