喘息患者が日常生活で気をつけること
喘息を患うと吸入や飲み薬を使用して、発作の予防に努めなければなりません。
日常生活の中で発作が起こるきっかけはさまざまあります。
喘息患者は喘息の原因や、発作が起きるきっかけを知ることで、原因を避けたり対策を立てることができます。
1. 喘息ってどんな病気?
喘息は気道に炎症が起こることで、咳、痰などの症状がでる病気です。
喘息患者の気道は、発作がない時でも炎症しています。とても敏感な状態で、少しの刺激でも反応してしまう状態です。
喘息は小児でもかかる病気ですが、適切な治療を行うことで、思春期までに症状が軽快することも多いです。
【参考情報】『喘息』長寿科学振興財団
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/zensoku/about.html
そして、高齢者の喘息は生命にも関わってきます。
COPDや心臓病など、他の病気との合併症が多くなることが特徴です。特にCOPDを合併してしまうと喘息が重症化する恐れがあり、呼吸機能が低下してしまいます。
【参考情報】『成人ぜん息の基礎意識』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/case/senior.html
1-1.原因
喘息の発作を起こしてしまう刺激の要因は、アレルゲン、気温や天候、風邪、タバコなどがあります。
これらを避けたり、対策を立てることが発作の予防へと繋がります。
1-2.症状
特徴的な症状として、1か月近く持続する長期の咳症状や呼吸をするときに「ゼーゼー、ヒューヒュー」と音がなる喘鳴があります。
風邪の症状によくある咳や痰の症状もあるので風邪だと勘違いしてしまうこともあります。
ですが、喘息は2週間以上咳が長く続くこともあるので、咳が長引くようであれば喘息の可能性があります。
他の特徴は、呼吸困難、繰り返し症状が出る、夜間から早朝に症状が出やすいなどがあります。
【参考情報】『成人ぜん息の基礎知識 ぜん息とは』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/knowledge/index.html
2.喘息患者の日常生活
喘息患者は発作さえ治まれば、見た目は健康な人と変わりません。
しかし、発作の原因となるものに遭遇することで咳が出てしまう、夜間に発作が起きて睡眠がとれないなど日常生活に影響を与えることもあります。
原因となるものへの対策を立て、実行することで発作をおこさず、日常生活を送ることはできます。
今回は、それぞれの原因に対しての対策を紹介します。
2-1.こまめな掃除、最適な湿度を保つ
喘息発作のアレルゲンとなるものにはダニがあります。
ダニは繁殖するために、気温25度、湿度75%が適している環境だと言われており、日本の気候はこれに当てはまります。
特に布団や寝具の中での増殖に注意が必要です。
ダニへの対策は、除湿と掃除で繁殖を防ぎ、死骸を取り除くことです。換気をして部屋の湿度を上げない、除湿器で湿度50%以下に調節するなどの対策をしましょう。
湿度を下げすぎて乾燥してしまうと風邪を促してしまうこともあるので、40%以下にならないよう注意してください。
【参考文献】「その咳、大丈夫?―ぜんそく最新治療と医師の本音―」灰田 美和子
2-2.天気予報の確認
喘息患者は気温や気候の変化に影響を受けることがあります。
例えば、梅雨の時期に気温の変化があり、湿度も高くなることで、発作の原因になるダニが発生します。季節の変わり目は体温調節がうまくできず、風邪をひいてしまい、気道が炎症して発作に繋がることもあります。
ネットで「喘息天気予報」などと調べると、喘息症状に関わるような情報が載っています。
どのような時に症状が出るか把握し、天気予報を見てダニへの対策や、体温調節できるような服装にするなど、一例ではありますが対策してみてください。
花粉、黄砂なども発作の原因にもなります。
これらに関しては吸い込まないこと、持ち込まないことが重要です。吸い込まないために、外ではマスクの着用を心がけてください。防護メガネも効果があります。
持ち込まないためには、衣服の素材をつるつるしたものにして、室内に入るときははたき落とす、掃除機で吸い取ると持ち込むことなく室内に入れます。
花粉、黄砂の多い日は、洗濯物を室内で干すようにしてください。
2-3.風邪やインフルエンザの予防
喘息患者は風邪やインフルエンザなどのウイルスに感染することで気管支の炎症が強くなり、刺激をより受けやすくなります。
そのため、喘息の症状が悪化してしまいます。
風邪やインフルエンザなどのウイルスに感染しないために、手洗いうがいを心がけましょう。
人ごみを避けることや、マスクの着用も感染予防に繋がります。インフルエンザワクチンの予防接種も受けておくと良いでしょう。
2-4.服薬に注意
市販されている解熱鎮痛薬で喘息が誘発される成分が含まれていることがあります。
市販薬を購入する場合は、薬剤師に喘息であること、吸入薬や服用している薬があれば必ず伝えるようにしましょう。
病院を受診するときも、かかりつけ医ではない場合は同様に医師に伝えるようにしてください。
【参考情報】Mayo Clinic ”What is aspirin-exacerbated respiratory disease(AERD)?
