肺水腫とは?

「肺水腫」とは、肺の組織や空気の通路に異常な量の液体がたまっている状態のことです。

肺は、酸素の吸収と二酸化炭素の排出に不可欠な器官で、肺の中には肺胞と呼ばれる多数の小さな袋状の構造があり、呼吸時のガス交換を行っています。

肺胞の表面は、網目状の毛細血管で覆われています。この毛細血管には効率的に空気中の酸素を血液に取り込み、代わりに二酸化炭素を外に放出する役割があります。

肺水腫では、毛細血管からの水分が肺胞に漏れ出し溜まっているので、酸素と二酸化炭素の交換が妨げられ、呼吸効率が低下します。重症化した場合、呼吸不全に至ります。

症状が悪化し致命的な状態になる前に、肺水腫の前兆や初期症状に気づき、早めに呼吸器内科などの医療機関を受診することが非常に重要です。

この記事では、肺水腫の原因や症状、検査と治療についてご説明します。

1.原因


肺水腫は原因によって静水圧性肺水腫、透過性亢進型肺水腫、混合型肺水腫の3つに分類されます。それぞれの原因をご説明します。

1-1.静水圧性肺水腫

静水圧性肺水腫は、多くの場合、心臓の病気が原因となっています。これらは「心原性肺水腫」と呼ばれています。

原因の疾患は心臓弁膜症や心筋梗塞などです。心臓の機能が低下し肺から心臓へ戻る血液の流れが不充分になることで、肺に液体がたまり肺水腫になります。

また、静水圧性肺水腫は、肺静脈の閉塞によっても引き起こされることがあります。

1-2.透過性亢進型肺水腫

透過性亢進型肺水腫は、別名、「急性呼吸窮迫症候群」と呼ばれ、特定の状況で発症する深刻な肺の病態です。

原因として、感染症や外傷などがあります。たとえば、誤嚥(胃内容物が誤って肺に入ること)、重症肺炎、刺激性ガスの吸入、または敗血症(病原菌が血液に侵入し全身に炎症反応を引き起こす状態)などです。

毛細血管の透過性が異常に高まり、肺胞内に血漿成分が漏れ出ることによって生じます。透過性亢進型肺水腫は非常に重篤な状態であり、適切な治療が必要です。

【参照文献】炎症VOL.4 『透過性亢 進型肺水腫 におけ る病態生理ー特に化学伝達物質の役割』
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsir1981/4/4/4_4_301/_pdf/-char/ja

1-3.混合型肺水腫

混合型肺水腫は、静水圧性肺水腫と透過性亢進型肺水腫の両方の要因が組み合わさった状態を指します。心不全や心臓疾患による静水圧性要因と、感染症や外傷などによる透過性亢進要因が合わさった状態です。

2.症状


肺水腫の症状として、まず、呼吸困難が起こります。横になるととくに息苦しさが増すため、起き上がって座った姿勢を取ったり(起座呼吸)、また、夜間に突然息苦しさで目が覚めること(発作性夜間呼吸困難)もあります。

また、泡状の痰(泡沫痰)が出ることがあり、色はピンク色(薄い血液の色)です。さらに、胸がゼーゼーとした音を立てる(喘鳴)こともあります。

症状が進行すると、チアノーゼ(皮膚や口唇が紫色に変わる)が起こり、冷や汗をかいてショック状態に陥る可能性があります。

【参照文献】 一般社団法人日本呼吸器学会『肺水腫』
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/f/f-03.html

【参照文献】”Pulmonary edema” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/pulmonary-edema/symptoms-causes/syc-20377009

3.検査


肺水腫の検査には、以下のような方法があります。

<胸部レントゲンや胸部CTなどの画像検査>

血管や気管支の周りに液体成分があるか、心臓や肺血管が通常より大きくなっていないかを確認します。

肺水腫の方の場合、正常の胸部レントゲンと比較すると、心陰影の拡大や両側肺野の血管陰影増強がみられることが特徴です。

肺水腫の診断においてこのような典型的な画像があれば、胸部レントゲンの所見で比較的容易に診断をつけることが可能です。

また、聴診器を当てると胸全体に「ゴロゴロ」という音がすることが肺水腫の特徴です。

<動脈血ガス分析>

血液中の酸素や二酸化炭素について調べ、低酸素血症かどうかを確認します。肺水腫の患者さんの場合、血液中の酸素量が少ないことが特徴です。最近では、経皮的酸素飽和度で簡単に測定が可能になっています。

<その他の検査>

肺水腫の原因となった病気を疑う場合は、血液検査や痰の培養検査、心臓のカテーテル検査などを行う場合もあります。

4.治療


肺水腫の治療は、その原因に応じて行われます。

一般的な治療法には、酸素療法、肺胞内の水分除去のための利尿剤投与、循環器系の治療、および原因となる疾患の治療があります。重症の場合は、人工呼吸器を使用することがあります。

心不全による肺水腫の場合、循環器系の治療が中心となります。感染症による肺水腫の場合は、抗菌薬を始めとした感染症の治療が実施されます。

また、透過性亢進型肺水腫の治療においては、循環動態の安定化や酸素供給の確保が重要です。

【参照文献】一般社団法人日本呼吸器学会『呼吸器の病気 肺血管性病変』
https://www.jrs.or.jp/file/disease_f03.pdf

5.おわりに

肺水腫は心筋梗塞や他の心臓病などの病気が原因で発生することがあります。進行すると命に関わる重大な状態に至る可能性があるので正しい治療を受けることが大切です。

一般的な症状には、息切れ、咳、疲労感、胸の圧迫感などがあります。息切れや呼吸がしにくいなどの症状がある場合には、早めに医療機関を受診することが重要です。

重症化する前に、適切な診断と治療を開始しましょう。とくに、症状が重い場合には、迷わず救急車を呼ぶべきです。

肺水腫のリスクを減らすには、健康的な生活習慣を心がけることも大切です。

バランスの取れた食事、定期的な運動、十分な休息、ストレスの緩和、禁煙などを心がけましょう。健康的な生活習慣は、心臓病やその他の肺の病気の発症を減らすのにも効果的です。

既往歴がある方や、心臓病のリスクが高い方は、とくに注意が必要です。定期的な健康診断を受けることも肺水腫の予防になります。

常にご自身や周りの方のからだの変化に注意を払い、異常を感じたらすぐに呼吸器専門家の診断を受けましょう。