コロナ感染後の喘息悪化【職場復帰の判断基準と咳が残る時の対策】

コロナ感染後の療養中、熱は下がっても咳や倦怠感(けんたいかん)が残ると、いつ復帰できるか悩みますよね。

特に喘息をお持ちの方は「コロナをきっかけに喘息が悪化したのでは」「周囲への感染リスクは」と不安を抱える方も少なくありません。

この記事では、療養解除の基準や喘息の方が復帰を急ぐべきでないサイン、職場での対策や周囲への説明方法を解説します。

1. 療養解除の基準と喘息持ちが復帰を判断するポイント


まず、職場復帰を検討する前提となる一般的な療養解除基準と、喘息をお持ちの方がプラスアルファで考慮すべき個別の判断基準について解説します。

1-1. 厚生労働省が推奨する療養解除の目安

現在、法律による一律の外出制限はありませんが、感染拡大防止の観点から厚生労働省は以下の療養期間を推奨しています。

職場や学校もこの基準を就業規則のベースにしていることが一般的です。

【外出自粛の基本期間】
発症日を0日目として5日間は外出を控えることが推奨されます。

【発症日とは、発熱や咳など最初の症状が出た日を指します。】
特に発症後3日間はウイルスの排出量が多いため、他人に感染させるリスクが高い時期です。

【5日目に症状が残っている場合】
5日が経過しても発熱や喉の痛みなどの症状が続いている場合は、すぐに復帰してはいけません。

症状が軽快してから24時間が経過するまでは様子を見る必要があります。

【マスク着用の推奨期間】
発症後3日間は感染性のウイルス排出量が非常に多く、その後減少傾向にはなりますが、発症から10日間が経過するまではウイルスを排出している可能性があります。

そのため、周囲への安全を十分に確保する配慮として、発症後10日が経過するまでは不織布マスクを着用し、高齢者などハイリスク者との接触を控えることが推奨されています。

【不織布マスクとは、飛沫やエアロゾルを減らす効果が高い使い捨てマスクです。】

◆『新型コロナウイルス感染症の基本情報』について>>

【参考情報】『新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/corona5rui.html

1-2. コロナ感染後に喘息が悪化しているサイン

喘息の持病がある場合、ウイルスの感染性は消失していても、気道の炎症が治まっていないケースが多々あります。

コロナ感染により気管支が過敏になり、わずかな刺激で発作が起きやすい状態です。

以下のサインがある場合は、熱がないからと安易に復帰せず、もう数日休養を取る勇気を持ってください。

【復帰を延期すべきサインチェックリスト】
✓ 咳の頻度が減っていない(改善傾向にない)
✓ 夜間や明け方に咳込みが激しい
✓ 呼吸音に異常がある(ヒューヒュー・ゼーゼーという喘鳴(ぜんめい))
✓ 発作時に使用する気管支拡張薬の使用頻度が増えている
✓ 強い倦怠感が持続している

療養期間の後半になっても咳の強さや回数が横ばいであれば、気道の炎症が続いている可能性が高いです。特に会話中や安静時にも咳き込む状態では、業務に支障が出るだけでなく、同僚に不要な不安を与えてしまいます。

喘息の特徴として、副交感神経が優位になる夜間から早朝にかけて気管支が収縮しやすくなります。夜中に咳で目が覚める、朝起きた時に息苦しい場合は、喘息のコントロールが不良な状態である可能性が高いです。

普段は週に数回程度の使用で済む発作時用吸入薬(リリーバー)を、療養中は毎日、あるいは1日に何度も使っている場合、それは薬で無理やり症状を抑えている状態に過ぎません。この状態で出勤すると、職場のエアコンやストレスが引き金となり、大きな発作を誘発する恐れがあります。

主治医から「もう少し自宅で様子を見るように」と指示された場合は、診断書や意見書を書いてもらい、会社に提出して休養を延長することが、結果的に早期の完全復帰につながります。当院は、産業医ではありませんので、業務内容にまで言及する診断書は作成できませんが、症状経過が不良な場合、喘息で治療中でコントロール不良である旨を診断書に記載することはできます。

◆『コロナ感染後の咳の特徴と対処法』について>>

2. 咳や倦怠感が残るまま復帰する場合の職場対策


医師の許可が下りて復帰する場合でも、咳や倦怠感が完全に消えていないことはよくあります。

感染力はない後遺症の咳であっても、職場での振る舞いには十分な配慮が必要です。

円滑に業務に戻るための具体的な対策と、周囲へのコミュニケーション方法を紹介します。

2-1. 周囲の不安を解消する「咳エチケット」と「伝え方」

職場復帰初日は、上司や同僚に現在の体調を正直かつ丁寧に伝えることが重要です。

咳が出る姿を見ても「まだ感染するのでは」と誤解されないよう、先手を打って説明しましょう。

【具体的な感染対策】
会話時はもちろん、自席にいる時も不織布マスクを常時着用します。

共有物に触れる前の手指消毒と換気を心がけましょう。どうしても咳き込みそうな時は、人のいない廊下やトイレに移動する、あるいはマスクの上からさらにハンカチで口元を覆うなどの配慮を見せます。

【上司・同僚への説明例文】
メールやチャット、朝礼での挨拶に以下のフレーズを活用してください。

メール・チャットでの事前連絡例:
「療養期間を経て医師から出勤許可をいただきましたが、喘息の持病がある影響で、気管支が過敏になっており咳が少し残っております。医師からは『感染力はない』との診断を受けておりますが、周囲の皆様にご不安を与えないよう、マスク着用と咳エチケットを徹底して勤務いたします。会議中などにお聞き苦しい点があるかと存じますが、何卒ご理解いただけますと幸いです。」

