喘息予防、発作予防にも有効なマスクの選び方と使い方

新型コロナウイルスの流行をきっかけに、マスクは今まで以上に生活に欠かせないアイテムとなりました。

令和5年の3月からマスクの着用は個人の判断に委ねられていますが、依然として医療機関や高齢者施設、人が多い場所では、マスクの着用が推奨されています。

この記事では、マスクの機能や選び方、さらに喘息の患者さんがマスクを着用するメリットなどについて、詳しく解説します。

快適かつ効果的にマスクを着用するためにも、ぜひ参考にしてみてください。

1.マスクの役割について


マスクには次のような役割があります。
・アレルゲンや病原体の侵入を防ぐ
・感染症の予防
・気道の保温・保湿
・砂埃や煙などを吸い込まないようにする
・公共の場でのマナーやエチケットとして

特に、「アレルゲンや病原体の侵入を防ぐ」「感染症の予防」「気道の保温・保湿」は喘息発作を防ぐためにも効果的です。

1-1. アレルゲンの侵入を防ぐ

喘息は主にアレルギーが原因となる「アトピー型喘息」と、アレルギー以外の物が原因となる「非アトピー型喘息」の2つのタイプに分類されます。

◆『喘息について』>>

基本的にはアトピー型喘息は小児に多く、非アトピー型喘息は成人に多いのですが、両方が合併しているケースもあります。

アトピー型喘息は、ほこりやダニなどのハウスダスト、ペットの毛、花粉などのアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)が原因で起こります。
これらのアレルゲンが鼻や口から体内に入ると、免疫系が過剰に反応して気道に炎症が生じ、喘息症状が現れます。
アトピー型喘息は、通常、アレルゲンに曝露されてから30分以内に症状が現れるのが特徴です。

アトピー型喘息の発作を予防するためには、原因となるアレルゲンを避けることが大切です。
特に春や秋など症状が悪化しやすい季節はマスクを着用し、アレルゲンの侵入を防ぎましょう。

【参考情報】Cleveland Clinic “Allergic Asthma”
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/21461-allergic-asthma

1-2.感染症の予防

非アトピー型喘息は、感染症やタバコの煙、薬剤、運動、天候、ストレス、アルコール、肥満など、アレルギー以外の物が原因となって起こります。

中でも、風邪やインフルエンザなどの呼吸器感染症が原因として最も多いと言われています。
感染症による気道の炎症がきっかけとなって喘息に発展するため、マスクを着用し、病原菌の侵入を防ぎましょう。

特に、インフルエンザは喘息の天敵です。

喘息の患者さんは、発作が起きていない時でも気道に慢性的な炎症が起こっている状態です。
そのため、健康な人に比べてインフルエンザが重症化しやすく、喘息発作や肺炎を併発しやすい傾向にあります。

インフルエンザが流行している時期は、予防接種に加えて、マスク・手洗い・うがいを徹底しましょう。

【参考情報】厚生労働省『新型インフルエンザ対策 ぜんそくなどの呼吸器疾患のある方へ』
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/pdf/09-18-01.pdf

◆『知っておきたい「風邪」の基本知識と対処法』>>
◆『インフルエンザとはどんな病気?』>>

1-3.気道の保温・保湿

急激な温度変化や乾燥した空気も、喘息発作の原因になります。

マスクを着用することで冷たい空気が入ってくるのを防ぎ、空気を加温・加湿して気道の刺激を軽減する効果があります。

1-4.咳エチケットも知っておこう

咳エチケットは、感染症の拡大予防や、周囲に不快感を与えないためのマナーとして大切です。

正しい咳エチケットの方法として、次の3つがあります。

・マスクを着用する
・咳やくしゃみをする時はティッシュやハンカチなどで口・鼻を覆う
・マスクがなくハンカチなども間に合わない時は上着の内側や袖で覆う

使用したティッシュはすぐにゴミ箱に捨て、その後は病原体の拡散を防ぐためにしっかり手を洗いましょう。
逆に、何もせずに咳やくしゃみをするのは感染拡大の原因になります。
また、咄嗟に手で押さえてしまうと、病原体が付着した手でドアノブなどに触ることになり、感染を広げるリスクがあります。

病原体は目に見えないため意識しにくいですが、周りの人に感染を広げないためにも、常に正しい咳エチケットを心がけることが重要です。

自分を守るためだけでなく、周りの人を守るためにもマスクを着用し、咳エチケットを実践しましょう。

【参考情報】厚生労働省『咳エチケット』
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000187997.html

