いびきと口呼吸の関係とは?更年期に悪化する理由と効果的な対策

更年期に入り、最近いびきがひどくなった、朝起きると喉がカラカラに乾いている…そんなお悩みはありませんか?

女性ホルモンの変化により鼻や喉の粘膜が乾燥しやすくなり、睡眠中に口呼吸が増えるといびきが悪化しやすくなります。

この記事では更年期の体の変化といびきの関係を整理し、睡眠の質を改善するセルフケアや受診の目安について解説します。

1. 更年期のホルモン変化と口呼吸・いびきの関係


更年期には体内の女性ホルモン量が大きく変化し、それに伴い様々な不調が起こります。

中でも粘膜の乾燥は、更年期世代によくみられる症状の一つです。

1-1. 女性ホルモンの減少と粘膜の乾燥

更年期に卵巣から分泌されるエストロゲン(女性ホルモン)が大幅に減少すると、肌や粘膜に潤いを与える働きが弱まり、鼻や喉の粘膜が薄く乾燥しやすくなります。

粘液の分泌量が減って防御機能が低下するため、ドライノーズ(鼻の乾燥)やドライマウス(口の乾燥)に悩む方が増え、「鼻の中がヒリヒリする」「粘膜がカサカサして鼻血が出やすい」といった症状も現れやすくなるのです。

また、喉の粘膜も同様に影響を受け、唾液の減少によって口内のネバつきや不快感に悩まされることも少なくありません。

◆『更年期の息苦しさと呼吸器症状の違いについて』について>>

1-2. 鼻・喉に表れる乾燥の症状

エストロゲン低下による粘膜の変化は、具体的な不調として現れてきます。

更年期には「鼻が詰まりやすい」と感じる方が増えますが、これはホルモン変化で鼻粘膜の血流が変わり、粘膜が腫れて鼻づまり(鼻閉)を起こすことがあるからです。

鼻が乾燥すると粘膜の防御力が低下して風邪やアレルギー症状が悪化しやすくなるほか、鼻の通りが悪いことで無意識に口呼吸になり、喉はますます乾燥してしまいます。

このように、更年期は鼻呼吸がしづらい状況が生まれやすく、結果として口呼吸の頻度が高まる傾向にあるのです。

【参照文献】『異物摘出に必要な気管 ・気管支の構造 と機能』奈良県立医科大学耳鼻咽喉科学教室
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbes1950/40/1/40_1_68/_pdf/-char/ja

2. なぜ口呼吸でいびきが起こる?医学的メカニズムを解説


口呼吸とは、鼻ではなく口で息をすることです。

鼻呼吸と比べて口呼吸には様々なデメリットがあり、その代表が「いびき」です。

2-1. 鼻呼吸と口呼吸の違い

人間は本来、安静時には鼻で呼吸をします。

鼻には吸い込んだ空気を加湿・加温し、ほこりや細菌を除去するフィルターの役割があります。

「冷たく乾燥した空気でも、鼻を通れば適切な温度と湿度に調節されて体内に取り込まれるのです。

一方、口呼吸ではこの機能を通さず空気が直接喉へ入るため、喉の粘膜が乾燥して荒れやすくなり、起床時の喉の痛みや口内のネバつきの原因になります。

また、異物を排除できないため感染症にかかりやすくなるデメリットもあります。

2-2. 口呼吸で気道が狭くなるといびきに

就寝中に口が開いていると、舌や軟口蓋(なんこうがい:口蓋垂を含む、口の奥の柔らかい部分)が喉の奥に落ち込み、気道(空気の通り道)を塞ぎやすくなります。

その結果、気道が狭くなると呼吸時に粘膜が振動して「グーグー」といった大きないびき音が生じるのです。

実際、いびきをかく人の多くは口を開けたまま眠っています。

口呼吸は鼻呼吸よりも物理的に気道を狭めてしまうため、いびきの大きな原因となるのです。

【参考情報】『乾燥する季節 口呼吸への注意と対策』サワイ健康推進課
https://kenko.sawai.co.jp/theme/202111.html

2-3. いびきが睡眠の質に与える影響

いびきは睡眠の質を低下させる大きな要因です。

たとえば、朝起きたときに口の中が乾いていたり喉が痛むようであれば、睡眠中に口呼吸になり、いびきをかいていた可能性が高いでしょう。

いびきにより十分な酸素が取り込めないと、深い睡眠が妨げられ「疲れが取れない」「日中の強い眠気」といった不調につながるほか、、習慣化すると集中力低下など健康に悪影響を及ぼす恐れもあります。

中途覚醒(ちゅうとかくせい)や起床時の頭痛がある場合も同様に、いびきによる睡眠の質低下を疑ってみてください。

◆『いびきと睡眠の質の関係について』について>>

3. いびき・口呼吸を減らすためのセルフケア


更年期によるいびき悪化も、生活習慣の工夫で改善できる場合があります。

ここではご自宅で実践できる対策を紹介します。

3-1. 鼻・喉の乾燥を防ぐ工夫

まず、粘膜を乾燥させないことが重要です。

寝室の湿度は50~60%を目安に保つようにし、加湿器や濡れタオルを干すといった工夫も取り入れましょう。

あわせて、乾燥する季節は日中もこまめに水分補給を行って、内側から粘膜の潤いを維持することも大切です。

さらに直接的なケアとして、生理食塩水での鼻うがいや、鼻粘膜用の保湿ジェル・スプレーを使ったり、就寝前に蒸気を吸入して鼻や喉を湿らせておくのも効果的です。

喉が乾燥しやすい方は、寝る前の一口の水や、保湿マスクの利用も試してみてください。

◆『乾燥と咳の関係について』について>>

【参照文献】『冬季における室内の加湿方法の検証』日本看護学会抄録集 看護総合
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200902236089150189

