インフルエンザウイルス治療薬「タミフル」の特徴
タミフルは、インフルエンザウイルスの増殖を抑えることで治療する医薬品です。A型、B型インフルエンザの両方に効果があり、他のインフルエンザ治療薬と比べて耐性ができにくいという特徴もあります。
インフルエンザの症状が見られてから2日以内にタミフルを服用することで、症状を軽くすることが期待できるので、早めに医療機関へ受診することが重要です。
1.タミフルとはどのような薬か(薬剤の説明)

タミフルは、インフルエンザが体内に増殖するために必要な酵素「ノイラミニダーゼ」の働きを邪魔することで、インフルエンザの増殖を抑えます。
【ノイラミニダーゼとは…インフルエンザウイルスが体内で広がるために必要な酵素で、これを阻害すると増殖を防げます】
インフルエンザは、インフルエンザウイルスを原因とする気道感染症であり、通常の風邪と比べて重症化しやすい疾患に分類されています。
通常の流行性インフルエンザは、A型とB型が存在し、タミフルは両方の方に効果があります。
タミフルを含むノイラミニダーゼ阻害薬は、耐性も比較的できにくく、副作用も少ないのも特徴です。
インフルエンザを発症してからタミフルを2日以内に服用することで、症状を軽くでき、早期に治癒することも期待できます。
タミフルには、カプセルとドライシロップが販売されており、小さいお子さんや飲み込む力が弱くなっているお年寄りにドライシロップを選べます。
また、ドライシロップは、腎臓や肝臓などの内臓の発達が十分ではない子どもや腎機能障害がある患者さんにも投与量を調節できるのもメリットの一つです。
インフルエンザによって重症化リスクが高い人は、インフルエンザを予防するためにタミフルを使用することがあります。
原則としてインフルエンザを発症している患者の同居家族や共同生活者である以下の人が対象です。
・高齢者(65歳以上)
・慢性呼吸器疾患又は慢性心疾患患者
・代謝性疾患患者(糖尿病)
・腎機能障害患者
発熱や喉の痛みが強い場合は、大切な家族をインフルエンザのリスクから守るためにも医療機関へ受診してください。
【参考情報】『インフルエンザとは』国立感染研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/219-about-flu.html
【参考情報】”Neuraminidase Inhibitors (e.g., Oseltamivir) for the Treatment and Prevention of Influenza” by Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/flu/hcp/antivirals/index.html
2. タミフルの使い方(服用方法)
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通常の大人や体重37.5kg以上の子どもにはタミフルカプセル75mgを1日2回、5日間飲みます。
タミフルドライシロップは、大人に使用する場合、カプセルと同様に75mg(ドライシロップ剤として2.5g)を1日2回、5日間飲みます。
【ドライシロップとは…水に溶かして飲む粉薬で、小児や錠剤を飲みこみにくい人に使われる剤形です】
子どもについては、体重によってタミフルドライシロップの量を調節することも必要です。
体重37.5kgの子どもの場合は、体重1kgあたり2mg(ドライシロップ剤として体重1kgあたり66.7mg)を1日2回、5日間飲みます。
新生児や乳児については、体重1kgあたり3mg(ドライシロップ剤として体重1kgあたり100mg)を1日2回、5日間飲みます。
予防でタミフルを使用する場合は、1日1回、7〜10日間飲んでください。
タミフルの保険適用は、治療のみであり、予防で使用する場合は費用に注意が必要です。
◆「風邪との違いがわかる!子どもの呼吸器感染症と家庭での対処法」>>
3.タミフルの副作用

