喘息の子どもが保育園や幼稚園に入園する前から知っておくべきこと

喘息を持つ子どもが保育園で安全に過ごすためには、園や主治医との密な連携が欠かせません。
本記事では、「生活管理指導表」の提出をはじめ、運動や掃除、行事参加時の注意点、感染症予防について具体的な対策をまとめました。
適切な準備とコミュニケーションを通じて、子どもが快適に園生活を送れるようサポートしていきましょう。
1.ポイントは「生活管理指導表」の提出など、主治医・園とのコミュニケーション
生活管理指導表は、アレルギー疾患や持病を持つ子どもが学校や保育園で安全に過ごすために医師が作成する書類です。
喘息の子どもについても、この書類を提出し、園と連携することが重要です。
生活管理指導表の喘息の項目に関しまして、当院へ喘息で定期的に通院され治療を受けておられる患者さんに関しましては、当院が主治医として記載対応いたします。
しかし、定期通院されておられない患者さんや治療開始したばかりの患者さんでの記載は対応いたしかねますので、ご了承ください。
また、定期通院されておられる患者さんでも、食物アレルギーの項目に関しましては、記載いたしかねますので、ご了承ください。
1-1. 医師とのコミュニケーション
保育園での生活を安全にするため、主治医との連携が不可欠です。以下のポイントを意識して適切に相談しましょう。
・生活管理指導表の記入依頼時に園での生活を詳しく伝える
活動時間、運動の有無、給食内容など、医師が適切な対応を記入できるように情報を共有します。
・発作時の対処法を相談する
園での対応方法を確認し、必要な薬の準備や使い方を指導してもらいます。
・定期的に症状を報告し、必要なら指導表を更新する
症状の変化があれば早めに医師に相談し、書類を更新しましょう。
1-2. 園とのコミュニケーション
園との連携を深めるため、以下の点を意識しましょう。
・喘息についての基本情報を事前に伝える
発作の誘因や症状の程度を説明し、事前に配慮してもらえるようにします。
・発作時の対応を明確に決める
吸入薬の使用タイミングや緊急時の対応を事前に打ち合わせし、先生が適切に対応できるようにします。
・日々の健康状態を共有する
連絡ノートやアプリを活用し、園での様子や帰宅後の状態を報告し合いましょう。
1-3. 生活管理指導表の提出フロー
喘息症状について園へ伝えるための書類作成と提出の流れをまとめます。
1.入園面接時に喘息であることを伝える
2.園から生活管理指導表を受け取り、主治医に記入してもらう
園での内服や吸入が必要な場合、「与薬に関する意見書」も同時に依頼しましょう。
3.医師記入の書類と保護者記入の書類を園に提出する
家庭調査票の健康状態記載欄にも喘息情報を記入します。
4.発作時の対処法や必要な配慮を園に伝える
過度な活動制限を防ぐため、家庭での対応や発作が出やすい状況を共有しましょう。
5.日々の状況を園と共有し、連携を深める
連絡ノートやアプリを活用し、送迎時にも家庭での様子を伝えます。
【参考情報】「保育所におけるアレルギー疾患生活管理指導表(気管支喘息・アトピー性皮膚炎・アレルギー性結膜炎)」 こども家庭庁
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/1bd0041a/20231016_policies_hoiku_38.pdf
【参考情報】「子供のぜん息に適切に対応するために」 東京都保健医療局
https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/allergy/pdf/pri02.pdf
2.発作を誘発するような運動や掃除に注意
喘息はアレルギー物質を吸い込んだり、その物質が皮膚に付着したりすることで発作を起こすことがあります。
また、運動すると咳が出る「運動誘発性喘息」もあります。それぞれについて、園生活で注意する点をまとめます。
【参考情報】Mayo Clinic『Exercise-induced asthma』
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/exercise-induced-asthma/symptoms-causes/syc-20372300
2-1.運動における注意点
運動によって引き起こされる喘息があります。
「運動誘発性喘息(アスリート喘息)」は、運動をすることで気道が狭くなり、咳や息苦しさ、喘鳴(ぜんめい:ヒューヒュー、ゼーゼーという呼吸音)などの喘息症状が出る状態を指します。
特に小児では、成長過程での肺機能の発達が未熟なため、運動による気道の刺激に敏感であり、症状が出やすい傾向があります。
喘息を持っている子どもは特に運動による気道の過敏性が高く、より強い症状が現れることがあります。
【参考情報】「アスリート喘息症例の解析」日本臨床スポーツ医学会
https://www.rinspo.jp/journal/2020/files/31-2/279-281.pdf
【参考情報】「気管支喘息」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-06.pdf
主治医と園の先生と相談し、運動前の気管支拡張薬吸入や、発作が起こりやすい運動の見学など、子どもの状態にあった対処をします。
与薬については、医療行為となるため、事前に書類提出が必要な場合がほとんどです。
必要な場合は主治医に「与薬に関する意見書」を依頼しましょう。同時に保護者が記載する「与薬に関する依頼書」が必要な場合もあります。
【参考情報】「保育所における与薬の取り扱いについて」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000zj6g-att/2r9852000000zjc8.pdf
発作を予防しながら、子どもが好きな運動を続けられるようサポートすることも大切です。
運動誘発性喘息があっても、運動をしてはいけないわけではありません。
ウォーミングアップから始める事、空気が冷たく乾燥している時は、気管支への刺激を最小限にするためにもマスクをして予防するなどがオススメです。
2-2.掃除における注意点
保育園では園の方針などで掃除の時間を設けているところもあります。
その場合、喘息の疾患があるお子様にとっては特別な対応が必要となることもあります。
喘息の原因となるホコリを吸い込んで発作が起きるリスクを最小限にするため、掃除の時のマスク使用や、ホコリがたたない掃除を担当する、などの配慮を園にお願いしてみるのもいいかもしれません。
生き物を飼育している園の場合、動物の毛や糞が原因で発作が起きることがあるため、掃除やエサやりなどの当番から外してもらったほうが安心です。
【参考情報】「保育所や学校など集団生活のこと」環境再生保全機構ERCA
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/kodomonozensoku/kyoiku.html
3.行事の参加については、事前に内容の確認を!
