花粉症で咳が出るのはなぜ?理由や予防・緩和方法など
ある季節になると、鼻水やくしゃみ、目のかゆみなど、花粉症の症状に悩まされる人も多いのではないでしょうか?
花粉症の症状の程度はさまざまですが、花粉が飛散している数か月の間、症状があるのは非常につらい状態ですね。
また、花粉症では、目や鼻の症状だけでなく、咳が続くケースも多くみられます。
今回の記事では花粉症で咳が出る理由や予防法、咳がつらいときの緩和方法を解説します。
花粉の時期になると、アレルギーの症状に加え咳症状が出る方は、ぜひ参考にしてください。
1.花粉症とはどんな病気?
花粉症は、花粉が原因で引き起こされるアレルギー疾患です。
花粉が鼻や目、喉などの粘膜に付着することでアレルギー反応が起こり、様々な症状を引き起こします。
主な症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどです。そのほか、咳やだるさ、眠気、頭痛、肌荒れなどがあらわれる人もいます。
花粉症は主に春先に多く見られますが、秋にも発症することがあります。
<花粉の飛散時期>
季節 | 花粉の種類 | 飛散時期 |
---|---|---|
春 | スギ | 2月から4月 |
ヒノキ | 3月から5月 | |
夏 | シラカンバ(シラカバ) | 4月から6月 |
イネ科 | 5月から8月 | |
秋 | ブタクサ | 8月から10月 |
ヨモギ | 8月から10月 | |
冬 | ハンノキ | 1月から4月 |
これらの花粉は地域によって飛散時期が多少異なることがありますが、一般的にはこのような時期に飛散します。
花粉症の症状を軽減するためには、花粉の飛散時期を把握し、適切な対策を取ることが重要です。
【参考情報】Mayo Clinic “Hay fever”
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/hay-fever/symptoms-causes/syc-20373039
2.なぜ花粉によって咳が出る?
「花粉症でなぜ咳が出るの?」と思う人もいるでしょう。
ここでは、花粉によるアレルギー症状が出る仕組みや咳の特徴について解説します。
2-1.花粉でアレルギー症状が起こる仕組み
私たちの身体には、免疫と呼ばれる仕組みがあります。
身体に入ってきた異物に対し、抗体を作って異物を排除しようとする仕組みです。
花粉やダニなどのアレルゲンに対しても「IgE抗体」と呼ばれる抗体を作ります。
再度アレルゲンが身体に侵入した場合、アレルゲンとIgE抗体が結びつき、反応を起こしてアレルギー症状があらわれます。
これが、花粉でアレルギー症状が起こる仕組みです。
◆『咳が止まらないのはなぜ?アレルギーが原因かもしれません』>>
【参考情報】『アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、花粉症』東京都保健医療局
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/allergy/knowledge/rhinitis_etc.html
2-2.花粉が原因の咳の特徴とは
花粉による咳の特徴は、痰が絡まない乾いた咳です。
喉の違和感やイガイガ感があり、激しく咳き込んでしまうことがあります。
2-3.口呼吸が原因でも咳症状が現れる
鼻水や鼻詰まりがあると、口呼吸になりがちです。
しかし、口呼吸をしていると、喉が乾燥し花粉が喉の粘膜に付着しやすくなります。
そのため、口呼吸が続くとアレルギー症状が出やすくなります。
3.花粉症を疑う場合の検査
花粉症が疑われる場合、血液検査や鼻汁検査、皮膚の検査をおこないます。
それぞれどのような検査か解説します。
3-1.血液検査
血液検査では、採血をして血液に含まれるIgE抗体を調べます。
IgE抗体には種類があるため、花粉と結びつくIgE抗体の量が多ければ花粉症ということです。
血液検査で花粉の種類も特定できるため、どの時期に症状が出るのか、花粉の種類を推測し検査します。
そのため、症状が出る時期を医師に伝えることが大切です。当院では、主にView39検査で、網羅的にアレルゲンを評価しております。
3-2.鼻汁の検査
鼻汁好酸球検査と呼ばれる検査で、鼻汁(鼻水)を綿棒でぬぐい検査します。
インフルエンザのように鼻の奥に綿棒を差し込む必要はないため、痛みがない検査です。
アレルギーが原因で鼻汁が出ている場合、鼻汁には好酸球が含まれています。
