喘息持ちで旅行が心配。喘息でも安心して旅行するには

喘息があることで、ふだんから、いつ発作が起こるかわからないという不安を感じることが多いと思います。

楽しいはずの旅行でも、慣れない環境ということもあり、体調を崩して発作を起こしてしまうのではないかと不安を感じ、旅行に行くことさえ諦めたくなるかもしれません。

今回の記事では喘息でも安心して旅行に行くために必要なことについて説明します。喘息があっても旅行を楽しみたいと思っている人はぜひ参考に読んでください。

1.処方薬の携帯


旅行はいつもと違う慣れない環境になるため、ふだんからしっかり喘息をコントロールしておくことが大切です。

旅行中も発作が起きないように継続してコントロールする必要があるため、ふだんから使用している、医師から処方された薬を必ず携帯するようにしましょう。

天候の変化やトラブルで日程が延びても対応できるよう、旅行に行く期間よりも多めに薬を持参することをおすすめします。

旅行に行く前の受診の際には念のため主治医へ報告をし、注意点なども聞いておくようにしましょう。

旅行前、旅行中は薬の使用を継続することが重要ですが、慣れない環境の中で何が起きるかはわかりません。

体調が悪くなったときに慌てないよう、旅行先の医療機関を調べておくことも忘れないでください。

旅行先が海外の場合は念のため、主治医から英文の紹介状を書いてもらうとより安心です。
当院では英文の紹介状は、自費での作成で対応しております。

【参考情報】『ぜん息をコントロールする ぜん息と旅行』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/control/travel.html

2.必須!吸入薬の機内への持ち込み


飛行機を利用する旅行の場合は事前の入念な情報確認や証明書等の準備が必要になることがあります。

機内は外気の湿度をあまり取り込まないことから、長時間の飛行では湿度が20%になるほど乾燥しています。

また上空を飛行することで気圧の変化もあり、喘息患者の場合、乾燥と気圧の変化から咳の症状が出やすくなる可能性があります。

機内持ち込み可能な手荷物のルールにより、吸入薬を持ち込めないのではないかと不安に思われる人もいますが、吸入薬を手荷物として機内へ持ち込むことは可能なので、忘れずに持っていくようにしましょう。

ただし、薬を持ち込む場合、事前に診断書の提出が求められることがあるため、機内への持ち込みについては、航空会社への問い合わせやホームページからしっかり確認してください。

また、テロや違法薬物の持ち込み防止が強化されていることで、手荷物検査が厳重になり、薬についても説明が求められる場合があります。

海外などでは説明ができない場合、入国ができなくなってしまうため、英文または訪問先の言語で記載された「薬剤証明書」があると安心です。

【参考情報】 Transportation Security Administration『Can you pack your meds in a pill case and more questions answered』
https://www.tsa.gov/travel/travel-tips/can-you-pack-your-meds-pill-case-and-more-questions-answered

3.喘息であることを宿泊先へ知らせる・相談する


宿泊先によってはダニやカビ、喫煙後の部屋になることで発作の原因となる可能性があります。

予約の際に喘息であることを伝え、禁煙室やアレルギー対応の寝具について相談することがおすすめです。

加湿器や空気清浄機を用意している宿泊施設もあるため、必要に応じて用意してもらいましょう。

他にも、温泉の匂い(硫黄)や花火、キャンプファイヤーなどの煙が刺激となり発作を起こすこともあります。

修学旅行など、学校の行事で旅行に行く場合は主治医と担任の先生に相談しておきましょう。必要な対策があれば事前に依頼しておくことも大切です。

使用している薬や発作時の対応について担任や養護教諭と連携しておくと、発作が起きた時や医療機関へ行く必要があった場合などでも安心です。

◆『咳が止まらないのはなぜ?アレルギーが原因かもしれません』>>

【参考情報】『ぜん息などの情報館 寝具はどのようにしたらよいのでしょうか?』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/child/09_04_05.html

【参考情報】Teens Health 『Traveling and Asthma』
https://kidshealth.org/en/teens/travel-asthma.html

4.同行者へも喘息について知らせておこう


同行者がいる旅行の場合、喘息について知らないと症状が出た際に理解してもらえなかったり、発作が起きて驚かせてしまったりすることになります。

みんなが楽しみに計画する旅行でもあるため、同行者には喘息について伝え、同意を得てから話を進めるようにしましょう。

発作など、体調に変化があったときに慌てずサポートしてもらうためにも、事前の共有は大切です。

◆『喘息治療について』>>

◆『段階別!喘息発作が起きた時の対処法について』>>

5.余裕のあるスケジュールで


旅行になると、限られた時間の中で行きたいところも多く、観光や食べ歩きなど、予定を詰め込みやすくなると思います。

楽しく過ごしていると疲労も感じにくいため、宿泊先に帰ってみて、気づいたらぐったりしているということもあるのではないでしょうか。

観光など移動が多い旅行は、気づかないうちにいつも以上に体への負担がかかっています。

旅行先によっては気候の違いや時差などもあり、さらに負担が大きく発作を起こしてしまうこともあります。

◆『季節の変化と喘息発作の予防』>>

移動が少なく回りやすいルートや観光先の優先度を決めるなど、工夫をしながら適度な休憩を入れるようにしてください。

体調を崩さないように旅行を楽しむためには、無理のないスケジュールを組むことが大切です。

旅行に行くまでにはたくさんの準備があるため、体調がいまいちでも「これくらいなら大丈夫」と無理をしてしまいたくなりますが、時には中止・中断の判断が必要になることもあります。

6.おわりに

旅行ではダイビングやシュノーケルなどのアウトドアスポーツを行う機会もあると思います。口呼吸で行い、水中といういつもと違う環境での運動では負担も大きく、発作を起こすリスクが高くなります。

また、水中ということもあり発作が起きた場合に呼吸が確保できない危険から、安全に行うために医師の診断書がないと参加できないこともあります。
当院では、喘息患者さんのダイビングについて、実施はおすすめしない方針で診療しております。

喘息があると旅行に行くことにも不安を感じ、なかなか行動にうつせなくなることもあると思います。

ふだんから継続した治療でしっかりコントロールし、必要な準備を行うことで、安心して楽しく旅行に行くことも可能です。

旅行を計画している場合は、かかりつけ医に報告し、事前に必要な対策などをしっかり相談するようにしましょう。