過敏性肺炎とは

過敏性肺炎は、アレルギーの原因となるさまざまなものを吸い込むことによって引き起こされる肺のアレルギー性疾患で、肺炎の一種です。エアコンのカビなど身近なものも原因になり得ます。

この記事では、過敏性肺炎の症状、検査と治療についてご説明します。

1.過敏性肺炎とは

過敏性肺炎は、特定のもの(例えば、動物の毛や糞、真菌、細菌など)を吸い込むことで、肺がアレルギーに反応して炎症を起こし、過敏性肺炎を起こしている状態になります。

原因はさまざまなのでわからない場合もあります。原因がはっきりしていない場合と、膠原病、喫煙、薬剤、吸入物、鳥との接触などによるものに大別されます。

いずれにしても、からだの中でアレルギー反応が起こることが原因です。発症するまでの時間により、急性と慢性の2つのタイプに分けられます。

原因物質に対するアレルギー反応が続くと、肺が線維化を引き起こすことで傷ついてしまい、最終的には治りにくい状態になることがあります。

過敏性肺炎の中でも夏型過敏性肺炎とよばれるものが知られています。この疾患はトリコスポロンというカビを、知らず知らずのうちに吸い込むことによって起こります。

エアコンが原因となる事が多いため、5月から10月の間だけ症状が現れることが多いです。トリコスポロンは他にも台所や浴室にも多く繁殖しています。

夏に発症し、秋には症状が消え、数年にわたって同じ季節になると繰り返す傾向があり、日本の独特の病気といえるでしょう。

原因によって、病気の進行や治療法、予後が大きく異なるため、正確な診断が非常に重要です。原因を特定することで、最適な治療法を見つけ出し、患者さんの状態を改善させることを目指します。

【参考文献】『過敏性肺炎の病態と治療の最前線』
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/106/6/106_1212/_pdf

【参考文献】”Hypersensitivity pneumonitis” by American Lung Association
https://www.lung.org/lung-health-diseases/lung-disease-lookup/hypersensitivity-pneumonitis

2.症状


数時間から数週間で発症し、次のような症状がでます。

呼吸困難、咳、体重減少、風邪のような症状(悪寒、微熱、倦怠感)、胸部の圧迫感、呼吸時にヒューヒューという喘鳴音、そして皮膚が青くなるチアノーゼなどが現れます。

また、長い期間にわたって抗原にさらされる状態が続くと、急性な症状ではなく、咳が治らなかったりや運動時に息切れしたりなど徐々に進行する慢性型の症状が現れることがあります。

慢性の場合、気が付くのが遅れがちです。健康診断のレントゲン診断の結果や咳や息切れが長引くことが受診のきっかけになり、診断されることがあります。

3.検査


過敏性肺炎の診断にはさまざまな検査が必要ですが、 なにより症状の悪化を起こす抗原を推定することが重要です。職業に関すること、自宅・職場、自宅周囲の環境、趣味など原因となり得る可能性のものがないかを詳しく調べます。

そのうえで、以下のような検査が行われます。

画像検査:
・レントゲンやCTスキャンにより、肺の異常や炎症を視覚的に評価します。これにより、肺の形状や組織に関する情報が得られます。

呼吸機能検査:
・肺の機能を評価するために肺機能検査(PFT)が行われます。これにより、呼吸に関する異常が明らかになります。

血液検査:
・KL-6、SP-Dなどの特定のマーカーを検査し、肺疾患に関連する兆候を探ります。

真菌抗体検査:
・抗トリコスポロン・アサヒ抗体検査を通じて、真菌に対する抗体の有無を確認します。

運動試験:
・6分間平地歩行テストを実施し、運動に対する耐性を評価します。心肺機能に問題のある患者さんの評価に役立ちます。

・歩行中の酸素飽和度、息切れ、脈拍数などが測定され、運動耐容能の評価やリスク管理の指標として使用されます。

特異抗原検査:
・症状や疑わしい原因物質に基づいて、特異抗原検査が行われることがあります。これにより、特定のアレルギー反応が確認できます。

気管支鏡検査:
・原因特定が難しい場合、気管支鏡検査が行われる場合や、必要に応じて胸腔鏡補助下肺手術(VATS)による肺部分切除術が実施されることがあります。これにより、肺組織の細胞や組織を採取し、病変や異常を詳細に調査します。

・気管支鏡と呼ばれる胃カメラよりもさらに細い管を口から挿入し、気管・気管支の内部を観察します。

4.治療


治療するには、まず原因となる物質を特定して避けることが第一優先です。その上で、薬により肺の炎症をおさえ、治療を進めます。以下に、急性、慢性の場合の治療についてご説明します。

4−1. 急性過敏性肺炎の治療

急性過敏性肺炎では、まず抗原(アレルギーの原因)を避けることが大切です。

夏型過敏性肺炎の場合、とくに環境改善が重要で、エアコンなどトリコスポロンが繁殖しやすい場所を改善します。腐った木、寝具、畳、カーペットなどを処分し、改善が見られない場合は引っ越しも考慮されます。

鳥関連過敏性肺炎では、鳥の飼育を中止し、羽毛布団を捨てることが推奨されます。また、鳥の多い場所を避け、マスクの使用が必要です。

加湿器の場合はフィルターの交換と機器の洗浄が重要です。

軽症の場合は抗原回避だけで改善することもあり、必要に応じて短期間のステロイド使用も考慮されます。中等症以上の呼吸不全がある場合は、ステロイドの投与が必要で、処方量は患者さんの状態に応じて調整されます。

4−2. 慢性過敏性肺炎の治療

慢性過敏性肺炎でも抗原回避が必要です。ステロイドの使用も考慮されます。

肺組織の線維化が進行する場合や呼吸不全が進んでいる場合は、長期のステロイドが検討されます。同時にシクロスポリンなどの免疫抑制薬が併用されることもあります。

5.おわりに

過敏性肺炎の原因は身近なものの場合も多く、あらゆるものが抗原になる可能性があります。知らない間に症状が進行しているケースも少なくありません。

重症化した場合、肺の線維化を起こすこともあるので悪化するまえに治療を開始しましょう。

咳が続いたり、息苦しさがあったりなどの症状がある場合は、呼吸器専門医のいる病院への早めの受診を検討してください。