更年期症状と喘息初期症状の違いを徹底解説!夜間の咳は要注意

40~50代の女性は、更年期の影響で息苦しさや動悸を感じることがあります。

しかし、夜中に咳が止まらないようなら、それは更年期症状ではなく喘息の初期症状かもしれません。

更年期による息切れと喘息の咳は一見似ていますが、原因も対処法も異なります。

この記事では両者の違いをわかりやすく解説し、症状を自己判断で放置しないためのポイントをお伝えします。

1. 更年期症状と喘息初期症状の違い


更年期に現れる息苦しさと、喘息の初期症状である呼気困難や夜間の咳には、どのような違いがあるのでしょうか。

それぞれの特徴を整理してみましょう。

1-1. 更年期で息苦しさや動悸が起こる理由

更年期とは閉経前後の時期で、この頃に卵巣機能が低下し女性ホルモン(エストロゲン)が減少します。その影響で自律神経のバランスが乱れ、心臓や呼吸器の働きも不安定になります。

【自律神経とは…呼吸・心拍・体温などを自動で調整する神経で、ホルモン変化に影響されやすい仕組みです】

そのため、特に運動していなくても急に息切れがしたり、心臓がドキドキと速く脈打つ動悸が起こりやすくなります。

また、血管の拡張・収縮を調節する自律神経が乱れる影響で、顔のほてり(ホットフラッシュ)や発汗といった症状も現れやすくなるのです。

【参考情報】『”Asthma is Different in Women Fact Sheet”』National Heart, Lung, and Blood Institute (NHLBI)
https://www.nhlbi.nih.gov/resources/asthma-women-fact-sheet

1-2. 喘息初期症状の特徴

気管支喘息は気道に慢性的な炎症が起こり、気管支が狭くなる病気です。息を吐くときに「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という喘鳴(ぜんめい)と呼ばれる音が聞こえることもあります。

症状は発作的に現れることもあり、夜間から明け方にかけて咳込みやすい傾向があります。

また、冷たい空気やハウスダスト、たばこの煙などをきっかけに症状が悪化しやすい点もポイントです。

症状がごく軽い初期の喘息では、まだ喘鳴や強い呼吸困難がなく乾いた咳だけが長引く場合があります。これは咳喘息と呼ばれる状態で、風邪をひいたわけでもないのに2週間以上続く咳が主な症状です。

長引く咳だけでも軽視せず、早めに医療機関で相談することが大切です。

◆「咳喘息の原因と治療について」>>

【参考情報】『”What Is Asthma?”』National Heart, Lung, and Blood Institute (NHLBI)
https://www.nhlbi.nih.gov/health/asthma

1-3. 更年期症状と喘息症状を見分けるポイント

更年期の症状と喘息の初期症状にはこのように違いがあります。主な見分け方のポイントは次の通りです。

【咳の有無】
更年期障害そのものは咳を主要な症状としません。そのため、咳が長引くことはほとんどありませんが、自律神経の乱れから誘発される他の疾患(胃食道逆流症など)が原因で咳が出る可能性はあります。これに対し、喘息では2週間以上続く長引く咳が典型的で、特に夜間に悪化しやすい点が大きな違いです。

【息苦しさの質】
更年期の息切れは自律神経の乱れによる一時的なものですが、喘息の息苦しさは気道の炎症・狭窄によるため息が吐きにくくなります(呼気時にゼーゼーと音が出る)。

【症状が出る時間帯・誘因】
更年期症状は一日の中で特定の時間に集中することは少ないですが、喘息の症状は夜間~明け方に出やすく、冷気・ホコリ・運動など明確な誘因で誘発される傾向があります。

【誘因とは…症状を悪化させる引き金となる環境・物質・行動のことです】

◆「朝の咳と夜の咳の違い」>>

【その他の随伴症状】
更年期ではほてりや発汗、不眠、イライラなど複数の症状を伴うことが多いのに対し、喘息では主に咳・喘鳴・呼吸困難といった呼吸器症状が中心です。

2. 40~50代で増える大人の喘息


喘息というと子どもの病気と思われがちですが、実は成人になってから発症するケースも珍しくありません。

実際、喘息患者全体のうち約75%は大人の喘息患者であり、成人期に喘息を発症する年齢でもっとも多いのは40-50歳代だと報告されています。

【参考情報】『喘息・COPDグループ』九州大学大学院医学研究院呼吸器内科学分野
https://www.kokyu.med.kyushu-u.ac.jp/group/group03.html

2-1. 成人喘息の患者数が増加している

近年、成人の喘息患者数は増加傾向にあります。子どもの頃に喘息が治まっていても、大人になって再発したり中年期以降に新たに喘息を発症したりする例が多くなっています。

実際、この30年で成人喘息の患者数は約3倍に増えたとも言われています。

背景にはダニや花粉、カビ、ホコリなどアレルゲン(アレルギーの原因物質)に触れる機会の増加や、大気汚染の影響などが指摘されています。

◆「大人の喘息の特徴と再発について」>>

【参考情報】『今、大人のぜんそくが増えています。長引く咳(せき)に要注意』大正製薬
https://www.taisho-kenko.com/column/40/

【参考情報】”Adult-onset asthma becomes the dominant phenotype among women by age 40 years” by CARDIA Research Group (U.S.)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3960903/