タミフルの主な副作用として以下のものがあります。
・下痢
・腹痛
・吐き気
・嘔吐
・発疹
タミフルの副作用として下痢や腹痛などの消化器官に関わる副作用のリスクがあるので注意が必要です。あまりに副作用がつらい場合は、主治医に相談することも大切です。
頻度としては稀ですが、重篤な副作用として以下のものがあります。
・アナフィラキシーショック
・肺炎
・劇症肝炎
【アナフィラキシーとは…急激に現れる重いアレルギー反応で、呼吸困難や血圧低下を伴う危険な状態です】
【劇症肝炎とは…急速に肝臓の働きが悪化し、重症化する可能性があるまれな肝障害です】
蕁麻疹や顔や喉の腫れ、呼吸が苦しい、黄疸などの症状が見られた場合は、タミフルの服用を中止して適切な処置を受けましょう。
タミフルを使用して普段とは違う体調変化がある場合は、医療機関へ相談してください。
【参考情報】”Tamiflu (oseltamivir phosphate) – Information for Patients and Providers” by U.S. Food and Drug Administration
https://www.fda.gov/drugs/postmarket-drug-safety-information-patients-and-providers/tamiflu-oseltamivir-phosphate-information
4.使用上の注意点

タミフルを使用する際には、以下の人は注意が必要です。
・妊婦、授乳婦
妊娠している人や赤ちゃんに母乳をあげている人は、タミフルの使用によって赤ちゃんに影響する可能性があるので、医師に相談してください。
動物実験では、お腹の赤ちゃんに影響する可能性が示唆されています。また、母乳にタミフルが移行することも確認されているので授乳を中止するか、継続するか確認が必要です。
・小児
タミフルは、腎臓から排泄される薬であり、大人に比べて腎機能が十分に発達していない小児では副作用が強く出る可能性があります。
タミフルの使用量については十分に考えられて処方されていますが、気になるようなら医師に相談してください。
・高齢者
高齢者は、若い人に比べて肝臓や腎臓の働きが弱くなっている場合が多くあります。
そのため、高齢者がタミフルを使用する場合は、副作用に注意が必要です。
・腎機能障害のある人
腎機能に問題がある人は、体内のタミフルをうまく排泄できないため、副作用のリスクが高くなります。
腎機能障害がある人にタミフルを使用する場合は、1日2回から1日1回に減量することも検討します。
・感染症
インフルエンザと細菌感染症と同時に発症している場合、タミフルとは別に抗生剤の使用が必要になる可能性があります。
・未成年の男の子
タミフルの服用の有無は関係なく、インフルエンザを発症すると異常行動を起こす例が確認されています。
一時期は、タミフルが原因ではないかと思われていましたが、現在では因果関係は否定されているので、服用をためらう必要はありません。
しかし、インフルエンザによる発熱が見られて2日後、小学生以上の未成年の男の子に異常行動が見られる場合があるので、転落などによる怪我を防止する対策が必要です。
【参考情報】”Treatment of Influenza During Pregnancy” by U.S. Food and Drug Administration / Centers for Disease Control and Prevention
https://www.fda.gov/drugs/information-drug-class/treatment-influenza-during-pregnancy
5.タミフルの薬価

・タミフルカプセル75
薬価1カプセル230.2円
・タミフルドライシロップ
薬価1g152.3円
タミフルには、ジェネリック医薬品も販売されており、お薬代を抑えることも可能です。
・オセルタミビルカプセル75mg「サワイ」
薬価1カプセル114.4円
・オセルタミビルDS3%「サワイ」
薬価1g85円
タミフルのジェネリック医薬品であるオセルタミビルは、錠剤であるオセルタミビル錠75mg「トーワ」が2023年8月15日に承認されています。
販売開始日は未定ですが、カプセルやシロップが飲みにくいと感じる人にも選択肢が増えます。
◆「熱はないけど咳が止まらない時に考えられる疾患とは?」>>
6.おわりに
タミフルは、インフルエンザウイルスが増殖するために必要なノイラミニダーゼを阻害することで、インフルエンザの症状を抑えます。
A型とB型インフルエンザウイルスの両方に効果があり、他の医薬品に比べると耐性ができにくいのがタミフルの特徴です。
もし、タミフルが合わなかったとしても、代わりとなるインフルエンザ治療薬は存在します。
タミフルと同じ、ノイラミニダーゼを阻害する吸入薬「リレンザ」や1回の吸入タイミングで済む「イナビル」、点滴で受けられる「ラピアクタ」、1回1錠の服用で済む「ゾフルーザ」などがあります。
インフルエンザは、早めに治療することで、症状を比較的軽度に抑えることも可能なので、気になる症状があったら医療機関へ相談してください。