2.マスクにはさまざまな種類がある


マスクを正しく、快適に使うためには、使用する場面や自分に合ったものを選ぶことが大切です。

種類ごとの特徴について説明しますので、マスク選びの参考にしてください。

2-1.マスクの分類と形状

マスクは使用目的によって「家庭用」・「医療用」・「産業用」に分けられます。

日常生活で最も身近な「家庭用マスク」はさらに、形状と素材によって「平型マスク」「プリーツ型マスク」「立体マスク」に分けられます。それぞれについて説明します。

〈平型マスク〉
平型のガーゼマスクは、保湿性、保温性に優れていて肌にも優しいのが特徴です。
エアコンの効いた室内や寒い日の屋外、睡眠時などに使うと喉を守ることができ、効果的です。

〈プリーツ型マスク〉
プリーツ型マスクは不織布でできたものが多く、圧迫感がない付け心地が特徴です。
マスクと口の間に空間が生まれるため楽に呼吸をすることができ、長時間の着用にも向いています。

〈立体型マスク〉
立体型マスクは隙間なくぴったりとフィットし、マスクと口の間に空間ができるため息苦しさや喋りにくさが緩和されるのが魅力です。

2-2.粒子のサイズと、フィルター性能

空気中には目に見えない微細な粒子がたくさん漂っています。
その中には感染症の原因となるウイルスや細菌、花粉などのアレルゲンも含まれています。
例えば、
・インフルエンザウイルス:約80-120nm
・新型コロナウイルス: 約60-140nm
・花粉::約10-100µm
のように、非常に小さい粒子を防ぐ必要があります。

マスクのパッケージには粒子を防ぐためのフィルターの性能によって「花粉対策用」や「ウイルス対策用」といった表記があります。

・花粉対策用:約30µm以上の粒子をカットするフィルターを使用
・ウイルス対策用マスク(例: N95マスク):約1.7µmと3µm以上の粒子を99%カットするフィルターを使用
・PM2.5対策用マスク:約0.1µmの粒子を99%までカットするフィルターを使用

購入の際はパッケージのフィルター性能表示を参考に、時期や使用目的に応じてマスクを選びましょう。

3.ウイルスや細菌をマスクで完全に防げるの?


マスクは顔に完全に密着しているわけではなく、顔とマスクの間に隙間が生じてしまいます。そのため、フィルターがいくら高性能でも、ウイルスなどの侵入を100%防ぐことはできません。

感染から身を守るためには、なるべく隙間を作らないように顔にフィットしたものを選ぶことが大切です。

3-1.サイズの選択

マスクの購入時にまず気をつけたい点はサイズ選びです。
特に家族で同じマスクを使っていると、それぞれ顔の大きさが違うためにサイズが合わない場合もあります。
パッケージにかかれているサイズガイドも参考に、自分の顔の大きさに合ったものを選びましょう。

3-2.プリーツタイプマスクの正しい付け方

サイズが合っていても、正しい付け方ができていなければ顔との間に隙間が空いてしまいます。
プリーツタイプのマスクは、次の順番で着用しましょう。
・マスクのゴムを耳にかけ、鼻の部分を押さえながら下の部分を伸ばす
・ワイヤーを顔の凹凸に合わせて整える
・マスクの左右が顔に密着するように整える

3-3.いつも清潔なマスクを使いましょう

洗って繰り返し使えるタイプのマスクもありますが、不織布タイプのマスクは通常使い捨てです。
マスクの内側にはくしゃみや咳などによる雑菌が、マスクの外側には大気中のウイルスなどがたくさんついています。
使い捨てタイプのマスクは前の日のものを使いまわさず、すぐにゴミ箱に捨てるようにしましょう。

4.マスクを清潔に保つ専用ケース


食事などで一時的にマスクを外したい時など、マスクの置き場所に困ることはありませんか?

テーブルなどに置いてしまうと、マスクに付着したウイルスが付いてしまったり、逆にマスクが不潔になったりします。

そんな時はマスク専用ケースにしまうのがおすすめです。
このようなアイテムも活用して、マスクを清潔に保ちましょう。

5.おわりに

マスクは、アレルゲンや病原体の侵入を防ぎ、感染症の予防に役立ちます。
また、気道の保温・保湿を助けることで急激な温度変化や乾燥から気道を守り、喘息発作のリスクを減少させることができます。

感染症から身を守るためにも、周囲へのマナーとしても、マスクは欠かせないものです。
使用用途に合った種類のものを選び、快適かつ効果的にマスクを使用しましょう。