咳が出て息苦しい場合…こんな病気かもしれません。
咳はよくある症状のひとつです。風邪や花粉症でもあらわれる症状のため、経験したことがある人も多いでしょう。
ほとんどの場合、咳が出ていても時間の経過とともに治まっていくことがほとんどです。
しかし、息苦しさを感じるほどの咳が出る場合、ただの風邪や花粉症ではなく重大な病気の可能性が考えられます。
今回の記事では、咳が出て息苦しい場合に考えられる病気を3つ紹介します。
病気の特徴や症状、治療など詳しく解説しますので、咳が出て息苦しさを感じている方はぜひ参考にしてください。
◆『花粉症で咳が出るのはなぜ?理由や予防・緩和方法など』>>
1.息苦しくなるほど咳が出る病気
咳は起こりやすい症状ですが、息苦しいほど咳が出る場合は身体的にも精神的にも大きな負担です。
咳が出ることで、夜間の睡眠も十分にとれなかったり、咳の衝撃によって、腹筋や肋骨に痛みがあらわれたりするケースも多くみられます。
また、息苦しさを感じることで不安感があり、周囲にいる家族も心配になりますね。
ここでは、息苦しくなるほど咳が出る病気を解説します。
1-1.肺炎
肺炎は、肺に炎症が起こる病気で、主に細菌やウイルスの感染が原因です。
<肺炎の症状>
・発熱
・咳
・痰(黄色や緑色)
・息切れや息苦しさ
・胸の痛み(炎症が肺の表面の胸壁近くに及んだ場合)
肺炎の特徴として、急に症状があらわれることが多く、38℃以上の高熱や強い咳が数日間続きます。
全身のだるさや疲労感、食欲不振など、全身症状もあらわれます。
肺炎は日本人の死因の第5位の疾患であり、特に高齢者や免疫力が低下している人は重症化しやすく、入院が必要なケースや命に関わるケースもあるため注意が必要です。
治療は原因に応じて異なり、細菌性肺炎の場合は抗菌薬を使用しますが、ウイルス性肺炎の場合は対症療法が主体となります。
つらい症状を和らげるために解熱剤や鎮咳薬などを使って、対症療法もおこないます。
肺炎の予防には、ワクチン接種が有効です。特に肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンは、感染リスクを大幅に減少させます。
また、手洗いやうがい、マスクの着用などの基本的な感染予防策も重要です。
肺炎は早期発見と適切な治療が重要です。症状が現れた場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
【参考情報】『肺炎について』メディカルノート
https://medicalnote.jp/diseases/%E8%82%BA%E7%82%8E
1-2.喘息
喘息とは、アレルギーが原因で気道に慢性的な炎症がある状態です。
少しのきっかけで気道が過敏に反応し、発作的に咳が止まらなくなります。
喘息を引き起こすアレルギーは、ハウスダストやペットのフケ、花粉、ダニ、カビなどさまざまで、特定のアレルゲンが見つからない場合もあります。
発作を引き起こすきっかけとして、アレルゲンの吸引はもちろんですが、発作が起きやすいとされているタイミングがあります。
・季節の変わり目
・気温差
・天候
・ストレスや疲労
・感染症にかかったとき
・夜中や朝方
そのほかに、運動やアスピリンを含む薬の服用なども発作を起こす原因となります。
<喘息の症状>
・咳
・痰
・呼吸困難(息切れ・息苦しさ)
・喘鳴(ヒューヒュー・ゼイゼイ)
喘息の呼吸器症状は発作性であり、一日のうちで夜間から早朝にかけて症状が悪化するのが特徴です。
症状を放置すると、気道の炎症が悪化し発作を起こしやすくなります。
発作を繰り返すことで気道の状態が悪化し、徐々に症状も重くなります。
喘息治療は発作を起こさないようにコントロールすることが大切です。症状がなくてもしっかり治療を継続しましょう。
喘息は、「小児喘息」と言われるように、子供の病気と考えがちです。しかし、喘息の発症年齢で割合が高いのは、10歳前後の発症と50歳前後の発症にあり、成人してから発症することも非常にありふれた疾患です。
成人の患者さんが、長引く咳で来院され、検査の結果、喘息であることをお伝えすると、「これまで生きてきて、なぜ急に喘息になったのでしょうか?」と驚かれる患者さんは多くおられると感じます。
私は、「喘息と類似のアレルギーの疾患に、花粉症があります。花粉症も子供のころから患っておられる方もいますが、多くの方は、大人になってから発症したり、上京してから発症したりなど、突然発症します。喘息もこういったアレルギー疾患と同様、体質としては長らく無症状で体内に抱えており、発症は突然起こるものです。」とお伝えしております。
【参考情報】『気管支ぜんそく』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/c/c-01.html
【参考情報】Mayo Clinic “Asthma”
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/asthma/symptoms-causes/syc-20369653
1-3.COPD(慢性閉塞性肺疾患)
慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは、「肺気腫」と「慢性気管支炎」を総称した呼び方です。
主な原因は喫煙です。タバコに含まれる有害物質を長期間吸い込み続けた結果、気管支や肺胞に障害が起こります。
「たばこ病」と呼ばれるほど、喫煙習慣や受動喫煙が大きな原因です。
その他、粉塵や大気汚染もCOPDの原因となります。
<COPDの症状>
・1日に何度も出る慢性的な咳
・運動時や動作時に息切れがしやすい
・呼吸困難や息苦しさ
・透明~白色、黄色、緑色などの粘り気のある痰
・喘鳴(ゼイゼイ、ヒューヒュー)
・呼吸器の感染症にかかりやすくなる
・チアノーゼ
発作性の呼吸困難を起こす場合もあります。
肺の機能が低下しているため、慢性的に痰が増える状況となり、その痰を排出しようと咳も増えます。
喘息と症状が似ていますが、COPDは進行性の病気です。治療をせずそのままにしていると、病気が進行し命に関わります。
治療は主に「禁煙」と「薬物療法」です。
進行した場合には、低酸素血症を起こし、在宅酸素療法や補助換気療法が必要なケースもあります。
【低酸素血症・・・動脈血の酸素が不足している危険な状態のこと】
いったん低下した肺の機能は回復させることができませんが、適切な治療を継続すれば、病状の進行を遅らせることができます。
呼吸機能が低下しているCOPD患者にとって、風邪やインフルエンザなどの感染症は大敵です。
感染症にかかると、咳や痰がさらに増え、息苦しい状態になります。
そのため、感染症が流行している時期は、手洗いやうがい、マスクの着用、予防接種など、感染予防をおこないましょう。
【参考情報】『COPD (慢性閉塞性肺疾患)』東京都保健医療局
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kensui/copd/
2.おわりに
咳はよくある症状のひとつです。様子をみていて治まるケースがほとんどですが、なかには息苦しさを感じるほどに咳が出る場合があります。
そのようなケースでは、ただの風邪ではなく別の病気が考えられるでしょう。
肺炎や喘息、COPDでは、咳で息苦しさを感じるケースが多くあります。
これらの病気は、放っておくと重症化し命に関わる可能性もある恐ろしい病気です。
いずれの病気も、早期発見早期治療が大切です。
息苦しさを感じる咳が続く場合、身体的にも精神的にも大きな負担になります。
早めに呼吸器内科を受診し、適切な治療を受けましょう。