喘息がアレルギーと関わっている?

喘息は、多くの場合アレルギーと密接に関連しています。アレルギー物質がからだに入ると、気道が過敏になり、喘息発作を引き起こすことが原因です。

この記事では、喘息の原因やアレルギーとの関係、発作を引き起こすアレルゲン、治療法についてご説明いたします。

適切な治療と日常生活の工夫で、アレルギーによる喘息症状の改善や発作を減らすことが可能です。

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1.喘息の原因とは


喘息は、気道が炎症を起こし、狭くなることで呼吸が困難になる病気です。

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炎症によって気道が過敏になっているため、わずかな刺激やアレルゲンにも敏感に反応します。喘息の原因はひとつではなく、遺伝的な要因や環境要因が複雑に関与していると考えられます。

たとえば、以下のような原因です。

・アレルギー反応

喘息の発症や悪化に最も多く関与しているのがアレルギー反応です。ハウスダストや花粉、ペットの毛、カビなどがアレルゲンとなります。それらのアレルゲンに接触すると免疫系が過剰に反応し、気道が炎症を起こします。

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・遺伝的要因

喘息はご家族に同じ病歴を持つ方がいる場合に発症しやすいとされています。もしご家族に喘息患者さんがいれば、遺伝的に気道が過敏である可能性が高いといえます。

・環境要因

空気の質や生活習慣も喘息の発症や悪化に影響を与えます。たとえば、大気汚染やタバコの煙は喘息のリスクを高め、また、ストレスや運動も喘息悪化のきっかけとなることがあります。

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これらの要因が重なることで、気道の過剰な収縮や炎症が引き起こされ、喘息の症状が現れます。

2.アレルギー疾患のひとつである喘息

喘息のうちアレルギー性喘息と呼ばれるタイプは、特定のアレルゲンに対して過剰に反応することにより発作が誘発されます。

アレルギー性喘息では、花粉やダニ、ペットのフケなどに対して免疫系が過敏に反応し、これらのアレルゲンが引き金となって気道が炎症を起こします。

その結果、気道が狭くなり、呼吸が困難になることがあります。この状態がいわゆる喘息発作です。

アレルギー性喘息はお子さまから大人の方まで幅広い年齢層にみられます。

とくに幼少期にアレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎を持っているお子さまは、喘息を発症するリスクが高いとされています。

アレルギー性喘息を持つ方は、通常、アレルギー検査で特定のアレルゲンに対する反応が強く出ることが多いです。

したがって、アレルゲンを特定し、できるだけそれを避ける生活が喘息発作の予防に役立ちます。一方で、完全にアレルゲンを除去しても、喘息が完治することはないので、併行して治療も必要です。

【参考情報】Cleveland Clinic “Allergic Asthma”
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/21461-allergic-asthma

3.喘息発作を誘発するアレルギー物質とは

喘息発作は、日常生活に潜んでいるさまざまなアレルゲンによって誘発されることがあります。ここからは、代表的なアレルギー物質についてご説明しましょう。

・ハウスダストやダニ

室内のほこりやダニは、喘息発作を最も引き起こしやすいアレルゲンのひとつです。

とくに寝具やカーペットにダニが繁殖しやすいため、定期的な掃除や寝具の洗濯が必要だといえます。

また、湿度が高いとダニが繁殖しやすくなるため、湿気を適切に保つことも大切です。

・花粉

花粉アレルギーを持つ方は、特定の季節に花粉が飛散することで喘息が悪化する場合があります。

スギやヒノキの花粉が代表的で、春から初夏にかけて症状が強くなることが多いです。

そのほかの季節においても、花粉は一年中飛散しています。そのため、ご自分のアレルゲンとなる花粉が何の種類であるか把握しておくことが大切です。

・ペットの毛やフケ

犬や猫などのペットの毛や皮膚のフケも強力なアレルゲンです。アレルギーがある場合、ペットとの接触を最小限にするか、アレルギーを引き起こさないペットを選ぶことも考えましょう。