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/asthma/in-depth/aerd/art-20482797
2-5.肥満に注意
肥満や体重の急激な増加は、喘息を発症、悪化しやすいことがあるのでご紹介します。
見た目から太っているように見えていても、医学的に肥満とは断定できません。体重を身長の2乗で割った数値をBMIと呼び、これが25以上あると肥満とされます。
【参考情報】『BMIと適正体重』高精度計算サイト|カシオ計算機
https://keisan.casio.jp/exec/system/1161228732
内臓脂肪に含まれている脂肪細胞が、炎症を悪化させる物質をだし、気管支の周りの脂肪細胞の隙間に炎症を引き起こす細胞が多く集まることにより、喘息を悪化させる恐れがあります。そして、女性はBMIが高いほど喘息が重症化する可能性が高くなります。
【参考情報】『日常生活におけるぜん息悪化の要因』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/knowledge/causes.html
適正体重を目指すための適度な運動や、食生活に気をつけ、BMIが25を超えないようにしましょう。
ですが、運動をすることによって、喘息の発作が引き起こされる人もいます。このような喘息を「運動誘発喘息」と呼びます。
運動誘発喘息の人も、運動をしてはいけないということではありません。喘息をコントロールしつつ、無理のない範囲で体を動かしましょう。
2-6.禁酒、禁煙
飲酒をするとアルコールは肝臓で「アセトアルデヒド」という物質に代謝されます。
アセトアルデヒドはさらに酢酸へと代謝していきますが、スピードが遅い体質の人は、少量の飲酒で顔が赤くなったり吐き気、動悸、眠くなることがあります。
【参考情報】『e-ヘルスネット アセトアルデヒド』厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-005.html
そして、これらの症状以外に気管支の粘膜がむくんでしまうため、喘息が誘発されてしまいます。
少量の飲酒であったり、喘息のコントロールができるのであれば発作が現れないこともありますが、飲まないに越したことはありません。
アルコールは食品にも含まれていることがあるので、気をつけてください。
◆『お酒を飲むと咳が止まらない。アルコール誘発喘息とは』>>
そして、タバコは煙を吸うことで、気管支の炎症が起きます。
喫煙することで発作の原因にもなりますが、非喫煙者も煙によって発作が起こることがあります。
喫煙者は禁煙が望ましいです。
ですので、吸いたくなった時にタバコの代わりになる行動を探してみてください。
禁煙開始日を設定し禁煙開始への意欲を高めることも大切です。
しかし、なかなかやめられない人もいると思います。そのような時は禁煙外来を受診することをおすすめします。
非喫煙者で喘息患者の人は、煙を吸わないよう喫煙スペースには近づかず、外食の時には完全禁煙の店を選ぶなどしてみてください。
2-7.食事
食事の取り方も工夫が必要です。
食べすぎると横隔膜が上昇し、呼吸がしづらくなり、発作へと繋がることがあります。
暴飲暴食は控え、腹八分目を心がけましょう。気道の刺激も控える方が良いので、炭酸飲料、香辛料の摂取は気をつけてください。
2-8.その他の気をつけること
ストレスをためないことも大切です。
日常生活でストレスを感じると喘息が悪化してしまうこともあります。
日常生活のストレスをすぐに取り除くことは難しいと思いますが、少しでも減らせるように、趣味を楽しんだり、しっかり休息をとるようにしてみてください。
喘息の症状に対するストレスは、かかりつけ医に相談し症状を伝えてください。
3.日々の治療継続が大切
喘息の治療は長期管理薬(コントローラー)と発作治療薬(リリーバー)が主に使われています。
長期管理薬は文字通り、長期間使って効果が現れる薬です。
すぐに効果がないからとやめてしまわずに、指示通りに続けることが重要です。
発作治療薬は、発作が起きた時に使います。
気管支を広げる働きがあり、すぐに効果が現れます。ですが、発作を抑えるためのものであり、気管支の炎症を抑えるものではありません。よって、発作治療薬を使ったからといって、喘息が治るわけではありません。
喘息の治療の大きな目的は、症状や発作が出ないようにコントロールして良好な状態を保つことです。
治療は4ステップあり、ステップダウンすれば薬の種類や量を減らすこともできます。症状が出ないからと自己判断で治療は中止せず、医師の指示に従って治療を続けましょう。
【参考情報】『成人ぜん息の基礎知識 治療』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/knowledge/medicine.html
そして喘息とうまく付き合っていくには、自分の体調の変化を知ることが重要になってきます。
「喘息日記」をつけることでその手がかりになります。
ピークフローメーターという機械に力いっぱい息を吹きかけて、最大呼気流速を測定し、その数値がピークフロー値になります。
喘息の症状や、薬の使用状況、ピークフロー値の記入を普段からおこないましょう。
4.おわりに
喘息患者は説明したように症状が出ていなければ、健康な人と見た目は何も変わりません。
喘息の発作は何が原因で起きるのか、その原因はどのような対策を立てて予防すれば良いのかがわかれば、ストレスを感じることなく過ごすことができます。
まずは、自分がどのような状況で発作が出ているのかを把握してみてください。