喘息治療薬「キプレス/シングレア」の特徴

キプレス/シングレアは、長期的な喘息のコントロールに使われることが多い医薬品です。

複数の剤形(錠剤やOD錠、細粒など)が販売されているので、多くの人に使いやすいようになっています。

当記事では、キプレス/シングレアの効果や副作用、注意点、薬価などについて解説します。

1. キプレス/シングレアとはどのような薬か


キプレスとシングレアともに、有効成分として「モンテルカスト」を含んでいます。

モンテルカストは、「ロイコトリエン受容体拮抗薬」に分類されており、炎症を引き起こす体内物質の働きを抑制する医薬品です。

キプレスは杏林製薬株式会社、シングレアはオルガノン株式会社が製造販売元であり、ともに先発医薬品として販売されています。

キプレス/シングレアには、「錠剤」のほかに「OD錠」や「細粒」、「チュアブル錠」があります。

OD錠は、「口腔内崩壊錠」とも言われ、口の中の唾液ですぐに溶けるように設計されている薬の形状です。

口の中ですぐに溶けるOD錠は、飲み込む力が弱っている高齢者に使いやすいメリットがあります。

細粒については、錠剤が飲み込みにくい小さい子どもでも、服用しやすいことが特徴です。

そのため、子どもへのキプレス/シングレアの投与が必要な場合は、細粒がよく使われます。

チュアブル錠は、錠剤の一種であり、口の中で噛み砕いて服用するので、飲み込むのが苦手な子どもにも使いやすいのが特徴です。

細粒やチュアブル錠は、気管支喘息にのみ適応がありますが、錠剤やOD錠では気管支喘息以外にアレルギー性鼻炎にも適応があります。

◆『喘息について』>>

◆『小児喘息について』>>

2. キプレス/シングレアの使い方


キプレス/シングレアは、錠剤・OD錠や細粒、チュアブルによって使い方が異なるので注意が必要です。

気管支喘息には、成人に対してキプレス/シングレア10mgを1日1回寝る前に服用します。

アレルギー性鼻炎では、成人に対してキプレス/シングレア5〜10mgを1日1回寝る前に服用します。

15歳未満の子どもに対して医薬品を使用する場合、肝臓や腎臓などの臓器の成長が十分ではないため、キプレス/シングレアの量を調節することが必要です。

6歳以上の子どもに対しては、キプレス/シングレアチュアブル錠5mgを1日1回寝る前に服用します。

1歳以上6歳未満の子どもに対しては、キプレス/シングレア細粒4mgを体重にあった量にして1日1回寝る前に服用します。

3. キプレス/シングレアの副作用


・口渇
・頭痛
・胃不快感

キプレス/シングレアの主な副作用として上記のものがあります。

口の乾燥については、日本医薬品集に掲載されている薬剤全体の1/4に口渇や口内乾燥、唾液分泌が報告されており、キプレス/シングレアにも口渇が現れる可能性があります。

口渇が気になる場合は、水分をこまめに補給して口を湿らすことで対応も可能です。

・アナフィラキシー(食べ物や薬剤などのアレルゲンに過剰に反応して、全身に重篤な症状がでる状態)
・血管浮腫(薬剤などが原因で唇、まぶた、舌、のどなどが急に腫れる状態)

滅多にありませんが、上記のように重篤な副作用があらわれることがあります。

アナフィラキシーや血管浮腫が起きると、顔面蒼白や呼吸困難、息苦しさなどがあらわれます。キプレス/シングレアを服用して体調変化があった場合は、医療機関を受診してください。

【参考情報】『薬物による口腔乾燥症とその対処法』老年歯学,第19巻,第3号,2004
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsg1987/19/3/19_3_178/_pdf

【参考情報】Mayo Clinic “Anaphylaxis”
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/anaphylaxis/symptoms-causes/syc-20351468

4.使用上の注意点


キプレス/シングレアを服用する場合、注意する点がいくつかあります。

また、体質や年齢、持病などによっては、副作用のリスクを高める可能性もあるので注意が必要です。

・妊婦、授乳婦
妊娠中の方がキプレス/シングレアを使用する場合、お腹の赤ちゃんへ影響する可能性もあるので、主治医に相談することが重要です。

◆『喘息の女性が妊娠中に気になる不安と疑問』>>

・高齢者
高齢者は、若い人に比べて、肝臓や腎臓の機能が低下しているため、副作用が起きやすくなっています。

また、服用している薬の種類も増えていく傾向があるため、薬の飲み合わせについても、医師や薬剤師に確認してもらうことが大切です。

・小児
キプレス/シングレア細粒を使用するとき、粉薬が苦手な場合は服薬支援ゼリーやオブラートを使用してみてください。

・喘息患者
キプレス/シングレアは、喘息発作を抑える医薬品ではなく、喘息発作を予防し、長期的にコントロールすることを目的としています。

長期的に喘息が良好にコントロールできていたとしても忘れずに服用することが重要です。

また、キプレス/シングレアを服用していても喘息発作が見られる場合は、気管支拡張剤やステロイド剤の併用や変更を検討した方が良いでしょう。

5. キプレス/シングレアの薬価

薬剤名 薬価(1錠または1包あたり、円)
キプレス錠5mg 81.3
キプレス錠10mg 97.1
キプレスOD錠10mg 97.1
キプレスチュアブル錠5mg 103.7
キプレス細粒4mg 106.4
シングレア錠5mg 81.6
シングレア錠10mg 97.2
シングレアOD錠10mg 97.2
シングレアチュアブル錠5mg 102
シングレア細粒4mg 106.7
モンテルカスト錠5mg「KM」など 36.3
モンテルカスト錠10mg「KM」など 45.5
モンテルカスト錠5mg「日医工」など 14.2
モンテルカスト錠10mg「日医工」など 17.6
モンテルカスト錠5mg「AA」など 40.8
モンテルカスト錠10mg「明治」など 51.1
モンテルカストチュアブル錠5mg「JG」など 35.6
モンテルカストチュアブル錠5mg「DSEP」 21.8
モンテルカスト細粒4mg「DSEP」など 21.7
モンテルカスト細粒4mg「タカタ」 37.2

キプレスよりもシングレアの方がわずかですが、薬価が高い傾向があります。

また、多くのメーカーがキプレス/シングレアのジェネリック医薬品を販売しており、メーカーによって薬価が異なります。

6.おわりに

キプレス/シングレアは、ロイコトリエン受容体拮抗薬に分類されており、炎症を引き起こす体内物質「ロイコトリエン」の働きを抑制します。

キプレスとシングレアはともに、モンテルカストを有効成分としており、製造販売しているメーカーが異なる先発医薬品です。

キプレス/シングレア錠、OD錠については気管支喘息以外にもアレルギー性鼻炎にも使うことがあります。

キプレス/シングレアを使用しても喘息の改善が見られなかったり、副作用があらわれたりした場合は、他の薬に切り替えることを検討した方が良いでしょう。

ロイコトリエン受容体拮抗薬には、キプレス/シングレア以外にも「オノン」が存在します。

ロイコトリエン受容体拮抗薬外にも、吸入ステロイド薬やβ2刺激薬を配合した吸入薬など選択肢はいくつもあるので、治療の継続と同時に医師に相談することが大切です。