喘息治療に用いる薬「フルティフォーム」の特徴

フルティフォームは、気管支喘息治療薬であり、吸入ステロイド薬(気道の炎症を抑える薬)と長時間型作用性β2刺激薬(気管支を広げて呼吸を楽にする薬)が配合されている薬剤です。薬剤を噴霧するエアゾールタイプの吸入薬であり、吸い込む力が弱い子どもや高齢者にも使いやすい吸入薬です。

フルティフォームで吸入しにくい場合は、スペーサーや噴霧補助具も薬局でもらえるので、相談してみてください。

フルティフォームの効果を実感するためにも、毎日規則正しく薬剤を使用することが重要です。

1.フルティフォームとはどのような薬か


フルティフォームは、気管支の炎症を抑える吸入ステロイド薬(フルチカゾンプロピオン酸エステル)と気管支を広げて呼吸しやすくする長時間作用性β2刺激薬(ホルモテロールフマル酸水和物)を配合した吸入薬です。

喘息治療で使用される吸入薬は、気道の炎症を抑えたり、気管支を長時間広げたりすることで喘息の発作を予防する「長期管理薬」と発作が起こった時にすぐに症状を抑える「発作治療薬」があります。

フルティフォームは、「長期管理薬」に分類され、気管支喘息の症状を予防するために使用される医薬品です。

フルティフォームは、シムビコートや、レルベアなどの喘息治療に使用される吸入薬とは異なり、「加圧噴霧式定量吸入器」(エアゾール)というものが使われています。

エアゾールは、霧状の薬剤を噴霧させて、吸入するデバイスです。エアゾールの特徴として、喘息の発作時や吸い込む力が低下している方にも使用しやすいメリットがあります。

エアゾールのデメリットとしては、薬剤と同時に吸入のタイミングを合わせる必要があるので注意が必要です。

◆『喘息について』>>

2. フルティフォームの使い方


1.吸入器の吸い口についているキャップを外します。
2.アルミ容器の底が上になるように持ち、よくふります(中の液剤が均等になるように)
3.息を軽く吐いてから吸入器をくわえます。
4.吸入器をくわえたら、アルミ容器の底を一押しして噴霧された薬剤をゆっくり深く吸入します。
5.吸入が終わったら必ずうがいをしてください(副作用回避のため)

※初めて開封する場合は、試し噴霧を4回行います。
※カウンターが赤になったら医療機関へ受診して新しい薬剤を処方してもらってください。

【参考情報】National Asthma Council ”How to use flutiform with spacer”
https://www.nationalasthma.org.au/living-with-asthma/how-to-videos/how-to-use-flutiform-with-spacer

3.フルティフォームの副作用


・嗄声(させい:声がかすれる)
・口腔カンジダ
・口内炎
・動悸
・CK(クレアチンキナーゼ:筋肉や脳に多く存在する酵素)増加

フルティフォームの代表的な副作用として上記のものがあります。吸入ステロイド薬は、気管支にのみ作用があり、体全体への副作用が少ないメリットがあります。しかし、喉や口の中に薬剤が残っていると嗄声や口腔カンジダ、口内炎が起きる可能性があるので注意が必要です。

吸入ステロイドには、声を出すために必要な声帯の筋力を低下させることがあり、声が思ったように出ない「嗄声」になることもあります。

その他にも、ステロイドには免疫を抑制する働きもあるので、口腔カンジダ症などの感染症につながる可能性があります。これらの副作用を防ぐためにも、入念なうがいによって薬剤を洗い流すことや、吸入時の口腔内の形状などが重要です。