対面で咳き込んでしまった時の言葉:
「申し訳ありません。感染性はもうないのですが、喘息の影響で咳が続いておりまして…。少し席を外して落ち着かせてきます。」
このように感染性はないこと、配慮していること、医師の診断済みであることを明言すれば、周囲も安心して受け入れることができます。

【参考情報】『新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00018.html

【参考情報】厚生労働省『新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に関するQ&A』
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kouisyou_qa.html

2-2. 倦怠感を悪化させない「慣らし運転」の働き方

病み上がりの体は体力が著しく低下しています。

いきなり発症前と同じペースで働くと、数日でダウンしてしまう「ぶり返し」のリスクがあります。

【勤務時間の調整を相談する】
可能であれば、復帰後最初の数日間は時短勤務、時差出勤(ラッシュを避ける)、半日リモートワークなどができないか上司に相談しましょう。
産業医がいる企業であれば、産業医面談を通じて就業制限(残業禁止など)の意見書を出してもらうのも有効な手段です。

【業務の優先順位と「断る勇気」】
復帰直後は集中力が続きません。
ミスを防ぐためにも、重要度の高い業務はダブルチェックを依頼し、急ぎでない案件はスケジュールを後ろ倒しにしてもらいましょう。
長時間の会議や、声を張り上げるプレゼン業務などは、咳を誘発するため代理をお願いするか、オンライン参加への変更を打診してください。

【こまめな「マイクロ休憩」】
1時間に1回は席を立ち、軽いストレッチや水分補給を行います。
のどを潤すことは咳予防にもなり、体を動かすことは血流改善による倦怠感軽減に役立ちます。疲れたと感じる前に休むのが、1日を乗り切るコツです。

◆『乾燥による咳の悪化と対策』について>>

【帰宅後の「完全休養」】
復帰してしばらくは、仕事だけで体力を使い果たしてしまいます。

帰宅後の家事や育児は家族に協力してもらうか、手抜きをして、とにかく睡眠時間を確保してください。入浴で体を温め、副交感神経を優位にしてから眠ることで、睡眠の質を高めましょう。

【参考情報】”Post-COVID Conditions” by Centers for Disease Control and Prevention (CDC)
https://www.cdc.gov/covid/long-term-effects/index.html

3. 復帰後に注意すべき「喘息悪化」と「再受診」の判断基準


復帰後に症状が出た場合、それが様子を見てよい範囲なのか命に関わる危険な状態なのか、緊急度の目安を知っておくことが大切です。

以下の3段階のレベルで、自分の状態を確認してください。

【レベル1:注意(初期の悪化サイン)】
無理をせず休息を取り、普段の長期管理薬(ステロイド吸入など)を確実に使用して様子を見る段階です。

ただし、2〜3日経過しても改善しない場合は受診を検討してください。

✓ 一度治まりかけた咳が出勤後に少しずつ増えている
✓ 痰の色が黄色や緑色に変化し、粘り気が強く切れにくい(細菌感染の可能性)
✓ 普段は使わない市販の咳止めや発作時用吸入薬(リリーバー)を使い始めた

◆『喘息の症状と発作のサイン』について>>

◆『吸入薬について』について>>

【レベル2:警告(早急な受診・治療強化が必要)】
仕事よりも治療を優先すべき段階です。
当日〜翌日中にかかりつけ医または呼吸器内科を受診してください。休日・夜間の場合は#7119(救急相談窓口)にご相談ください。

✓ 通勤の駅の階段や社内の移動だけで息が上がり、動悸がする
✓ 呼吸をするたびに「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という音が聞こえる(喘鳴)
✓ 胸が締め付けられる感じや、重しを乗せられたような苦しさがある
✓ 咳や息苦しさで夜中に目が覚める、朝起きた時に呼吸が苦しい日が週に2回以上
✓ 発作時用吸入薬(リリーバー)を1日に3回以上使用しないと呼吸が苦しい
✓ 一度下がった熱が再び38度以上になった(細菌性肺炎などの合併症の可能性)

◆『喘息患者が見逃しやすい肺炎の兆候』について>>

【レベル3:危険(今すぐ救急車を呼ぶべき緊急事態)】
窒息や呼吸不全の危険が迫っています。迷わず救急車(119番)を要請してください。

✓ 横になると呼吸ができず、座っていないと息ができない(起座呼吸)
✓ 唇や指先・爪が紫色に変色している(チアノーゼ)
✓ 息が苦しくて一度に数語しか話せない、または単語のみで会話が途切れる
✓ もうろうとしている、呼びかけへの反応が鈍い、ぼんやりしている(意識障害)

※上記はあくまで一般的な目安であり、医学的な診断基準ではありません。実際の緊急度は個人の基礎疾患や全身状態により異なります。少しでも不安を感じたら、自己判断せず医療機関や救急相談窓口(#7119)にご相談ください。

【参考情報】『気管支ぜんそく』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/c/c-01.html

4. おわりに

コロナ療養後、咳や倦怠感が残る中での復帰は不安が大きいものです。しかし、喘息をお持ちの方が焦って無理をすると、かえって症状を長引かせてしまいます。

「まだ本調子ではない」と周囲に伝えることは、決して甘えではなく、長く働き続けるために必要な判断です。

今回解説した基準や例文を活用し、まずは無理のないペースでのスタートを目指してください。焦らず、ご自身の体を第一に少しずつ日常を取り戻していきましょう。

本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。症状や復帰時期の判断は必ず医師にご相談ください。
記事内容は2025年12月時点の情報です。