3-2. 鼻呼吸を促す習慣づくり

日中は意識して口を閉じ、鼻で息をする習慣をつけましょう。

マスク着用時は鼻呼吸が疎かになりがちなので、外せる場面では意識的に鼻呼吸を心がけてみてください。

一方、ご自身でコントロールが難しい就寝中は、道具を活用するのも一つの手です。

市販の口閉じテープで無意識の開口を防いだり、鼻孔拡張テープで鼻呼吸を助けたりする方法がありますし、重症の場合は、歯科で作成する就寝用マウスピースで気道を広げるという選択肢もあります。

ただし、慢性的な鼻炎など根本的に鼻呼吸を妨げる原因がある場合は、耳鼻咽喉科での治療が優先されます。

鼻づまりを放置すると口呼吸といびきの悪循環に陥りやすいため、早めに専門医へ相談しましょう。

3-3. 良質な睡眠のための生活習慣

体重管理もいびき対策には欠かせません。

肥満気味の方は喉周りの脂肪で気道が狭くなりやすいため、適正体重を維持することがいびき改善につながります。

あわせて、喉の筋肉を緩めていびきを悪化させてしまう寝酒や喫煙も、できる範囲で控えるようにしましょう。

また、睡眠時の姿勢は、舌が喉に落ち込みやすい仰向けを避け、気道を確保しやすい「横向き」にするのがおすすめです。抱き枕を活用して横向き姿勢を安定させたり、寝具を自分に合ったものに見直すのも良いでしょう。

さらに、日中に適度な運動を取り入れると自律神経が整い、夜の入眠がスムーズになりますので、規則正しい生活で質の良い睡眠を目指してください。

3-4. 喉の筋肉を鍛えるエクササイズ

喉や舌の筋肉を鍛えることもいびき予防になります。

口を大きく開けて「アー」と声を伸ばす練習は、喉周りの筋肉強化に役立ちます。

また、舌を前後に動かしたり上あごに押し付ける体操、口角を上げ下げする表情筋トレーニングも有効です。

これらを継続することで、就寝時に気道が狭くなりにくくなり、いびきの軽減が期待できます。

4. 睡眠時無呼吸症候群の可能性と受診の目安


対策をしてもいびきが改善しない場合や、いびきの音は小さくても「日中の眠気」「朝の頭痛」がある場合は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)などの病気が隠れている可能性があります。

更年期以降の女性は、ホルモンや体型の変化によりSASのリスクが高まることが知られています。

4-1. 要注意ないびきの症状

以下の症状に当てはまるものがあるか確認してください。

【こんな症状はありませんか?】
✓ 睡眠中にいびきが途切れ、「プツッ」と呼吸が止まる瞬間がある
✓ 家族から「いびきが酷い」「息が止まっている」と指摘された
✓ 起床時に頭痛がする
✓ 熟睡感がない
✓ 日中に強い眠気がある
✓ 朝起きたときに口の中がカラカラに乾いている
✓ 夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)

いびきの音が大きくなくても油断はできません。

これらは睡眠中に十分な酸素を取り込めていないサインであり、放置すると高血圧だけでなく、不整脈や心不全、脳卒中、糖尿病といった重大な病気のリスクを高める原因になりえます。

◆『睡眠時無呼吸症候群とは?』について>>

【参考情報】『夜、いびきをかく、と言われました。』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q14.html

4-2. 専門医での検査と治療

上記の症状がある場合は、医療機関に相談しましょう。

SASは、簡易検査や精密検査で無呼吸の程度を調べ、その重症度に応じた適切な治療を行うことで改善が期待できる病気です。

治療法としては、就寝時に鼻マスクから空気を送り込むCPAP療法(持続陽圧呼吸療法)や、下あごを固定するマウスピース治療などが挙げられます。

当院で対応しているのは、CPAP療法だけです。

放置すると低酸素状態による高血圧や心疾患のリスクが高まるため、「たかがいびき」と軽視してはいけません。

不安な場合は医師に相談し、適切な治療で睡眠の質の改善を目指しましょう。

◆『呼吸器内科で行う検査の種類について』について>>

◆『呼吸器内科でわかること・受診の目安について』について>>

5. おわりに

更年期におけるホルモンバランスの変化は、鼻・喉の乾燥から口呼吸の増加、ひいてはいびきの悪化につながりやすくなります。

しかし、保湿や鼻呼吸の習慣づけ、生活習慣の見直しによって軽減は可能です。

もし対策をしても改善しない場合や、いびきの音が小さくても「日中の眠気」「熟睡感のなさ」を感じる場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。

音の大きさだけで判断せず、体の不調に目を向けることが大切です。

まずはできることから始め、必要に応じて医療機関のサポートも活用しながら、安心して眠れる環境を整えていきましょう。