タバコで咳がでる。長引くときに疑う病気は?
タバコを吸っているときや吸い終わった際に、咳がでることがあります。
タバコの強いにおいが刺激となって咳が出る場合もありますが、長引く咳がある場合、喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺がんなどの病気が原因の可能性もあります。
受動喫煙も咳に悪影響があるとされ、とくに乳幼児がそばにいる場合は注意が必要です。
この記事では、タバコを吸うと咳が出る理由や考えられる疾患についてご説明いたします。
咳が2週間以上続く場合は、早めに呼吸器内科を受診して原因を調べましょう。
1. タバコを吸うと咳がでるのはなぜ?
タバコの煙には数百種類の化学物質が含まれており、その中には有害物質や刺激物が多く含まれています。
これらの物質が気道を刺激し、咳を引き起こします。
とくにタバコの強いにおいが直接的な刺激となり、咳を誘発することがあります。
また、タバコを吸うことで気道が狭くなり、痰の排出が妨げられるため、咳が出やすくなる可能性が考えられます。
タバコを吸うと、気道が炎症を起こしやすくなります。
タバコの煙に含まれる化学物質が気道の粘膜を傷つけ、慢性的な炎症を引き起こすことがあるためです。
炎症が続くと、咳が慢性化しやすくなります。
炎症により気道の粘膜が厚くなり、気道が狭くなるため、咳が出やすい状態が続きます。
さらに、タバコを吸うと気道の線毛が麻痺し、異物を排出する機能が低下する可能性もあります。これにより、気道に異物が溜まりやすくなるため、咳が続くことになるでしょう。
タバコの煙は、気道だけでなく肺にも悪影響を及ぼします。
長期間にわたってタバコを吸うことで、肺の組織が損傷し、呼吸機能が低下することもあります。咳が出やすくなるだけではなく、息切れや呼吸困難が生じることもあるでしょう。
2.一時的な咳なのか慢性的な咳なのか
一時的な咳の場合、通常は短期間で自然に治まります。
風邪や軽い気道の刺激が原因であることも多く、数日から一週間程度で治るのが一般的です。
一時的な咳の原因としては、風邪やインフルエンザなどのウイルス感染、アレルギー、気道への刺激などが考えられます。
原因が取り除かれれば、咳も自然に治るでしょう。
ただし、一時的な咳の場合でも、頻繁に繰り返される場合や、長期間続く場合は注意が必要です。慢性的な咳の前兆である可能性もあります。
慢性的な咳は2週間以上続く咳のことで、深刻な病気の兆候である可能性があり医師の診察が必要です。
原因としては、喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺がん、胃食道逆流症(GERD)、後鼻漏症候群などが考えられます。
適切な治療が必要であり、放置すると症状が悪化する可能性があります。
慢性的な咳は、日常生活に大きな支障をきたすことがあるため、早めに呼吸器内科をはじめとした医療機関への診察を検討しましょう。
3.タバコで咳が続く。疑う3つの病気
タバコを吸っていて慢性的に咳が続く場合、病気が原因の可能性があります。
原因となる代表的な疾患例をご紹介しましょう。
3-1.喘息
喘息は気道が慢性的に炎症を起こし、過敏になる病気です。
タバコの煙は強いアレルゲンとなり、喘息の発作を引き起こす原因となります。
喘息の症状には、咳、喘鳴(ヒューヒュー・ゼイゼイという呼吸音)、息苦しさなどがあります。タバコを吸うことで、これらの症状が悪化することがあります。
気道が炎症を起こしやすくなることにより、咳や息切れが頻繁に起こります。
タバコの煙に含まれる有害物質は、気道の炎症をさらに悪化させるので、喘息の患者さんは、タバコの煙を避けることが重要です。
タバコの煙は、喘息の発作を引き起こすだけでなく、長期間にわたって気道の炎症を持続させるため、喘息のコントロールが難しくなります。
周囲の方にも喫煙を控えてもらうようにすることが必要です。
3-2.COPD(慢性閉塞性肺疾患)
COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、長期的な喫煙が主な原因で引き起こされる病気です。
主な症状には、息切れや慢性的な咳、痰が頻繁に出る症状などがあります。
