咳喘息とはどんな病気?咳が止まらなくなる原因と治し方
咳喘息は、喘息とよく似た病気ですが、喘息特有の呼吸音や息苦しさはありません。咳だけが何週間も続き、時には夜も眠れないほど激しい咳が現れます。
咳以外の症状がないので、咳止め薬を飲めば症状が治まると思うかもしれませんが、市販薬では根本的な治療ができません。
咳が長引いている人は、この記事を通して咳喘息の症状や治療方法を確認し、適切な行動へとつなげてください。
1.咳喘息とはどんな病気か
咳は、続いている期間によって次の3種類に分けられます。
・急性咳嗽:3週間未満の咳
・遷延性咳嗽:3週間以上8週間未満続く咳
・慢性咳嗽:8週間以上続く咳
急性咳嗽は風邪などの感染症で起こる咳、遷延性咳嗽は感染症が治まった後に咳の症状が残ることを指します。
咳喘息は咳だけが8週間以上続く病気で、慢性咳嗽にあたります。
咳が長引く病気の代表は喘息ですが、一部の喘息患者さんのように息苦しさや喘鳴(ぜんめい・ゼイゼイ、ヒューヒューという呼吸音)が出ることがなく、喘息のように肺機能検査で何らかの異常を伴うことがありません。
ただし、喘息でも症状が咳のみということは多いですので、息苦しさや喘鳴が出ないから、喘息ではないわけではありません。
また、痰はほとんどなく、乾いた咳(乾性咳嗽)が見られます。
風邪などの呼吸器感染症をきっかけに発症することが多い病気です。
【参考情報】日本呼吸器学会『呼吸器Q&A』
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q03.html
【参考文献】Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/25200-cough-variant-asthma
2.咳喘息が疑われる症状
咳が長引いている人で、次のような項目に当てはまる場合は、咳喘息の疑いがあります。
・夜間から早朝にかけて咳がひどくなる
・寒暖差が激しい日に症状が悪化する
・季節の変わり目に咳が出やすい
・市販の風邪薬や咳止め薬を服用しても効かない
・タバコの煙やペットの毛などを吸い込むと咳が出る
・風邪やコロナにかかった後、咳だけが続いている
ほかにも、のどのイガイガ感やムズムズ感、しめつけられるような感覚が続いていたり、運動や飲酒をきっかけに咳き込む場合も咳喘息の疑いがあります。
ただし、これらの症状は、喘息でも生じますので、症状だけでは、咳喘息と喘息を区別することはできません。
【参考情報】『咳喘息』科学技術振興機構
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/109/10/109_2116/_pdf
3.咳喘息の原因
咳喘息の原因は、はっきりとわかっていませんが、アレルギーの素因を持っている人が発症しやすい病気です。
アレルギーの素因を持っている人は、気道が過敏になりやすく、過敏になった気道が以下のような原因で刺激されると、咳が出ると考えられています。
・ダニ
・カビ
・ハウスダスト
・花粉
・寒暖差
・タバコの煙
・ペットの毛
咳喘息は生活習慣や環境の影響を受けるため、日常生活でアレルギー素因を避けて過ごすのが大切です。
4.咳喘息の診断と検査
咳喘息は、次の項目に当てはめて診断します。
・咳だけが3週間以上続いている
・喘鳴のような喘息の症状がない
・これまで喘息と診断されたことがない
・喘息治療に用いる気管支拡張薬で症状が改善する
さらに、気道の状態や血液のデータなどを見て、総合的に診断します。
厳密には、咳が8週間以上続いていることが診断基準なのですが、2,3週間以上咳が続いているなら、喘息や咳喘息、あるいは他の呼吸器疾患を強く疑います。
咳喘息が疑われるときには、必要に応じて次のような検査を行います。
4-1.画像検査
X線(レントゲン)やCTで胸の画像を撮影し、肺の状態や、咳喘息以外の呼吸器疾患が隠れていないかどうかを確認します。
咳喘息の患者さんの場合、画像検査では全く異常を呈しません。
しかし、肺炎など他の呼吸器疾患の可能性を除外するために重要な検査です。
4-2.血液検査
咳喘息や喘息で気道に炎症が起こっているときには、血液内の末梢好酸球値や一酸化炭素(FeNO)の数値が高くなります。
また、咳の原因となるアレルギーの有無を確認するためにも行います。
4-3.呼吸機能検査
呼吸の機能や肺の状態等を調べる検査です。
咳喘息は喘息と異なって、基本的に呼吸機能検査で異常所見を呈しません。
【参考情報】『肺機能検査とはどのような検査法ですか?』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q29.html
4-4.気管支拡張薬の吸入
検査のほか、喘息の治療薬でもある気管支拡張薬の吸入を行うことがあります。薬が効く場合は咳喘息の可能性が高く、効かない場合は別の病気を疑います。
5.咳喘息の治療薬
咳喘息の治療薬は、主に3種類あります。
5-1.吸入ステロイド薬
気道の炎症を抑えるために使います。
吸入薬は、薬物が気管支のみに作用して血中に吸収されることがほとんどないため、全身性への副作用が少ないのが特徴です。
ステロイド薬を吸入した後は、口腔咽頭カンジダ症を予防するためにうがいを忘れないようにしましょう。
5-2.気管支拡張薬
吸入ステロイド薬と併せて用います。炎症により狭くなった気道や気管支を広げる薬です。
気管支拡張薬を使うと咳が楽になるため、これさえ使えばいいと思いがちですが、咳が一時的に出なくなっても、気道の炎症が抑えられたわけではありません。
気道の炎症を改善し、病気を根本的に治すためには、吸入ステロイド薬が必要です。
5-3.抗アレルギー薬
喘息や咳喘息には即時型アレルギー反応が関わっているため、抗アレルギー薬が用いられることもあります。
吸入ステロイド薬や気管支拡張薬を使っても効果が十分に現れない時に使われることが多いです。
抗アレルギー薬には、以下のような種類があります
・ロイコトリエン受容体拮抗薬:オノン、キプレス、シングレア
・化学伝達物質遊離抑制薬:インタール
・ヒスタミンH1受容体拮抗薬:アレジオン
6.咳喘息から喘息に移行するのか
咳喘息患者のうち、約30%程度が喘息に移行するとされています。しかし、咳喘息の治療をしっかり行うことで、喘息への移行を防ぐことができます。
治療開始後、1~2週間程度で症状が改善することは多いのですが、症状が出なくなっても、気道の炎症はまだ続いています。
そこで、治ったと勘違いして治療を止めてしまうと、また症状が現れてしまい、悪化しやすくなります。
再発後に悪化すると喘息に移行するケースもあるため、自己判断で服薬を中断せず、医師の指示通りに服薬を続けて完治を目指しましょう。
7.おわりに
咳喘息は、市販薬では治療ができません。喘息への移行を防ぐためにも、早めに病院を受診して、治療を開始することをおすすめします。
早期の診断と適切な治療により、症状の悪化や日常生活への影響を最小限に抑えることができます。
受診の際には、「咳がどれくらいの期間続いているか」「どんな時に悪化するか」など問診が重要な情報になりますので、メモしておくとスムーズです。