頻度は非常に稀であり、滅多に起きない重大な副作用として以下のものとがあります。
・アナフィラキシー、ショック
・重篤な血清カリウム値低下

ショックやアナフィラキシーは、薬剤に対して過剰なアレルギー反応が起こることであらわれる副作用です。呼吸困難や血管浮腫、蕁麻疹などがあらわれたら注意が必要です。

また、内服ステロイドや気管支を広げるキサンチン誘導体、利尿剤を服用している場合は、血清カリウム値の低下が起きる可能性が高くなります。

血清カリウム値が低下すると脱力感や嘔吐、下痢などが見られますが、不整脈が起きることもあります。

フルティフォームを使用して、普段とは違う体調変化を感じたら医師や薬剤師などの専門家に相談してください。

4.使用上の注意点


・妊婦
フルティフォームに配合されている吸入ステロイドは、気管支のみに働きかけるためお腹の赤ちゃんには影響しにくいと考えられています。

妊娠中に喘息発作を起こすと、お腹の赤ちゃんが低酸素状態になる危険性があります。お腹の赤ちゃんが正常に成長するためにも、喘息の症状をコントロールすることが重要です。

お薬の使用が気になる場合は、主治医と相談してみてください。

【参考情報】『女性のぜん息患者さんへ』独立行政法人環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/case/women.html

◆『喘息の女性が妊娠中に気になる不安と疑問』>>

・小児
フルティフォームは、薬剤を噴霧したタイミングで吸入する必要があるので、小さいお子さんだと吸入が難しい場合があります。

小さいお子さんにフルティフォームを使用する場合は、スペーサーという補助器を使うことで吸入がしやすくなります。

スペーサーはお薬をもらった薬局でもらえるので、相談してみると良いでしょう。

【参考情報】『小児ぜん息治療ガイドライン』一般社団法人日本小児アレルギー学会
https://www.jspaci.jp/assets/documents/childhood-asthma-guideline.pdf

◆『小児ぜんそくについて』>>

・高齢者
高齢者の中には、吸入する力が低下していたり、握力が低下して吸入器のアルミ容器を押し込むのが難しくなったりしていることもあります。

吸入が難しい場合は、スペーサーを使用すると吸いやすくなります。また、アルミ容器を押し込むのが難しい場合は、噴霧補助具を使用してみてください。噴霧補助具もスペーサーと同様にお薬をもらった薬局でもらえます。

・デスモプレシンを使用している患者
夜間頻尿に使用される「デスモプレシン」は、フルティフォームに含まれているステロイドと併用できない薬剤です。

海外で行われた臨床試験では、ステロイド薬とデスモプレシンを併用することで、低ナトリウム血症を起こした症例が報告されています。

低ナトリウム血症は、軽度だと倦怠感や食欲不振が見られますが、重度になるとけいれんや意識障害があらわれることもあるので注意が必要です。

【参考情報】『低ナトリウム血症の臨床』自治医科大学
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/80/9/80_9_1514/_pdf/-char/ja

・保管方法
アルミ容器をアダプターから外したり、アルミ容器を濡らしたりすると噴霧口が詰まる可能性があります。

噴霧口の詰まりを避けるために、少なくとも週に1回以上アダプターの吸入口の外側と内側をティッシュペーパーや乾いた布で拭いてください。

5.フルティフォームの薬価

・フルティフォーム50エアゾール56吸入用
1瓶2260.5円

・フルティフォーム50エアゾール120吸入用
1瓶4679.3円

・フルティフォーム125エアゾール56吸入用
1瓶2433.8円

・フルティフォーム125エアゾール120吸入用
1瓶4928.2円

フルティフォームにジェネリックは存在しません。

6.おわりに

フルティフォームは、吸入ステロイド薬と長時間作用型β2刺激薬が配合された喘息治療薬です。フルティフォームを使用して改善が見られなかった場合は、フルティフォームと同じタイプの吸入薬としてアドエアやレルベア、シムビコートがあるので薬剤変更を医師に相談しても良いでしょう。

フルティフォームを使用して副作用が起きた場合は、別の吸入薬への変更を検討してみると良いでしょう。

気管支喘息の治療は、発作がなくても毎日規則正しく吸入することが重要です。喘息にお悩みの方は、医療機関へ受診してください。