過換気症候群ってどんな病気?
過換気症候群とは、精神的な不安や極度の緊張などの精神的ストレスが原因で、息を何回も激しく吸ったり吐いたりする状態(過呼吸状態)になることで生じるさまざまな症状をいいます。
過呼吸状態により血液が正常よりもアルカリ性となることが原因です。
几帳面で神経質な方、不安症な傾向のある方、緊張しやすい方などで起きやすいといわれています。
この記事では、過換気症候群の原因と症状、検査、治療についてご説明いたします。
1.原因
過換気症候群は、何かしらのきっかけや状況により、息を続けて何回も激しく吸ったり吐いたりする状態(過呼吸状態)になると、血液中の二酸化炭素濃度が低くなり、呼吸をつかさどる神経(呼吸中枢)により呼吸が抑制されることが原因でおこります。
呼吸が抑制されるので、患者さんは呼吸ができないと感じ、息苦しさ(呼吸困難)を感じます。このため、さらに呼吸をしようと何度も呼吸を繰り返し、悪循環に陥ります。
血液がアルカリ性に傾くことで血管の収縮が起き、手足のしびれや筋肉のけいれん、筋肉が攣る(つる)など収縮も起きます。このような症状のためにさらに不安を感じて過呼吸状態が悪化し、その結果症状が悪化する一種の悪循環状態になるのも原因です。
きっかけとなるのは、パニック障害や極度の不安、緊張などです。
過換気症候群は、精神的なストレスに敏感な方、神経質で不安を抱えやすい方や緊張しやすい方がなりやすいとされています。若い女性に多いですが、15歳未満から90歳代の方までの発症が報告されており、発症に年齢は関係ありません。
【参照文献】一般社団法人 呼吸器学会 『 過換気症候群』
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/i/i-04.html
2.症状
過換気症候群は、全身に影響を及ぼし、さまざまな症状がみられます。
これらの症状を、以下でご紹介しましょう。
<呼吸器系の症状>
過換気症候群の症状は、過剰な呼吸になることが特徴です。呼吸の速度や深さが異常に増加する状態が続きます。また、ふらつき感や立ちくらみ、動悸、胸痛なども伴うことがあります。
気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者さんは、特に注意が必要です。
気管支喘息の持病がある方の場合、過換気は気管支収縮を引き起こし、喘息の症状を悪化させる可能性があります。
また、慢性閉塞性肺疾患の患者さんが過換気になると、肺に空気が過剰にたまり、息苦しさが増すことがあります。慢性閉塞性肺疾患の症状が悪化する可能性があるので、過呼吸をなるべく起こさないことが重要です。
<循環器系の症状>
過換気による循環器系への影響の主な症状として、不整脈や血圧の上昇があります。これは、過剰な呼吸によって引き起こされるストレス反応によるものです。
<末梢神経神経・筋肉系の症状>
手足のしびれや筋肉のけいれんを引き起こすことがあります。これは、血液がアルカリ性に傾くことで血中のカルシウム濃度が低下するためです。筋肉の不随意的な収縮やけいれんが、カルシウム不足によっておこります。
<精神系の症状>
強い緊張や不安感、極度の恐怖感やパニック発作が起こります。これらは、過換気症候群の典型的な精神的症状です。
発作自体は約30〜60分程度で自然に軽快していくことが一般的です。しかし、「このまま呼吸ができなくなるのでは」という不安の強い方では数時間続くことがあります。
<消化器系の症状>
一部の患者さんでは吐き気や胃痛の症状が出ることがあります。過換気が引き起こす全身的なストレス反応の一部として考えられるでしょう。
【参考文献】”Hyperventilation Syndrome” by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/24860-hyperventilation-syndrome
3.検査
過換気症候群(過呼吸)の診断に使われる検査をご紹介します。これらの検査は、過換気症候群であるかどうかを判断し、他の疾患と区別するために重要です。
<動脈血液ガス分析>
発作時の動脈血中の酸素と二酸化炭素の濃度を測定します。とくに二酸化炭素の低下は過換気症候群の典型的な指標です。
過換気によって血液の化学的なバランスがどのように変化しているかを詳しく知ることができます。
<鑑別診断のための検査>
過換気症候群は心臓疾患や呼吸器疾患、パニック障害など他の病気と似た症状を示すことがあるため、これらの疾患との鑑別診断が重要です。
呼吸機能テスト、心電図、胸部X線、ストレステストなど、さまざまな検査がおこなれます。
4.治療
治療は、主に症状の管理と根本的な原因の対処に焦点を当てます。
過換気症候群は決して命を失うことや後遺症を残すことはなく、どんなに強い発作でも時間とともに必ず軽快していきます。
苦しいのでさらに息を吸おうとしますが、逆効果です。あせらず、まず気持ちを落ち着かせることが大切です。そして、呼吸を落ち着かせるようにします。
以下で、具体的な治療方法をご説明します。
<呼吸のコントロール>
過換気症候群の発作が起きている間の最も一般的な治療法は、深くゆっくりと呼吸することです。
<認知行動療法>
過換気症候群が不安やパニック障害などの心理的な要因が原因の場合、認知行動療法を行います。
患者さんがストレスや不安を管理する技術を学び、過換気の発作を減らすことが目的です。
<薬物療法>
心理的な原因による過換気症候群には、抗不安薬や抗うつ薬が処方されることもあります。
不安やパニックの症状を緩和し、過換気の発生頻度を減らすのに役立ちます。
<生活習慣の改善>
ストレスの緩和、定期的な運動、健康的な食生活、十分な睡眠など、生活習慣の改善が重要です。
これにより、過換気のきっかけとなる緊張感や不安を減らすことができます。
<教育とサポート>
患者さんと家族の方に対する教育とサポートも治療に重要です。
過換気症候群の原因、症状、対処方法に関する知識を共有することで、患者さんが自分の症状を理解し、適切に対応できるようになります。
5.おわりに
過換気症候群は、心理的なストレスが原因になり、誰にでも起こり得る可能性がある病気です。
日常のストレスや不安、パニック状態などが引き金となって発生します。
過換気症候群になった場合は、落ち着いてゆっくりと呼吸することが大切です。
過換気の症状が現れた際には、まず気持ちを落ち着かせましょう。そして、深呼吸を試み、呼吸を落ち着かせます。
しかし、これらの方法を試しても症状が改善されない場合、または症状が頻繁に発生する場合には、呼吸器内科など医療機関の受診を検討しましょう。
専門の医師による適切な診断と治療を受けることが可能です。