そのため、鼻汁を検査し好酸球が含まれていれば鼻汁の原因はアレルギーです。
しかし、鼻汁好酸球検査では何のアレルギーかまでは特定できません。
春先に鼻汁が出ていれば、スギかヒノキの花粉の可能性が高く、通年で鼻汁が出ているのであればダニやハウスダストの可能性があります。
症状が出る時期によって、アレルゲンの推定は可能ですが、アレルゲンを特定するには血液検査が必要です。
当院では、鼻汁検査は対応しておりません。
3-3.皮膚の検査
皮膚の検査には、プリックテストとパッチテストがあります。
プリックテストは、即時型アレルギーの診断に有用な検査です。
皮膚にアレルゲンを少量入れ、15分後にどのような反応があるか確認します。
パッチテストは、アレルゲンを付着させたシールを貼り、後日皮膚の状態を確認します。
すぐに結果が出るわけではなく、何度か通院が必要です。
当院では、皮膚検査は対応しておりません。
4.花粉症の治療方法
治療方法は、「対症療法」と「根治療法」の2つです。
内容として「薬物療法」「アレルゲン免疫療法」「手術療法」の3つの方法が選択肢としてあります。
どのような治療法か、それぞれ解説します。
4-1.対症療法
対症療法では、薬物療法を中心におこないます。
使用される薬剤は、抗ヒスタミン薬やステロイド薬が一般的です。内服や点鼻、点眼など症状に合わせ使用します。
4-2.根治療法
花粉症を根治させる治療法は、現在のところありません。
しかし、「アレルゲン免疫療法」「手術療法」は、症状を軽くできます。
アレルゲン免疫療法は減感作療法とも呼ばれ、原因となるアレルゲンを投与し、身体のアレルギー反応を弱める治療法です。
皮下免疫療法と舌下免疫療法の2つがあります。
多くの場合、舌下免疫療法で治療がおこなわれますが、すぐに効果が実感できるわけではありません。
4-5年にわたり毎日服用が必要なため、根気よく治療に取り組む必要があります。
また、舌下免疫療法の薬剤を生産する製薬会社の、出荷調整の影響で、現在、スギ花粉症の舌下免疫療法を新規に実施するのは困難な状況が、続いております。
手術療法は、下鼻甲介粘膜焼灼術と呼ばれる鼻の粘膜をレーザーで焼く治療です。
一度の治療で、数か月から数年効果が期待できますが、徐々に効果が薄れていきます。
薬が服用できない方や、薬で十分な効果が得られない方は手術を検討してもよいでしょう。
【参考情報】『的確な花粉症治療のために』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000077514.pdf
5.自分でできる!花粉による咳の予防・緩和方法
予防策や症状の緩和策として、花粉の飛散情報をチェックし、花粉が多い日は外出を控えることが推奨されます。
しかし、生活していくなかで家から全く出ないということは無理ですよね。そこで、自分でできる花粉対策を紹介します。
5-1.部屋・室内の加湿
部屋の加湿をおこない、適度な湿度を保つことは、喉の粘膜のバリア機能を正常に保ちます。
また、乾燥している部屋では花粉は飛散しやすい状態です。
花粉は空気中の水分を含むと、重くなり飛散しにくく落ちてしまいます。
雨の次の日に花粉症の症状が落ち着いているといわれるのはこのためです。
部屋の加湿をすることで、室内に侵入した花粉を吸い込みにくくできます。
5-2.衣服や室内などの花粉除去
帰宅時には衣服や髪の毛に付着した花粉を払い落とすことで、室内への花粉の持ち込みを減らせます。
帰宅後、すぐにシャワーを浴びるのも効果的です。シャワーが浴びられない場合でも、手洗いやうがい、顔を洗うことで、皮膚や粘膜に付着した花粉を落とせます。
また、外に洗濯物を干している場合、洗濯物にも花粉が付着します。
取り込む際にはしっかり払うようにしましょう。
室内の掃除をこまめにおこなうことも、花粉症による症状の予防や緩和に効果的です。
5-3.マスク着用
外出時にはマスクやメガネを着用し、花粉が身体のなかに入らないよう予防しましょう。
花粉症は日常生活に大きな影響を与えることがありますが、適切な対策を行うことで、症状を軽減することが可能です。
6.おわりに
近年、花粉症の方が増えています。
特定の時期だけアレルギー症状がある方は、花粉症かもしれません。
「花粉症かな?」と思ったら、市販薬を試してみるのもいいでしょう。
しかし、咳が出て止まらない、花粉症の症状がつらいという方は、早めに呼吸器内科やアレルギー科に相談してみるといいでしょう。