2-2. 長引く咳・季節で悪化する症状に注意

大人の喘息の初期症状で多いのが、長引く咳です。風邪をひいたわけでもないのに、2週間以上咳が続く場合は要注意です。

一般に、感染症による咳は長くても2週間で改善するものです。それ以上に咳が収まらない場合、喘息など感染症以外の病気が隠れている可能性が高いと考えられます。

また、季節によって症状が悪化しやすいのも成人喘息の特徴です。季節の変わり目(春先・秋口)や冬の寒い時期に咳発作が起きやすい場合は喘息を疑いましょう。

花粉が飛ぶ季節や台風が来る時期など、気候環境の変化が喘息症状を悪化させることもあります。

「年齢のせい」「更年期だから体調を崩しやすいだけ」と自己判断せず、長引く咳には注意を払ってください。

【参考情報】”Age- and gender-specific incidence of new asthma diagnosis from childhood to late adulthood” by Finnish National Public Health Institute (study published 2019)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S095461111930191X

3. 日常生活で咳が出やすいシーン


喘息の咳や息苦しさは、日常生活の何気ない場面で誘発されることがあります。

特に更年期世代の方が注意したい、咳が出やすいシーンを具体的に紹介します。

3-1. 部屋の掃除やホコリっぽい環境

室内のホコリ(ハウスダスト)は喘息発作の代表的な誘因です。

部屋の掃除をしているときに埃を吸い込むと、気道が刺激されて咳込むことがあります。特に長期間掃除していなかった場所を掃除する際は要注意です。

喘息体質の方はマスクを着用し、掃除機がけの後によく換気をするなど、ホコリをできるだけ吸わない工夫をしましょう。

【ハウスダストとは…ホコリ・ダニ・繊維くずなど室内の微細な汚れの総称で、喘息を悪化させる代表的な原因です】

3-2. タバコの煙や花粉による刺激

外出中にも喘息症状が悪化しやすい場面があります。

例えば、人のたばこの煙を吸わされる受動喫煙は気道に強い刺激となり、咳発作を誘発しがちです。

また、花粉や黄砂が飛ぶ季節には、屋外でそれらを吸い込むことで喘息の症状が悪化しやすくなります。

風が強い日や花粉の多い時期に外出する際はマスクを着用し、帰宅後はうがいや洗顔で花粉・ホコリを落とすことが大切です。

◆「アレルギーが原因の咳について」>>

3-3. 冷たい空気(早朝・冬場)

気温の低い環境も喘息の咳を誘発します。冬の早朝に冷たい外気を吸い込んだ途端、むせるような咳が出ることがあります。

冷たい空気は気道を刺激し、気管支が収縮しやすくなるためです。寒い季節に外出するときはマフラーやマスクで口元を覆い、冷たい空気が直接気管支に入らないように予防しましょう。

【参考情報】『「もしかしてぜん息?」と思っている方へ』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/case/check.html

4. 受診の目安「こんな症状は専門医に相談を」


「更年期のせいだからそのうち治まるだろう」と思い込んで症状を放置すると、喘息を見逃してしまう危険があります。

早期に適切な治療を受けるためにも、以下のような状態が見られたら呼吸器内科での受診を検討してください。

【専門医への受診を検討すべき症状】
✓ 原因不明の咳が2週間以上続いている
✓ 夜中に咳き込んで何度も目が覚める日がある
✓ 軽い動作でも息切れや胸の苦しさを感じる
✓ 息をするときに「ゼーゼー」「ヒューヒュー」と音が聞こえる

これらの症状は喘息の初期サインの可能性があります。中でも、夜間に咳が止まらないようなケースは典型的な喘息のサインです。

また、動悸や頻繁な息切れが続く場合も呼吸器系の病気が疑われます。思い当たる症状があるときは自己判断せず、できるだけ早めに専門医に相談しましょう。

◆「呼吸器内科での診察内容について」>>

5. 呼吸器内科で行う検査


喘息が疑われる場合、医療機関では以下のような検査を行って診断を確定します。どちらも身体への負担が少なく、短時間で結果が分かる検査です。

喘息の診断では、これらの機能検査に加えて、胸部X線検査(レントゲン)や血液検査(アレルギー体質や炎症の有無を確認)などを組み合わせて、総合的に判断します。

特に胸部X線検査は、肺炎や肺がんなど他の重篤な疾患との鑑別にも役立ちます。

5-1. 呼気NO検査

呼気NO検査(FeNO検査)とは、吐いた息に含まれる一酸化窒素(NO)の濃度を測定する検査です。

気道にアレルギー性の炎症があるとNO濃度が高くなるため、喘息の診断・治療効果の判定に役立ちます。

検査方法はとても簡単で、決められた時間ゆっくりと息を吐くだけです。痛みもなく約1分で終了し、その場ですぐ数値が分かります。

測定されたNOの値が高いほど気道に炎症があることを意味し、喘息である可能性が高くなります。

5-2. スパイロメトリー(肺機能検査)

スパイロメトリー(肺機能検査)は、専用の機械に息を吹き込んで肺の空気の出し入れ能力を調べる検査です。

まず大きく息を吸い込んでから一気に吐き出し、その際の肺活量(吐き出せた空気の総量)や1秒量(吐き始めて1秒間に吐き出した量)を測定します。

喘息の方では気道が狭くなっているため、肺活量や1秒量が正常値より低下することがあり、この検査によって気道の閉塞(へいそく)の程度を評価できます。

検査自体は数分で終わり、思い切り息を吐くのに少し体力を使いますが、痛みもなく安全に受けられる検査です。

◆「呼吸器内科で行う検査の種類」>>

【参考情報】『肺機能検査とはどのような検査法ですか?』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q27.html

6. おわりに

更年期世代の女性にとって、息切れや咳などの不調は更年期障害の一部と考えがちです。

しかし、長引く咳や夜間の呼吸困難がある場合は喘息の可能性を念頭に置くことが重要です。

自己判断で様子を見ず、早めに医療機関で適切な診断と治療を受ければ、喘息もコントロールでき健康な人と変わらない日常生活を送ることができます。

更年期だからと決めつけず、気になる症状はぜひ専門医に相談してください。