COPDについて
COPDは「Chronic Obstructive Pulmonary Disease」の頭文字をとったもので、慢性閉塞性肺疾患のことです。
気道の狭窄や肺の損傷を伴う、進行性の肺の病状のことをいいます。息切れ、咳、痰が出ることが主な症状で、主に喫煙が原因とされています。
この記事では、COPDの原因と症状、検査と治療についてご紹介します。
1.COPDってなに?
COPDは、主にたばこの煙などの有害物質によって引き起こされる肺の炎症性疾患で、生活習慣病の一つです。たとえば、肺気腫や慢性気管支炎など、慢性閉塞性肺疾患のことをいいます。
日本では、約530万人の患者さんがいると推定されており、この数は年々増加しています。
一方で、COPDはあまり知られていません。そのため、治療を受けている患者さんは全体のごく一部といわれています。
早期発見と適切な治療が重要です。とくに喫煙者の方は定期的な健康チェックを受けることが必要だといえるでしょう。
【参照文献】独立行政法人 環境再生保全機構『 COPDってどんな病気ですか?』
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/copd/about/02.html
2.原因
COPDの主な原因は、喫煙です。別名「たばこ病」とも呼ばれることがあります。
喫煙は、この病気の最大の危険因子で、COPD患者さんの約90%以上が喫煙者であるとされています。
喫煙は、肺の組織に慢性的な炎症を引き起こし、結果として気道の狭窄や肺胞の破壊につながります。
喫煙によるCOPDの発症リスクは、喫煙を始めた年齢、1日あたりの喫煙本数、喫煙を続けた年数など、喫煙量に密接に関係しています。喫煙量が多いほど、COPDを発症するリスクは高いです。
さらに、直接的な喫煙だけでなく、受動喫煙もCOPDの重大な原因となります。自分は喫煙者でない場合でも、他人のたばこの煙を吸うことで、肺へのダメージが生じ、COPDの発症につながる可能性があるのです。
たばこの煙以外の原因としては、職業的なもの(例えば、粉塵に長期間さらされる環境)や大気汚染も挙げられます。
【参考文献】Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/8709-chronic-obstructive-pulmonary-disease-copd
3.症状
COPD(慢性閉塞性肺疾患)の症状は、主に以下が代表的なものです。
<慢性的な咳>
COPDの最も一般的な症状の一つであり、しばしば「喫煙者の咳」とも呼ばれます。この咳は持続的であり、特に朝方に顕著になることが多いです。
<痰の産生>
慢性的な咳と並行して、多量の粘り気のある痰が出ます。この痰は呼吸器系の炎症によるもので、しばしば感染を引き起こす原因にもなります。
<息切れ>
初期の段階では運動時にのみ呼吸のしづらさを感じることが多いです。COPDが進行すると、日常生活における軽度の活動や休息しているときでも息切れを感じるようになります。
息切れは、症状が進行するにつれて悪化し、日常生活に大きな影響を与えるようになります。とくに、重い物を持ち上げる、階段を登る、急ぐといった活動が困難になることがあります。
呼吸がスムーズに行えないため、睡眠の質の低下や日中の疲労感がみられる方が多いです。
4.検査
COPDの診断に使われる主な検査をご説明します。
<問診・視診・触診>
問診内容は、喫煙歴、生活習慣、咳や痰の量、症状の期間などについてです。COPDの可能性や症状の重さを評価します。
視診では、胸部を視覚的に確認し、呼吸の様子や胸部の形状をチェックします。
<肺機能検査(スパイロメトリー)>
特定の呼吸パターン(深く息を吸い、力強く息を吐き出す)を行い、肺の容量や空気の流れる速度を測定します。COPDでは、これらの数値が通常より低くなることが一般的です。
<胸部X線検査>
肺や気道の構造を詳しく見るために行います。COPDの患者さんでは、肺の膨張や気道の異常がX線画像上で確認できることがあります。
<血液検査>
血液検査は、COPDによる合併症の有無や、他の疾患の可能性を排除するために行います。
<動脈血ガス検査>
血液中の酸素と二酸化炭素のレベルを測定し、肺のガス交換機能を確認します。COPD患者さんでは、通常、血中の酸素レベルが低く、二酸化炭素レベルが高くなる傾向があります。
<CTスキャン>
肺の構造をより詳細に観察するために用いられます。肺気腫や気道の狭窄など、COPDに特有の変化を検出するのに役立ちます。
5.治療
COPDの治療には複数の方法があります。症状の進行を遅らせ、生活の質を改善するために重要です。患者さんの状態や症状に応じて、適切な治療計画が立てられます。
5-1. 禁煙治療
COPDの最も重要な治療法の一つが禁煙です。
たばこの煙はCOPDの主要な原因であるため、喫煙を止めることで症状の悪化を遅らせることが可能です。
禁煙治療には、カウンセリング、禁煙補助薬、ニコチン代替療法などがあります。
5-2. 酸素療法
重度の場合、血中酸素濃度が低下することがあり、酸素療法が検討されます。酸素濃度を正常に保ち、呼吸困難を軽減することが可能です。
5-3. 薬物療法
呼吸のしやすさの改善のために、薬による治療を行います。以下が、主な種類です。
・気管支拡張薬:気管支を広げ、空気の流れを改善する。
・去痰薬:痰の排出を促進する。
・鎮咳薬:咳を軽減する。
・吸入ステロイド薬:肺の炎症を減少させる。
これら以外にも、炎症を抑えるための薬や、感染症の予防・治療のための抗菌薬などが使用されることがあります。
5-4. 吸入療法
ネブライザーや噴霧器を使用した吸入療法が一般的です。これらは、薬剤を霧状にして肺に直接届けるため、気管支拡張薬やステロイド薬の効果を最大化し、副作用を最小限に抑えることができます。
5-5. 手術
手術は、主に肺容量減少手術が行われます。この手術は肺の機能が低下し、呼吸が困難になった場合に行われます。
手術の目的は、肺の機能を向上させることです。手術は、患者さんの状況や医療者の判断によって行われます。
6.おわりに
COPDの症状は咳や痰で、長い時間をかけて進行するのが特徴です。
受動喫煙や大気中の有害物質の曝露もリスク要因とされています。喫煙によって肺に入る有害物質が気管支や肺組織に炎症を引き起こし、気管支の収縮や肺胞の壊死をもたらすことが原因です。
進行すると、ひどい息切れによって日常生活にも支障を来すようになり、最悪の場合は生命に関わるケースもあります。
長期の喫煙歴があり、咳や痰が長く続く場合は、早めに呼吸器内科を受診しましょう。