COPDは、気道の狭窄や肺の損傷を伴うため、呼吸が困難になります。
タバコを吸い続けることで症状が進行し、生活の質が著しく低下します。
COPDの治療は、禁煙が最も重要な要素となります。
タバコを吸い続けることで、病状がさらに悪化し、呼吸機能が低下するためです。
禁煙に成功すると、症状の進行が遅くなり、生活の質が改善されるでしょう。
治療としては、禁煙以外に吸入薬や酸素療法が行われます。
3-3.肺がん
肺がんは、タバコの煙に含まれる有害物質が原因の一つで発症すると考えられます。
とくに長期間にわたってタバコを吸うことで、肺がんのリスクが著しく増加します。
禁煙は肺がんの予防において最も効果的な方法といえるでしょう。
初期の症状は、咳、血痰、息切れなどです。進行すると、胸痛、体重減少、疲労感などが現れます。肺がんの初期症状はほかの呼吸器疾患と似ているため、診断が遅れることがあります。
早期発見が難しいので、定期的な検診が重要です。
咳や血痰などの症状が出た場合には早めに医師の診察を受けましょう。
治療は、手術、放射線療法、化学療法などがありますが、進行度によっては治療が難しい場合もあります。
4.受動喫煙によっておこる咳
受動喫煙とは、自分がタバコを吸わなくても、他の方のタバコの煙を吸い込んでしまう状態です。
受動喫煙は、非喫煙者の方に深刻な健康被害をもたらします。
とくに家庭内や職場などでの受動喫煙は、慢性的な咳や気道の炎症を引き起こす原因となります。
受動喫煙によって、喘息の悪化、COPDの発症リスクの増加、心血管疾患のリスク増加などが引き起こされます。
とくに乳幼児は、受動喫煙による健康被害を大きく受けやすいです。
乳幼児は肺や気道がまだ発達途上であり、タバコの煙に含まれる有害物質に対する耐性が低いことが理由です。
受動喫煙にさらされた乳幼児は、突然死症候群(SIDS)、喘息、気管支炎、肺炎などのリスクが高まります。
乳幼児がいる家庭や乳幼児がいる場所での喫煙を避けることが非常に重要といえるでしょう。
【参考情報】Cleveland Clinic “Secondhand Smoke”
https://my.clevelandclinic.org/health/articles/10644-secondhand-smoke-dangers
5.禁煙は難しい?禁煙のメリット
禁煙は、多くの方にとって難しい挑戦ですが、そのメリットは非常に大きいです。
得られるメリットとして、心血管疾患や肺がんのリスクが大幅に減少することがあげられます。
また、COPDの進行が遅くなり、喘息の症状も改善されることがあります。
禁煙することで、慢性的な咳や痰の産生が減少し、呼吸が楽になることが多いです。
禁煙は、周囲の方にも良い影響を及ぼします。
とくに家庭内での禁煙は、家族や一緒に暮らす方の健康を守ることにつながります。
受動喫煙による健康被害を防ぐためにも、禁煙は重要です。
一方で、タバコには強い依存性があり、禁煙を試みる際には心理的および身体的な離脱症状が現れます。そのため、医療による適切なサポートや治療を受けることが大切です。
禁煙を試みたい方は、まずは禁煙外来を受診しましょう。
適切な薬物療法やカウンセリングを受けることで、禁煙の成功率は大幅に向上する可能性があります。
禁煙外来では、医師の指導の下で禁煙治療を受けることができ、ニコチン依存症の診断と治療が可能です。さらに、禁煙を継続するための治療も続けられます。
当院では、貼付剤による禁煙治療を実施しております。
【参照文献】文部科学省『2章 喫煙、飲酒と健康』
https://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/08111805/003.pdf
6.おわりに
タバコを吸うことで咳が出る場合、とくに2週間以上咳が続くときは、早めに呼吸器内科への受診を検討しましょう。
長引く咳は、喘息、COPD、肺がんなどの深刻な病気が原因の可能性があります。早期発見と適切な治療が必要です。
禁煙は難しいかもしれませんが、そのメリットは非常に大きいです。禁煙することで、自分自身だけではなく、周囲の方の健康も守ることができます。
咳が長引く場合や禁煙を考えている場合は、呼吸器内科の医師に相談をすることが大切です。