・カビ

湿気の多い環境で発生するカビは、とくに喘息を悪化させる原因となります。カビの胞子が空気中に浮遊することで、呼吸器に刺激を与え、発作を引き起こすことがあります。

・タバコの煙

喫煙や受動喫煙も喘息を悪化させる要因のひとつです。

タバコの煙は、気道を強く刺激し、炎症を引き起こすため、喘息患者さんにとって非常に危険です。

これらのアレルゲンをできるだけ避けることが、喘息発作を予防するための第一歩です。
アレルゲンに対して敏感であることを自覚し、生活環境を整えることが症状の管理につながります。

4.喘息の治療について


喘息の治療は、長期的な症状のコントロールを目指して行われます。

治療の目標は、喘息発作の頻度を減らし重症化せず、患者さんができるだけ快適な日常生活を送れるようにすることです。以下で、詳しくご説明いたしましょう。

4-1.治療の目標について

日本アレルギー学会の「喘息予防・管理ガイドライン」によると、成人喘息の治療目標は「健康な人と変わらない日常生活を送ること」です。

日常生活や運動に支障がない状態を目指すものであり、喘息患者さんが発作や症状に悩まされず、生活の質を保ちながら過ごせるようにすることが目的です。

この目標を達成するためには、次のポイントが重要です。

気道の炎症を引き起こす危険因子の回避・除去

ダニや花粉、タバコの煙など、喘息を悪化させる要因をできるだけ生活環境から取り除くことが必要です。

薬物治療による呼吸機能の維持

適切な薬物療法を行い、気道の炎症を抑えることで、呼吸機能を正常に近い状態に保つことが治療の大きな目標です。

これにより、次のような成果が期待されます。

呼吸機能の低下を防ぐ
喘息死を回避する
治療薬の副作用を最小限に抑える

このように、適切な薬の使用と自己管理をしっかり行うことで、喘息はご自分でコントロールできる病気です。

とくに、症状が出ないように予防的な薬物治療を継続し、自己管理を徹底することが大切です。

症状がまったく出ない状態を「コントロール良好」といい、この状態を維持することが治療の理想的なゴールです。

【参照文献】独立行政法人 環境再生保全機構 『成人ぜん息の治療、治療の全体図』
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/control/index.html

◆『喘息治療のゴールについて』>>

4-2.吸入ステロイド薬について

喘息治療の基本となるのが、吸入ステロイド薬です。吸入ステロイドは、気道の炎症を抑える効果があり、喘息発作を予防するために日常的に使用されます。

吸入ステロイドは発作がない時でも毎日定期的に使用することが必要です。これにより、気道の慢性的な炎症を抑え、発作を防ぐことができます。

大きな利点は、薬が直接気道に届くため、全身への副作用が少ない点だといえます。

4-3.抗アレルギー薬について

抗アレルギー薬は、アレルギー反応によって引き起こされる喘息発作を防ぐために使われることがあります。とくにアレルギー性喘息を持つ患者さんにとって、抗アレルギー薬は有効です。

主な抗アレルギー薬には次のようなものがあります。

・抗ヒスタミン薬:花粉やダニ、ペットの毛などのアレルゲンに対する過剰な免疫反応を抑えます。

・ロイコトリエン受容体拮抗薬:気道の炎症を引き起こす物質であるロイコトリエンを抑制し、喘息の症状を和らげます。これにより、発作が起こりにくくなります。

抗アレルギー薬は、吸入ステロイド*と併用することでさらに効果を発揮します。アレルギー性喘息の治療には、これらの薬を適切に組み合わせ、症状の軽減を図ることが重要です。

※吸入ステロイド薬:気道の炎症などを抑え、発作を予防するために毎日服用する長期管理薬。

5.おわりに

喘息は、アレルギーが深く関わる慢性の呼吸器疾患ですが、適切な治療を行うことで症状をコントロールし、生活の質を向上させることができます。

ハウスダストや花粉、ペットの毛などのアレルゲンをできるだけ避けることが、発作の予防に効果的です。また、吸入ステロイド薬や抗アレルギー薬を医師の指導のもとで適切に使用し、定期的な治療を行うことが大切です。
喘息は長期的な治療が必要な病気ですが、正しい知識を持ち、医師と協力して治療を続けることで、発作を予防し、より健康的な生活を送ることが可能です。

症状が改善しない場合や新たな症状が現れた際には、早めに呼吸器内科の専門医に相談し、適切な対応を受けましょう。