喘息の悪化を引き起こす要因について

喘息の発作が起こると、呼吸が苦しくなり、つらいですよね。
気管支喘息の患者は、気道に炎症が起こっており過敏な状態になるため、さまざまな要因に反応して悪化します。
発作を繰り返すと、気道はますます敏感になり、発作を起こしやすい状態になるという悪循環を起こします。
このような悪循環に陥らないためにも、自分がどのような状況で喘息の症状が悪化するのか把握しておくのは大切です。
今回の記事では、喘息が悪化する要因について詳しく解説します。
1.喘息の悪化を引き起こす5つの要因
過敏な状態の気道は、アレルゲンや喫煙、呼吸器感染症など、さまざまな要因で悪化します。
喘息の悪化をまねく主な要因は、以下の5つです。
・アレルゲン
・喫煙、たばこの煙
・呼吸器感染症
・ストレス
・肥満やメタボリックシンドローム
それぞれの要因について詳しく解説します。
【参考情報】Mayo Clinic 『Asthma attack』
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/asthma-attack/symptoms-causes/syc-20354268
1-1.アレルゲン
アレルゲンとは、アレルギーの原因となる物質を指します。
アレルゲンとなる物質は、ダニやカビ、ペットの毛やフケ、花粉などが代表的です。
気管支喘息の人は、気道が過敏な状態のため、アレルゲンを吸い込むことで刺激となり、発作が誘発されます。
自分がどの物質に対してアレルギーを持っているのか把握しておきましょう。
アレルゲンによって、対策方法は異なりますが、基本的にはアレルゲンに触れないようにしたり、除去をします。
具体的な対策例として、以下のようなものがあります。
こまめな掃除や換気
ペットは寝室に入れない
花粉飛散時期の外出はマスクとゴーグルを装着
このような対策をすることで、アレルゲンに触れたり吸い込んだりしにくい環境にします。
家の中のアレルゲンを少なくし、外から持ち込むことを防ぎましょう。
◆『咳が止まらないのはなぜ?アレルギーが原因かもしれません』>>
1-2.喫煙・たばこの煙
喫煙やたばこの煙も、喘息の悪化要因です。
喫煙は、気道の炎症を悪化させ、呼吸機能を低下させるだけでなく、薬の効果も低下させます。
喫煙だけでなく、受動喫煙も同様に悪影響です。
たばこは、喘息を悪化させるだけでなく、肺がんやCOPD、心臓病などのリスクとなり、体には悪影響しかありません。
喘息がある人はもちろんですが、健康のためにも禁煙をしましょう。
【参考情報】『ぜんそく持ちの人は「禁煙」を!』大学病院医療情報ネットワークセンター
https://square.umin.ac.jp/nosmoke/material/TS_asthma.pdf
1-3.呼吸器感染症
風邪やインフルエンザ、肺炎などの呼吸器感染症も、喘息の症状を悪化させる原因です。
喘息の人の気道は、風邪やインフルエンザなどの呼吸器感染症を引き起こすウイルスに対する抵抗力が弱くなっています。
ウイルスの増殖を抑えられないため長引きやすく、気道の炎症が悪化します。
そのため、喘息の症状が悪化してしまうのです。
空気が乾燥している冬場は、呼吸器感染症が特に流行しやすい時期といえます。
感染予防対策をしっかりおこなうことが大切です。
以下のような対策をしましょう。
・マスクの着用や手洗い、うがい
・予防接種を受ける
・冬場は加湿をおこない適度な湿度を保つ
・咳エチケット
・適宜換気をする
・十分な休養とバランスの良い食事
喘息がある人は、「風邪をひいたかな?」と思う症状があれば、早めの受診を心がけましょう。
感染予防と早めの治療開始が、悪化を防ぐポイントです。
1-4.ストレス
過度なストレスも、喘息悪化の要因です。
「大きく環境の変化があった」「大きな仕事を任された」などがきっかけで、喘息が悪化する場合があります。
ストレスは、精神面や身体面、行動面でさまざまな反応を引き起こします。
例えば、眠れなかったり食欲がなかったりなどの症状です。
このような状態になると、自律神経が乱れて体のバランスが崩れ、喘息の悪化につながります。
ストレスはため込まず、休養をとったり趣味や好きなことをしたりして、上手に発散しましょう。
【参考情報】Cleveland Clinic 『Stress&Asthma』
https://my.clevelandclinic.org/health/articles/9573-stress–asthma
1-5.肥満やメタボリックシンドローム
肥満やメタボリックシンドロームは、喘息悪化の要因です。
また、喘息の難治化と重症化についても示されています。
肥満やメタボリックシンドロームが喘息を悪化させるのには、以下のような理由があります。
お腹に脂肪がつき膨らむと横隔膜が押し上げられ肺が圧迫される
脂肪細胞が炎症を悪化させる物質を出す
このような関係があるため、喘息が悪化するのです。
まずは、自分が肥満なのかどうか把握しましょう。
成人の場合、BMIと呼ばれる数値を使って肥満かどうか判断します。
BMIは、体重㎏÷(身長m)2で求められ、この数値が25以上なら肥満とされています。
また、腹囲も肥満の指標になり、男性85㎝以上、女性90㎝以上ならば、肥満を疑いましょう。
肥満やメタボリックシンドロームを予防するためには、適度な運動と正しい食生活が大切です。
特に喘息の人は、「発作が出るから運動を避ける」という人もいるのではないでしょうか。
喘息の人も、喘息症状を悪化させない範疇で適度な運動は大切です。
肥満の予防だけでなく、心肺機能の向上にもつながるため、良い影響があるでしょう。
発作が出ない程度の適度な運動をおこない、正しい食生活を心がけてください。
【参考情報】『「肥満」による「ぜん息の発症・悪化」の危険性をしっかり理解しておきましょう』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/column/202112_1/
2. その他の要因
喘息が悪化する原因は他にもあります。
・季節の変わり目
・気圧の変化
・天候
・冷たい空気
・解熱鎮痛薬やβ遮断薬
季節の変わり目は、気温や気圧の変化、天候の変化が著しくなります。
そのような時期は、喘息が悪化しやすい時期です。
天気予報のチェックをおこない、気温や気圧の変化を認識しておきましょう。
また、冷たい空気を吸い込んだ場合も、気道に刺激となり、喘息発作を引き起こします。
解熱鎮痛薬やβ遮断薬にも注意が必要です。
一部の解熱鎮痛薬は、アスピリンをはじめとする非ステロイド性抗炎症薬が使われています。
この成分が重症の喘息発作を誘発する可能性があります。
アスピリンをはじめとする非ステロイド性抗炎症薬は、市販の解熱鎮痛薬にも使われている場合があるため、使用するには注意が必要です。
高血圧や緑内障の治療に使われるβ遮断薬には、気管支を収縮させる働きがあるため、喘息を悪化させます。
薬を使う際には、医師や薬剤師に相談してから使用する方が安全でしょう。
【参考情報】『悪化因子の対策』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/control/measures/lifestyle.html
3.おわりに
喘息の症状を悪化させる要因は、ひとつではなくさまざまです。
まずは、喘息の治療を継続し、発作をコントロールすることが大切です。
日常生活の中で、症状が悪化する要因を防ぐよう対策をおこないましょう。
喘息悪化の要因をうまく防ぐことができない場合は、主治医へ相談してみましょう。