喘息はストレスや疲労によっても誘発しやすいのが特徴です。
例えば、遠足や運動会、お泊りなどの行事は、いつもと違う環境や疲労で発作を引き起こすことがあります。
発作時の対応を記載したメモや、医師からの処方について園に対応してもらう方法を事前に伝達していると良いでしょう。
遠足では、動物園や工場見学、パン作り体験など毛やホコリ、細かい粉やくずが舞う環境に行くこともあります。
また、屋外の活動では花火やキャンプファイヤーなど煙が生じる環境であったりすると煙によって発作が誘発されることがあるため、マスク着用や離れた場所での見学など、どのような対処をするか主治医と園の先生と相談しておくと安心です。
行事前には主治医と園の先生と情報を共有し、発作時の対処を含め準備を早めにしておきましょう。
4.呼吸器感染症の予防をしよう
保育園での集団生活が始まると、風邪やインフルエンザ、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス など、さまざまな感染症にかかるリスクが高まります。
特に 喘息を持つ子ども にとって、呼吸器感染症は単なる風邪以上の影響を及ぼすことがあり、症状が悪化したり、発作を引き起こしたりすることがあります。
そのため、日頃から感染症予防を徹底し、園での流行状況を把握しながら適切な対応をとることが大切です。
4−1.呼吸器感染症にかかると喘息が悪化しやすい理由
喘息の子どもは、もともと気道に炎症があるため、ウイルスや細菌による感染で気道がさらに炎症を起こしやすい傾向があります。
風邪やインフルエンザにかかると、次のような影響が考えられます。
・気道が腫れ、喘息の発作が起こりやすくなる
・咳が長引き、夜間の咳込みがひどくなる
・痰が増えて息苦しくなる
・気管支が狭まり、ゼーゼー・ヒューヒューといった喘鳴(ぜんめい)が出る
・場合によっては入院が必要になることも
特に、RSウイルスやインフルエンザ、肺炎を引き起こす細菌(肺炎球菌やマイコプラズマなど)に感染すると、喘息の症状が重症化するリスクが高まります。
そのため、日頃から感染症の予防を心がけることがとても重要です。
4−2. 具体的な感染症予防策
1.手洗い・うがいの習慣をつける
帰宅後や食事前、外遊び後には しっかり手を洗う(指の間や手首まで丁寧に)
うがいも習慣づける(うがいが難しい年齢の子どもは、水やお茶を飲むだけでも効果あり)
2.マスクの着用を心がける
冬場や感染症が流行している時期 には、できるだけマスクを着用する
咳が出ているときは 周囲への感染を防ぐためにもマスクを着用 するようにする
3.園での流行状況を把握する
保育園や幼稚園では、定期的に感染症の流行状況を確認し、必要ならば登園を控える
兄弟姉妹がいる場合は、家族内での感染予防も徹底する
4.十分な睡眠とバランスの取れた食事を心がける
睡眠不足や偏った食事は 免疫力を低下させる原因 になるため、規則正しい生活を送る
体力が落ちると感染症にかかりやすくなるため、栄養バランスの良い食事を心がける(特に ビタミンC・ビタミンD・亜鉛 は免疫を強化するのに役立つ)
5.適度な湿度を保つ
乾燥した環境ではウイルスが活発になりやすい ため、加湿器を利用して 湿度を50〜60%程度 に保つ
冬場は特に部屋が乾燥しやすいので、濡れたタオルを干すなどの工夫も有効
4−3. インフルエンザなどのワクチンを活用する
喘息を持つ子どもはインフルエンザにかかると重症化しやすいため、予防接種を受けておくことをおすすめします。
特に、喘息児は インフルエンザによる気道の炎症が強く出やすく、長引く咳や気管支炎を引き起こしやすい ため、事前にワクチンで予防することが大切です。
ワクチン接種時の注意点
・インフルエンザワクチンは生後6か月から接種可能(小児は通常2回接種)
・卵アレルギーのある子どもは要相談(卵アレルギーの重症度によっては、接種できる場合もあるので、事前に主治医に相談する)
・肺炎球菌ワクチンも検討。
5.おわりに
喘息があっても、工夫次第で楽しい園生活を送ることができます。
日々の情報共有や事前準備をしっかり行い、子どもにとって安心できる環境を整えましょう。
子供は自分で症状を伝えることが難しいです。主治医や園と相談しながら、無理なくできる範囲で配慮を重ねることで、子どもの成長を支えることができます。